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2013/10/22

ヤドリバエ(寄主ヨシカレハ)の蛹化【微速度撮影】



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「寄主ヨシカレハ(蛾)の繭から脱出するヤドリバエ幼虫

寄主ヨシカレハの繭から脱出した4匹の蛆虫を別の密閉容器に隔離しました。
円筒容器の直径は5cm。
自然環境下では土に潜って蛹化するはずですが、観察の都合上、土は入れていません。
インターバル撮影やジオラマモードによる動画撮影で、カメラのバッテリーが切れるまで長時間の変化を記録しました(微速度撮影)。

ハエ類のさなぎ形成の際は、終齢幼虫が脱皮せずに、幼虫の体が短縮してコメの様な形になり、そのまま幼虫の外皮が硬化するのが特徴である。硬化した外皮の内側で、真のさなぎがさらに一回り小さく収縮して形成される。こうした二重構造の蛹(さなぎ)を囲蛹(いよう)と呼ぶ。(wikipediaより)

しばらくの間、蛆虫は活発に容器内を徘徊しています。
垂直な壁にも途中まで登れます。
蛆虫の後端に見える1対の黒い点は呼吸のための気門ですかね?

やがて蛆虫の運動性が低下してくると容器の底で蛹化が始まります。
蠕動しても自由な歩行移動ができなくなり、のた打ち回っても不器用に後退するだけになります。
幼虫の時よりも体長は縮み、時間経過と共に褐色が濃くなりました。
寄主から脱出して蛹化するまで同じ日に起こりました。



8日後に撮った囲蛹の写真↓です。



成虫が羽化してくれないと、ヤドリバエの名前が分かりません。
夏の間に羽化するかと思いきや、このまま蛹で越冬する予感…。
もしかすると、土を入れてやらないと蛹が乾燥し過ぎて死んでしまうのでしょうか?(※)

つづく

ついでに、微速度撮影した同じ素材でスピードを落とした早回し映像↓もブログ限定で公開します。



【追記】
※ 蛹化から丸一年経ってもヤドリバエ成虫が羽化してくれません。
困り果てて「一寸のハエにも五分の大和魂・改」掲示板にて質問してみました。


Q: 野外で採集した蛾の幼虫を飼育すると、営繭後に寄生ハエの幼虫が脱出してくることがあります。
現在はヨシカレハ、オビガ、マイマイガを寄主とするヤドリバエ?の囲蛹が手元にあります。(プラスチック容器の底に数個ずつ転がっています)
私は寄生現象にも興味があるので、ウジ虫が出ても別に嫌悪感を抱くことも無く気持ちを切り替えているのに、待てど暮らせどハエが羽化してくれません。
ヨシカレハから脱出したのは去年の8月なので、いくら蛹越冬だとしても羽化が遅れてますよね。
成虫が羽化してくれないと名前も分からず困っています。
囲蛹の飼育には湿り気が必須なのですか?
囲蛹を裸で飼うと、乾季だと思って休眠状態に入ってしまうのでしょうか?
暗所に置かないといけないのか?など色々と悩みます。
やはり今からでも容器に土を入れてやる(囲蛹を土に埋めてやる)べきでしょうか?
まさか蛹のまま何年間も地中で過ごすのが普通なのですか?

恥ずかしながらこれまで私の虫の飼育の失敗の多くはカビが原因です。
霧吹きしたり土を入れたりすると、特に梅雨時や夏はあっという間にカビが発生蔓延してしまい他の飼育容器までもが全滅してしまった苦い過去がトラウマになっていて躊躇しています。
何かアドバイスがありましたら、よろしくお願いします。

ちなみにドロバチの巣を発掘した際に採集した寄生ハエ(ドロバチヤドリニクバエ?)の囲蛹からは、過去に同様の飼育法(プラスチック容器に裸で置いただけの乾燥条件)で室内越冬し問題なく羽化しています。

