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2011/11/12

コカマキリ♂が独りで「前ならえ」の練習



2011年10月中旬
以前フィールドで交尾中のペアを見つけて以来、コカマキリStatilia maculata)の♂成虫を見分けられるようになりました。
この日は堤防の石段で続けざまに♂を二匹発見(映像はそのうちの一匹♂cの行動)。


カメラを凝視する顔はなんとも小狡そうな表情に見えてしまいます。
この個体は左の触角が途中で直角に折れ曲がっています。



植物の蔓を少し登ると、立ち止まって奇妙な行動を始めました。
鎌を構える「拝みポーズ」はカマキリにごく普通ですが、カメラ目線のまま「前ならえ」するように繰り返し鎌を曲げ伸ばししています。
後半は上体を反らしながら、まるで天に救いの手を求めるような動きで空を切ります。


撮影後に採集して持ち帰り、飼育中のコカマキリ♀とペアリングさせました。
すると♂が♀に注意深く接近してマウントするまでに同じような「前ならえ行動」を示し、鎌で♀との間合いを測っているように見えました。
(動画はこちら→「コカマキリの危険な情事」)

ちなみに、カマキリが獲物を捕食する際はこんな素振り運動をせずに鎌で一発で仕留めます。
(悠長に練習なんかしていたら獲物に逃げられてしまいます。)




従って、今回の不思議な屈伸行動をあえて解釈するならば、繁殖期で性衝動の高まった独り身の♂が無聊を慰める一種の真空行動※だったのではないかと妄想しました
これまで何匹もコカマキリ♀を飼育してきましたが、少なくとも♀成虫では今まで見たことがない行動です。


※『岩波生物学辞典・第4版』より引用
中枢が強く活性化されているのに鍵刺激が現われないと,閾値がはなはだしく低下して鍵刺激を待たずに反応が解発されてしまうこともあり,これを真空活動(vacuum activity,真空行動)とよぶ.(中略)生得的解発機構とそれに関連するさまざまな概念(固定的動作パターン・真空行動・転位行動・リリーサーなど)は,動機づけのエネルギーの蓄積と解放という生理学的事実に裏付けられていない比喩にもとづくものとして,用いるべきでないとする意見も強い.



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