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2012/07/31

ヤマトシリアゲ♂同士の喧嘩(獲物の争奪戦)




2012年6月上旬

一匹のヤマトシリアゲ♂(Panorpa japonica
)がクロモジの葉裏で何やら獲物を捕食中。
もう一匹が葉表に着陸すると、獲物の争奪戦が始まりました。
2匹の♂が互いに羽を動かしているのは威嚇のディスプレーでしょうか。
獲物を放置して葉表で激しい喧嘩を始めました。
シリアゲムシ(英名:scorpionfly)の♂に特有のカールした尾部が互いに絡み合っています。
サソリの毒針のように刺す武器としての機能があるのでしょうか?
単に格闘でもつれて絡まっているだけ?
虫の喧嘩は一般に口器を使うことが多いですけど、噛みついているようには見えません。
ようやく勝負がついたようで、二匹が別れ一匹が葉表に退散しました。
勝者が追い立てると、敗者は遂に飛び去りました。
敗者も特に致命傷を負ったようには見えません。
激しい肉弾戦で誰が誰だか分からなくなりました。
獲物の前所有者が防衛出来たのか、獲物強奪の成否は、不明です。


落ち着いてから獲物を接写してみると、ガガンボの死骸のようでした。
これは元々クモの巣にかかった獲物の食べかすかもしれません。
「シリアゲムシはクモの網に引っかかった虫を横取りする」ことが知られています(wikipediaより)。
喧嘩中に、獲物は見えない糸で葉裏からぶら下がっていました。
実は、両雄の格闘中にクロモジの葉から1匹のクモが懸垂下降で脱出したのを目撃しています。
勝ち残った♂は興奮が収まらないのか、しばらく羽を上下しつつ獲物の元に戻りました。
しかし獲物に口は付けているようには見えません。
♀への求愛餌として価値のある獲物をライバル♂からガードしているのでしょうか?
もう少し待てば♂が捕食したかな?

この日は雨もパラつき、成り行きをじっくり見届ける余裕がありませんでした。


獲物を巡って争う2匹のヤマトシリアゲ♂

ヤマトシリアゲ♂側面@ガガンボ死骸

ヤマトシリアゲ♂@ガガンボ死骸

【追記1】

シリアゲムシの口器は細長い頭部の先端にある。
咀嚼型だが、かなりの退化傾向を示すらしい。
第9腹節が変形した交尾器には大きな把握器がある。(毒針や武器として使うという記述は無し)
『昆虫の誕生』p168-170より

【追記2】
「日本産シリアゲムシ図鑑」という素晴らしいサイトを見つけました。
ヤマトシリアゲの項を参照すると、

他の種に比べ雄同士の争いが激しく、その際、ハサミ(パラメア=雄のハサミにある二又状の器官)を使って相手を追い払う行動が見られる。


交尾鉤 paramere
昆虫の腹部の第九体節の対になった構造.


【追記3】
『スパイダー・ウォーズ』p164-165によれば、
クモの網に盗みに入るシリアゲムシは♂ばかりで、♀は決して侵入しません。餌を奪われまいと、クモはシリアゲムシを追い出そうとしますが、シリアゲムシは餌をくわえてさっさと逃げます。餌が網からなかなか外せない場合には、サソリのように尻尾を高くあげて、クモを威嚇します。 クモが本気で捕らえにくると、シリアゲムシは「タバコ・ジュース」と呼ばれる黒っぽく苦い液体を口から吐き出し、クモをたじろがせます。この「ジュース」にはクモの糸を溶かす成分が入っており、シリアゲムシは網の粘着糸やクモが投げかける「トリモチ」から逃れることができます。


参考図書:『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』 第16章:クモの餌を横どりする虫たち





2 件のコメント:

  1. おー、いいですねー。把握器で鋏合っているのかと見えましたが・・・。こんな戦い出会いたいです。すばらしい画像ありがとうございました。

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    1. コメントありがとうございました。
      闘争時の把握器の使い方に注目して接写すれば良かったですね。
      私も初めて見る光景で、次の展開が読めず引きの絵で見守るしかありませんでした。

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