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2014/12/05

スギ伐採木に産卵するオオホシオナガバチ♀



2014年8月中旬

里山の林道でスギの木が無造作に転がして置かれていました。
おそらく最近ここで伐採されたようです。※
その倒木にオオホシオナガバチ♀(Megarhyssa praecellens)が産卵しに来ていました。
一瞬キバチ科の仲間かと思いきや、キバチ類の幼虫に外部寄生※※するヒメバチ科の一種でした。
前翅の斑紋が目立つので、同属のエゾオナガバチではなくオオホシオナガバチと分かります。

※※ この「外部寄生」という解説は『ハチハンドブック』p26に書いてあるのですが、内部の間違いではないですかね? 英語版wikipediaのMegarhyssa属の項にはendoparasitoid(内部寄生捕食者)とありました。(自己解決したので追記参照。)産卵直後に樹皮を剥いて寄主を探し、実際にどうなのか調べてみたいものです。



初めは長い触角で材の表面を探っています。
やがて産卵場所を決めると、長い産卵管を垂直に突き立て始めました。
樹皮が激しくめくれ、ささくれだっている場所を選んだようです。
腹端をカールさせて産卵しています。
このとき、オオホシオナガバチの特徴である第2腹節の背板の凸状黄色斑が見えました。
産卵管の根元は2本に別れていることも分かりました。
産卵を終えて産卵管を抜くと、もう次の産卵場所を探索し始めました。
2回目の産卵は観察しやすい場所を選んでくれました。
産卵中の無防備な状態の時に背後から微小なアリ(種名不詳)が通りかかると(@6:55)、オオホシオナガバチ♀は嫌がって噛まれた左後脚をピクリと動かし足踏みしました。
産卵中はすぐには逃げ出せませんからね。
産卵管を抜いて徘徊・探索を再開したところで撮影を止めたのですけど、直後に蜂は材木から飛び立ちました。
採集を試みたのですが逃げられました。
実は2匹も見かけました。

本種の産卵行動について『狩蜂生態図鑑』p150にとても興味深い記述を見つけました。

後脚の一部に半円状のくぼみがあり、左右の後脚を合わせると、産卵管の大きさにピッタリとしたすき間となる。これを照準として、朽木の中にいる幼虫に産卵している。


「日本産ヒメバチ目録」サイトには本種の寄主としてニトベキバチ、ヒラアシキバチ?、ニホンキバチが挙げられていました。

また、古い文献で次の記述を見つけました。

オオホシオナガバチが産卵に際し産卵管をまげて腹部第7〜8節間の膨張膜が気球のように大きく丸くふくれている。
南川仁博. "オオホシオナガバチの産卵状況." 昆蟲 36.2 (1968): 163.(PDFへのリンク)より
今回の映像ではアングルがいまいちなのか、この点はよく分かりませんでした。

ところで私はキバチの生態に疎いのですけど、木が切り倒されてしまったら中に潜むキバチの幼虫は成長できずに死んでしまうのですかね?
それとも初めから倒木を選んで産卵するキバチもいるのでしょうか。
オオホシオナガバチに産卵されたら捕食寄生される運命なので、どちらにせよもう関係ないですけどね。

※ 最近、砂防堰堤を改修する工事のため沢の両岸の林を大量に伐採した結果、スギ倒木などが大量に転がっている状況でした。


※【追記】
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という名著の第9章 藏滿司夢「キノコとキバチと寄生バチ:枯れ木をめぐる奇妙な三者系」を読むと、オナガバチの仲間の産卵行動について詳しく知ることができました。
キバチ類を寄主として利用する寄生バチの(中略)1つはヒメバチ科オナガバチ亜科の寄生バチで、キバチの幼虫に外部寄生する殺傷寄生者として知られている。(中略)
腹部を高く持ち上げると同時に、長い産卵管鞘を木に突き立て、それをリードにして器用に産卵管を木の中へと挿入していく姿は圧巻である。挿入する産卵管の角度をときどき変えながら、木のなかに隠れるキバチ幼虫を探すのだ。この寄生バチのなかまは産卵管の先に感覚器と化学受容器を持っており、それによって産卵管が寄主に到達したことを認知すると寄主の体表に産卵する。 (p190より引用)
もう一つ勉強になったのは、寄主のキバチについてです。
キバチ亜科に属するキバチ類は全ての種類がマツ科やヒノキ科などの針葉樹を食樹とする。それに対して、ヒラアシキバチ亜科に属するキバチ類はブナ科やムクロジ科などの広葉樹を食樹としているのである。 (p185より引用)
今回私が観察した事例では、スギ倒木で産卵行動が行われたので、オオホシオナガバチの寄主はキバチ亜科に属する種類(ニトベキバチまたはニホンキバチ)に絞り込めそうです。(ヒラアシキバチ属は除外できる。)




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