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2020/04/24

キタキチョウの側面日光浴



2019年10月下旬・午後13:40頃・晴れ

川沿いのコンクリート堤防でキタキチョウEurema mandarina)が翅を閉じたまま休息していました。
てっきりコンクリートを舐めてミネラル摂取しているのかと思って私は撮り始めたのですが、キタキチョウは口吻を伸ばしていませんでした。
影を見ると、翅裏の右面を太陽にほぼ直角に向けていることが分かります。

実は3年前にも同じ姿勢で日光浴するキタキチョウを撮っていたのに、すっかり忘れていました。
キタキチョウは他の多くの蝶のように翅を開いて日光浴をしないのです。


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翅を閉じたまま日光浴するキタキチョウ


変温動物である昆虫の体温調節法についてバーンド・ハインリッチがまとめた名著『熱血昆虫記』を読み返すと、蝶の日光浴姿勢が4つに分類されていました。(第5章p71〜76)
挿絵が分かりやすいので見比べると、今回のキタキチョウは側面日光浴するタイプでした。

モンキチョウ(Colias eurytheme)は側面日光浴を行なう。閉じられた翅は片側に傾けられ、広い側面を太陽にあてるのだ。 (p75より引用)
※ 厳密には日本産のモンキチョウ(Colias erate)とは別種なので、「モンキチョウの仲間」と訳すべきでしょう。


私は未だ実際に観察できていないのですけど、他には例えばコツバメやミヤマカラスシジミが側面日光浴するそうです。

早春に出るコツバメは)体温を上げるため羽を太陽光に直角になるよう傾けてとまる。 (中嶋正人『写蝶のたのしみ』口絵(4)より引用)



かなり古い本ですが、保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIIチョウ編』を紐解いて、成虫の日光浴についての解説を読むと、

寒冷地や高山の蝶、晩秋から早春にかけての低温時に出現する蝶、あるいは、夏の蝶でも朝と夕方は日光浴といわれる行動をとることになる。これは、気温の上昇だけを待っていたのでは活動時間が短くなるため、太陽の輻射熱を吸収して体温をあげるためにとる行動である。事実、昆虫の体温は輻射温度(盛夏時であれば気温より10℃以上高い)にほぼ近いことが確かめられている。(中略)体温調節の方法は、おもに日光に対する静止方向の変化と翅の開度変化による日光を受ける面積に調節である。(中略)ミヤマカラスシジミやコツバメは翅を閉じたまま体を傾けて日光を受けるおもしろい習性をもっている。(p94より引用)


キタキチョウは晩秋までしぶとく活動していますから、側面日光浴で体温を上げる必要があるのでしょう。

赤外線レーザーを使った非接触式の温度計を手に入れたので、機会があれば日光浴中の蝶の体温を測ってみるのも面白そうです。

本当はサーモグラフィカメラで動画に撮りたいのですけど、高嶺の花です。



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