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2023/09/07

晩冬の雪山でスギ林を遊動するニホンザルの群れ【トレイルカメラ】

 

2023年3月上旬・午前9:06〜9:57・気温0℃ 

まだなお雪深い里山の杉林道をトレイルカメラで見張っていると、久しぶりにニホンザル♀♂(Macaca fuscata fuscata)の群れが現れました。 
初めは晴れていたのに、小雪がちらついたり、急に激しく雪が降ったりと不安定でした。 
低山とは言え、雪山の天気は変わりやすいことがよく分かります。 

ニホンザルの群れ全体としては山腹の斜面を左から右へトラバースしています。 
三々五々と遊動する群れのメンバーは老若男女さまざまでした。 
かなり毛並みの悪い老いた個体や子猿も通りかかったので、なんとか無事に厳しい冬を越せそうです。 

林道を選んで歩く猿は、トレイルカメラの方をちらちら見ながら通過する個体が多いです。 
このスギ林道にはタヌキの溜め糞場sが雪の下に埋もれているはずですが、猿は全く興味を示しませんでした。

スギ林の林床は雪面が固く凍結しているために、ニホンザルは体力を消耗することなく軽快に歩いたり走ったりすることが可能です。 
前夜はおそらくよく晴れて放射冷却現象だったのでしょう。
明け方の最低気温がぐっと冷え込むと、雪面がカチカチに凍ることがあります。

常緑の針葉樹林にはニホンザルの餌となる食料はないはずなのに、わざわざ杉林に来たということは、何か理由があるはずです。 
スギ植林地に入れば足が雪に潜らずラッセルが不要だと学習した賢い個体が先導し、スギ林を経由して遊動するようになったのかもしれません。 
スギ植林地に入れば、雪崩に巻き込まれる心配もまずありません。
雪崩の多発地帯に杉を植林することはないからです。
仮に強引に植林したとしても、杉の苗が大きく育つまでに雪崩でなぎ倒されてしまうでしょう。


【追記】
日本の森林/多様性の生物学シリーズ3『獣たちの森』という専門書によると、
 積雪寒冷地帯では野生動物に雪や寒さを防ぐ冬の退避場を用意することを忘れてはならない。冬も活動する哺乳類には針葉樹の密な林が重要である。泊まり場として用いられる針葉樹林は林間が高い閉鎖性を持ち、近くに採食の場所があることが重要である。積雪寒冷地帯では主な採食場となる広葉樹林の中に、針葉樹林がモザイック(原文ママ)に配置されていると野生哺乳類の生息地としての価値が上がる。 (p212より引用)


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