2022年10月上旬・午後23:00頃
里山の林道で水溜りのある区間をトレイルカメラで監視していると、深夜にニホンカモシカ(Capricornis crispus)の親子が通りかかりました。
ちなみに、冒頭のシーンは数日前の明るい昼間に撮った現場の様子です。
画面の右に水溜りの泥濘があります。
林道一面にミゾソバなど湿った土壌を好む下草が覆い尽くしています。
画面の奥(上)は林道脇の法面(斜面の山側)になっていて、カメラの背後が斜面の谷側です。
まず初めに、カモシカの成獣が林道を右から現れました。
水溜りの手前でミゾソバを採食しています。
半身になってくれたのですが(@0:30〜)、右肩に黒点はありませんでした。
右から左へ林道をゆっくり移動しながら採食を続けています。
林道の右端を歩くので、林道脇の法面に生えた雑草もたまに食べています。
やがて、画面の右端から幼獣が登場します。(@2:34〜)
親子のペアなので、先行する成獣はおそらく♀だろうと判明しました。
暗闇でカモシカの母子がつかず離れず採食行動しているのに、コンタクトコールで互いに鳴き交わしていませんでした。
月明かりがあるのかと思い調べてみると、この日は月齢7.2の半月で、撮影時刻は月が沈んだ後でした。
つまり、月明りは無かったことになります。
辺りは鬱蒼とした雑木林の山林ですから、たとえ晴れていたとしても星明りもほとんど届かない闇夜ではないかと思います。
その後はニホンカモシカの母子が仲良く並んでひたすら採食しています。
幼獣の体高は、母親の半分ぐらいでした。
以前、この林道の下草が延々と泥で汚れているのを見つけたのですが、てっきりイノシシが泥浴びをした後に走り回ったからだと思い込んでいました。
関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ ニホンイノシシによる泥汚れ?(2)獣道の下草
ひょっとするとイノシシの仕業ではなくて、体高の低いカモシカ幼獣が母親について林道を歩き回った痕跡かもしれない、と今回の映像で気づきました。
もしも幼獣の腹の毛が泥水で濡れていれば、下草にも擦れて泥汚れが付きそうです。
カモシカ幼獣の背中には「ひっつき虫」が大量に付着しています。
獣道の茂みを通った際に草の実がカモシカの毛皮に付着し、遠くに運ばれて種子散布されるのでしょう。
採食の合間に幼獣が右後脚の蹄?で右首?(耳?)を掻き、身震いしました。(@4:27〜)
ヤブ蚊など吸血性の昆虫に刺されて痒かったのでしょう。
先行する母親が林道を左に立ち去りかけると、後に続く幼獣は眼の前にある母親の尻の匂いを嗅ぎました。(@5:22〜)
授乳するかと思ったのですが、違いました。
カモシカのおっぱいは後ろ足の間にあり、赤ちゃんカモシカは、お母さんの後ろ足の内側に頬をくっつけるようにしてお乳を飲むのです。(武田修『ロッキーへの手紙』p19より引用)
もう完全に乳離れしているのでしょう。
暗闇でうっかり母親にぶつかりそうになっただけのようです。
ちなみに、幼獣の頭部にはかなり短い角が生えかけていました。
親子水入らずの採食シーンを自動撮影カメラの前で長々と披露してくれました。
カモシカは草食獣有蹄類の中でも採食様式がbrowserに分類され、灌木の葉を主に食べると本には書いてあるのに、この動画では明らかにミゾソバなど草本植物ばかりを食べていました。
画面の手前(林道の左端)に雑木林の幼木が点々と生えているのですが、その葉をカモシカ親子は全く口にしませんでした。
少なくともこの時期はミゾソバが美味しい食べ頃(旬)らしく、カモシカは大好物なようです。
ここは東北地方日本海側の多雪地帯でニホンジカ(採食様式grazer)は進出できませんから、カモシカには餌植物を巡って競合する強力なライバルが居ません。
したがって、当地のカモシカは選り好みせずに機会があれば木の葉だけでなく草も食べる、ということなのかもしれません。
(grazerのニッチが空いていればカモシカも時にはgrazerのように草を採食する)
※ 動画編集時に暗い映像は自動色調補正を施して明るく加工しています。