2023年5月下旬・午前11:30頃および午後13:15頃
平地のスギ防風林にホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が残した巨大な溜め糞場wbc-1を定点観察しています。
今回私の目を引いたのは、1匹の真っ黒な甲虫(成虫)です。
体表に赤っぽいダニ(種名不詳)が多数群がっていました。
ダニは体外寄生や吸血性というよりも、ただヒッチハイク(運搬共生、便乗)しているだけかもしれません。
てっきりタヌキ溜め糞場では常連のセンチコガネ(Phelotrupes laevistriatus)かと思ったのですが、ハネカクシのように鞘翅が短く腹端が露出していることに気づきました。
その点でクロシデムシを連想しました。
体表に多数のダニが集ったクロシデムシの写真がネット上には多数公開されています。
しかし、クロシデムシにしては触角が違いますし、死肉食性のクロシデムシが獣糞に来るという話も聞いたことがありません。
同定のため謎の甲虫を採集すべきでしたが、採集道具を何も持ってこなかった私が「どうしよう? どうしよう?」と焦っている間に、溜め糞の中に潜り込んでしまいました。
こういうときに躊躇なく素手で捕獲できるのが筋金入りの虫屋なのでしょう。
私はまだまだ修行が足りません。
【追記】
YouTubeのコメント欄にて、H720316氏から「ダニだらけの甲虫はエンマムシの仲間かな?」とのコメントを頂きました。
画像検索してみると、多数のダニのたかったエンマムシの写真がいくつかヒットします。
Yahoo知恵袋で他の人が写真鑑定してもらった回答が参考になったので、引用させてもらいます。
ダニの集団です。シデムシなどにもよく付着している肢が長めで全身が褐色のダニ(種は不明)と同じものと思われ、昆虫に寄生しているのではなく死体にわくウジを餌としており、自力では移動能力に乏しいため飛翔できる昆虫の体表にしがみついて乗り物として利用し、目的となる死骸に移動するものとされています。シデムシと異なりエンマムシは体表がツルツルした部分が多く上翅も体とぴったり組み合わさり隙間が少ないため、しがみつける場所が腹端くらいしかなかったのでしょう。なおシデムシは死体を訪れて腐肉を食べるため、このダニを連れていくことで餌を巡って競合するウジを食べてもらうという双利共生の関係があるとされていますが、エンマムシの場合はダニと同じくウジを餌とするため、そのような関係には当たらないことになります。尤も死体には大抵エンマムシが食べきれないほどのウジが発生するので、餌を巡る競合までは起こらないと思われます。
溜め糞場wbc-1で多かったのは、クロボシヒラタシデムシ(Oiceoptoma nigropunctatum)の成虫と幼虫でした。
クロボシヒラタシデムシの幼虫は三葉虫のような奇怪な形をしています。
様々なハエ類も集まっていましたが、真面目に検討していません。
それよりも、どこか近くでずっと鳴いている鳥の美声が気になりました。
調べてみると、森林性のクロツグミ♂(Turdus cardis)の囀り のようです。
他にはキジ♂(Phasianus versicolor)が近くの農地(休耕地?)でケンケーン♪と縄張り宣言の母衣打ち ♪をする鳴き声も聞こえました。
※ 前半部はかなり薄暗くてぼんやりした映像だったので、動画編集時に自動色調補正を施しています。
隣の溜め糞wbc-1よりも規模は小さいものの、新鮮な糞が追加されていました。
クロボシヒラタシデムシの成虫および幼虫が群がって活動しています。
現場では気づかなかったものの、写真にはサビハネカクシ(Ontholestes gracilis)らしき姿も1匹写っていました。
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