2025/07/10

日光浴していた農道から蛇行して逃げるシマヘビの幼蛇

 

2024年6月中旬・午前9:50頃・晴れ 

郊外を流れる川の堤防路(農道)でシマヘビElaphe quadrivirgata)の幼蛇がウネウネと伸びた状態で農道に静止していました。 
しばらく待ってもシマヘビ幼蛇は動きません。
舌の出し入れもなく、まさか死んでいるのでしょうか?

動画を撮りながら私がゆっくり近づいたら、シマヘビ幼蛇は身を翻して道端の草むらに姿を消しました。 
細長い体のほとんどは日向に出ていたので、おそらく日光浴をしていたのでしょう。

逃走シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
すばやく蛇行して草むらに隠れました。 
威嚇行動は見られず、舌の出し入れなども観察できませんでした。

関連記事(3、5年前の撮影)▶  


【考察】 
シマヘビは無毒ですが、幼体の時期だけ有毒のマムシにベーツ擬態していると考えられています。 
しかし、私の感覚ではフィールドでマムシに出会う頻度(≒生息数)は近年激減しています。 
その状況で無毒のヘビがモデルの有毒マムシにベーツ擬態しても効果ないはずです。 
捕食者が擬態のモデルとなったマムシを食べようとして毒で痛い目に遭い、その体色パターンを学習しなければ、シマヘビ幼蛇を忌避する行動も起こらないからです。
また、ベーツ擬態が成立するためには、「モデル(マムシ)」と「ミミック(シマヘビ幼蛇)」が同じ捕食者に遭遇しやすい環境で共存していることが重要です(同所性)。
マムシとシマヘビの生息環境は少し違うので、捕食者がマムシを学習する機会が少なくなり、擬態の効果が薄れる可能性が高いでしょう。

そもそも、シマヘビの幼蛇がマムシをモデルとしたベーツ擬態であることを、捕食者を使った実験で本当に証明した研究はないそうです。 
実は一部のヒトが「似てる」と主観的に思っているだけかもしれません。
擬態をテーマとした写真集は昔から人気があります。
ロマンがあって面白いのですが、捕食者への忌避効果があるか実証していないのに、動物写真家や自然愛好家が安易に「擬態だ!」と決めつけた例が実は多いのではないかと私は疑っています。 
実証が難しいのは百も承知です。
例えば捕食者が紫外線領域も見えるのであれば、その視覚特性を考慮した上でモデルとミミックの見た目が似ているかどうかをせめて検討すべきでしょう。
ヒトの見る可視光の世界だけで決めつけているのは問題です。

もし本当にマムシへの擬態が捕食者対策として有効なら、幼体の時期だけでなく成体になってもマムシに似せ続ければよいはずです。 
成体になってシマヘビ特有の体色パターンが現れるのは、マムシとの異種間誤認交尾を避けるため(生殖隔離)かと私は思ったのですが、それは違うらしい。 
以下はPerplexity AIの回答です。
成体でマムシに似せ続けない理由として有力なのは、捕食リスクや生態的背景の違いです。 幼蛇は体が小さく、捕食者(鳥や哺乳類など)に狙われやすいため、擬態による捕食回避効果が強く働くと考えられています。 成体になると体が大きくなり、捕食リスクが減少し、また行動範囲や生息環境も変化するため、幼体時に必要だった擬態的模様が不要になる可能性があります。 さらに、成体の体色や模様は「隠蔽(カモフラージュ)」や「環境への適応」といった別の選択圧が働いていると考えられています。 生殖隔離のために体色が変化するという説は、ヘビ類では一般的に支持されていません。 また、マムシとシマヘビは生殖行動や生息環境、繁殖時期が大きく異なるため、異種間交尾のリスク自体が極めて低いと考えられます。 まとめると、シマヘビ幼蛇が成体になるとマムシ的な外見を失うのは、捕食圧や生態的適応の変化によるものであり、「生殖隔離」のためではないと考えられています。

2025/07/09

アナグマ空巣の横で新たに穴を掘るホンドタヌキの謎【トレイルカメラ】

 



