2023/04/09

ニホンカモシカの親子が同じ落枝に続けて眼下腺マーキング【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月上旬・午後18:05頃・気温19℃ 

トレイルカメラで見張っている里山のスギ林道にある晩、ニホンカモシカ♀(Capricornis crispus)が左からやって来ました。 
道端の斜面に突き刺さった落枝の先端の匂いをいつものように念入りに嗅いでいます。
落枝の先に眼下腺を擦りつけてマーキングしていると、左からカモシカの幼獣が登場しました。 
幼獣の頭には角が未だほとんど生えていません。 
カモシカ成獣の性別を見分けるのは至難の業なのですが、子連れということは、先導の個体は母親♀なのだと判明しました。 

ニホンカモシカ母子が並んで林道上に残された溜め糞場sの匂いを嗅いでいます。 
ここはホンドタヌキNyctereutes viverrinus)とニホンアナグマMeles anakuma)が共有している溜め糞場sです。 
母親にとっては縄張り内で馴染みのある匂いで溜め糞場を素通りすることが多いのですが、幼獣は異種の糞便臭に興味津々です。
関連記事(同所で2ヶ月に撮影)▶  
タヌキ・アナグマの溜め糞場の匂いを嗅ぎ回る若いニホンカモシカ【トレイルカメラ】 
溜め糞場でタヌキ・アナグマの匂いに興味津々のニホンカモシカ幼獣【トレイルカメラ】
カモシカ幼獣は次に母親の左側に回り込むと、スギ落枝の匂いも嗅ぎ始めました。 
母親が擦り付けたばかりの眼下腺の新鮮な匂いを嗅いで覚えているのでしょう。 
自分も母親の真似して顔を落枝に擦り付けたかどうか、定かではありません。 
眼下腺マーキングの直後に舌をペロペロと出し入れしているのは成獣と同じでした。(一種のフレーメン反応?) 

その間、母親♀は画面の下に移動し、しばらく姿を消しました。 
カメラの死角で何をしているのか分かりませんが、トレイルカメラを固定したスギの幹にも眼下腺で匂い付けしていたのかもしれません。 
トレイルカメラ自体に興味を示して匂いを嗅いでるようですが、あまりにも至近距離過ぎて母親の耳や角しか写っていません。 

トレイルカメラが少し途切れた間に、カモシカ幼獣はスギ立木の右奥に自生するコシアブラ幼木に興味を示していました。 
実は以前そのコシアブラの枝葉に通りすがりのカモシカが眼下腺マーキングしていたのですが、スギ落枝が林道脇に出現したら、カモシカは見向きもしなくなっていたのです。 
幼獣はスギ立木の後ろを回り込んで、斜面(下り坂)に姿を消しました。 
どうやら斜面で下草を採食しているようです。 
それとも、母親と隠れんぼして遊んでいるつもりなのでしょうか? 

画角内に戻ってきた母親♀が振り返って暗闇で幼獣を探しています。 
夜の真っ暗な山林でニホンカモシカの母子がはぐれそうになっても、お互いの居場所を伝えるために、ニホンザルのようにコンタクトコールで鳴き交わしたりしないのが不思議でなりません。 
まさか、我々ヒトが聞き取れない超音波でも発しているのでしょうか? (そんな話は聞いたことがありません。) 
カモシカの母子は体臭やかすかな物音(息遣い?)だけでお互いの居場所が分かるのかな? 
最後に母親♀は隠れた幼獣をほったらかしにしたまま、林道を右に立ち去ってしまいました。 
その後、カモシカ幼獣がどうなったのか、無事に母親と合流できたのか、気になるところですが、残念ながら録画が打ち切られていました。
母親がドライに子離れした瞬間だとしたら、それはそれで興味深い映像です。
乳離れして自力で採食できるようになった幼獣は、次第に母親から離れて独立するのでしょう。





【追記】
武田修『ロッキーへの手紙』という本は、親からはぐれた生後1ヶ月の幼獣♂を保護してから2年間飼育して山に放獣するまでのノンフィクションです。
・野生のカモシカは、他の動物に見られるような親離れの儀式を行うことなく、自分のタイミングで、自然に親から離れます。(p96より引用)
・(福島県鳥獣保護センターの獣医師の説明によると:しぐま註)♂のカモシカは♀のカモシカに比べて、親に依存する期間が長く、山に返すまでの期間は♂のほうが長いのだそうです。人工保育の場合は特にそうで、センターでは、♀なら1年半、♂の場合は2件感育てるのだとのこと。(p85〜86より引用)
・(カモシカの幼獣が:しぐま註)「ミッ、ミッ」となくのは、まだ気持ちの上で余裕のある証拠。「どうしたらいいの?」「助けて!」という状態に追いつめられ、自分でどうしたらいいのかがわからなくなると「メェ、メェ」となくのです。(p61より引用)
今回の動画に写った幼獣の性別を見分けられません。
私はまだカモシカ幼獣の鳴き声を一度も実際に聞いたことがありません。

ニセアカシア樹上で獲物を探すスズバチ♀【探餌飛翔】

 

