ページ

2012/04/30

白毛のニホンカモシカ



2012年4月中旬

滝の右横の崖からこちらを見下ろしている獣がいます。
野生のニホンカモシカ(Capricornis crispus)です。
すぐ上には残雪があり、樹の根元に生い茂ったユキツバキの群落で葉を採食していたのかもしれません。



ほとんど動きないまま緊張の対峙が続きます。
カモシカの口から涎が垂れました。



濡れた鼻を突き出して風の匂いを嗅いでいます。
角が未だ細いので若い個体のようです。

特筆すべきはその毛色で、こんなに真っ白なカモシカは初めて見ました。
アルビノではないものの、上半身が白毛です。
顔を正面から見ると細い角が目立たず痩せており、なんだか白い犬みたいだと思いました。
鼻面と耳、目の周りおよび眼下腺だけが黒いです。
冬毛から夏毛に生え変わる時期なのだろうか?と考えたのですが、一月前に雪山で出会った個体はこれほどの白毛ではありませんでした。
軽い白変種の個体なのだろうか。
若い個体を見るのも初めてですが、雪国のカモシカ幼獣は保護色で白いのが普通なのかな?
西日本に棲息するニホンカモシカの写真や映像を見ると毛並みがとても黒くて驚きました。私が見慣れている北国の個体は白っぽいようです。
山奥にあるこの滝は山岳信仰の対象となっています。
日本昔話なら滝を拝みに来て神秘的な(希少な)白毛のカモシカと遭遇した者は滝の化身や神の使いかと信じて腰を抜かしたことでしょう。
吉兆じゃ!
(wikipedia:アルビノ→民間信仰

やがて落ち着くと、白毛のカモシカは薮をくぐって急斜面を慎重に右へトラバースし始めました。
四肢とたてがみは黒毛と分かりました。
ときどき道草を食った(採食)ように見えました。
(下草の匂いを嗅いだだけで口を付けていないかもしれません。)



移動してどうするのかと思いきや、好奇心からかこちらに近づいて私の様子を見に来たようです。
崖の上から私を見下ろしながら耳がピクピク動き、鼻をヒクヒクさせています。

足元の悪い急斜面の雪渓に立ち無理な体勢で長時間撮り続けたら腰が痛くなったので、背負った荷物をゆっくり下ろしました。
(途中で映像が激しく乱れている部分です)
その途端にカモシカは身を翻し逃走を始めました。
トラバースして元居た位置に戻ると立ち止まって振り返り、鼻息を荒げて威嚇します。
しかし滝の轟音でかき消され、鼻息がよく聞こえません。
逆にカモシカの方も私がスノーシューでザクザク雪渓を登って行く足音に気づかずニアミスに至ったのでしょう。
カモシカは土が露出した急な崖を一気に駆け上がると、茂みに姿を消しました。
軽々と登って行く見事な逃げ足に惚れ惚れしました。

この日の山行では他に2頭も野生のニホンカモシカと遭遇しました。(最高記録更新)
厳しい冬を無事に生き残っておめでとう!



【追記】
中公新書『カモシカ物語』p27によると、角が出始めるのは生後約5ヶ月ぐらいかららしい。
今回の幼獣には角があるので、少なくとも生後5ヶ月以上は経っていることになります。







0 件のコメント:

コメントを投稿