2024年6月中旬

シーン0:6/11・午後13:26・くもり・気温35℃(@0:00〜) 
シーン0:6/11・午後14:10・くもり・気温37℃(@0:04〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
平地の二次林で越冬中に死んだニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)を2台の自動撮影カメラで見張り続けています。 
地中に2つの巣穴L、Rが掘られていますが、内部でつながってはいないようです。 


シーン1:6/12・午前4:44・気温15℃(@0:07〜)日の出時刻は4:13。 
早朝で日が昇っているのに、木の葉が生い茂る初夏の二次林内はかなり薄暗いです。 

単独でセットに現れたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が、通りすがりにアナグマの巣口Lのすぐ左の地点の匂いを嗅ぐと、なぜか前足で地面を掘り始めました。 
巣口Lを拡張する土木工事(造巣行動)とは違うようです。 
タヌキはどうやら、何か地中に隠れた虫や野ネズミ(ノネズミ)などを狩ろうとしているようです。 

一旦アクセストレンチを降りて巣口Lの匂いを嗅いでから、穴掘り作業を再開しました。 
巣口Lの横にマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)の灌木が自生しているのですが、その邪魔な根っこをタヌキは掘り返そうとしているのかな? 


シーン2:6/12・午前4:45・気温16℃(@1:07〜)
別アングルに設置した監視カメラでも撮れていました。 
タヌキが巣口Lの横で穴を掘り、その合間に巣口Lに顔を突っ込んで匂いを嗅ぎました。 


シーン3:6/12・午前4:46・気温16℃(@2:07〜)
トレイルカメラはセンサーで熱源の動きを検知すると起動するのですが、そのとき周囲の照度を測り、自然光で撮るか赤外線を照射しながら暗視動画に撮るかを二択で決めます。 
その閾値になる薄明薄暮の時間帯だと、かなり薄暗いフルカラー録画になったり、赤外線の暗視モードで録画したりと、トレイルカメラの挙動が交互に変わります。 
トレイルカメラの同じ機種でどの個体でも同じ症状が出るので、これはトレイルカメラの欠陥(不良品)やシステムのバグではなく、仕組み上、仕方がないようです。 
私としては、動物の行動がモノクロでも明瞭に写って欲しいので、充分に明るくなるまでは薄明薄暮でもきれいに写る暗視モードで統一してくれた方がありがたいです。 


タヌキの顔が穴掘り作業で汚れて、すっかり真っ黒になりました。
前足を使って黒土を後方に掻き出し、勢い良く跳ね除けます。 


シーン4:6/12・午前4:47・気温17℃(@3:07〜)
次に監視カメラが起動したときにはフルカラー録画に戻りましたが、辺りはまだ薄暗いです。 

タヌキは穴掘り作業を中断すると鼻面を上げて、周囲のマルバゴマキの枝葉やブラブラ垂れ下がっている枯れ枝の匂いを嗅いでいます。 
獣道を少しうろついてから、穴掘り地点に戻って来ました。 

遠くからキジ♂(Phasianus versicolor)がケンケーン♪と鳴く声が聞こえてきました。(@3:53〜) 


シーン5:6/12・午前4:48・気温17℃(@4:07〜) 
別アングルのモノクロ映像に切り替えます。 
穴掘りを止めて左の獣道に消えたタヌキが、すぐに戻ってきて穴掘り地点の匂いを嗅ぎ回っています。 

このカメラでも、遠くのキジ♂が早朝からケンケーン♪と縄張り宣言する鳴き声が録音されていました。(@4:40〜) 


シーン6:6/12・午前4:49(@4:56〜)
別アングルのモノクロ映像に切り替えます。 
タヌキがカメラを見上げてから、左に立ち去りました。 
タヌキが新たに地面を掘った跡は、アナグマのアクセストレンチLを変形・整備したようにも見えます。 


シーン7:6/12・午前4:49(@5:09〜) 
フルカラー録画に戻りましたが、早朝の二次林内は依然として薄暗いです。 
タヌキはもう一つの巣口Rにも立ち寄り、マルバゴマギ根元に開口した野ネズミ巣穴の匂いを嗅いでから、セットを右へ立ち去りました。 



※ キジの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
タヌキの本格的な穴掘り作業を撮影できたのは、これが初めてです。 
せっかくアナグマが作ったアクセストレンチの斜面を崩して、特定の地点を深く掘り進めていました。 
しかし穴掘りのスペシャリストであるアナグマほど、タヌキは穴掘りが上手くないようです。 
前足の爪もアナグマの方が鋭く発達しています。 

