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2015/09/25

セグロアシナガバチ♀の扇風行動、造巣、栄養交換、優位行動など



2015年7月下旬

セグロアシナガバチ巣の定点観察#3


なかなか見に来れず、約3週間ぶり(23日ぶり)の定点観察になってしまいました。
巣盤中央部には白い繭の入った育房が増えていました。
外縁部の育房には4匹の老熟幼虫が見えます。
繭キャップ表面が黒っぽく汚れているのが気になります。
アリ忌避剤としてタール状の分泌物が塗布されているのでしょうか?
これまでキアシナガバチを観察してきた経験から、寄生蛾の幼虫に侵された兆候ではないかと疑ってしまいます。

このコロニーでは♂(早期羽化雄)は見らず、今のところ羽化したのはワーカー♀のみです。
高所の軒下に営巣しているため全く手が届かず、下から望遠レンズで観察するしかありません。
巣の高さを求めると、地上4.5mと算出されました。

実は観察当初から違和感を覚えていたのですが、この巣の蜂はセグロアシナガバチPolistes jokahamae)ではなくキアシナガバチPolistes rothneyi)の斑紋変異なのかもしれません。
前伸腹節に黄紋が無いのはセグロアシナガバチの特徴ですけど、他の全体的な見た目がキアシナガバチなので悩みます。※※
もしキアシナガバチだとすれば、前伸腹節に黄紋が無いのは創設女王だけではなくワーカーにも共通した形質なので、家族の遺伝なのでしょう。

動画撮影を始めると、在巣の蜂は♀3匹でした。
各々が身繕いしたり、巣盤外縁部にある六角形の育房壁を伸長したりしています。
もう1匹は巣盤天井で休んでいます。

巣のある軒下には直射日光は当たらないものの、板壁は午後から夕方にかけて西日を浴び続けて、いかにも暑そうです。
在巣の♀が頻りに扇風行動を繰り返しました。
地上で測った気温は30〜31℃でした。
地上からの高さ4.5mにある軒下は更に熱が篭っているのかもしれません。

画面左で育房伸長の一仕事を終えたワーカーが身繕いすると、育房内の老熟幼虫と栄養交換したようです。
その後、断続的に羽ばたきながら巣盤を歩き回りました。
他の成虫♀に対する誇示行動なのかな?…と思い見ていると、その♀個体は育房点検してから一箇所に落ち着くと(画面右上)、本格的に扇風行動を始めました。(@2:37〜)
育房内の幼虫が「暑い!」と何か信号を発するのでしょうか?
ところが巣盤の中央に陣取る創設女王と思われる個体からつつかれてしまい(外役の催促?)、出巣しました。(@3:18)

巣材を集めて帰巣したワーカーが巣盤上を歩き回りながら扇風行動で巣を冷却しています。
画面右上の育房で巣材を追加して壁を高く伸ばし始めました。
今度も老熟幼虫が入った育房で、育房の高さが足りなくなったのでしょう。
造巣中のワーカーに対して創設女王がつっかかり、優位行動をしました。(@4:30)

2匹の♀が顔を突き合わせて一触即発の睨み合いになりました。
約5秒間の睨めっこ(@5:20〜5:25)したものの、喧嘩にはならず別れました。
画面左に残った個体は扇風行動を始め、画面右上に移動した♀は育房内の幼虫と栄養交換しました。
巣盤天井からもう1匹がひょっこり顔を出しました。
扇風していた個体が空腹になったのか、外出しました。(@7:07)
巣に散水して気化熱で効果的に冷却するため、水を飲みに出かけたのかもしれません。

※ YouTubeの動画編集時に自動色調補正を施してあります。

つづく→#4:夜セグロアシナガバチの巣の周囲を飛び回る謎の虫【暗視映像】



※※『日本の昆虫3:フタモンアシナガバチ』巻末p154-に掲載された「日本産アシナガバチ属の検索表」を参照すると、
キアシナガバチP. rothneyi:体は黒色で次の部分は黄色ないし赤褐色:頭楯、大腮、頭楯の上の蝶形紋、頬、頭頂、前胸背、中胸背の2縦線、小楯板、後小楯板、中胸側板背溝上方の小黄紋、前伸腹節の2縦線、腹部各節先端の太い黄帯、脚の大部分。

セグロアシナガバチ P. jadwigae jadwigae:体は黒色で赤褐色の斑紋を装う。斑紋は本土のキアシナガバチに似るが、前伸腹節の2黄縦線を欠く。中胸背板の2黄縦線(時に肩板の内側にも弱い黄縦線あり)も消失することが多い。

前伸腹節に黄紋なし
造巣(育房壁の伸長)
造巣(育房壁の伸長)

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