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2021/07/28

深夜の畑で大喧嘩する発情期のネコ2匹【暗視映像】

 

2021年5月下旬・午後23:06〜23:27頃・晴れ・満月(月齢14.3 スーパームーン) 

春はネコの発情期で、夜な夜な騒々しい喧嘩が勃発します。 
赤外線の暗視カメラを持って、激しい鳴き声(唸り声)のする方へ慎重に忍び寄ってみました。 
郊外の畑で2頭のイエネコFelis silvestris catus)が対峙しているようです。 
満月の夜で、しかも外灯が畑を照らしているのですが、肉眼では暗過ぎてほとんどネコの姿が見えません。 
近づく私を警戒して、猫は喧嘩(唸り合い)を中断してしまいました。 
私の方を凝視している猫の目が2組、赤外線に反射してギラギラと光っています。 
私も足を止めじっと息を潜めて撮影を続けます。 
 素人目には2匹の体格差はそれほど無いように見えます。 

喧嘩の理由は縄張り争いなのか、それとも繁殖期の♀を巡る争いなのか、どちらでしょう? 
実は近くに♀が潜んでいたのかもしれませんが、私は気づきませんでした。 

2匹は畑の地面に座っていました。 
実は左のキジトラ♂と私は顔馴染みです。 
右に少し離れた相手は黒白猫かな? 鼻先も黒いです。 (暗視映像では色が分かりません。) 
キジトラは、耳を回して周囲の物音を油断なく聞いています。 
正対するのではなく、相手に対して直交する向きで座っています。 この姿勢を見ても、初めからキジトラは逃げ腰のように見えました。 

この動画は、ネコが私に対する警戒をようやく解いて、唸り声♪を再開したところから始まります。 
町の遠くで消防車のサイレン♪と鐘の音が鳴り響いています。 
こういうときイヌはサイレンにつられて野次馬のように遠吠えを始めますが、ネコはあまり気にしない様子です。 
サイレンが鳴り止むまで休戦状態かと思いきや、黒白猫が立ち上がって相手に少しだけ歩み寄り、再び座りました。(@1:40) 

唸り声を上げる鳴き声合戦は右の黒白猫が圧倒的に優勢で、左のキジトラはほとんど鳴いていません。 
次第に鳴き声の声量が上がってきました。 

黒白猫がキジトラにかなり近づいて、一触即発の状態になりました。 
地面に伏せたままのキジトラを間近で見下ろし、黒白猫は大声で唸りながら尻尾を左右にくねらせています。 
キジトラも耳は伏せてないので、未だ戦意は失っていないようです。 
なんとか唸り返しています。 
顔を突き合わせてメンチを切りながら、互いに鼻先の匂いを嗅ぎ合ったように見えました。 
黒白猫に比べてキジトラは迷彩効果が高く、仕草がよく見えません。 
キジトラが地面に伏せたままなのは弱気の証なのかな?
強い相手に会う 体を小さくし、うずくまる。耳をふせ、 しっぽを足の間にまきこみ、 たたかう気もちがないことをあらわす。 飼い主が、「ダメッ」と強くしかり、 手をあげると、にたような姿勢をとる。 強気のネコは、耳をあまりねかさない。 にげる気がなく、いつでもたたかう気もちだ。 (田中豊美『ネコ:みぢかなともだち』p20-21より引用)
遂に唸り合いがクライマックスに達し、取っ組み合いの激しい格闘が始まりました。(@4:25) 
2匹は絡み合ったまま左の茂みの方へ転がって行きました。 
茂みの陰から喧嘩の唸り声♪が続いています。 
私もそっと横にずれると、2匹のネコは畑の端の溝に転がり落ちたまま格闘していました。 
左右の位置が入れ替わっていました。

 少し休んでから黒白猫がキジトラに飛びついて、格闘を再開。(@5:11) 
顔馴染みの私が近くで観戦しているため、キジトラは気が散って喧嘩に集中できないのかもしれません。 
組み伏せられたキジトラが尻尾をパタパタ振っています。 
キジトラが寝技で反撃して素早く起き上がると、座って正面から黒白猫に対峙しました。 
2匹とも呼吸がかなり荒くなっています。 
今度はキジトラが黒白に飛びかかりました。 
黒白猫が一瞬私を見て集中力が途切れた隙を逃しませんでした。 
喧嘩慣れした黒白猫は、キジトラの首に噛みつこうとしているようです。 
仰向けになったキジトラは素人目には絶体絶命の不利な体勢に見えますが、足の爪で相手の顔を引っ掻いています。  
両者立ち上がってブレイク。(@5:55) 
激しい息遣いがリングサイドまで聞こえています。 
再び黒白猫がキジトラに飛びかかり、取っ組み合いになりました。 
ところが逃げ出したのは意外にも黒白猫でした。 
キジトラが追いかけ、少し離れた所で未だ格闘が続いています。 
黒白猫は立って対峙したまま、尻尾を左右に振っています。 
黒白猫の腹が激しく波打っています。 
唸りながら黒白猫も腰を落としました。
イライラしているとき バッタバッタと、左右に大きく、せわしなくふる。 イヌはうれしいとき、はげしくしっぽをふるが、 ネコは機嫌が悪い時、しっぽをふる。(同書p19より引用)
再び取っ組み合いになりました。(@6:54) 
キジトラが珍しく尻尾を左右に振り、私をチラッと見上げてから振り返って左へ走って逃げ出しました。 
黒白猫がすかさず追いかけます。 

