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2017/09/12

ジギタリスの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀



2017年6月中旬

道端の畑の隅に咲いたジギタリス(=キツネノテブクロ)の群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
この春はなぜか昆虫の活動が激減していて心配しましたが、ようやくミツバチの個体数がフィールドで増えてきた(回復してきた)印象です。

ジギタリスの筒状の花の入り口は太いのでミツバチは容易に潜り込めるはずなのに、花筒の根元を外から食い破って(?)蜜腺を舐めていました。
このような採餌行動は盗蜜と呼ばれ、花の授粉に関与しません。
ミツバチの体に雄しべの花粉が全く触れないので、後脚の花粉籠が空荷なのは当然です。

盗蜜行動は学習を要するのだとすれば、外役に出たばかりの若い未熟なワーカーは正当訪花する気がします。
ところが私が見る限り、どの個体も決して正当訪花せずに盗蜜ばかりしています。(複数個体を撮影。)
萎れかけの花に対しても盗蜜していました。

ミツバチの盗蜜行動は以前も観察していたので、それほど珍しくはありません。

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花筒が狭くて入りにくい花なら盗蜜しても仕方ないのですけど、今回は花筒が太いジギタリスでわざわざ盗蜜していたので意外に思ったのです。

ジギタリスの花壇で初めに穿孔したのはおそらく盗蜜の常習犯として悪名高いクロマルハナバチで、ミツバチはその穴を利用する二次盗蜜者だろうと予想しました。
ところが、この花壇でしばらく観察していると、とても意外な展開になりました。

つづく→あべこべの世界(ジギタリスに正当訪花して採餌するクロマルハナバチ♀




【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
ミツバチは、マルハナバチのどの種よりも短舌であるが、自分の舌の長さに応じて訪花植物を選定するので、盗蜜はほとんどみられない。 (p150より引用)



【追記2】
岩田久二雄『自然観察者の手記3』で「盗蜜」と題した章を読んでみると、1948年に庭のジギタリスを訪花する蜂について記録を残しています。
クマバチ以外の10種の蜂は、正常な様式で筒状花の中に頭からもぐりこんで吸蜜するのであったが、花筒の基部上面にクマバチのあけた小孔のある花にくると、ミツバチとクロマルハナバチと、コハナバチの一種だけは、花筒の中に入らずにその背面にまたがって、クマバチの舌の傷跡から舌をさしこんで、盗蜜をするのであった。クマバチの頻訪で傷跡のある花筒が多くなるにつれて、これら3種の盗蜜度も次第に大きくなった。それはどうやら傷口からの花蜜の匂いが、花の筒口からの匂いよりも、手早く彼らを惹きつけるように見えた。(p158より引用)
それに対して、「(ハキリバチやヒゲナガハナバチ類など)単独性の花蜂は盗蜜は行わないのではなかろうか」という仮説を立てています。
筆者は狩蜂の専門家なのですが、そのためか「花蜂の盗蜜行動には資料が少ない」とぼやいているのが印象的でした。(p157より)



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