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2016/01/08

巣材集めの合間に吸水するヒメクモバチ♀



2015年9月下旬・午後13:56〜14:11

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#4


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の採土場が分かったところで、次は水飲み場を突き止めようと思いました。

母蜂は2〜3回連続して境界標の根本から採土すると、必ずどこかに水を飲みに遠出することが分かりました。
泥巣から飛んで行く蜂を追いかけると、参道を約10m下った地点の草むらに着陸しました。
ここは里山から沢の水を排水する暗渠が参道を横切って埋設されています。
排水溝は枯れていて水は流れていないものの、苔などが生えていて湿っています。
蜂はドクダミの葉に付いた朝露を舐めていました。

飲水後に帰巣する蜂を追いかけても、いつも見失ってしまいます。
蜂よりも私の方が先に営巣地に着いてしまうのです。
水場から帰巣した蜂は必ず泥玉を咥えていることから、別の採土場に寄り道してきているに違いありません。
2回続けてほぼ同じ場所から吸水するシーンを観察できました。
水場の近くの参道沿いに境界標が2本並んでいて、それぞれに別のヒメクモバチ♀a,bが営巣しています。

ほぼ休みなく泥巣の閉鎖を続けてきた♀bが、やがて作業を止めてしまいました。
外出しても空荷で帰巣し、泥巣上で点検や身繕いを繰り返すだけになりました。
疲れて休んでいるのでしょうか?
働く時間帯が決まっているのかもしれません。
巣材の土は無尽蔵にありますけど、晴れて気温が上がると水場の朝露が蒸発してしまい、巣作りが出来無くなるのかもしれません。
(少し飛んでいけば川も流れていますし、水なら他の場所へ探しに行けば良さそうなものですが…。)
もし私が営巣地の近くに水場を作ってやったら蜂は利用してくれるでしょうか?
水を入れた皿を置いたり、近くの木の葉に霧吹きしたりしても、一度身についたルーチンワークの行動パターンは変わりそうもない気がします。
それでも、ヒメクモバチ♀の行動にどれぐらい融通性があるのか実験してみなければ分かりません。

育房の閉鎖が完了したのであれば、続けて隣に新しい育房を増設するはずです。
しかし蜂に動きが無いため、諦めてこの日の観察を打ち切りました。

つづく→#5:境界標の泥巣上で身繕いするヒメクモバチ♀a




【追記】
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』第13章 清水晃「クモを狩るハチたち」を読んで驚いたのですが、中米コスタリカ産のヒメクモバチ属の一種Auplopus semialatusは原始的社会性の暮らしを送っているそうです。
そのような社会性の進化を考える上で、
巣づくりに先立って水を吸い、それを素のうに入れて巣場所まで運ぶ行動がきわめて重要になる。この行動こそが、自分が羽化した泥壺状の巣(母巣)の再利用を可能にすることは疑いの余地がない。つまり、母巣は水を用いてリフォームすることのできる親世代の貴重な遺産となるのである。羽化した♀たちは、この遺産を引き継ごうとして、羽化後も母巣にとどまろうとするだろう。〈散らばらなかった社会〉の出現である。クモバチ科では、水を利用した泥球づくりはヒメクモバチ属およびその近縁の属(ヒメクモバチ亜族)にのみ見られる。 (p286〜287より引用)

私も日本産のヒメクモバチで巣材の再利用を観察したことがあります。
当時は巣材を盗む労働寄生なのかと思っていました。

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