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2020/05/22

川面で求愛するカルガモ♀♂(冬の野鳥)



2019年12月中旬・午後12:50頃・晴れ

川面に2羽のカルガモ♀♂(Anas zonorhyncha)が並んでいました。
上流を向いて互いに見つめ合いながら、首を伸縮させて頭を上下に動かし、交互にお辞儀を繰り返しています。
これはカルガモの求愛行動です。
なかなか良い雰囲気のカップルで、このまま交尾に発展しそうだったのですが、直後に飛来したカワウに気を取られてしまい、カルガモの配偶行動を最後まで見届けられませんでした。



▼関連記事(数日後に同じ川で一部始終を撮影)
カルガモ♀♂の求愛・交尾行動(冬の野鳥)

右の個体が大きいが、この時点では性別不明。

2020/05/19

誤認求愛を繰り広げるフタモンアシナガバチ♂の群飛【HD動画&ハイスピード動画】



2019年10月上旬・午後12:10頃・快晴

この日は朝から秋晴れで、フタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)雄蜂♂の群飛をあちこちの日向で見かけました。
道端に設置された日当たりの良い石碑(庚申塔)の周囲で繰り広げられていた激しい群飛に注目しました。

日光に熱せられて温かい石碑の上で数匹のフタモンアシナガバチ♂が並んで日光浴しています。
顔色が白く、触角の先端がカールしているのがアシナガバチの雄蜂♂の特徴です。
その周囲でも多数の♂が忙しなく飛び回り、石碑に離着陸を繰り返していました。
石碑上で頻繁に♂同士が飛びついて、一見すると激しく喧嘩しているように見えます。
240-fpsのハイスピード動画に切り替えて撮ってみると、何が行われているのか明らかになります。(@0:13〜)

石碑に乗って休んでいる♂の背中に次々に飛びつくものの、飛びつかれた個体は無反応です。
噛み付いたりしていませんし、石碑から追い払おうと縄張り争いの喧嘩をしている訳でもありません。
探雌飛翔中の♂が焦って互いに誤認求愛・マウントしているようです。
間違いに気づくと何事もなかったように再び飛び去ります。
本番の交尾に備えて、新女王に真っ先に飛びかかる練習をしているのかもしれません。
石碑上で身繕いする♂個体もいました。

私は未だアシナガバチの群飛からの交尾行動を野外で観察したことがありません。
毎年探し歩いているのですが、なかなか幸運に恵まれません。

▼関連記事(6、9年前の撮影)
フタモンアシナガバチ♂の群飛
フタモンアシナガバチ♂の群飛と誤認交尾【HD動画&ハイスピード動画】


フタモンアシナガバチ♂群れ@石碑+日光浴+誤認求愛

フタモンアシナガバチ♂群れ@石碑+群飛・全景


2020/05/18

カルガモ♀♂の求愛・交尾行動(冬の野鳥)



2019年12月中旬・午前11:32・晴れ

川面に並んで浮かぶ2羽のカルガモAnas zonorhyncha)が求愛行動(お見合い)を始めました。
互いに見つめ合いながら交互に頭を上下に動かしています。
このヘッドトッシングと呼ばれる求愛の際に嘴を一瞬水面に付けるので、次に首を伸ばすと嘴から水が滴り落ちました。
左の個体が♂、右の個体が♀でした。
♀のお辞儀の動きが小さくなり、頭を水面に下げました。
その背後から♂がのしかかり(マウント)♀の首筋を軽く咥えて体を保定すると、交尾に成功しました。
短い交尾を終えると、♂は頭を低くした姿勢で川面を泳ぎ去り、♀から素早く離れました。(儀式化された求愛行動のレパートリーの一つで、nod-swimmingと呼ぶそうです。)
その場に残った♀は、全身を水中に漬けて水浴を繰り返します。
次に伸び上がって羽ばたき、濡らした嘴で羽毛を整えました。(羽繕い)

※ 動画編集時いつものように手ブレ補正は施しませんでした。(副作用が酷いため)
カルガモの求愛・交尾の一部始終をしっかり観察できたので満足です。
一年越しの宿題が解決しました。

▼関連記事(1年前の撮影)
池の水面で求愛・交尾するカルガモ♀♂【冬の野鳥】

八木力『冬鳥の行動記:Ethology of Wild Ducks』という本で読んだことのある、カモ類の交尾行動と同じでした。

 交尾には♀との合意が必要なので、♂が♀に近づきながら頭部を上下させるヘッドトッシングを行なって交尾を促し、これに♀が同調して頭部を上下させれば同意の合図。
♀は交尾受け入れの姿勢をとります。♂は♀の後頭部をくわえてマウンティング。
交尾終了後、♀は必ず(儀式的水浴びと)転移性羽ばたきを行ない、♂はまれに行なうことがあります。 (p58より引用)


カルガモ♀♂(野鳥)@川面+交尾

2020/05/11

川面で後退運動するカルガモの謎



2019年12月中旬・午前11:05頃・晴れ

川の対岸近くで仲良く浮かんでいる2羽のカルガモAnas zonorhyncha)の内の1羽が奇妙な行動を繰り返しているので気になりました。

川面で動かずに休んでいる1羽(♀?)の横で、もう1羽(♂?)が首を伸ばして頭を下げた姿勢で後退する奇妙な動きを何度も繰り返しています。
必ず相手の真横に戻ってから後退運動を始めています。
残念ながら川の水が濁っているため、後退時に水中で水かきの動きを見ることは出来ませんでした。
横の相手に(構って欲しくて?)後退運動を見せつけている気がしました。
謎の行動を見せられた個体(♀?)は無反応です(やや迷惑そう?)。

