キボシアシナガバチ巣の定点観察@柳#7
2015年7月中旬柳(樹種不詳)の枝先に作られたキボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)の巣には創設女王とワーカー、および♂(早期羽化雄)が居ます。
個体識別のマーキングを施していないので、女王蜂をワーカー♀とを確実に区別できていないのですが、いつまで経っても警戒を解かずに(翅を半開き)巣盤の下で常にピリピリ(緊張)しているのがおそらく創設女王だと思います。
他の蜂は神経質で怒りっぽい女王を恐れて「触らぬ神に祟りなし」とばかりに巣盤の上部に避難し、のんびり休息したり身繕いしたりしています。
巣が風で少し揺れたり、他の♀が帰巣する度に女王は半開きの翅を震わせて威嚇しています。
アシナガバチの女王は娘たち(ワーカー♀)を力で押さえつけないとコロニーの秩序が乱れてワーカーが産卵を始めたりクーデター(反乱)を起こしたりしてしまうのです。
ワーカー同士でも力関係の順位制があり、通常は早く羽化した者から順に優位になります。
常に攻撃される劣位のワーカーほど卵巣が萎縮した状態になるのだそうです。
巣盤の下面に陣取っている女王がその場で羽ばたき始めました(@4:51〜)。
女王と思われる♀が巣盤下で歩き回りながら短い扇風行動を断続的に繰り返しています。
しかし、このときは雨上がりで気温は25℃→24℃と全く暑くありませんでした。
暑い昼下がりならともかく、なぜ夕方から扇風行動を始めるのか、不思議です。
雨で濡れた(湿った)巣や繭を乾かすためだとしたら、本腰を入れて長時間羽ばたき続ける必要があるでしょう。
他個体への一種の優位行動ではないか?と疑問に思い始めました。
アシナガバチ学のバイブルである『日本の昆虫3:フタモンアシナガバチ』を読み直すと、謎が解けました。
誇示行動の一種と判明。
・通常もっとも優位な個体(たとえば女王)が示すもので、翅を半開きにし、時にはそれを上下に断続的に打ちつつ、他の個体につっかかるように速いスピードで巣上を走りまわる行動である。これは巣上の全個体に示す行動であるから、特定の標的個体はない。(p84)
・これ(誇示)は単に巣上を走り回る、翅のビーティングを伴う駆け回り、腹部をよじるようにして単に打ちながら歩く、などがある。(p150)
ワーカーが2匹帰巣し、これで在巣の蜂は女王も含めて♀4♂2になりました。
いつの間にか♂も巣盤上部に追いやられました。
他に特筆すべき、この映像で見られる成虫間の交渉は次の3つ。
育房内の幼虫と栄養交換していた♂が女王に近づき触角で挨拶しましたが、女王は無反応。(@3:30-3:38)
空荷で帰巣したワーカーと女王が口づけを交わして栄養交換しました(挨拶?)@5:08
近くの柳の葉でアブラムシの甘露(または柳の花外蜜腺)を舐めてきた個体が女王にお裾分けしたのかもしれません。
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柳の葉を舐めるセグロアシナガバチ♀
巣盤の上部右に居た♀に♂が下から近づき、キスしました。(@7:09〜7:20)
口移しの栄養交換を成虫間でも頻繁に行うのでしょうか。
つづく→#8:キボシアシナガバチ:誇示行動と成虫間の栄養交換
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