2022年11月上旬・午前11:45頃・くもり
山林の小径に残されたホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞場dには、ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)だけでなくハクサンベッコウバエ(Neuroctena analis)も少数ながら来ていました。
前回の記事:▶ タヌキの溜め糞場で交尾を始めたベッコウバエ♀♂(求愛成就)
イタヤカエデの黄色い落ち葉の上で交尾を始めたベッコウバエ♀♂の背後にハクサンベッコウバエ♂が飛来しました。
私には外見でハクサンベッコウバエの性別を見分けられませんが、その後やった行動から♂と思われます。
翅を半開きにして交尾しているベッコウバエ♂の背後からハクサンベッコウバエ♂が忍び寄り、いきなり跳びつきました!
ハクサンベッコウバエ♂が別種の♂に対して誤認求愛してしまったのでしょうか?
同じベッコウバエ科ですが、別種で体格も異なります。
ハクサンベッコウバエ♂の眼には、巨大な同種♀が近くに居るように見えて、その魅力に抗えずに求愛してしまうのかもしれません(超正常刺激)。
しかしハクサンベッコウバエ♂は相手に触れた瞬間に間違いに気づいたらしく、すぐに離れました。
背後から不意打ちを食らったベッコウバエ♂は、直ちに左右の前脚を大きく開いて持ち上げ、交尾相手の♀を奪われないように撃退・牽制の姿勢になりました。(配偶者ガード)
衝撃に驚いたベッコウバエ♀は、同種♂を背負ったままイタヤカエデの落ち葉から前進して溜め糞の上に移動すると、口吻を伸ばして吸汁し始めました。
驚いたことに、逃げたベッコウバエ♂に対してハクサンベッコウバエ♂が再び背後から飛びかかりました。
ベッコウバエ♂は翅を斜め上に持ち上げ、前脚を高々と上げて、撃退ポーズを取ります。
(翅を震わせてリリースコール♪を発していたら面白いのですが、それは無さそうです。)
ベッコウバエ♂の翅先に乗ったハクサンベッコウバエ♂は、自らの誤認に気づいて離れました。
翅の黒い斑点模様がベッコウバエに特有のトレードマークです。
それを見れば明らかに別種だ(ハクサンベッコウバエではない)と気づくはずなのに、ハクサンベッコウバエ♂は懲りずに同じ相手に誤認求愛を繰り返しています。
学習能力が全くありません。
薄暗い林床では視覚による認識がおぼつかなくなり、誤認が増えるのかな?
もしも配偶者ガードするベッコウバエ♂が居なかった場合、体格の小さなハクサンベッコウバエ♂が、体格の大きな異種のベッコウバエ♀に誤認したまま交尾を挑むことがあり得るのでしょうか?
だとすれば、異種間の繁殖干渉ということになります。
秋の溜め糞場で最も興味深く、興奮した事件でした。
訳が分からないので、頭をひねって別の仮説をひねり出しました。
ハクサンベッコウバエ♂は溜め糞の横で交尾相手の同種♀が飛来するのを待ち伏せしているはずです。
今回見られたハクサンベッコウバエ♂の行動は、集団お見合い場となっている溜め糞からライバルを追い払う占有行動なのでしょうか?
体格差をものともせずにベッコウバエに何度も飛びかかるハクサンベッコウバエは相当な闘士(ファイター)です。
繰り返しアタックされたベッコウバエは確かにタジタジで少し離れて行きました。
それにしても、別種であるベッコウバエをライバルとみなす意味が分かりません。
ハクサンベッコウバエ♂の同種♀への求愛が成就して交尾に至る過程を未だ観察できていないので、それが今後の課題です。
関連記事(12年前の撮影)▶ 獣糞の上で交尾するハクサンベッコウバエの♂♀ペア
英語版wikipediaには同属近縁種(Dryomyza anilis)に関する解説ページが立項してあり、交尾行動についても詳しく書かれていました。
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