カルガモのこんな行動を見るのは初めてですし、本で読んだこともありません。
求愛誇示行動の一つなのでしょうか?
ただし今回♂によるヘッドトッシング(求愛行動)は見られませんでした。
例によって、カルガモの性別を外見で見分けられないのが残念です。
水面に浮いた餌を採食する行動だとしたら、わざわざ後退する意味が分かりません。
それとも、ただの遊びだとしたら、それはそれで面白い話です。


つづく→同じ日に観察したカルガモの求愛交尾(別のペア)








【追記】
All About Birdsという英語のサイトで「How To Recognize Duck Courtship Displays」という解説記事を読んでみたら、♀が♂に交尾を迫る求愛行動という意外な可能性が出てきました。

Nod-Swimming: A male or female swims rapidly for a short distance with its neck held low, just grazing the surface of the water. Females use it to express they are interested in courtship and stimulate the nearby males to display. Males perform this display during bouts of Head-Up-Tail-Up display and immediately after mating.
ただし、これはカモ類の代表としてマガモを例にした解説であり、カルガモと共通かどうか分かりません。
頭を低く下げたまま水面を短く素早く泳ぐ行動と書いてあるだけで、前進とも後退とも明記していません。(添えられた挿絵を見ると、nod-swimmingは前進すると考えるのが自然だと思います。)





SUZUGAMOさんのYouTube動画では、カルガモが餌箱から採食する度になぜか後ずさりしています。
この場合は単独でやっているので、誇示行動ではない気がします。(真空行動?)


2020/05/08

交尾後ガード中のキボシカミキリ♂は浮気できない



2019年10月下旬・午後16:10頃・晴れ(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
キボシカミキリ♂同士の喧嘩(強奪した♀と交尾)


西日を浴びたヤマグワの幹にキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の♀p♂1ペアおよび単独♀sが居ました。
♀2匹はそれぞれ樹皮を齧って産卵加工しています。
♂pは長い触角を真横に広げ、♀pの背後で静止しています。
マウントしているものの交尾器は結合していないようなので、おそらくリッキングしながら交尾後ガードしているのでしょう(配偶者防衛)。

どうやら♀sは齧っていた場所が産卵に向いていないと判断したようで、別の産卵適地を探してヤマグワの幹を上に登り始めました。(@0:34)
上に陣取っていた♀♂pペアに♀sが触角で触れ、なぜか♀pに接近しました。
しかし結局、♀♂pペアから離れて更に上へ登って行きます。
♂pは自分の触角で♀sの存在に気づいたはずなのに、特に何もアクションを起こしませんでした。
ライバル♂に対するときのように敵対的に追い払わなかったということは、♀体表に存在するコンタクトフェロモンによって戦う必要のない♀だと認識していたのでしょう。
♂が新しい♀に乗り換えて浮気することもありませんでした。
交尾相手♀が産卵するまで一夫一妻で密着マークした配偶者防衛が必要なキボシカミキリ♂は、ハーレム(一夫多妻制)になれないのでしょう。

周囲にライバル♂が全く居ない状況であれば♂は交尾後ガードする必要がなくなり浮気し放題のはずですけど、実験してみたらどうなるか興味があります。
キボシカミキリは視力が悪くて触角頼みなので、「周囲にライバル♂が全く居ない状況」だと認識するのが困難かもしれません。
一方、♀pは産卵加工に夢中で、近寄って来た♀sが触れても全く無反応でした。
この結果からキボシカミキリの♀同士の争い(嫉妬?)は無いのかと私は思ったのですが、専門家によると♀同士で喧嘩することもあるらしいです。

奥が深いですね。

深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

 キボシカミキリは寄主上で♂、♀共に徘徊、待ち伏せをするが、♂の方がより活発に歩き回る。しかし雌雄とも、ごく近くに異性が存在しても直接に触る前に相手に気づいているようには見えない。(中略)キボシカミキリは接触する前に配偶者を認識し、定位するとは考えられていない。 (『カミキリムシの生態』第5章p160より引用)

同じ著者が公開している文献をPDFファイルでダウンロードして読むと、

キボシカミキリやマツノマダラカミキリにおいては雄どうし, 雌どうしの闘争行動がみられる. また奇妙なことにキボシカミキリでは雌 どうし(12), マツノマダラカミキリでは雄どうし(1)のマウント行動が観察されている.
(深谷緑 "さわってわかるキボシカミキリの雌と雄" 化学と生物 34(2) 92-95 1996年2月)





ここからは余談です。

余談その一(映像の後半について)。

幹の左側に独身♂xが登場し、どんどん上に登って行きます。(@1:07)
そこで交尾後ガード中の♀♂yペアと遭遇しました。
映像で見えているのは♂yだけですが、これ以降の行動から配偶者防衛中だと推測されます。
おそらく幹の陰で♀yが産卵加工しているのでしょう。
♂xが♀♂yペアの間に割り込もうとしましたが、♂yが怒ってお邪魔虫♂xを追い払いました。
体格を比べると明らかに♂x<♂yなので、あぶれ♂xが喧嘩に負けたのは納得です。
♂yは配偶者防衛戦に勝ちました。
負けたあぶれ♂xはすごすごと幹を登って行きます。
右後ろには♀sが単独で登って来ているのに、♂xは存在に気づいていません。
独居♀♂同士が出会ってカップル成立するまでの過程を残念ながら観察できませんでした。

