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2013/03/17

ムモンホソアシナガバチの巣で個体標識してみる



2012年7月上旬

クマザサの葉裏に営巣したムモンホソアシナガバチの定点観察2

前回の観察の翌日に初期巣を再訪すると、ムモンホソアシナガバチParapolybia indica)のワーカーが一匹羽化していました。
羽化直後のアシナガバチは複眼が黒いのですぐに見分けられます。
前日から今日にかけて羽化した長女W1です。

巣を守る創設女王(手前)

羽化直後のハチの複眼は黒い

巣の全景@クマザサ葉裏

初め、創設女王Qは育房を点検して回り、巣柄に蟻避け物質を塗布していました。
羽化直後のワーカーW1はQの邪魔にならないよう常に巣盤上部裏側でおとなしくしています。

個体識別のため、一匹ずつ捕獲して炭酸ガス麻酔下でマーキングを施すことにしました。
創設女王は水色に(Q水)、ワーカー長女は桃色に(W1桃)油性ペンで胸背と腹背の2ヶ所にペイントしました。

創設女王を麻酔下でマーキング(水色)

ワーカーW1を麻酔下でマーキング(桃色)

創設女王Q水の右翅にもインクが付いてしまいました。
飛行に支障を来さないか心配ですが、きっと大丈夫でしょう。
未だしばらくは女王Q水が外役もこなさなければいけません。

インクが乾いたら巣に戻してやり、麻酔からの回復を待ちます。
CO2麻酔から醒めたハチは巣上で身繕いに余念がありません。

標識後に巣へ戻してやる。



怖い蜂が麻酔されている間に落ち着いて育房を数えると29室でした。
卵、幼虫、蛹と全てのステージを育房内に見ることができます。
羽化済みの空になった育房が初期巣で一番初めに作られた育房と考えられます。
裏側に伸びた巣柄の位置関係も矛盾しません。
そこから育房の増築過程をある程度は推定できます。

育房29室。中央付近に羽化済みの育房。卵、幼虫、蛹の各ステージが見える。

動画には撮れていませんがこの後、一匹のアシナガバチが飛来し、巣の手前で定位飛行を行ってからすぐに飛び去りました。
この巣で羽化済みの育房は未だ一つしかありませんから、別の巣のワーカーが偵察にやって来たのでしょうか?

せっかく個体標識してこれから定点観察が面白くなる所なのに、その後この巣はクマザサごと駆除されてしまいました…。
シリーズ完。


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