後日私が現場入りした際に、巣口Lから伸びるアクセストレンチが新たに形成されたと思ったのですが、監視カメラの映像を確認すると、タヌキの仕業でした。 
以下に写真を掲載しますが、昼間も薄暗い林内でストロボを焚くと、新しく掘られた穴の立体感や遠近感がいまいち失われてしまいます。







結局タヌキは、野ネズミや虫などの獲物を何も捕れなかったようです。
 「大山鳴動して鼠一匹」という諺よりも効率(コスパ)が悪い採餌行動でした。 
その後もホンドタヌキがこの巣穴Lに転入(引っ越し)することもありませんでした。



ノアザミの花で採餌するコハナバチ♀の一種?

 

2024年6月上旬・午前11:30・くもり 

水田の農道に咲いたノアザミの群落で見慣れないハナバチが訪花していました。 
ノアザミの雄しべの先端から白い花粉が吹き出しています。 
ハナバチが口吻を伸ばして吸蜜しながらノアザミの頭花を歩き回ると、必然的に雄しべの花粉が蜂の体毛に付着します。 
顔の毛や前脚にノアザミの白い花粉が大量に付着していたのに、後脚の花粉籠はまだ空荷でした。 
ミツバチ科だと思ったのですけど、ハキリバチ科の可能性もありますかね? 
腹部下面にスコパの有無を確認できませんでした。 

マクロモードでカメラのレンズをそっと近づけながら接写しても、蜂は逃げませんでした。 
飛び立つとやや高音の羽音を立て、同じ頭花にすぐ舞い戻ってきます。 
再び飛び立つと、ホバリングしてから手前の頭花に着陸しました。 

蜂が居なくなった後でノアザミの総苞片に触れると、粘り気があることを確認しました。 
農道の奥の水田では田植えが終わっていました。
はじめは筒状花から雄しべが現れて、昆虫などが花を刺激すると、接触運動により雄しべから花粉が湧き出てきて、昆虫に花粉を与える[9][10][8]。雄しべが引っ込むと、続いて雌しべが現れて、花粉をつけた昆虫の媒介によって受粉する[8]。頭花の外側にある総苞は緑色の球形で、総苞片は反り返らず、直立して先端は鋭いとげになり、粘液を出して背面はよく粘る[7][5][6]。(wikipedia:ノアザミより引用)
関連記事()▶ 第8話「アザミの花粉放出の巧妙な仕掛け」 


さて、このハナバチの種類(和名)は何でしょうか? 
腹部には黒と茶色の横縞模様。
胸背は黒くてつるつるしています。 
剥げたのか、それとも元々胸背には毛が生えないのか、不明です。 
胸部の辺縁部には白っぽい毛が密生しています。 
オオマルハナバチ♀ほど毛深くありません。 
関連記事(同所同時期の撮影)▶ ノアザミの花で採餌するオオマルハナバチ創設女王 
伸ばした口吻は真っ黒。
後脚だけでなく中脚にも茶色の毛が密生していて、花粉籠が複数あるように見える。

この件でPerplexity AIに相談してみたところ、画像認識もやった挙句にコハナバチ科の一種ではないか?と言われました。 
現在のAI技術は、質問に虫の写真を添付しても、分類学者が作った検索表に従って細部の特徴を検討して種を同定してくれる訳ではありません。 
ただ画像検索で似た写真をインターネット上で探しているだけなので、注意が必要です。 
AIが学習できるほど充分な数の写真データがインターネット上に蓄積されていれば(メジャーな種なら)、その方法(画像認識)でも上手く行くのですが、コハナバチ?のようなマイナーな種類の虫だとあまりあてになりません。 
あいにく私はコハナバチについて疎いので、今回の回答がAI特有のハルシネーション(自信満々の知ったかぶり)かどうかも判断できません。 
ハナバチに詳しい人にぜひ判定してもらいたいところです。
コハナバチ科の中には、ヒトの汗を好んで舐める蜂がいるらしいのですが、今回の個体は私の汗ばんだ手を舐めに来ませんでした。


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