するとアノニモミイアさんより以下の回答を頂きました。

A: 私はヤドリバエ科の生態に詳しい者ではありません。しかし,本科に最も詳しい研究者に以前お聞きしたところ,ヤドリバエの囲蛹は囲蛹化した位置に置かないと羽化しにくい,囲蛹を動かすとまずい,と言う話をお聞きしたことがあります。ヤドリバエ科の多くの幼虫は寄主から脱出した後は当然地上に落ちるでしょうから,常識的に考えれば地中に潜り込んでそこで囲蛹化するのではないでしょうか。

このような見解を元に考えますと,寄主から脱出してまだ囲蛹化していない蛆は湿り気のある清潔な土を入れた容器に移すことが適当かとおもいます。また容器内(裸出した状態)で囲蛹化してしまったものは,そのまま動かさないで,上記のような湿った清潔な土(電子レンジなどで蒸気消毒したもの)をやさしく掛けるということも考えられます。

一方,オオミノガヤドリバエ等ミノガ科の幼虫に寄生するヤドリバエは,ミノの中で蛹化する場合が一般的のようです。この場合はそのままにしておくと,羽化して,ミノの下口部から脱出してきます。

園芸用の赤玉土の細粒(小粒より小さい)と言うのがあります。私はこれを十分に湿らせたうえで電子レンジで蒸気消毒したものを長期休眠(初冬から翌年晩秋まで)するハエの幼虫に使ったことがあります。好成績でした。数か月以上に亘ってカビなどが生じなかったです。

土を昆虫の飼育に長期に使うときは,庭の土などはかなり用心して用いないと,中に捕食者の卵や幼虫などが含まれていることがあります。また,トビムシ類もかなり入っていて,繁殖します。土はポリ袋に入れて(密閉しないで)電子レンジで内部が高温になり熱い蒸気で滅菌,殺虫して使うのが安全です。

ヤドリバエ科の事を勉強したいとのこと。参考文献で手ごろなものは,東海大学出版会の「ハエ学」にヤドリバエの生態がかなり詳しく記述されています。また,同書の参考文献にもあげてありますが,嶌 洪,1989.寄生生活への道―ヤドリバエの場合ー.インセクタリゥム,26号,100-126 にも詳しく記述されているはずです。嶌博士は舘卓司博士と共に我が国のヤドリバエ科の分類学者です。インセクタリゥムは現在は廃刊ですから,図書館などで蔵書しているところで見たらいかがですか。

まさかヤドリバエの囲蛹がそんなに繊細だとは知りませんでした。
確かに数少ない成功例を思い返してみると、完全に忘れていて放置していたら(つまり、囲蛹に全く手を触れなかったら)いつの間にか寄生ハエが羽化して死んでいたことがありました。(寄主イラガ、オビガ)
じっくり観察しようと囲蛹を転がしたりいじくり回すことが致命的なのですね。
この反省を活かして、次回からは殺菌した土を入れてみようと思います。


【追記】
『ハエ学:多様な生活と謎を探る』p298-299より用語の解説を引用します。
(センチニクバエの研究での文脈なので、もしかするとヤドリバエ科ではまた用語が違う可能性もあります。)

十分に摂食した幼虫はこの時点で餌から離れ蛹になる場所を求めて這い回る。この時期の幼虫をワンダリングステージの幼虫といい、前蛹という。この幼虫はほどなく蛹になるが、ハエでは幼虫時の表皮が固まってその中で蛹ができるのでそのことを囲蛹化、または囲蛹殻形成という。幼虫の表皮は硬くなり囲蛹殻となり幼虫は白い俵状の形をとり動かなくなる。このものをWhite pupa “白い蛹”とよぶ。その後は時間とともに囲蛹殻は硬化し、赤茶色から茶褐色になってゆく(白い蛹から蛹になるまでを潜蛹という)。この囲蛹殻の中で蛹となり成虫羽化までじっとしている。

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