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2018/05/26

出巣をためらうヒメスズメバチ♀の謎



柳の根際に営巣したヒメスズメバチの記録#3

前回の記事#2
2017年9月中旬

前回の動画の続きです。
柳の根際の地中に営巣したヒメスズメバチVespa ducalis)の巣穴がどうも壊されている(崩落した?)ようでした。
巣穴の手前にある地面を前庭と呼ぶことにします。
この前庭での休息と低空での定位飛行をひたすら繰り返しているおかしな♀個体がいます。
定位飛行で巣の位置を記憶したらさっさと外役に出かけるはずなのに、なぜか躊躇しています。

巣に出入りしている別個体が飛来すると、それに釣られるように前庭から飛び立ちます。
空中で擦れ違ったり、もつれ合うように飛んだり(ニアミス)するのですが、意図がさっぱり分かりません。
巣を守る門衛にしては、巣穴の方ばかりを気にしています。
門衛なら、別個体が飛来したときにもっと激しく迎撃に向かっても良さそうなものです。
前庭で休んでいる♀の目の前をコモリグモがチョロチョロと徘徊しても、蜂は攻撃したり追いはらったりしませんでした。
風が吹いて周囲の草が揺れると、その影に反応して蜂が身動きするのは警戒心の現れでしょうか。

続けざまに計5匹の蜂の出入りが記録映像に残されていました。
個体識別していないので、重複しているかもしれません。

もしかして、これは雄蜂♂なのかと疑い始めました。
オオスズメバチのように交尾相手の新女王が出巣するのを待ち構えている♂だとしたら、謎の振る舞いも説明できそうです。

V. mandariniaは♂が離巣する新女王を巣口周辺で待ちかまえ、その場で交尾をおこなうが、他のVespa, Vespula, Dolichovespulaのいずれの種も巣を離れた場所で♂が新女王を待ち受けるようである。 (松浦誠、山根正気『スズメバチ類の比較行動学』p23より引用)


ネット検索で見つけたのですが、『都市のスズメバチ』サイト内に「高層ビルの上部を集団飛行するヒメスズメバチの交尾行動」と題した詳細なレポートが掲載されていました。
名古屋市という都市環境では、高層ビル最上階の周囲をヒメスズメバチの雄蜂♂が群飛して、そこを目掛けて飛んでくる新女王と交尾するのだそうです。

時期的にヒメスズメバチの雄蜂や新女王が羽化していても不思議ではありません。
森林総合研究所の森林生物情報によると、

(ヒメスズメバチは)9月には営巣を終える。すなわち他のスズメバチより営巣開始が遅く,巣の解散は早い。これはアシナガバチの営巣期間に合わせるためと言われる。
しかし、♂はもっと触角が長いはずです。(自信が無くなってきた…)


前庭で休憩中の個体の触角。12節なら♀、13節なら♂なのですが、どうでしょう?

性別をしっかり確かめるために採集したかったのですが、この日は捕虫網などを持参していなかったので諦めました。
♀だとしても採集できていれば、体長も測れてカースト(ワーカー♀/新女王)が判明したはずです。


(ヒメスズメバチ)女王の体長24~37mm。働きバチは平均的には女王より小さいが,しばしば中間的な大きさのものが見られ,外形だけの区別は困難なことが多い。 (森林総合研究所の森林生物情報より引用)


一般的なスズメバチは、サイズが女王蜂>オス蜂>働き蜂の順だが、ヒメスズメバチには特に差は見られない。(wikipediaより引用)
スズメバチ類の新女王は一般に定位飛行を行わないらしいので、この個体はやはりワーカー♀なのでしょうか?
十分に成熟した♂と新女王は、相前後してつぎつぎと巣を離れていく。いったん、巣を離れるとふたたび戻ることがないため、ハタラキバチがはじめて巣を離れるときにおこなう定位飛行を巣口の周辺でおこなわずに、まっすぐに巣口を飛び離れ、思い思いの方向に飛び去る。 (松浦誠、山根正気『スズメバチ類の比較行動学』p22-23より引用)


やがて、前庭で休んでいる個体が更に奇妙な行動を始めました。

つづく→#4:ヒメスズメバチ♀の奇妙な扇風行動【HD動画&ハイスピード動画】



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