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2012/05/03

啄木鳥のドラミング合戦♪を声紋解析してみる【野鳥】



2012年4月中旬



未だ雪深い雑木林の奥から啄木鳥の乾いたドラミング音が断続的に聞こえてきます。
機銃掃射のように始まりダラララララ…♪と減衰する音が静かな山中に響き渡ります。
キョッキョッ♪とお馴染みの声で鳴いているのはドラミングしている啄木鳥とは別の個体なのだろうか。
どこで木を叩いているのか樹上を探しても、残念ながら姿は見つけられません。


やがて、どこか右奥にいるらしい啄木鳥が新たにドラミングを始めました。(@0:57~)
2羽でほぼ交互にドラミング合戦をしています。
(音量を上げヘッドフォンでお聴き下さい。)
音の大きさから判断するに、左から聞こえる方が近く、右から聞こえるのはやや遠くにいるです。
右にいる啄木鳥は途中からドラミングしなくなりました(計5回)。
縄張り宣言だとすると左の個体が優勢らしく(先住効果?)、この映像を通して計13回もドラミングし続けました。

ドラミング音には種特異性があるのだろうか?
つまり、啄木鳥にはドラミング音を聞くだけで自分と同種の仕業かどうか判別できるのだろうか?と疑問に思いました。


この周辺で啄木鳥をはっきり見たのは昔アオゲラの一度だけです。
それとも今回ドラミングしているのはアカゲラかな?
アカゲラは♂も♀もドラミングを行うらしい。


ピッキオ編著『鳥のおもしろ私生活』p37によると、アカゲラの
ドラミングの長さは♀よりも♂の方が少し長いし、キツツキの種類によっても違う。彼らは案外情報の内容によっていろいろと打ち方を変え、それをまた聞き分けているのかもしれない。
同書p189より
ドラミングとは、なわばり宣言や求愛、その他のコミュニケーションのために木をたたいて音を出すことで、さえずりと同じ役割といわれる。


ドラミングの音程は叩いている木の材質によって毎回微妙に変わるはずですから、それ以外(長さや回数など)を情報として使っているはずです。


ドラミング音の声紋解析

元の動画から音声をwavファイルにデコードしてからドラミング音のスペクトログラムを描いてみました。
比較的近くで(大きく)聞こえてきた左の啄木鳥が枯れ木を硬い嘴で素早く連打していた音です。
他の野鳥が同時に鳴いたりカメラの操作音が混入したりして、なかなかドラミング音だけを切り出せません。
一見してSN比が悪いですね(ノイズが多い)。
データは示しませんが、右から聞こえた遠い個体によるドラミングはもっと小さな音のため、スペクトログラムは更に汚い(不鮮明)です。


ドラミングの長さや、連打の頻度(毎秒何回?)をスペクトログラムから読み取れるかと思ったのですが、結果はいまいちでした。
啄木鳥に至近距離まで近づくとか外付けマイクや集音機を使うなど録音条件を根本的に改善しないといけないようです。

しかしこの日は林床の雪質がザラメ状のため、足音を忍ばせて近づくことが不可能でした。


この回は比較的きれいな声紋が出ています。


この声紋もまぁまぁ明瞭。

この回はドラミングに他の野鳥の鳴き声が混じる。

ドラミング開始に少し遅れて10kHz辺りに出る思わせぶりな声紋は他の野鳥の鳴き声。


【参考】
『野鳥を録る』p205に掲載された声紋の例では、アカゲラのドラミングは1秒以内に19回叩いているのが読み取れます。

他の野鳥に比べて鳴き声の単純なキツツキは、ドラミングで縄張り宣言をしたり、結婚の相手を探します。(『科学のアルバム:キツツキの森』p41より)



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