2021年9月上旬・午前11:50頃・くもり
里山の尾根道に自生するミズナラ灌木に樹液酒場が開店していました。
オオスズメバチ(Vespa mandarinia japonica)のワーカー♀2匹が集まり、樹皮を齧り取ったり樹液を舐めたりしています。
その背後でヒメスズメバチ♀(Vespa ducalis pulchra)がウロウロしていますが、オオスズメバチが怖くて樹液が滲むスポットに近づけません。
(オオスズメバチによる樹液の占有行動については別の動画を公開予定。)
オオスズメバチ♀は頑丈な大顎で齧って樹皮に傷を付け、樹液の分泌を促しているのです。
その作業中に、白く固まった樹液の小さな塊がオオスズメバチ♀の口に入り、吐き出しました。
しばらくすると、1匹が樹液酒場から飛び去りました。
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、白く固まった樹液の塊を大顎に咥えたまま持ち去っていました。
まさか巣に持ち帰って幼虫に給餌するのでしょうか?
スズメバチ類がそんな採餌行動をするのを見たのは初めてで、驚きました。
ゼリー状に白く固まった樹液は素人目には甘くて美味しそうに見えますけど、虫が食べているのを見たことがありません。
動画の前半でも口に入った白い塊をオオスズメバチ♀は不味そうに(?)捨てています。
私の個人的な予想では、樹液の白い塊を持ち去った個体は帰巣する前に飛びながら捨てたのではないかと予想しています。
白い塊が樹液(液体)よりも濃厚で栄養豊富なら、積極的に集めて団子状に丸め巣に持ち帰るスズメバチの姿をもっと頻繁に見かけているはずです。
白く固まった部分の樹液の成分を知りたいのですが、誰か分析した人はいないのでしょうか?
煮込み料理で出る灰汁 のような物なのかな?
【追記】
矢島稔『樹液をめぐる昆虫たち:わたしの昆虫記4』第4章「樹液とその成分」によると、
クヌギやコナラの樹液の成分についての研究は少なく、まだわからないことがいくつもあります。しかし、水に溶ける性質をもつ成分にはアルコール、酢酸、グリセリン、果糖、ブドウ糖、乳酸、2・3-ブタンジオールがあります。水に溶けないものは、白いペースト状に見え、この中にはタンパク質がふくまれていて、遊離アミノ酸もあることがわかっています。(p37より引用)
私が観察した樹液酒場はミズナラですが、大まかな成分は共通でしょう。
水に溶けない成分にはタンパク質や脂肪酸、それに遊離アミノ酸もふくまれていることがわかっています。これは、昆虫たちにとっては栄養豊かな貴重なえさです。昆虫たちは、タンパク質などの塊りをもとめて樹液にやってくるのでしょうか。しかし、タンパク質などは量が少ないと、白い塊りに見えません。むしろ、しみ出した水のように見える樹液に、昆虫たちが集まっている(p40より引用)
樹液の白い塊にタンパク質やアミノ酸が 多く含まれているのなら、スズメバチが巣に持ち帰って幼虫に給餌したとしても不思議ではありません。
しかしそれでも、獲物を狩って作る新鮮な肉団子に比べたら栄養価(タンパク質やアミノ酸の含有量)が低そうですから、肉の代用食としてたまにしか持ち帰らないのではないでしょうか。
獲物が少なくなる晩秋になると、樹液の塊を頻繁に持ち去るようになるのかな?
スズメバチの幼虫に飼育下で樹液の塊を給餌したら嫌がらずに食べてくれるでしょうか?
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