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2016/06/13

投げ落として割ったクルミの実を仲間に半分譲るハシボソガラス(野鳥)



2016年5月上旬

水田の裏手の駐車場でハシボソガラスCorvus corone)がクルミの硬い実を割ろうと投げ落としていました。
クルミの実を咥えて飛び上がり、電線よりも少し高い位置から放して落とします。
カラスも追いかけて着地すると、舗装された駐車場に落ちたクルミが割れたかどうか調べています。
再びクルミを咥えて電線に飛び乗りました。
電線で一休みすると飛び上がり、再びクルミを投げ落とします。
もう一度クルミを咥えて飛び上がり、電線よりも少し高い位置の空中から放して落としました。
クルミが落ちた衝撃音がカツーン♪と駐車場に響き渡ります。
車体にもぶつかったようです。
カラスは根気強くクルミの投げ落としを繰り返しています。

落としたクルミが毎回ほぼ真下に落ちて、どこかへ転がって紛失しないことに感心します。
駐車場など開けた場所の真ん中に落とすなど、何かコツがありそうです。
この駐車場はもしかすると完全な平面ではなく、水はけを良くするために画面の左右に向かって僅かに高くなっていて(傾きがあり)、中央部が少し低いのかもしれません。
なぜなら中央部に、コンクリート蓋の付いた排水溝が見えるからです。
(実験でビー玉を置いてみれば傾きの有無はすぐに分かりますね。)
だとすれば、この駐車場に投げ落とされた物は必ず低い中央部に向かって転がり、勢い良く遠くに転がって紛失するリスクは低いでしょう。
試行錯誤の結果そこまでカラスが洞察してこの駐車場でクルミ割りをやってるとしたら、恐るべき知能ですね。

必死で頑張るハシボソガラスaがクルミを咥えて電線に飛び乗ったとき、同じ電線の少し右に離れた位置に別個体のハシボソガラスbが止まってクルミ割りをじっと見守っていることに私は気づきました。

何度も投げ落とした苦労が実り、ようやくクルミの実が割れたようです。
二つに割れた胡桃の殻が駐車場の左右に飛び散りました。
すかさず、もう一羽bが電線から駐車場に舞い降りました。
クルミの実が割れたときは、衝撃音の変化で分かるのでしょう。
カラスbがaに駆け寄ると、aは横取りされないようにクルミを咥えて歩き去りました。※
bから少し離れた位置でカラスaは割れたクルミの実を食べ始めました。
足でクルミの実を押さえながら啄んでいます。
それを見たbは翼を半開きにしながら近寄り、餌をねだります。(餌乞い)
このとき残念ながらbの嘴の中の色が見えず、若鳥か成鳥か見分けられませんでした。
カラスの幼鳥が餌をねだる際に特有の鳴き声は聞こえませんでした。

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苦労して割ったクルミをこのままカラスaが独り占めするかと思いきや、aは割れたクルミの半分だけを持って右へ歩き去りました。
食べ残しの半分をカラスbが喜んで啄んでいたので、実が少し残っていたようです。
分け前を食べ終えたbは、殻をその場に残してaの元へ駆け寄りました。
カラスが2羽とも車の陰に入ってしまい、その後の顛末は不明です。

※ 映像を何度も見直すと、実はカラスbは決定的なミスを犯していました。
電線から駐車場に舞い降りたときに、割れたクルミの片方をaよりも先に取得するチャンスがあったのに、もう片方を咥えたカラスaの元に駆け寄ってしまったのです。

カラスが苦心して割ったクルミの実を仲間とシェアする利他行動を観察したのは初めてで、とても興奮しました。
図々しいカラスbがちゃっかり分け前を催促したときに、カラスaは拒否したり割れたクルミの実を持って飛んで逃げることもできたでしょう。
カラスaは単にお人好しの(寛大な)個体だったのですかね?
以前見た個体は、クルミの実を横取りされまいと必死でした。

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労働の成果を盗まれたくない(労働寄生されたくない)のであれば、わざわざクルミ割り行動を見せびらかす必要はなく、賢いカラスならどこかで独りこっそりやるはずです。
おそらくこの2羽は血縁関係があり、私の想像では親子なのでしょう。
コツと根気が必要なクルミの投げ落とし行動を若鳥の見ている前で実演し、教育していたのではないでしょうか?
もうひとつの可能性は、つがいの♂が♀に食物を分け与えた求愛給餌かもしれません。
ハシボソガラスではヘルパー‡が幼鳥に給餌する例があるらしいので、血縁関係が薄くてもクルミの実を割る匠の技を伝授してもらおうと(技を盗もうと)年長者に弟子入りしていても不思議ではないのかもしれません。

‡ ヘルパー (動物) - 動物行動学で、仔が成長後も親の元に残り、親の子育てを助けること、あるいはそれを行う仔のこと。(wikipediaより)


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