ページ

2023/03/01

モンスズメバチのワーカー♀が巣穴を掘る間に外出を繰り返す創設女王の謎

 



2022年6月中旬・午後13:45〜14:00頃・晴れ 

芝生に覆われた河川敷でブタナの根際に掘られたモンスズメバチVespa crabro)の巣穴を観察していると、謎の黒い甲虫(種名不詳)が巣口の周辺を徘徊していました。 
もしや鬼の居ぬ間に巣内に侵入して寄生または居候するのか?と期待して見守ります。
関連記事(8年前の撮影)▶ 巣に侵入するナミクシヒゲハネカクシ?を殺すモンスズメバチ♀門衛
しかしモンスズメバチ♀が外出から戻ってくると、謎の甲虫は巣穴には入らず慌てて逃げて行きました。 
帰巣した蜂が怪しい侵入者を追い払ったり排除したりするまでもありませんでした。 
謎の甲虫をその場で狩って獲物とすることもありませんでした。 
思わせぶりで怪しげな行動でしたが、ただの無害な(モンスズメバチの暮らしとは無関係な)甲虫がたまたま巣口の横を通りかかっただけかもしれません。 



さて、このとき空荷で帰巣した♀の胸背の小楯板が(花粉で?)白く汚れていることに注目してください。 
人為的にマーキング(標識)しなくても個体識別できそうです。 

その後も謎の黒い甲虫が2匹、巣口付近の地上を徘徊しています。 
(この甲虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えてください。) 
巣口の直下のトンネル内で1匹のモンスズメバチ♀が門衛として警戒しているせいか、謎の甲虫が巣内に侵入することはありませんでした。 

しばらくすると、大型の♀が巣口から地上に這い出て来ました。 
胸背に付着した白い花粉(?)の汚れから、先ほど帰巣した同一個体と分かりました。 
続けて別個体のワーカー♀が掘った土塊を搬出するために巣穴から外に出てきました。 
地上で2匹のモンスズメバチ♀が並ぶと明らかな体格差があり、創設女王と小型のワーカー♀と判明しました。 

地上に出てきた巨大な創設女王は、巣口の周辺を少しうろついただけで巣穴に戻りました。 
巣口を守り、出入りするワーカー♀を誰何する門衛は女王蜂の役目なのでしょうか? (ここまでは想定内)
営巣地の地表をうろつく怪しい謎の甲虫の足音が気になって、女王蜂が直々に様子を見に地上に出てきたのかな? 
あるいは、横で撮影している私の足音に警戒しているのでしょうか? 

15分後にも再び創設女王が地上に現れました。 
胸背(小楯板)が白く汚れている大型の♀個体です。 
今回も飛び去らずに巣口の周囲で安全確認(?)しただけで、後退して巣内に戻りました。 
飛び立つかどうか巣口で逡巡しているようにも見えます。 

すぐにまた巣穴から女王蜂が這い出てくると、遂に草葉の上から飛び立ちました。(@2:30〜) 
重低音の羽音♪がかすかに聞こえます。 
女王陛下の飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:37〜) 
出巣直後に定位飛行(ホバリングしながら扇状に飛んで営巣地周囲の景色を記憶する)をしなかったということは、何度も外出していて巣穴の正確な位置を学習済みなのでしょう。 

同じ日の午前中に撮影した映像を見直しても、創設女王は写っていませんでした。
ワーカー♀と異なり、女王蜂が巣内で掘った土砂を自ら外に捨てに行くことは一度もありませんでした。

スズメバチの創設女王は単独営巣期を無事に乗り越えてワーカー♀が羽化すると、自ら危険を冒す必要はなくなります。 
危険な外役や雑用をワーカー♀に任せて創設女王は巣内で産卵に専念するのだとばかり私は思い込んでいました。 
まさか営巣中期(コロニー拡張期)になっても外出するお転婆な創設女王がいるとは知らず、とても驚きました。
映像の冒頭を振り返ると、創設女王の帰巣シーンが撮れていたことになります。 
女王蜂はどうして外出を繰り返すのでしょう?  
おそらく空腹に耐えかねた女王が自分で樹液や花蜜を吸って栄養補給するのでしょう。 
本来ならば帰巣したワーカー♀が口移しで女王に栄養交換するはずですけど、この日は巣穴の拡張工事を優先して誰も女王様に給餌しなかったようです。 
育房内の幼虫からも成虫に口移しで栄養交換するはずですが、多数の成虫を養うには幼虫の数が未だ足りないのかもしれません。
営巣地周辺の河川敷にはブタナの黄色い花が咲き乱れていますが、近場のブタナで訪花吸蜜するモンスズメバチ♀を見ることはありませんでした。 
もしかして、他のコロニーでも創設女王を個体標識してじっくり調べてみると定説とは異なり、営巣中期〜後期でも女王の外出行動は別に珍しくないのかもしれません。 
もしも外出中の創設女王の身に何かあって死んでしまうと、残されたコロニーは衰退するしかありません。
創設女王の権勢が衰えたり不在になったりすると、巣内のワーカー♀が未受精卵を産んで次世代の雄蜂♂を残すことが知られています。
それから、営巣後期に多数の新女王が巣から飛び去るのは珍しくありません。(結婚飛行)
これはあくまでも営巣中期の話だからこそ珍しいのです。

地中に営巣したモンスズメバチのコロニーを見るのは初めてなので、今後も定点観察に通うことにします。 
梅雨の大雨で巣穴に浸水しないのかな?という素朴な疑問が湧いてきます。 
雨が降り出したらアリのように巣口を塞ぐのでしょうか? 
モンスズメバチと言えば夜行性の活動も撮影したいところです。 
河川敷を定期的に草刈りする作業員がモンスズメバチの巣穴を見つけて駆除してしまうのは時間の問題なので、その前に頑張って撮影しないといけません。 



【追記】
創設女王が外出を繰り返す理由として、全く別の可能性も考えられます。
モンスズメバチはコロニーが繁栄して初期巣が手狭になると、新たな営巣地に引っ越しすることが知られています。
引っ越しに関連して女王蜂がそわそわしていたのかもしれません。(新しい二次巣を下見しに飛び去った?)
しかし多数のワーカー♀が巣穴の拡張作業に従事していたことから、少なくともここが引っ越し前の一次巣とは考えにくいです。
最後に外出した女王蜂が帰巣するまで見届けるべきでしたね。

0 件のコメント:

コメントを投稿