次に機会があれば、特定の♀♂ペアをじっくり長撮りして、多回交尾(精子置換)を観察してみたいものです。
日没後に行われる産卵行動を暗視カメラで夜通し撮影するのも今後の宿題です。


余談その二。

この1本のヤマグワの木に集合した個体数を最後にカウントすると、♀♂ペアが7組、単独個体(あぶれ♂?)が3匹の計17匹でした。
(単独個体は常に動き回っている上に、日没後の暗闇でカウントしたので、数え漏れなどの誤差があるかもしれません。)
これほど多数のキボシカミキリを一度に見たのはこれが初めてです。

ここは東日本なのに、今回私が見たキボシカミキリは全て、なぜか前胸背の縦線が途切れる西日本型でした。(下記掲載の写真を参照)
新谷喜紀『キボシカミキリの生活史と休眠』によると、

日本本土のキボシカミキリの2型。前胸背の斑紋が中断するか連続するかが異なっている。 (『カミキリムシの生態』第6章p195より引用)

おそらくクワやイチジクなどの苗木を西日本から移植した際に本種幼虫が材中に潜んでいて、分布を東日本に拡大した結果と考えられます。


ちなみに、宮沢輝夫『山形昆虫記』に掲載されたキボシカミキリの写真も西日本型でした。

県内でよく見られるようになったのは近年のこと。
県内では1970年代に生息が確認され、数を増やしている。(同書より引用)


鈴木知之『新カミキリムシ ハンドブック』でキボシカミキリを調べると、
本州には前胸背板両側の縦条が分断される関西型と完全な関東型が知られ、DNA解析の結果、前者は中国大陸、後者は台湾からの移入と考えられている。関東地方には関西型も普通にいて、互いに交雑している。(p86より引用)




シリーズ完。



2020/05/05

キボシカミキリ♂同士の喧嘩(強奪した♀と交尾)



2019年10月下旬・午後16:30頃(日の入り時刻は午後16:41)

▼前回の記事
キボシカミキリ♂同士の喧嘩(配偶者防衛に成功)

寄主植物ヤマグワの幹のあちこちでキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の配偶者防衛(交尾後ガード)が繰り広げられています。
この記事では、♂が防衛戦に破れライバル♂が♀を強奪した1例を紹介します。

桑の幹に下向きになり産卵加工および交尾後ガードしている♀♂gペアの背後から独身のあぶれ♂hが迫って来ました。
配偶者♀を守る♂gは振り返らず、♀の背に覆いかぶさるようにマウントしたまま対抗します。
長い触角を振り立ててライバル♂hを払いのけようとしました。
今回のあぶれ♂hはすぐに♀♂gペアの間に割り込むのではなく、珍しい戦法を繰り出しました。



なんと、あぶれ♂hが交尾♂gの左触角の根元に背後から噛み付いたのです。(@0:20)
鋭い大顎で対戦相手♂gの触角を力任せに噛み切るのではなく、咥えた触角を上に引っ張り上げようとしているようです。
♀から♂gを引き剥がそうという作戦なのでしょう。
触角を咬まれた♂gは急に戦意喪失し、なんとか振りほどくと逃げ出しました。
勢いに乗った♂hは長い触角を使って♂gを♀から押しのけます。
このとき対戦相手♂gを一瞬見失った♂hが、顔を♀の下から潜り込ませて♀の腹端をグイグイ押し上げたのが興味深く思いました。
闘争中の興奮状態とは言え、キボシカミキリの視力は良くないことが改めて分かりました。

一旦離れて体勢を整え直した♂gが振り返って♂と正面から対峙しました。
触角の根元を使ったスタンダードな押し相撲になっても、♂hが勝ち切りました。
負けを悟った♂gが配偶者♀を残して敗走すると、勝者♂hはしつこい追撃をしませんでした。
交尾後ガードする♂が喧嘩に負けて♀を奪われるシーンを初めて目撃した私は、とても興奮しました。
キボシカミキリ♂同士の喧嘩では体長の大きな個体が勝つらしいのですが、今回対戦した♂2匹の体格が本当に敗者♂g<勝者♂hかどうか定かではありません。
マクロレンズで接写したことで大迫力の格闘シーンが撮れたものの、逆に♂の全身の長さ(体長)がよく分からなくなってしまいました。
独身♂gの作戦勝ちという可能性もありそうです。
背後から襲いかかる戦法を卑怯と非難しても仕方がありません。
もし少しでも勝率の高い必勝法だとすれば、いずれこの戦法が広まるでしょう。
相手触角への噛みつき攻撃を見たのはこれが初めてです。
触角が途中で欠損したカミキリムシをたまに見つけるのは、こうした激しい♀争奪戦の結果でしょうか?
♂の触角は♀を探索したり♂同士で戦ったりするのに必須ですから、片方でも失っては大変です。

カミキリムシの触角は、匂い、接触化学感覚、圧力、接触感覚などを受容する多種感覚情報受容器官なのである。 (『カミキリムシの生態』第5章p162より引用)
あるいは喧嘩中に相手の触角を噛み切ることはしないという紳士協定(武士の情け)があるのかもしれません。

♂同士が争っている間も♀はひたすら樹皮齧って産卵加工を続けていました。
♀としてはどちらが勝とうがお構いなしで喧嘩に勝った強い♂と交尾して精子を受け取ればそれで良いのかと思ったのですが、『カミキリムシの生態』という専門書を読むとそんな単純な話ではありませんでした。

