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2018/11/24

コガタスズメバチの巣の下に不規則網を張るオオヒメグモ♂(蜘蛛)



コガタスズメバチ初期巣の定点観察2018年#2



▼前回の記事
コガタスズメバチ創設女王が軒下の初期巣に帰巣

2018年6月下旬

前回の動画から22日後。
外被の巣口に長い首が依然として残っているので、未だコガタスズメバチVespa analis insularis)ワーカー♀が羽化する前の初期巣の段階と分かります。
このところ創設女王の出入りを全く見かけなくなり、安否が心配です。

コガタスズメバチの巣の下にクモの巣(不規則網)が張り巡らされていて、オオヒメグモ♂(Parasteatoda tepidariorum)らしきクモが動き回っていました。
黒い触肢が目立つので、♂だと思います。
不規則網に糸を追加して造網中のようです。

スズメバチの巣の真下から見上げるアングルで撮影したので、遠近感が分かりにくくなっています。
つまり、コガタスズメバチの初期巣とオオヒメグモの不規則網がそれぞれ建物のどのぐらいの高さにあるのか、この映像ではよく分かりません。
高さの位置関係が分かるように横からも撮るべきでしたね。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#3:不規則網にかかったコガタスズメバチの創設女王を捕食するオオヒメグモ♀(蜘蛛)


オオヒメグモ?(蜘蛛)@不規則網:軒下コガタスズメバチ初期巣下
コガタスズメバチ初期巣下@軒下角

2018/11/23

山道で採土するヒメクモバチ♀



2018年7月下旬

里山で砂利の敷かれた山道を登っていると、黒い小さな蜂が大顎で採土していました。
ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)またはその近縁種だと思います。
クモを狩って泥巣に貯食する習性を持つ狩蜂です。
重機が砂利道を引っ掻いたような(あるいは車が坂道でスリップした?)土がツルツルに露出した部分の端でヒメクモバチ♀は水を吐き戻しながら小さな泥玉を作ると飛び去りました。
すぐに蜂を見失ってしまい、泥巣を作っている営巣地は不明です。
私のこれまでの経験上、同じ場所でしばらく待ち構えていれば同一個体が再び巣材集めに戻って来てくれたはずです。
しかし先を急ぐ用事があるので、一期一会。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


ヒメクモバチsp♀@山道+採土:巣材集め

2018/10/20

三巣並行営巣に失敗したスズバチ♀



2018年7月下旬
▼前回の記事
コンクリートブロックを物色して営巣地を決めたスズバチ♀

駐輪所やゴミ集積場として使われている小屋の軒下に置かれたコンクリートブロック内でスズバチ♀(Oreumenes decoratus)が営巣を始めたので、定点観察に通ってみました。
ところが泥巣を少し作りかけただけで未完のまま放棄してしまったようです。

スズバチ♀の営巣開始を観察したのが7/10。
そのときはコンクリートブロック内に泥巣は全く作られていませんでした。
その3日後(7/13)および10日後(7/20)に作りかけの泥巣を写真に撮りました。
今回は18日後(7/28)の夜です。
暗い穴の底にある泥巣を写真で記録するのはピント合わせが意外と難しいので、今回は赤外線の暗視カメラによる動画で撮ってみました。
ストロボ写真で記録するよりも上手く状況を記録できました。
母蜂の活動する姿を見たのは初日だけです。
コンクリートブロックを採寸してみると、縦×横×高さ=39×19×10cm。
各ブロックに3つある深さ19cmの穴の断面は角が面取りされていて、長径×短径=8×4.5cmの楕円状。

面白いことに、コンクリートブロックに3つ並んでいる穴の奥底で、同じ深さの同じ位置(右下)に泥巣を3つも作りかけていました。
この辺りではスズバチの生息密度が高くないので、複数個体の♀が同じ場所で集団営巣した可能性は低いと考えています。
(集団営巣では3つの穴の同じ位置に泥巣が作られたことを説明できません。)
1匹のスズバチ♀が三巣並行営巣を試みたのでしょう。
実はこのような現象は他の種類の蜂でも結構よくあることです。
私は以前、キアシナガバチの女王蜂を個体識別して二巣並行営巣を証明したことがあります。(私が蜂の観察にのめり込むきっかけとなった忘れがたい事例です)

▼関連記事
二巣並行営巣を始めたキアシナガバチ創設女王
キアシナガバチ創設女王による二巣並行営巣の謎

【参考文献】
1. Kasuya E. Simultaneous maintenance of two nests by a single foundress of the Japanese paper wasp, Polistes chinensis antennalis (Hymenoptera: Vespidae). Applied entomology and zoology. 1980;15(2):188–189.
フタモンアシナガバチ創設女王による二巣並行営巣の報告です。
2. 牧野俊一, 山根正気. ニッポンホオナガスズメバチの創設女王で見られた2巣並行営巣行動の観察. Kontyû. 1979;47(1):78-84.

