2015年7月中旬・午後19:30
キボシアシナガバチ巣の定点観察@柳#12
キボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)創設女王(と思われる個体)以外に2匹の♂(早期羽化雄)がいつの間にか巣盤下面に来ていました。
私の予想通り、暗くなると女王は優位行動や誇示行動をしなくなりました。
気の荒い女王に排斥されないよう、暗くなるのを待っていたのでしょうか?
ムード作りを大切にするのかもしれません。
そして♂が女王にマウントしました。
しかし交尾器は結合していないので、交尾は未遂に終わった(偽交尾)と思われます。
アシナガバチの交尾はマウントしてから腹部を互いに絡ませるはずです。
その間、女王は静止していましたが、実は非協力的で息子との交尾を拒否しているのかもしれません。
例えば、巣内では交尾せず、必ず外出中に出会った相手と交尾することで、なるべく近親相姦の忌避を図っているのかもしれません。(※追記参照)
その後♀♂ペアは別れ、女王は巣盤上部へ移動しました。
一方、別個体の♂がすぐ横で育房内の幼虫と栄養交換していました。
ライバル♂に対する交尾干渉はありませんでした。(もし気づいていたら邪魔したかな?)
※ ♀の個体識別をしていないので、偽交尾したのがワーカーである可能性を否定できません。
それならそれで、また興味深い行動になります。
つづく→#13:夜の栄養交換【暗視映像】
※【追記】
小林朋道『先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!: 鳥取環境大学の森の人間動物行動学』という本でセグロアシナガバチの観察記録を楽しく読んでいると、擬交尾について詳しく解説してありました。
「擬交尾」では、交尾のように、♂が♀に乗りかかるようにして、腹部の先端を♀の腹部の先端にくっつけるのだが、実際には、精子の受け渡しは行われない。問題は、巣を離れる前の♂や新女王の関係である。当然のことながら、巣を離れる前の♂や新女王は、自分たちの巣で、互いに一緒に過ごすわけであるが、もしそのとき、交尾して、♂が新女王に精子を渡してしまったとしたら、それは近親交配になってしまう。(中略)
セグロアシナガバチにおいても、巣を離れる前の♂や新女王は、自分たちの巣で出会っても、交尾しないような仕組みができているはずである。もしできていなかったとしたら、セグロアシナガバチは、子どもが残せなくて、進化の過程で速やかに絶滅していたはずである。(中略)そういうわけで、同じ巣の♂と新女王は、交尾のような行動をしても、♂が新女王に遺伝子を渡さないようになっているのだろうと考えている。つまり、「擬交尾」なのである。(p79より引用)専門書よりも詳しい解説で、とても勉強になりました。
理屈は分かるのですけど、巣上での擬交尾では本当に受精しないのかどうか、実は誰も確認していないのですかね?
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