 昆虫の♀は体が小さい♂を好まないことが多い。カミキリムシにおいても同様である。キボシカミキリの♀は、♂をマウント時に蹴飛ばす、逃走するなど交尾拒否行動を示すことがある。 (深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』p171より引用)
今回の観察で私はキボシカミキリ♀が交尾拒否する例を見ていません。


・一般的に♀をめぐる♂同士の闘争においては体サイズが大きい方が有利なことが多いとされている。(中略)キボシカミキリでは、特にサイズが近い雌雄同士で交尾が成立しやすいということもなかった。(p172より)
大きな♂よりもむしろ小さな♂の方が積極的に♀にアプローチする(中略)一方大きな♂は鈍く、♀に反応しないことが多い。 (p172より)
・小さな♂はそのフェロモン感受性を高め敏感にすることで、♀に対して活発に接近、交尾試行を行うと考えられた。交尾の機会を増やすことで、繁殖上の不利を挽回することにある程度成功していると予想された。 (p173より)


勝ったあぶれ♂hが♀と体軸の向きを揃えてマウントすると、直ちに交尾開始。(@0:55)
♂hは♀の背中を口髭で舐めています。
リッキングが効いたのか、♀は従順に新しい♂を受け入れました。
焦げ茶色で先が尖っている♂腹端が割れると、体内からおそろしく長い黄色の交尾器が伸びてきました。
その先端は♀の腹端にある産卵管?(褐色の円筒状)に挿入しています。
交尾中も♀はひたすら樹皮齧って産卵加工を続けていました。
♀の前傾姿勢は交尾を受け入れやすくするためかもしれません。

♂hが交尾器を引き抜くと、細長くねじれた黄色いペニスはくるくると縮んで腹端に格納されました。(@2:16)
♂交尾器は最大限伸ばすと、ほぼ♂腹部と同じ長さになり驚きました。
一方で♀の方は交尾後もしばらくは腹端から産卵管?が伸びたままでしたが、最終的には体内に格納されていました。

新しく誕生した♀♂hカップルの交尾は意外にも短時間で終わりました。
これは本当の交尾ではなく、前の♂gが残した精子を♀の体内から掻き出す「精子置換」行動だと思われます。
キボシカミキリ♂は短時間の精子置換を何度も繰り返してから、長時間の交尾で自分の精子を♀に送り込む(射精)のだそうです。
しかし予備知識がなかった当時の私は、激戦の余韻を味わいながらも満足してしまい、この♀♂hペアから目を離してしまいました。

つづく→交尾後ガード中のキボシカミキリ♂は浮気できない


2020/05/02

キボシカミキリ♂同士の喧嘩(配偶者防衛に成功)



2019年10月下旬・午後16:11〜16:36(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
キボシカミキリ♀♂の交尾行動(交尾器のクローズアップ)

キボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の配偶者防衛(交尾後ガード)が寄主植物ヤマグワの幹のあちこちで繰り広げられていました。
この記事では、♂同士が争って配偶者防衛に成功しライバル♂を撃退できた3例をまとめて紹介します。(配偶者防衛の失敗例は次回)

シーン1:(@0:00〜1:09)

産卵加工している♀に背後から♂aがマウントし、交尾後ガードしています。
独身のあぶれ♂bが幹の上から歩いて降りて来ました。
♂は触角が真っ直ぐで長いので♀と区別可能です。
交尾中のペアに気づくと♀に接近し、♀♂aペアの隙間に強引に割り込もうとします。
♂aが♀の背に覆い被さってガードしながらライバル♂に応戦しました。
相手に大顎で噛み付いているような気もしますが、動きが激しすぎてよく分かりません。
決着が着くと、あぶれ♂bはあっさりと逃げ出しました。
勝った♂aは元のマウント姿勢(配偶者ガード)に戻りました。
喧嘩中はあぶれ♂bの方を向いていたのに、勝利の後は体軸を♀と平行に戻しました。
カメラを上下にティルトすると、更に多くの交尾ペアおよび単独個体が根際も含めて桑の幹のあちこちに集まっていました。
にも多い。


シーン2:(@1:09〜1:53)

産卵加工および交尾後ガード中の♀♂cペアを側面から撮っていると、独身のあぶれ♂dが幹の上から降りて来ました。
交尾中のペアに気づいて近づくと、お邪魔虫♂dは割り込もうとしました。
交尾後ガード中の♂cと独身♂dの間で激しい喧嘩が始まりました。
体格は目視でも♂c>♂dでした。
♂同士は互いに正面から向かい合うと、長い触角の根元付近で押し合いしています。
喧嘩中に相手を噛み付いてはいませんでした。
触角の長さあるいは体長を比べているのか、それとも単純に体重で勝負が決まるのでしょうか?
小柄な独身♂dが負けて、すごすごと立ち去りました。
逃げた先に別の交尾ペア♀♂が居たのですが、負けたばかりで自信喪失したあぶれ♂dは連戦を挑まずに、幹をどんどん下ってしまいました。



シーン3:(@1:53〜2:50)

マクロレンズで接写し始めたときには♂同士の闘争が既に始まっていました。
交尾後ガード中の♂eに対してあぶれた独身♂fが正面から戦いを挑んでいます。
触角の根元を押し合いながら上体を起こしてがっぷり四つになったときに、相手の身長や押す力を品定めしているのかな?
この試合でも大顎で相手に噛みつく攻撃はしませんでした。
あぶれ♂fが敗走しました。
♂同士が激しい格闘をしている間も、♀は平然と桑の樹皮を齧って産卵加工を続けています。
配偶者防衛に成功した♂は引き続きマウント体勢のまま交尾後ガードを続け、ときどき♀の背を口髭で舐めています(リッキング)。