どうしてこんなことが起こるのでしょう?
複眼と単眼による蜂の視覚系は、ヒトの見ている世界とは異なります。
営巣地を決めた蜂は定位飛行をしながら周囲の風景を記憶しようと努めます。
その視覚記憶に頼りながら巣材を集めに何度も往復して、次第に巣が建造されます。
ヒトが作った人工物をたまたま蜂が気に入ってそこに営巣を始めたとき、その人工物が幾何学的な繰り返し構造になっていると蜂は混乱して正しく位置を記憶できなくなってしまうようです。
自然界には「規則正しい繰り返し構造」などという物は存在しませんから、長い進化の過程でも、そのような本能行動の過ちが修正される機会が無かったのでしょう。
今回の場合は、一つのコンクリートブロックに相同の穴が3つ並んでいたことがスズバチ♀の混乱を招く元となりました。
実はこの軒下には、同型のコンクリートブロックが4つ並べて置いてありました。
スズバチ♀はその中で左端のブロックを選んで記憶することは出来たようですが、そこまでが能力の限界でした。
(残り3つのコンクリートブロック内には泥巣は全く作られておらず、落ち葉やゴミが溜まっていました。)

蜂が選んだブロックの右隣のブロックはなぜか真ん中で真っ二つに割れていたので、蜂の目から見ても他と区別しやすかったのかもしれません。
現代人が団地や集合住宅などの人工的な繰り返し構造から我が家を難なく探し当てる能力があるのは、建物に表札やラベルを書いて目印にしたり、座標の概念を駆使して住所を記憶するからです。(何号棟の何階の何号室)
蜂にはこれが出来ないのです。(フェロモンで匂いの目印を付ければ良いと思うのですが…。)

写真を並べてみると、造巣は7/13以降になると全く進んでいません。
母蜂が何らかの理由で死んでしまったのかもしれません(殺虫剤で駆除されていないことを祈ります)。
あるいは、この「おかしな営巣地」を捨て新天地でやり直すことにしたのでしょう。
幾ら働いても造巣が一向に進まないので「おかしい」と気づいたスズバチ♀が「本能の落とし穴」から自力で抜け出せたのだとすれば、とても興味深いですね。(ファーブルが好きそうな話です)

コンクリートブロックの横に無人カメラを設置してスズバチ♀の行動を全て録画していれば貴重な記録になっていたことでしょう。
蜂の為を思えば、コンクリートブロックの余計な穴を塞いでやれば、造巣に専念できたかもしれません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


スズバチ営巣地@コンクリートブロック(7/13)
スズバチ未完泥巣a@コンクリートブロック(7/13)
スズバチ未完泥巣b@コンクリートブロック(7/13)
スズバチ未完泥巣c@コンクリートブロック(7/13)
スズバチ営巣地@コンクリートブロック(7/20)
スズバチ未完泥巣a@コンクリートブロック(7/20)
スズバチ未完泥巣b@コンクリートブロック(7/20)ピンぼけ
スズバチ未完泥巣c@コンクリートブロック(7/20)

2018/09/12

コンクリートブロックを物色して営巣地を決めたスズバチ♀



2018年7月上旬・午後17:39

マンションの敷地の隅にある駐輪場やゴミ集積場の付近をスズバチ♀(Oreumenes decoratus)が高く低く飛び回っていました。
通りすがりの私を警戒しているのかな?
小屋の軒下に並べてあったコンクリートブロックに興味を示しています。
低空でしばらくホバリング(停空飛翔)してから、コンクリートブロックの真ん中の穴に侵入しました。
このとき巣材の泥団子は運んでいません。

蜂は穴の中に43秒間滞在してから外に飛び出してきました。
続いて、穴の位置を正確に記憶するための定位飛行を披露しました。
穴の方に顔を向けてホバリングしながら水平方向に扇状に弧を描いて飛び、その弧を少しずつ大きくしていきます。
どうやらこの穴に巣作りを始めるようです。
泥巣の営巣基としてコンクリートは相性が抜群でしょう。
(セメント細工に関しては人類よりもスズバチの方が先輩です。)
スズバチ♀が飛び去ってから私もコンクリートブロックの穴の奥を覗いてみると、泥巣は未だ作られていませんでした。

コンクリートブロックを採寸してみると、縦×横×高さ=39×19×10cm。
各ブロックに3つある深さ19cmの穴の断面は角が面取りされていて、長径×短径=8×4.5cmの楕円状でした。

その後もスズバチ♀は近所を空高く飛んだり戻ってきたりと激しく飛び回っていたのですが、動画に撮ろうとしても小さな蜂にピントが合いませんでした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