2022年10月上旬・午後15:50頃・晴れ 

川岸に自生するニセアカシア(別名ハリエンジュ)灌木の枝先をスズバチ♀(Oreumenes decoratus)が忙しなく飛び回っていました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@1:08〜)、スズバチ♀は食痕(虫食い穴)のあるニセアカシア小葉や熟した豆果を次々と調べていることが分かりました。 
ホバリング(停空飛翔)で狙いを定めてからぶつかるようにアタックしたり、着陸して触角で念入りに調べています。 
どうやら泥巣に貯食する獲物(蛾の幼虫)を探索する探餌飛翔のようです。 
雄蜂♂の探雌飛翔ではありませんでした。

ニセアカシアに巻き付いて育った蔓植物のツルウメモドキの果実が黄色から赤く色づき始めています。 
探餌飛翔するスズバチ♀は、ツルウメモドキには全く興味を示しませんでした。 
背後にジョロウグモ♀(Nephila clavata)が枝間に張り巡らせた円網が見えますが、スズバチ♀は気にせず飛び回っています。 

残念ながら狩りに成功するシーンが撮れる前にスズバチ♀を見失ってしまいました。 
秋が深まると獲物の数が減り、母蜂は苦労しているようです。

関連記事(3年前の撮影)▶ アオムシを狩るエントツドロバチ♀

磐田久二雄『日本蜂類生態図鑑:生活行動で分類した有剣蜂』を紐解いてスズバチが狩る獲物について調べると、
スズバチは体長2.5〜3.5cmのフトスジエダシャク(の幼虫:しぐま註)を3〜8頭貯える。(p37より引用)
とあります。 
しかし、フトスジエダシャクの食樹はセンダン(のみ?)とされています。 
センダンは温暖な西日本にしか分布しませんから、当地(北日本)では見たことがありません。 
フトスジエダシャク成虫も私は未見です。 
したがって、今回観察したニセアカシア樹上にフトスジエダシャク幼虫は居なさそうです。 

一方、最近の資料(例えば『狩蜂生態図鑑』p89)によると、スズバチの獲物は「シャクガの幼虫(尺取虫:しぐま註)」と一般化されていました。 
狩蜂が貯食する獲物を正確に同定するのは困難です。 
狩りの際に麻酔されてしまうので、救出しても飼育下で成虫が羽化しないからです。 
DNAバーコーディングが普及すれば調査研究が飛躍的に進展するはず、と期待しています。

2023/04/08

路上で毛繕いする野生ニホンザル♀♂にどれだけ近づけるか「ダルマさんが転んだ」チャレンジ!

 



2022年10月上旬・午後13:55頃・くもり 

山間部の峠道にニホンザルMacaca fuscata fuscata)の♀♂ペアが居座って、長々と相互毛繕いしています。 
普段の私なら離れた位置に留まって野生動物を動画でじっくり長撮りするのですが、この日はどうしても猿の横を通り過ぎて道を先に進まないといけない用事があり、少し急いでいました。 
どのぐらい効果があるか分かりませんが、ニホンザルを警戒させないように、まず迷彩柄のマスクを装着しました。 
猿が油断して2頭とも下を向いたときに忍び足でゆっくり近づき、顔を上げたら停止する、という「ダルマさんが転んだ」作戦のスタートです。 
逃げられても仕方がないと思いつつやってみたら、「餌付け」しなくても至近距離(2〜3m)まで近づくことができました。 
ブラインドに隠れるのではなく、野生動物に自分の身をあえて晒して丸見え状態で慣れてもらう「ヒト付け」はフィールドワーカーの達人の極意ですが、その真似事に成功したようです。 
もしかすると、これまで山中で何度も遭遇したことのある群れの一員で、私のことはすっかり顔馴染みだったのかもしれません。(「またアイツか…」) 

注意点としては、餌を決して与えないことと、決して猿の目を直視しないことです。 
手元のデジカメのバックモニターまたはファインダーを常に見るようにします。 
ニホンザルと直に視線を合わせてしまうと、彼らの世界では喧嘩を売ってることになります。 
「何だてめぇー、ガンつけやがったな!」
女子供の場合は怒った猿に襲われるリスクさえありますから、真似するときは自己責任でご注意ください。 
女性や子供は大人の男性に付き添ってもらうか、サファリパークのように車中から観察するようにした方が安全でしょう。
(私が女子供に差別意識がある訳ではなく、ニホンザルの習性として現実がそうなので、ヒトの世界のポリコレをニホンザルの世界に持ち込んでもどうにもできません。)
こちらが常にゆっくり動く姿を見せることで「いざとなったら自分たちの方が素早く逃げられる」という自信を猿にもたせることができます。
「鈍臭い奴だな〜」と良い意味で舐めてくれたら、ニホンザルに近づいても怖がらなくなります。

よほど私のことを人畜無害と信頼してくれたのか、互いに毛繕いしながらチラチラとこちらを見つつも、全く逃げようとしませんでした。 
目の前の路上に黄色い落ち葉がハラハラと舞い散っても、ニホンザルは気にしません。 
後半はさすがに緊張したように起き上がって逃げ腰になりましたが、それでも対他毛繕いを続けています。
ひょっとすると私から餌をもらえるのかと期待していた可能性もありますが、深刻な猿害問題を知っている私は野生ニホンザルに給餌したことは一度もありません。






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