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2011/02/02

キアシナガバチ巣に寄生したマダラトガリホソガ(蛾)の仲間の羽化

今季(2010年)軒下に営巣していたキアシナガバチの巣S9は寄生蛾の攻撃を受けたらしく、育房にクモの巣のような不規則網が張り巡らされました。
寄生蛾に乗っ取られたキアシナガバチのコロニーはこの巣を捨てて隣に並行して作られたサテライト巣S10に引っ越しました。
9月下旬に軒下から採集した廃巣S9(育房数66室)を容器に密閉して室内飼育(放置)したところ、寄生蛾の幼虫の姿を2匹確認することができました。
(関連記事はこちら→「キアシナガバチの巣に寄生したマダラトガリホソガの仲間の幼虫が糸を張り巡らせる」




2ヶ月後の11月下旬にミクロ蛾の成虫が一頭だけ羽化しました。
暖房のない部屋とはいえ野外の寒さに比べると暖かいですし明暗条件もコントロールされていませんから、越冬することなく季節外れに羽化したのでしょう。
複眼が赤いのはカザリバガ科の特徴とのこと。
前翅長~4.5mm。
後翅は地味な焦げ茶色。
数日経つと容器内を元気に徘徊するようになりました。
ちなみに容器の底に散乱する黒い顆粒は寄生蛾の幼虫が食い荒らした巣の欠片や糞です。
虫我像掲示板にて「カザリバガ科マダラトガリホソガに近縁な未記載種(Anatrachyntis sp.)だろう」と教えて頂きました。
こんなちっぽけな蛾がアシナガバチの天敵になっている自然界の不思議。
幼虫図鑑サイトにてキアシナガバチの巣に寄生食害した事例が登録されています。
しかし掲載写真を見ると育房に黄色の繭キャップが残っていることから、掲載事例の寄主はキアシナガバチではなくキボシアシナガバチまたはヤマトアシナガバチであるように思います(私見)。


マダラトガリホソガsp(蛾)a@キアシナガバチ巣S9寄生
次の課題としては、寄生蛾の交尾や産卵行動を観察してみたいものです。
アシナガバチ側の防衛法にも興味が湧きます。


【追記】
約30cm離れた位置に作られたサテライト巣S10(育房数49室)からも後日(2011年1月)、同種と思われる寄生蛾が二頭(a, b)羽化してきました。


マダラトガリホソガsp(蛾)a@キアシナガバチ巣S10寄生
後翅は焦げ茶色

マダラトガリホソガsp(蛾)b@キアシナガバチ巣S10寄生
後脚を上げて静止するのが特徴?
【追記】 サテライト巣S10からその後も五月雨式にあと二頭(c, d)羽化しました。春になると最終的にサテライト巣S10から寄生蛾の成虫17頭および幼虫の死骸一匹が得られました。
こちらの巣は外見がきれいだった(不規則網なし)ので寄生を免れたのかと思っていたのですが、予想が外れました。
しかし次世代(新女王および雄蜂)を産出しコロニーの解散まで活動を全うできたのは事実です(逃げ切り成功)。
キアシナガバチ創設女王が二巣並行営巣するようになったのは、マダラトガリホソガを初めとする寄生虫への対抗措置ではないかと私は考えています1
二巣並行営巣は創設女王の投資コスト(労働量)が大きいと思われますが、私が毎年定点観察している軒下では2008年および2010年にキアシナガバチの二巣並行営巣が見られました(創設女王の個体標識にて確認)。
寄生蛾(Anatrachyntis sp.)の攻撃を確認した(廃巣から羽化)のは2009年および2010年と高い寄生率を誇ります。


雌雄の複数個体が同時に羽化してくれれば交尾行動や産卵行動を飼育下で観察したかったのですけど、一頭ずつ羽化しては死んでしまうので叶いませんでした。


参考
1. Strassmann JE. Parasitoids, Predators, and Group Size in the Paper Wasp, Polistes exclamans. Ecology. 1981;62(5):1225. [ PDF Available ]

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