深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

一般的に♀をめぐる♂同士の闘争においては体サイズが大きい方が有利なことが多いとされている。 (『カミキリムシの生態』第5章p172より引用)


つづく→キボシカミキリ♂同士の喧嘩(♀の強奪・交尾)




2020/04/29

キボシカミキリ♀♂の交尾行動(交尾器のクローズアップ)



2019年10月下旬・午後16:23〜16:34(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
キボシカミキリ♀が桑の幹を移動しても追従する♂(配偶者防衛行動)


キボシカミキリ♀♂(Psacothea hilaris hilaris)2ペアの交尾行動をマクロレンズで接写することができました。
薄暗い夕方なので、補助照明の白色LEDを点灯しています。
本来キボシカミキリの配偶行動は夕方から夜にかけて活発に行われるらしいのですが、照明が眩しくても幸い交尾行動に影響はなさそうです。

ヤマグワの樹皮を大顎で齧って傷つけて産卵加工している♀を撮っていると、前傾姿勢で大顎に力を込める♀の腹端で産卵管(焦げ茶色の細い筒状)が少し伸縮していました。
♀の口元には樹皮を削り取った木屑が付着しています。
♀の背後からマウントした♂がときどき♀の背中を口髭で舐めて(リッキング)います。
やがて♂が腹端を強く曲げて交尾器を伸ばし始めました。
茶色い♀産卵管の末端から♂交尾器を挿入したようです。
初めて見るキボシカミキリの♂交尾器は黄色くて細長く、ねじれていました。
1分足らずで♂が交尾器を引き抜くと、長いペニス(腹部の長さとほぼ同じ)は直ちに縮んで腹端に格納されました。
交尾に挑むマウント姿勢が浅い気がしたのですが、これほどペニスが長いのであれば納得です。
交尾中も♀は構わずに産卵加工を続けています。
交尾が済んでも♂は♀の元を離れずに交尾後ガードを続けます。

2組目のカップルでは交尾開始を見逃してしまいました。
この♂の交尾器は白かったです。
ペニスの色の違い(黄色/白色)は撮影角度や照明の有無によるものか、それとも移精の有無によるものか、どちらでしょう?


キボシカミキリは♂同士で精子競争があるそうです。
深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

 キボシカミキリの♂は、精子置換(sperm displacement)を行う。交尾の最初の段階で、短い間交尾器で接続する行動を反復し、このときに♂は♀体内にある先に交尾していたライバル♂の精子を、生殖器の先の逆だった鱗状の構造によって掻き出して除去している(sperm removal)。このあとに交尾器での長時間の接続を行い自分の精子を注入する。この掻き出しにより98%の精子が除去されるという。甲虫の♀が複数♂と交尾したとき最後に交尾した♂の精子が受精に有利とされている (『カミキリムシの生態』第5章p175より引用)



しかし撮影時の私はそこまで深い知識が無かったために、何回目の交尾行動なのかじっくり観察していませんでした。
つまり、今回撮れた映像が精子置換行動なのか、それとも射精を伴う本当の交尾行動なのか、不明です。
交尾器の挿入時間が短くてすぐに引き抜いてしまうのが意外でした。
(カメラの眩しい照明のせいで交尾を中断した可能性は?)
特定の♀♂ペアの動向を長時間ひたすら注目するべきでしたが、私にはその余裕がありませんでした。
桑の木のあちこちで繰り広げられる♀♂複数ペアの交尾行動を、目移りしそうになりながら夢中で接写していたのです。

つづく→キボシカミキリ♂同士の喧嘩(配偶者防衛に成功)




2020/04/27

桑の幹を移動するキボシカミキリ♀に追従する♂(配偶者防衛行動)



2019年10月下旬・午後16:17〜16:31(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
ヤマグワの樹皮を産卵加工するキボシカミキリ♀

川岸に生えた1本のヤマグワの幹のあちこちでキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の様々な配偶行動が繰り広げられるので、初めて観察する私は目移りしてしまいます。

この記事では、幹を徘徊する♀に注目して、交尾後の3ペアの映像をまとめました。
♀がゆっくりと幹を登ったり降りたり移動しています。
落ち着くと鋭い大顎で樹皮を齧って産卵加工を始めました。
産卵に適した場所をどうやって探り当てるのでしょうね?

幹を徘徊・探索する♀の背後を触角の長い♂がぴったりと付いて歩いています。
油断なく交尾後ガードを続けているのです。
♀が産卵を無事に終えるまで自分の精子が受精に使われたという保証がないので、♀が浮気しないように見張っている必要があるのです。

深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

(キボシカミキリでは、)♂が♀と交尾後、さらに産卵中も♀に前脚を掛け、ガードしている♂の配偶者防衛行動が見られる。 (『カミキリムシの生態』第5章p175-176より引用)

マクロレンズで接写したシーン2では、初め♀の体軸に対して♂は斜めにマウントして交尾後ガードしていました。
♀が幹を上に上るに連れて、♂は♀と同じ向きにマウントする姿勢になりました。


カミキリムシでは♀の体表構造(毛の生えた向きなど:しぐま註)によりマウント方向が決まるという報告は無く、キボシカミキリの場合は♂による腹部末端の位置の調節ほか、♀が歩きだし、♂が追従することによってマウント方向が確定するものと考えている。 (同書p170より)

