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2012/09/29

歩道の縁石からスズバチの泥巣を発掘

2012年9月上旬

農村部の歩道縁石の側面に大きな膨らみがありました(標高300m地点)。
独特の形状からスズバチ♀(Oreumenes decoratus)の作った泥巣のようです。
車道の左右は水田、砂利の駐車場、原っぱ、家庭菜園、墓地といった環境です。

農薬散布の影響を懸念してしまいますが、立派に営巣したようです。
営巣基の縁石側面は北西を向いていて、午後になると西日を直接浴びるようになっていました。



右側面

上から見下ろす

左側面
採寸してから発掘開始。
七つ道具のマイナスドライバーで泥巣の縁から少しずつ削り取ります。
大量の泥で全体が覆われた巣はカチカチに乾いており、堅牢な要塞と化しています。

多少雨が降っても泥が溶けたりしないようです(防水加工?)。
雪国で蜂の子が厳しい冬を越すための断熱材なのか、あるいは厳重な寄生虫対策かもしれません。

(長い産卵管を有する寄生蜂と激烈な軍拡競争を繰り広げた結果かもしれません。)
関連記事→「キアシオナガトガリヒメバチ♀羽化直後の蛹便排泄
外皮は薄皮を何重にも塗り重ねたような感じで、土がポロポロと剥がれてきます。





かなり苦労しましたが、最後に深く差し込んだドライバーをこじって泥巣全体を剥がす際は、メリメリっと繊維を剥がすような触感がありました。
各育房が繭の絹糸で裏打ちされているためでしょうか。
育房7〜8室は横向き(水平)に配置され、縦に並んでいます。
昨年11月に発掘したスズバチ泥巣とは異なり、中に寄生バエ(ドロバチヤドリニクバエ)の囲蛹は見られず、丸々と太った黄色い蜂の子の姿が見えます。
貯食物(イモムシ)を食べ尽くした後で前蛹になっていました。

泥巣を発掘した跡



泥巣全体の重量は、90g(採集2日後に計量)。

一匹のスズバチ♀が単独で作ったと思うと、恐るべき重量の建造物です。
上記の数値は乾燥重量です。
蜂が巣材として集めてくる泥玉は水で湿っていますから、実際に運搬した総重量(巣材+獲物・貯食物)は90gよりも多いはずです。

丸ごとの泥巣を干からびないよう容器に密閉して飼育してみます。
年内にスズバチの成虫が羽化するかと期待したものの、どうやらこのまま前蛹の状態で越冬するようです。
雪国の当地でスズバチの発生は年1化ではないかという気がしてるんですけど(個人的な印象)、未だしっかりと調べた訳ではありません。(年2化かな?)

つづく→「スズバチ蛹が泥巣の育房内で蠕動




【追記】
新開孝『虫のしわざ探偵団』という本を読んでいたら、スズバチの泥巣を採集する際の独創的なノウハウが書いてありました。
泥団子全体は固いけれど、表面はポロポロはがれる。泥団子を壊さないように工夫してはがす。水で薄めた木工用ボンドを泥に吸わせるように塗り、一晩置く。(水1:ボンド1)ボンドが乾いて固まったら、下に網を添え、コテを使い、泥団子をはがす。 (p42より引用)
次に泥巣を採集する機会があれば試してみようと思います。
泥巣の表面を固めてしまったのでは成虫が泥巣を破って羽脱できないのではないかと一瞬心配になりました。
しかし、泥巣を剥がした断面から成虫が羽化してくるでしょうから、問題ないのでしょう。






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