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2014/12/28

引越し後の移動巣を急ピッチで作り上げるキイロスズメバチ【微速度撮影】



2014年8月中旬

キイロスズメバチ移動巣の定点観察#2

キイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀が寄って集って屋根裏に第二次巣を作り上げる様子を2日間に渡り微速度撮影してみました。
50倍速の早回し映像をご覧下さい。
これだけ早回し速度が増すと、巣に出入りする蜂の動きは旋風のようにぼやけてしまうため、外被を作る個体の動きだけを追うことができます。
予め巣の設計図がある訳でもなく、建築現場の親方のように女王蜂が細かく司令を出している訳でもないのに、各々が必要と感じた仕事を黙々とこなすだけで結果的に協同作業になっている点が驚異的です。(創発性?)
ワーカーがそれぞれ別の場所から巣材を集めてくるため、結果的に外被は美しいマーブル模様のモザイクになります。
これだけ早い造巣ペースから逆算すると、1〜2日前に引っ越したばかりではないかと予想しました。
外被の増築作業に従事する蜂は、外被ポケットの縁で必ず後退しながら大顎に咥えた巣材のパルプを弧を描くように薄く伸ばしていきます。
付け足したばかりで乾いていない(湿った)外被は、蜂の建築作業に伴いたわんでいますが特に問題ないようです。

巣材が乾くのを待たずにどんどん作業を進めてしまいます。
同時に巣の数カ所で外被を下に伸ばしているため、急ピッチで作業が進みます。


増築中の外被ポケット内に潜り込んでサボっている個体が居るのがとても興味深く思いました。
そのまま外被ポケット内に封じ込められそうになり、慌てて脱出する様が微笑ましいですね。
『働かないアリに意義がある』という新書が近年ベストセラーになりましたが、働かないスズメバチには一体どんな意義があるのでしょう?

建設中の外被ポケットに生きながら封じ込められ、人柱のように儀式的な生贄になる…なんて馬鹿げた話はさすがにあり得ないですね。
寄生者が外被ポケットにこっそり潜り込まないよう目を光らせている役目なのかな?
作ったばかりの外被ポケットが乾く前に潰れてしまわないよう中から支えているのでしょうか?
(スズメバチの巣は軽い外被で空気の層を積み重ねることによって優れた断熱効果を発揮します。)

外から見えないだけで、内側から外被を何か加工している可能性はどうでしょう?
それとも特別な意義などは無く、湿った外被が乾くときに気化熱を奪うので、ひんやり涼しくて気持ちが良いのかもしれません。


一方、巣の中の様子は胃カメラのようなファイバースコープが無いと観察できません。
先人の研究によると、スズメバチは中から外被を齧り取って内部空間を拡張すると、その巣材を再利用して巣盤や育房を作り上げることが知られています。(スクラップ&ビルド工法)
それを裏付けるように、外被の中央で中から齧られて穴が開いた(@1:51)箇所を外側から別個体がすかさず補修する様子が映像に記録されていました。

翌朝、巣口のすぐ左の外被がまた中から食い破られ穴が開きました。(@2:58)
この穴もすぐに別個体が外から補修し、無事に埋められました。
この連携プレーも見事です。
もしこの移動巣の外被を人為的に壊しても、少しぐらいの破損なら直ちに修繕する能力がありそうです。
実験してみたいのですけど、防護服を買わないことには危なくて無理ですね。
袋状の外被が細長く下に伸びるにつれてその開口部が小さくなり、最後は巣口の近くで塞がれました。



翌朝は東屋の天井裏が明るくなってからすぐに微速度撮影を再開しました。
巣の急速な発展ぶりは秀吉の一夜城もびっくりです。

以下は2日目の写真




【おまけの映像】


微速度撮影の動画を見て心地良く感じる早回し速度の好みが皆さんそれぞれ違うと思います。
折角なので、30倍速映像↑もブログ限定で公開しておきます。



こちら↑はオリジナルの10倍速映像です。

つづく→シリーズ#3:総員臨戦態勢


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