接写してみて初めて気づいたのですが、どうやら♂は♀の背中をずっと舐めているようです。
この行動はリッキングと呼ばれるそうです。

・♂は♀を捕捉したのち各段階で♀背面を口ひげで舐める行動(licking)を繰り返す。 (同書p160より)
様々なカミキリムシにおいて♂のlicking(口髭で舐める行動)は♀を「なだめる」効果があるとされている。♀が♂の口髭による背面への接触を認識し、拒否的行動を止めるということである。このlicking行動は、♂が接触化学感覚子の密集した口髭で触って♀の体表のコンタクトフェロモン成分を能動的に受容する行動(active sensing)でもあると考えられる。 (同書p162より)


キボシカミキリ♂@交尾後ガード+リッキング


シーン3では、♂をつれた♀が幹の根際を下に下りていきます。
ところが♀は向きを変え、幹の裏側に回り込んでしまいました。



つづく→キボシカミキリ♀♂の交尾行動(交尾器のクローズアップ)


2020/04/26

スイバの群落で探雌飛翔するクロスズメバチ♂



2019年10月下旬・午後12:15頃

川沿いの土手に生えたスイバの群落でクロスズメバチ♂(Vespula flaviceps)が忙しなく飛び回っていました。
花はもう咲いていないので、吸蜜目当てではありません。
スイバの葉に一瞬だけ止まったものの、すぐに飛び立ちました。
もしワーカー♀ならば、芋虫を探す探餌飛翔となります。
しかし触角が長いので、雄蜂♂が交尾相手の新女王を探索しているのでしょう。

1/5倍速のスローモーションでリプレイ。




2020/04/25

ヤマグワの樹皮を産卵加工するキボシカミキリ♀



2019年10月下旬・午後16:10〜16:40(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
寄主ヤマグワに飛来したキボシカミキリ♂の探雌行動

寄主植物であるヤマグワの木に集まってきたキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の♀は何をしているのでしょう?
口元を接写すると、固い桑の樹皮を大顎で一心不乱に齧っています。
齧った樹皮を餌として食べて(飲み込んで)いるのか、という点を知りたいのですけど、接写してもよく分かりませんでした。
接写のための補助照明として白色LED(外付けストロボに付属)を点灯しても特に行動への影響はなさそうでした。

平凡社『世界大百科事典』でキボシカミキリを調べると、

成虫は5月ごろから出現し,イチジク,クワ類の葉を食し,また,これらの木の樹皮をかじって傷をつけ,その中に産卵管をさし入れて1個ずつ卵を産みつける。

このようにカミキリムシ♀が樹皮を齧る行動を正式な専門用語で「産卵加工」と言うらしいのですが、私を含め何も知らない素人には「産卵した後に卵を加工するのか?」という誤解を生む気がします。
例えば「産卵前加工」とか「産卵基質加工」と呼ぶのが適切ではないかと思うのですが、長年業界で使われてきた用語を変更するのは難しいのでしょう。

深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

キボシカミキリ♀は、樹皮に顎で穴を開け(産卵加工)、この穴に1卵ずつ丁寧に卵を産んでいく。 (『カミキリムシの生態』第5章p175より引用)

そもそもカミキリムシ♀がどうして産卵加工をするかと言うと、

寄主植物にはカミキリムシ幼虫を体内に住まわせるメリットは何もないから、カミキリムシ側の一方的な侵略に対して寄主植物側は有害な樹液を滲出させるなど何らかのディフェンスを行う。このディフェンスから卵を保護する手段の一つが産卵加工だ。 (同書・第3章p101より引用)

この解説は新鮮でした。
樹液(忌避物質)を局部的に枯渇させたり堰き止めたりする目的なのだとしたら、一部のイモムシなどが摂食行動の前にやるトレンチ行動と似てますね。

キボシカミキリ♀が産卵加工の重労働に励んでいる間、♂がぴったり付き添っています。
複数ペアを撮影したのですが、体格は♀>♂で、触角の長さは♀<♂でした。
多くの場合、♂は♀の背後から覆いかぶさるようにマウントしているものの、交尾器は結合していません。
♀の背で前後逆あるいは斜めにマウントしている♂もいました。(定位の問題)
♂の触角は直線状で長いのに対して、♀の触角は緩やかに弧を描くように曲がっていました。


カミキリムシでは、♂が父性を確保するために、交尾後も長時間♀から離れず、産卵中もマウントを続ける、いわゆるpair-bondingを行う。(同書・第7章p259より引用)

長時間かかる産卵加工の一部始終を微速度撮影したかったのですが、日が暮れて暗くなってしまいました。
残念ながら赤外線カメラ(暗視カメラ)など夜間の撮影の準備をしてこなかったので、肝心の産卵シーンも今後の宿題です。


つづく→




2020/04/23

寄主ヤマグワに飛来したキボシカミキリ♂の探雌行動



2019年10月下旬・午後16:12・晴れ


▼前回の記事
桑の木で集団婚活するキボシカミキリ♀♂

新たに飛来したキボシカミキリ♂(Psacothea hilaris hilaris)がヤマグワの幹に着陸しました。
飛来シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
♂は♀に比べて触角がとても長いので、すぐに分かります。


本種(しぐま註:キボシカミキリ)の触角は性的2型があり♂の触角は著しく長い(体長に対し触角全長の平均は、♀は約2倍、♂は2.7倍) (『カミキリムシの生態』p162より引用)


