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2011/03/01

キボシアシナガバチは雄蜂♂も幼虫に給餌する



2008年7月下旬

キボシアシナガバチPolistes nipponensis)巣の定点観察。
この日の観察で一番の大事件がこれ。
なんと雄蜂が幼虫に給餌しました! 
♀が狩りで持ち帰った肉団子を巣上で分配するシーンは見逃しましたが、♂は全く外出していません。
自らの栄養補給に肉汁だけ吸って、残りの固形物(成虫は摂取できない)は捨てる代わりに幼虫へ与えるのかもしれません。
「雄蜂は交尾以外は働かずに無為徒食」という定説や先入観を打ち砕かれ、とても興奮しました。
もしかしたら、将来交尾する新女王となる幼虫を雄蜂が自ら育てているのかもしれません。 


初め♀(女王かワーカー)が幼虫に給餌して回る間、♂は笹の茎(巣の右上)に止まって肉団子を咀嚼しています。
@2:13やがて♂は巣房に降りて行き、噛んでいた肉団子を幼虫に給餌しました。
与え終わると汚れた顔を綺麗に掃除してから定位置(巣の上部)に戻って再び休息。
もう一匹の♂は巣の上部中央でじっと休んでいて、♀ワーカーの尻に敷かれても動きません。 


《追記》 
後日、同じ行動を再確認しました。
♂は扇風行動や威嚇行動もワーカー同様に行うので、全く内役に従事しない訳ではないようです。
新鮮な発見でした。
本種はカースト分業が未分化なのでしょうか。 


河原恭祐『いつか僕もアリの巣に』p198によると、
血縁度の関係から言っても、♂は姉妹への血縁度が低く、妹たちの世話をするよりも、自分の子を直接残す、つまり女王と交尾した方がよい。


『図説 社会性カリバチの生態と進化』によると、アシナガバチ亜科ではしばしば♂も幼虫への給餌に参加するらしい。 




『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p43によれば、
(セグロアシナガバチの)♂も基本的には働かないが、働きバチから受け取った餌を噛みほぐしたあとに幼虫に与えることがある。ただし、噛んでいる時間が異常に長いので、養分を吸収した後の残りかすを幼虫に与えるだけらしい。


松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
♂は、巣の中では、いっさいの仕事に参加しないのがたてまえである。しかし、アシナガバチの多くの種で、働きバチから受けとった肉団子を、ときに幼虫に与える行動が観察されている。(p72より引用)



つづく→シリーズ#37

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