この後の喧嘩は灌木や茂みの陰で行なわれ、残念ながらよく見えませんでした。 
取り敢えず唸り声がする方にカメラを向けて暗闇で動画を撮り続けます。 
ようやく猫の姿をカメラに捉えたものの、キジトラは更に左へ逃走。 
黒白が追いかけて行って、私は完全に見失いました。 
どうやらこの日の喧嘩が終わったようです。 

この時期は毎晩のように喧嘩していたのですが、この日を最後に静かになりました。 
縄張り争いの決着がついたのか、それとも春の発情期が終わったのでしょう。 

ネコは喧嘩が盛り上がると夢中になって、ヒトが近くに居てもあまり気にしなくなるようです。 
補助照明として普通の懐中電灯(白色光)を点灯したら猫は眩しがって闘争行動に影響する(逃げてしまう)気がします。 
今回は赤外線での暗視撮影にこだわりました。 
LED赤色灯なら大丈夫かもしれません。 

迫力の熱戦を観察できて、私も興奮しました。
今回の大喧嘩を振り返ると、キジトラは相手(黒白猫)の剣幕に終始タジタジで、ほとんど鳴いていませんでした。 
現場はキジトラ♂の縄張り(の近く)ですから、普通なら先住者効果でキジトラ♂が勝つはずです。 
しかし若い♂は体格も未だ少し劣り、経験不足で喧嘩が弱いのでしょう。 
去勢されていることも不利に働きそうです。 
(黒白猫も♂だと思うのですが、去勢されているかどうか不明です。) 
顔馴染みの私が間近で(砂かぶりで)観戦していることでキジトラは喧嘩に集中できなかった可能性も考えられます。 

帰ってから田中豊美『ネコ:みぢかなともだち』という本を読み返すと精密画が素晴らしく、猫の行動やボディランゲージについて非常に勉強になりました。
ネコの社会行動(1)くらしのなかのルール イヌの場合、おなかを見せることは、相手にしたがう気もちをあらわすが、ネコの場合は反抗のポーズ。 ネコはあまえるときには、手足をちぢめ、おなかを見せるが、反抗のときは、手足をのばし、つめをだす。 
ネコの社会行動(2)見知らぬネコとの出会い・ケンカ はじめて出会った♂どうしは、たいていケンカになる。なわばりあらそいのほか、繁殖期には、♀をめぐってのあらそいが多い。 高い場所にいるほうが、強気の態度をとる ♂どうしの出会い 相手をにらみ、毛をさか立てる。体を横にむけ、背をまるめ、うなり声をあげて、威かくしあう。 顔をつきあわせ、うなりあう、力がおなじくらいの♂どうし 首をねらってとびかかる。一方はあおむけになり、後ろ足ではげしくける。ころげまわり、ひっかきあい、とつぜんはなれ、またとびかかる。相手があきらめるまで、くりかえす。 にらみあい はげしくなきあう。ときどき静かにしているが、思いだしたように、またなきあう。 はげしくしっぽをふる よそからきたほうが、相手の目がそれたとき、ゆっくりとはなれていく。あとを追って、攻げきすることは少ない。もともと、そこにくらしているほうが、勝つことが多い。


※ 動画編集時に色調補正を施しています。
暗視カメラの補助照明として赤外線投光器を普段なら2台使うのですが、今回はあいにく充電切れで1台しか使えませんでした。 
そのため、被写体のネコまで赤外線が充分に届かず、暗闇で光る猫の目ぐらいしか写りませんでした。 
しかし、そこで諦めてはいけません。 失敗作と思っても、実は撮れている(ことが多い)のです。 
動画編集ソフトで色調補正することで暗視映像が見事に蘇り、暗がりの行動が見えるようになります。 
具体的な方法は色々あると思いますが、私が試行錯誤して編み出した手順は次の通りです。 
動画編集ソフトKdenliveを使い、equaliz0rというフィルターで動画の色調を正規化しました。 
これで暗い映像がかなり明るく増感されるのですが、副作用で色味がかなり不自然になってしまいます。 
そこで更にgreyscaleというフィルターを掛けて、白黒の動画に加工しました。 
どうせ暗視映像ですから、モノクロで充分です。 
画質がざらついて粗くなるのは仕方がありません。 
補正後も動画がときどきピンぼけになるのは、照明となる赤外線が光量不足でハンディカムのオートフォーカスAFが被写体を見失ったからです。 

 

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