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2015/05/03

ニホンカワトンボの縄張り争い?求愛未遂?【ハイスピード動画】




2014年6月下旬

登山道入り口近くを流れる沢の横の薄暗い草むらで無色翅型のニホンカワトンボMnais costalis)が2匹争っていました。
東日本に分布するニホンカワトンボの♂には橙色翅と無色翅の二型があり(種内多形)、♀の翅は無色です。



冒頭、フキの葉で2匹のニホンカワトンボが休んでいます。
正面を向いた右側の個体Rは縁紋が白色なので♀のようです。(あるいは未熟な♂?) 
左側の個体Lは縁紋が褐色なので♂のようです。 互いに至近距離に止まっているのに、しばらく動きがありません。 
成熟♂同士なら縄張り争いで互いに闘争・排斥するはずなのに…と不思議に思いました。
縄張り争いの膠着状態なのかな? 
240-fpsのハイスピード動画に切り替えると、先に♀Rが飛び立ちました。 
それに反応して♂Lも離陸。 
低空でホバリング(停空飛翔)しつつ互いに向かい合い、軽い空中戦になりました。 
ところが激しい闘争や排斥行動にはならず、右手のフキの葉に双方が縦列で着陸しました。
♂が♀の背後にぴたりと付けました。 
♀に求愛したのに交尾には至らず、ふられたのですかね?
♀はどのように連結拒否の合図を♂に伝えたのでしょう?

wikipediaの解説によれば、ニホンカワトンボの
オスは水辺の植物や石に留まって縄張りを作り、近付いて来た他のオスを追い払う。メスが現れるとホバリングして求愛行動をする[2]。

後半は(@1:02〜)近くの葉に単独で止まっていた♂個体が飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。




【追記】
『トンボの繁殖システムと社会構造』の第一章「異なる繁殖戦略の共存と種内多形―カワトンボ―」を読んで今後の観察のためにお勉強。
ただし本書はカワトンボの分類が未だ混乱していた時期に執筆されているため、旧名のヒガシカワトンボが使われています。
以下、ポイントを抜き書き。

  • 透明♂は、橙色♂のように縄張りを占有することはなく、橙色♂の縄張りに侵入しては追い出される。また、一つの縄張りの周辺に長く止まることはなく、渓流に沿って少しずつ移動してはとどまる。(p4)
  • 橙色♂の方が透明♂よりも縄張りを占有するうえで優位にある。(p5)
  • 透明♂は橙色♂がいなければ、縄張りを占有する性質を持っている。(橙色♂の除去実験;p13)
  • ヒガシカワトンボの闘争行動は、水平追尾、上昇追尾、ラセン追尾、対峙飛翔にわけられる。(p13)
  • ヒガシカワトンボの橙色♂も♀を縄張りで発見すると、静止した♀の前で1、2秒間停止飛翔(求愛行動)してから、♀の胸部背面に乗りかかって連結になり、縄張り内で交尾する。(p18)
  • 透明♂は縄張りの周辺部に静止していて、時どきスニーキングによって♀の獲得を試みる。それが成功して♀と交尾する場合、透明♂が♀の前で停止飛翔せず、いきなり乗りかかる。(p18)
  • ヒガシカワトンボ♀が産卵基質としてしばしば利用する倒れた朽ち木などは、集中分布している。(p23)
  • 透明♂は橙色♂がいなければ、潜在的に縄張り占有の性質をもつが、実際には、橙色♂に縄張りを予め専有されるか、あるいは、奪い取られたりするために、自然状態では非縄張りになっている。透明♂は橙色♂の縄張りの周辺にスニーカーとしてとどまったり、より広い範囲を探索する傾向をもっている。(p24)
  • 透明♂は、通常、交尾後♀の産卵警護をしない。(p25)
  • 透明♂が個体群中で占める割合は、むしろ透明♂が多い。(p25)
  • 透明♂は求愛行動なしに交尾を試み、そのほとんどが成功する。(p25)
  • 透明♂の戦略は、橙色♂よりも劣位にあるため縄張りの維持ができず、スニーキング、または探索によって♀を獲得する。このようなスニーキング戦略は、透明の翅をもち、♀に外見が似ている透明型にはむしろ適している。(p27)

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