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2011/03/16

エゾスジグロシロチョウ夏型♀の交尾拒否



2008年7月上旬

スジグロシロチョウPieris melete)/エゾスジグロシロチョウPieris napi)のどちらかです。
写真同定は難しいと虫我像掲示板にて教えてもらいました。
シロチョウ科の交尾拒否行動を初めて実際に見ました。
♀にその気が無い場合、尾部を持ち上げて意思表示をします。
♂は未練がましく求愛を続けましたが、最後は脈無しと分かったのか上を通りがかった別個体を追って飛び立ちました。


スジグロシロチョウ/エゾスジグロシロチョウ♀交尾拒否直後 


【追記】
モンシロチョウで調べられた有名な交尾拒否行動の知識を元に解釈したのですが、同じシロチョウ科でも種類によって違うそうです。
(類似した動作が逆の意味に使われることがある。)

  • モンシロチョウでは、一度交尾した♀は次に♂が近づいたとき、両方の翅を左右に広げ、腹部を上に立てるポーズをとる。脇に止まり腹端を伸ばそうとする♂は、こういう拒否姿勢をされると止まることができないので飛び去らざるをえない。
  • エゾシロチョウの♀も同じように翅を開いて標本のような形になるが、♂は簡単にあきらめず執拗にアタックして、しばらく交尾の機会をねらうことがよく見られる。
  • スジグロシロチョウは、止まっている♀に♂が近づくと、ちょうどモンシロチョウの交尾拒否と同じようなポーズをとる。しかし、♂はその♀の上をぐるぐる飛び回り、ホバリングしている。すると♀は腹を下げ翅を立てるので、♂は脇に止まって交尾する。

『謎とき昆虫ノート』第4章:いつでもチョウを!p88より


【追記2】
『進化を飛躍させる新しい主役:モンシロチョウの世界から』p166-167によると、
(スジグロシロチョウ)♂の翅には、強いにおいを発する発香鱗という鱗粉があります。このにおいは人間がかいでもはっきりわかります。
・モンシロチョウが陽のあたる開けた場所を好むのに対して、スジグロシロチョウは林の周辺などあまり陽があたらない場所を好みます。 
(スジグロシロチョウ)♀が未交尾の段階から、モンシロチョウの既交尾♀と同じ交尾拒否姿勢をとって♂を拒否する。その♀もいずれは交尾するのですが、なぜ♀が未交尾の段階で♂を拒否するのか、またその後なぜ♂を受け入れるようになるかについては、まだわかっていません。
強いにおいを発散する(スジグロシロチョウの)♂は、あたかもそのにおいを翅を羽ばたいて♀に浴びせかけるかのように、♀の近くで滞空飛翔をして求愛します。このにおいが、交尾を拒否する未交尾♀を交尾に誘導する性フェロモンとして機能している可能性がありますが、それについてはまだたしかめられていません。


『チョウのはなしII』p156によると、
 スジグロシロチョウの場合、♀は♂が接近すると、通常は翅を閉じたまま交尾を受けいれようとはせず、翅や腹部を動かして拒否したり、翅を屋根型に開いて腹部を高く上げた拒否姿勢をとります。そうすると、♂は♀の上方20〜50cmくらいの距離でホバリングというはばたきを行いながら、翅に具わった発香鱗から香気を送り、♀をなだめながら何度も交尾を迫り、♀はついに翅を閉じて交尾を受けいれることになります。♀はおそらく嗅覚によって♂を選んでいるのでしょう。




福田晴夫、高橋 真弓『蝶の生態と観察』によると、
 モンシロチョウ属では、モンシロチョウとスジグロシロチョウで(交尾前行動に)かなりのちがいがある。モンシロチョウの場合は、♂は、羽化直後の翅を閉じてとまっている♀の側方に静止し、腹部を横に曲げて、ほぼ瞬間的に交尾するが、スジグロシロチョウでは、♂は、翅を全開し腹部をななめ上方に上げて静止している♀の上空で、長時間停止飛翔を続け、フェロモンを放出して♀を誘惑し、やがて交尾が成立する。前者は不安定な開放的環境に、後者は比較的安定した森林地帯にすむことが、それぞれ異なった配偶行動を生みだしたのかもしれない。(p53-54より引用)


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