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2018/07/01

自然乾燥で開くヒマラヤスギ球果の果鱗【9000倍速映像】



2017年11月中旬〜下旬

歩道にヒマラヤスギの大きな球果がゴロンと転がっていました。
見上げると校庭の端に常緑針葉樹のヒマラヤスギの大木が並んでいます。
ヒマラヤスギの球果は大きくて立派なのに枝先で上向きに実っているのが特徴です。
そのうちの一つが風で路上に落ちたのでしょう。
写真を撮ってから拾い上げると、ずっしりと重い松笠でした。(枝葉も含めた重量は102.5gもありました。)
表面に白っぽい松脂が滲んでいて、匂いも松脂臭いです。

採集したヒマラヤスギ球果+scale
ヒマラヤスギの球果は上向きに付く。
ヒマラヤスギ球果@枝葉・全景
ヒマラヤスギ樹冠
ヒマラヤスギ球果の表面に白い松脂が滲む

片桐啓子、平野隆久『拾って探そう:落ち葉とドングリ 松ぼっくり』を紐解いてみると、動画ブログのネタのヒントが幾つか得られました。

・(ヒマラヤスギの)松ぼっくりは2年型。翌年の晩秋に緑褐色に熟すと、果鱗をばらばらと落とす。種鱗+苞鱗=果鱗
・12月の若い松ぼっくり。雌しべが果鱗になり、生長しはじめている。苞鱗は発達しない。
・翌年の初夏。大きくなっているが、まだ緑色。
・秋には緑褐色になる。熟すにつれて果鱗が開いていく。
・松ぼっくりは長さ6〜13cm。完全に熟すと果鱗がタネごと果軸から落ちてしまうので、松ぼっくりは拾えない。
・果鱗がはがれ落ちるとき、お腹に、2個ずつ抱いていたタネがくるくる回りながら風で運ばれていく。
・てっぺんの果鱗はまとまって落下する。(以上、p142-143より引用)


拾ったヒマラヤスギ球果を室内で陰干しにして(放置)、果鱗が徐々に開いていく様子を微速度撮影してみることにしました。
タイムラプス専用カメラBrinno TLC200を用いて1分間隔のインターバル撮影を行いました。
得られた連続写真を素材とした9000倍速の早回し映像をご覧ください。


自然乾燥が進むと、枝に付いた根元側から上へと順に松毬が開いていきます。
ときどき果鱗が開く際にピシッ♪と鋭い音がするのですが、残念ながら微速度撮影では録音されません。
果鱗が開いていくと球果全体の重心のバランスが崩れたようで、いつの間にか台紙の上で松毬が転がっていました。
そこで、これ以上転がらないように、球果の枝を台紙にビニールテープで貼り付けて固定しました。
(不細工なビニールテープを隠そうとしたのですが、あまり上手く行きませんでした。)
18日間で変化がなくなったので、インターバル撮影を打ち切りました。

乾燥重量を量るべきでしたが、忘れてしまいました。
花が咲くように上部まで果鱗が開いたものの、シダーローズと呼ばれるてっぺんの果鱗は未だ脱落しません。
乾燥した室内とは異なり自然界では冬も雨や雪が降ったり晴れたりしますから、ヒマラヤスギ球果の果鱗は枝上で開閉を繰り返しながら熟していくのでしょう。

つづく→ヒマラヤスギの完熟した球果から剥落する果鱗




【追記】
清水清『科学のアルバム:植物は動いている』によると、
 ひらいたマツカサ(果実)を水につけると、マツカサはとじてしまいます。反対に火であぶってかわかすと、またひらきます。これは、マツカサをつくっているりん片の内側と外側で、かわいたときのちぢみ方、湿ったときのふくらみ方に差があるためです。かわいたときは内側よりも外側が多くちぢむため、外側にそり返ります。湿ったときは内側よりも外側が多くふくらむため、もとにもどるのです。 (p48より引用)


開いたマツカサを水に漬けてみる実験は、私もいつか試してみるつもりです。

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