キボシカミキリ♂は探雌行動の木登りを始めました。
この後の映像は、キボシカミキリ♂が視覚ではなく触角で交尾相手の♀を探していることを示唆しています。
独身♀が単独で樹皮を齧っている横で新参の独身♂が立ち止まり、周囲を長い触角でしきりに探っています。
しかし結局♂は♀の存在に気づけずに、歩いてどんどん上に登ってしまいました。
キボシカミキリは視覚が良くないようで、♂の触角が♀の胴体にしっかり触れないと異性を発見できないのでしょう。
揮発性の性フェロモンは使われていないようです。

キボシカミキリの配偶行動を実際に観察してから、深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』という総説を読むと、非常に参考になりました。(『カミキリムシの生態』第5章に収録)
キボシカミキリは桑の木を食害する悪名高い害虫です。
養蚕業を救う対策を立てるために、キボシカミキリの生態について詳細な基礎研究が行われてきたという歴史があります。



今回の映像に関連した事項を抜き書きしてみます。

本種は生木食ではあるが、産卵場所として少し衰弱が始まりかけた生木を好む。すなわちクワやイチジクが多数植えてあっても、成虫は一様に分布するのではなく、樹勢がやや衰えた株、主・支枝などに集中し、そこで交尾・産卵する傾向がある。

・ キボシカミキリでは、遠距離で作用する誘引フェロモンの存在は証明されておらず、寄主樹木からの揮発物質に誘引されて寄主に集合すると考えられている。

・キボシカミキリは単に後食する場所で交尾しているのではなく、産卵する場所(=幼虫の寄主)を交尾場所として選択し、集合していると考えられる。

・ 寄主樹木に飛来、集合したキボシカミキリは、夕方から深夜にかけて特に活発に徘徊する。この徘徊によって寄主樹木上で雌雄が偶然遭遇し、接触する機会が増える。

・ キボシカミキリは寄主上で♂、♀共に徘徊、待ち伏せをするが、♂の方がより活発に歩き回る。しかし雌雄とも、ごく近くに異性が存在しても直接に触る前に相手に気づいているようには見えない。(中略)キボシカミキリは接触する前に配偶者を認識し、定位するとは考えられていない。 (以上、同書p158〜160より引用)

普通の昆虫図鑑や百科事典で調べてもカミキリムシの生態や行動に関する記述があまりにも少ないので、興味のある方に『カミキリムシの生態』を強くオススメします。
分厚い専門書なので敬遠するかもしれませんが、執筆陣は国内の第一人者ばかりですから、少々値が張っても満足度は高いです。(バイブル!)

つづく→ヤマグワの樹皮を産卵加工するキボシカミキリ♀


左♀、右♂

2020/04/21

桑の木で集団婚活するキボシカミキリ♀♂




2019年10月下旬・午後16:15頃

川岸に自生するヤマグワ灌木の幹に多数のキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)が群がっていました。
これほど多数のキボシカミキリムシを一度に見つけたのは初めてで、とても興奮しました。

宮沢輝夫『山形昆虫記』によれば、

(キボシカミキリを)県内でよく見られるようになったのは近年のこと。県内では1970年代に生息が確認され、数を増やしている。


夕日を浴びたクワの幹でマウントし交尾中の♀♂カップルが何組もいます。
(この行動を「交尾中」と呼ぶのは不正確で、正しくは配偶者ガードでした。詳しくは改めて別の記事にします。)

単独で桑の幹を徘徊する独身♂も何匹かいました。
交尾相手の♀を探索しているのでしょう。
桑の根際でも活動しており、近くの林床を徘徊中の個体も居ました。(画面右上@1:04)

キボシカミキリ♀♂2組@ヤマグワ幹+交尾後ガード+あぶれ♂@探雌徘徊
キボシカミキリ♀♂@ヤマグワ幹+交尾後ガード



ヤマグワの葉は虫食い穴だらけでしたが、幸い落葉前だったので、樹種を同定することが出来ました。
桑はキボシカミキリの寄主植物のひとつです。

ヤマグワ葉@キボシカミキリ産卵木


ヤマグワの材中に穿孔して潜むキボシカミキリの幼虫が排泄したと思われるフラス(糞と木屑)も見つけました。

キボシカミキリ幼虫フラス(排泄痕)@ヤマグワ幹

キボシカミキリ♀♂の配偶行動を集中的に観察できたので、これから詳しく連載します。

つづく→寄主ヤマグワに飛来したキボシカミキリ♂の探雌行動







2020/04/20

ツマグロヒョウモン♂の求愛行動と♀の交尾拒否【HD動画&ハイスピード動画】



2019年10月下旬・午後13:25頃・晴れ

郊外の道端に咲いたセイタカアワダチソウの群落で多数のツマグロヒョウモン♀♂(Argyreus hyperbius)が訪花していました。
いつもと少し違うフィールドに足を伸ばしてみたら、過去最多の目撃個体数で驚きました。
ここ雪国でツマグロヒョウモンは越冬できないはずなのに、近年の地球温暖化で北進の勢いが増しているのでしょう。
全く珍蝶では無くなり、もはや普通種です。
翅が無傷のきれいな個体ばかりなので、台風による迷蝶とは考えにくいです。
個体の密度が高ければ同種の異性が出会う確率も高まり、おかげで私も念願の求愛行動を観察することが出来ました。



ツマグロヒョウモンは前翅の斑紋が分かりやすい性的二型ですから、野外観察中でも容易に雌雄を見分けることが可能です。
前翅の表側(上面)が名前の通り「端黒つまぐろ(前翅頂の周辺が黒い)」になっているのが♀の特徴です。

