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2013/08/22

ヒメクモバチ♂bが泥巣から羽化脱出する瞬間【微速度撮影】

ヒメクモバチ羽化の飼育記録1

ヒメクモバチ♀(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)による造巣を観察してから6日後、営巣地を再訪して泥巣をタニウツギの葉ごと採集してきました。
この日は母蜂に出会えず。
泥巣のまま飼育して室内で羽化させてみます。



『ファーブル写真昆虫記2:つぼをつくるかりうど』p40に驚くべきことが書かれていました。

ヒメベッコウの成虫が壺から出てくる際、口から水を吐き出して、泥を柔らかくし、壁を破る。
すごーい、これは見てみたい!
でも、果たして本当でしょうか?
第一級の資料となる素晴らしい生態写真集ですが、この記述を読んでみた第一印象は眉唾だと思いました。
本にはヒメクモバチが脱出口から上半身を乗り出した写真が掲載されています。
しかし、私が知りたいのはその直前です。
自分の目で実際に見てみるまではちょっと信じられません。
幼虫時代に獲物として与えられた僅か一匹のクモから摂取した水分で事足りるでしょうか?
昆虫は羽化の際、翅脈に体液を送り込んで翅を伸ばし終わると、余った体液を肛門から排泄します。
ヒメクモバチもこの蛹便を利用して泥巣を中から濡らすというのなら私にも分かります。
しかし羽化した新成虫は体が充分固まるまで数日間、育房内に留まると考えられます。
ヒメクモバチは羽化液の排泄を我慢して脱獄するときまで体内に水分を蓄えておき、それを口から吐き戻すのでしょうか?
もちろん本当なら、それはそれで非常に面白い行動です。
ずっと気になっていたのでこの点を解明すべく、ヒメクモバチの新成虫が泥巣から脱出する瞬間をなんとか映像に記録したいと考えました。

羽化の前兆や脱出時刻、脱獄に要する時間などが分からないので、まずはインターバル撮影で監視してみます。

2008年7月の観察では、同じくタニウツギの葉裏に作られたヒメクモバチの泥巣を採集してから15日目以降、成虫が続々と羽化し始めました。

2009年にはススキの葉裏から泥巣を採取し、育房から取り出した蜂の子を幼虫から成虫になるまで飼育しています。
育房内で蜂の子が育って羽化するまでの期間の目安がこれで分かりました。



2013年7月上旬

さて、採集から10日後の早朝、一匹の成虫aが羽化していることに気付きました。
中央の育房に脱出孔が一つ開いています。
黒い小蜂が網室のネットに止まっていたのですが、不手際で逃げられてしまいました。
残念ながら性別を確認していません。

慌てて微速度撮影の準備に取り掛かりました。
するとほどなく、2匹目の蜂が羽化してきました。
10秒間隔のインターバル撮影した30枚の連続写真(07:54 am - 07:59 am)を素材に早回し映像(スライドショー)を制作しました。
うっかり室温を測り忘れましたが、外は雨が降ったり止んだりで非常に湿度が高く蒸し暑い日でした。

AM 07:57:16 先に羽化した育房aの隣に微小の脱出口が開き始めました。
AM 07:57:46 穴から蜂の顔が覗きました。
AM 07:58:36 一気に脱出した蜂は、泥巣の上にしばらく止まっています。

羽化した蜂は絹糸で紡いだ薄い繭をまず食い破り、続いて乾いた土壁に脱出口を開けたようです。
映像では泥巣の中から脱出口を水分で濡らしているようには見えませんが、私の先入観によるものかもしれません。
穴を開け始めてから1分もかからずに脱出完了することが分かりましたけど、10秒インターバル撮影では間隔が開き過ぎてもどかしいです。
残念ながら決定的瞬間が記録されているとは言えません。
コマ撮り間の映ってない最後の一瞬で唾液で土壁を湿らせて脱出した可能性は否定できません。
とても小さな蜂なので、泥巣を中から大顎でガリガリ齧る音は特に聞き取れませんでした。

2番目に羽化した蜂は顔が白く腹端に白点があることから馴染みのナミヒメクモバチ♂(Auplopus carbonarius)と判明しました。
羽化した♂bは泥巣上を歩き回り始めました。
多くのカリバチは雄性先熟です。
先に羽化した♂が交尾相手の♀が羽化してくるのを外で待つ戦略なのでしょう。
今度は無事に捕獲成功!

ヒメクモバチ♂bの標本写真。

これから羽化してくる育房はまだ残っているので、今度はインターバル撮影ではなくて動画で記録することにします。

つづく→「ヒメクモバチ♀cが泥巣から羽化脱出する瞬間


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