2020/12/24

ミドリヒョウモン♂の求愛飛翔と♀の交尾拒否

 

2020年9月上旬・午前9:35頃・晴れ 

山間部の林縁に咲いたオトコエシの花で吸蜜するミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)に対して同種の♂がしつこくつきまとって求愛していました。 
本種の求愛行動は初見です。 
リアルタイムの映像では激しい乱舞にしか見えません。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、なんとか行動を読み解くことができました。 
ミドリヒョウモンは翅の地色で性別を見分けることができる(性的二型)ので、配偶行動の観察に適しています。  
♂の翅は明るい茶色(オレンジ色?)なのに対して、♀の翅は薄くて名前の通り緑っぽい地色です。 

冒頭で♂は♀の周囲で激しく翅をはためかせてアピールしています。 
翅表の黒い性斑を♀に誇示したり性フェロモンを送ったりしているのでしょう。 
しかし♀は翅を半開きにしたまま腹端をやや上に持ち上げて、交尾拒否姿勢を取っていました。 
♂にしつこく迫られた♀は嫌がって、オトコエシの花から下へ下へと葉の茂みへ落ちるように逃げていきます。  
クズの葉の縁に避難した♀は依然として交尾拒否姿勢のままです。
♂が飛びつこうとすると嫌がる♀は逃げて飛び去り、 ♂はすかさず追いかけます。 
空中で激しい乱舞のような追跡求愛飛翔が繰り広げられましたが、交尾には至らずに別れました。 

古い本ですが、日高敏隆『♂をよぶ色とにおい:チョウが♀を見い出す仕組み』に、ミドリヒョウモン♂の求愛飛翔とそれに続く交尾行動が詳しく図解されていました。
ミドリヒョウモンは夏の終わり頃交尾する。林の空き地のようなところで♀を待っている♂は、♀が現れるとすぐ追いかけてゆき、図のような特徴のある追跡をはじめる。(中略) ♀を見つけたミドリヒョウモンの♂は、特殊な追跡飛翔をはじめる。♀のうしろからその下側に出て、さらに目の前を急上昇するのである。これが♀を強制着陸させる信号となる。(『エソロジカル・エッセイ 無名のものたちの世界I』p92〜93より引用)
最後は♀がしつこい♂を追い払ったようにも見えたのですが、引用した解説を読むと、そうではないようです。 
♂が♀の背後から下を通って追い越す求愛飛翔を繰り返したのに♀が誘いに乗らず、♂は♀を見失った(または諦めた)のでしょう。  

現場は峠道の道端で、スギが植林された山の林縁にクズなどが繁茂するマント群落になっていました。 
まさに本に書いてあった通りの環境です。 
昔は蝶の生態動画を自由に撮れなかったはずなのに、先人の鋭い観察眼と緻密な記録にはつくづく感服します。
もちろん、本の解説を全て鵜呑みにはできません。
頭の片隅では常に疑ってかかることが大切です。

オオイタドリの花蜜を吸うクロアナバチ

 

2020年8月下旬・午前9:05頃・晴れ 

堤防路に沿って咲いたオオイタドリの群落でクロアナバチSphex argentatus fumosus)が忙しなく訪花していました。 
白い花穂で口吻を伸ばして吸蜜した後、すぐに飛び去ってしまいました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、頭楯が真っ白だったのでコクロアナバチではなくクロアナバチだと思います。 
クロアナバチの性別の見分け方を私は知りません。


▼関連記事(同日に撮影)

2020/12/23

水門から川の魚を探すカワセミ♂(野鳥)

 

2020年8月下旬・午前7:50頃・晴れ
▼前回の記事 
早朝の川に飛び込んで魚を捕るカワセミ♂(野鳥)
ようやく朝日が高く登り、ギラギラした夏の日差しが川に差すようになりました。 
顔馴染みになったカワセミ♂(Alcedo atthis bengalensis)が飛来し、用水路から川の本流に注ぐ水門の右のコンクリート護岸の天辺に止まりました。 
あまりにも至近距離なので、私はドキドキしながら息を潜めてそっとカメラをカワセミに向けました。 
カワセミがすぐに飛び立ってしまい、落胆しかけたのですが、今度は水門を挟んで左のコンクリート護岸の天辺に止まり直しました。 
「青い宝石」が間近で飛ぶ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
ホバリングしながらコンクリートの先端に止まり直す素振りを一瞬見せてから水門の反対側に飛んだのが見どころです。 
水門を挟んで両側のコンクリート護岸を行ったり来たりしています。  

護岸に止まったカワセミ♂は、ときどき首を上下に伸ばす仕草を繰り返し、川面を見つめています。 
藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか』岩波科学ライブラリーを読むと、この行動の意味が分かりました。
歩くでも泳ぐでもなく、じっとしているときに首を上下に振る鳥たちもいる。たとえばカワセミだ。(中略)このカワセミを観察していると、ひょいっと首を上に伸ばして、その後に縮める仕草を見せる。この一連の動作は、いったい何なのだろうか?  実はこれは、光の反射などによって見づらくなっている水中の獲物や天敵を見やすくするための行動である。私たちも、川や池にいる魚を見ようとすると、光の加減で水面が反射してしまい、よく見えないことがある。そんなとき、ちょっと頭の位置を変えてみると、見やすくなることがある。それと同じことを、カワセミは上下に首を振ることで行っているのである。 ここでも首振りは、視覚と、そして採食行動が関係しているのだ。 (p101〜102より引用)
水中の魚影を探しながら、小声で鳴いていました。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。  

美しい翡翠色とオレンジ色の羽根が真夏の直射日光で輝いて見えます。 
後頭部から白い綿毛のような羽毛が寝癖のように飛び出ているのが愛嬌ありますね。(換羽中?) 
顔を向ける角度によっては下嘴の下面が少し赤く見えましたが、♀ならもっと全体が赤いはずです。 (もしかして、この個体は♂ではなく若い♀?)
憧れのカワセミをこれほど至近距離から撮らせてもらえて、痺れるほど感動しました。 

 最後はコンクリート護岸から身を翻しながら右へ飛び去り、続けて右から左へ川面スレスレの低空飛行で倒木の方へ飛び去りました。 
もしかすると隠し撮りしている私の存在にはとっくに気づいていて、フェイントをかけたつもりなのかもしれません。 (別個体、例えばつがい相手の♀とすれ違った可能性もありそうです。)


カワセミ♂が止まっていたコンクリート護岸上には白い鳥糞が多数付着していました。 
今回は飛翔前に脱糞しませんでしたが、ここはカワセミが魚を狙うお気に入りの場所のひとつなのでしょう。 
カワセミが吐き出したペリットは見つかりませんでした。(川に落ちてしまうのでしょう。) 
実は以前、ここの対岸でカワセミを目撃したこと、水門の陰から飛び去るカワセミを目撃していました。
更に、水門コンクリート護岸に残された鳥糞の存在からカワセミが来ることを予想(確信)して、私はここに夜明け前からブラインドを張って待ち構えていたのです。 
作戦が見事に成功したので最高の気分です。 
川辺りで徹夜した甲斐がありました。 

水門の真下を覗くと、川の中に黒っぽい小魚が群れていました。 
※ 水中の小魚を早朝6:30頃に撮ったラストシーンだけあまりにも暗過ぎたので、自動色調補正を施しています。

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