♀が翅を全開にしてセイタカアワダチソウの花蜜を吸っていると、その周囲を♂が忙しなく探雌飛翔しています。
♂が♀を見つけて近づこうとすると、♀は嫌がってセイタカアワダチソウの花から離れ、横のコンクリートブロックに避難しました。
追いかけてきた♂がホバリング(停空飛翔)で求愛しても、♀は半開きの翅を小刻みに震わせながら腹端を少し持ち上げました。
これはシロチョウ科と共通の交尾拒否姿勢です。
脈なしと悟った♂は諦めて飛び去りました。

♀がセイタカアワダチソウの花穂に戻って吸蜜を再開すると、戻って来た♂が♀の背後でまたしつこく求愛を始めました。
ツマグロヒョウモン♂の前翅には他のヒョウモンチョウ類♂と同じく発香鱗と呼ばれる特殊な鱗粉があるのですかね?(手元の資料を調べても分かりませんでした。)
だとすると、♀の背後で停飛する♂は、発香鱗の性フェロモンを♀に嗅がせるために羽ばたいて風を送っているのでしょう。
ところが♀はすぐに交尾拒否姿勢になり、厄介な♂のセクハラから隠れようと逃げ回ります。
セイタカアワダチソウの花穂の下側に回り込めば、♀の特徴である翅表が上空から見えなくなるのでしょう。
♀に拒否された♂は強引に交尾することはなく、紳士的に飛び去ります。
しかしすぐにまた戻ってきて求愛を試みます。

求愛と交尾拒否が何度も繰り返されるので、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:56〜)
スローモーションで見ると一層よく分かります。

ツマグロヒョウモンに限らず、蝶の求愛が成就して交尾が成立する一連の過程を私は未だ一度も見たことがありません。
♀は羽化直後に一度しか交尾しないのかな?


ツマグロヒョウモン♀@セイタカアワダチソウ訪花吸蜜+交尾拒否姿勢
横のコンクリート壁に逃げて交尾拒否姿勢
ツマグロヒョウモン♀(左)@セイタカアワダチソウ訪花吸蜜+交尾拒否姿勢+♂(右)@求愛飛翔
♂上、♀下

同じタテハチョウ科のキタテハPolygonia c-aureum)秋型もツマグロヒョウモン♀と一緒に吸蜜していましたが、別種なので互いに無関心でした。
大きさを比べると、キタテハ<ツマグロヒョウモン。

ツマグロヒョウモン♀+キタテハ秋型@セイタカアワダチソウ訪花吸蜜


2020/04/17

菊の花蜜を舐める♀にホバリングで求愛するヤドリバエ♂【Gonia sp.?】



2019年10月下旬・午前10:55・晴れ

平地(郊外)の住宅地の庭に黄色い菊の園芸品種が咲いています。
そこに訪花する2匹のハエ(種名不詳)が奇妙な行動を繰り広げていました。

おそらく♀と思われる個体が菊の花の上で方向転換しながら花蜜や花粉を舐めている間に、同種の♂らしき別個体がその真上でホバリング(停空飛翔)しています。
♂が羽音によるラブソング(求愛歌)を♀に聞かせているのではないか?と直感で私は予想しました。
マウント・交尾に移行しやすい向きに体軸を揃える訳ではなく、なぜか互いに直交する向きで停飛しているのが興味深く思いました。

♀が飛び立つと♂もすかさず追いかけます。
左の少し離れた菊の花でも2匹は同じ行動を繰り返しました。

1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、2匹は一度、空中で軽く衝突していました。
五月蝿い♂の求愛(セクハラ)に苛立って追い払おうとしたのか、♀は菊の花から飛び立つ際に、真上でホバリングする♂にぶつかったのです。
♀から邪険にされても逃げられても♂はめげずに、執拗に♀を追跡します。

最後は物置小屋の方へ2匹がすっ飛んで行き、左に急旋回して見失いました。
求愛が成就して交尾に至ったのかどうか、見届けられなくて残念です。

ハエのこんな面白い求愛行動を観察したのは初めてで、とても興奮しました。
欲を言えば、ハイスピード動画で記録したかったです。

私は外見からこのハエの性別を見分けられないので、上記の解釈はあくまでも行動から勝手に推測したものです。
蜜源植物を巡る♂同士の縄張り争いという可能性もありますかね?
闘争行動なら悠長にホバリングなんてやらない気がします。(騎士道精神? 儀式的な闘争行動?)

もう一つの可能性として、ヤドリバエ♀が他個体(ハエ成虫)の体表に卵を産みつけようとしている?という仮説を思いつきました。



映像からこのハエの名前が分かる達人がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。
せめて科レベルだけでも知りたいところです。


▼関連記事(5年前の撮影。素人目には今回のハエと似ています。)
ハエの求愛未遂?@松葉


【追記】
別件の調べ物で「みんなで作る双翅目図鑑   画像一括閲覧ページ」を眺めていると、とてもよく似たハエの求愛飛翔の生態写真を見つけました。
投稿者そよかぜさんのブログ「そよ風のなかで (Plants,insects and birds near at hand):ヤドリバエの仲間(1)」に行ってみると、見事な生態写真が掲載されています。
マサキに訪花する♀の真上を♂2匹が♀に対して直交する向きでホバリングしています。
ひょっとすると、私が見たハエも同じくヤドリバエ科ヤドリバエ亜科のGonia sp.かもしれません。

改めてGonia属の配偶行動についてインターネット検索してみました。
しかし、ヤドリバエ科全般について、野外での配偶行動はほとんど調べられていないのだそうです。
「Tachinidae Resources」というウェブサイトの概説によると、
Very little is known about courtship and mating in tachinids, especially under natural conditions.



ハエsp@菊(黄)訪花飛翔


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