スズバチ♀の造巣を一から観察したいとかねがね思っていたので、これは千載一遇のチャンスです。
定点観察してみましょう。

つづく→三巣並行営巣に失敗したスズバチ♀


スズバチ♀@営巣地物色+定位飛行
スズバチ営巣地@ゴミ集積場軒下:コンクリートブロック穴

2018/08/03

泡巣を作るシロオビアワフキ幼虫【60倍速映像】



2018年5月中旬・午後19:07〜22:37・室温22.9℃→21.4℃

庭の片隅に小さな赤い花を咲かせるバラの灌木があります。(品種名は知りません。)
トゲだらけの若い枝に白くて大きな泡が付着していました。
これはアワフキムシの仲間の幼虫が作った泡状の巣に違いありません。

夕方に枝ごと採取し、花瓶に水差しにしました。
白い泡巣の水分をティッシュペーパーでそっと拭き取ると、予想通りシロオビアワフキAphrophora intermedia)の幼虫が数匹潜んでいました。
露出した幼虫の体に触れると嫌がって逃げ出します。

泡巣の再形成を微速度撮影してみました。
これは私が前々からやってみたかったテーマです。
60倍速の早回し映像をご覧下さい。
泡巣を別々の場所で作り始めた2匹を同時に撮影してみることにしました。
意外にも、みるみるうちに泡巣が大きくなりました。
口吻を茎に突き刺して吸汁しながら腹端を上下に動かし、排泄した尿を泡立てます。
途中から2つの泡巣が合体してしまいました。
白い泡巣で自分の体が隠れると、中の幼虫は落ち着きました。

次回は、植物の茎を色付き水に挿してカラフルな泡巣を作らせてみるという定番の実験も試してみたいです。

【おまけの映像】
早回し速度を落としたバージョンをブログ限定で公開しておきます。


↑30倍速映像。



↑10倍速映像。



シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:泡巣再形成後

【追記】
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑: 一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』を読むと、「幼虫がすむ泡の巣 シロオビアワフキ」と題して数々の見事な生態写真が見開きで掲載されていました。
これほどの防衛対策をしても、天敵のヤニサシガメが泡の中へ口を差し込み、食べられてしまうこともある。(p162より引用)
実際の捕食シーンの証拠写真が無かったので、疑り深い私は自分で探してみたくなりました。
飼育下で実験できるかもしれません。
泡巣を突破できる捕食者にとって泡自体が目印になってしまうと、シロオビアワフキ幼虫は全滅してしまうのではないでしょうか?
 

2018/07/04

住居網を張るネコハエトリ♀成体【蜘蛛:30倍速映像】



2015年8月上旬・室温31℃、湿度56%


ネコハエトリ♀(Carrhotus xanthogramma)を飼育中です。
歩脚を欠損した個体です。

単調な飼育環境でなるべく退屈しないようにトイレットペーパーの芯を入れておくと、キャットタワーのように登り降りしたり隠れ家にもなります。
糸や食べかすで汚れたら使い捨てします。

飼育容器内を掃除したついでにトイレットペーパーの芯を交換すると、容器側面の隙間で新たに造網を始めました。
徘徊性クモに属するハエトリグモが春網は、獲物を取るための粘着性の罠ではなく、自分が隠れるための住居網です。
トイレットペーパーの芯を円筒容器の中央からわざと少しずらして壁面に近づけて置けば、狙った場所に造網させることができます。
容器壁面、底面およびトイレットペーパー芯に囲まれた隙間に造網しています。


円筒型飼育容器に入れたトイレットペーパーの芯を上から見る。

夜中にネコハエトリ♀成体が住居網を紡いだ様子を透明プラスチック容器越しに微速度撮影してみました。
30倍速の早回し映像をご覧下さい。

前回の撮影では肝心の住居網や糸がよく見えませんでした。

▼関連記事
住居網を紡ぐネコハエトリ【蜘蛛:微速度撮影】
今回は新たな工夫(改善)として、黄土色だったトイレットペーパーの芯に黒紙を貼っておきました。
背景を黒くしたことで、プラスチックの容器越しの撮影でもネコハエトリ♀の糸や網が鮮明に可視化されました。
糸をプラスチック壁面に固定した付着点もはっきり見えす。

ネコハエトリ♀が動きを止めてしまっても、素人目には住居網は未完成に見えます。
栄養不足で糸が不足しているのでしょうか?
毎日少しずつ糸を付け足して住居網を作り上げるつもりなのかな?
生き餌としてハエを1匹投入してみても、ネコハエトリは住居網に篭ったまま出て来ません。(映像なし)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


【おまけの映像】
早回し速度を色々と変えた動画をブログ限定で公開しておきます。



↑40倍速映像



↑20倍速映像



↑10倍速映像(オリジナル素材)


2018/06/30

巣材として羽毛を集めるスズメ(野鳥)



2018年4月中旬

住宅地の火事で焼け落ちた廃屋にスズメPasser montanus)が来ていました。
てっきりスズメが火事現場跡の木炭を食べているのかと思った私はカメラを手にいそいそと近づきました。

▼関連記事
木炭を採食し幼鳥に巣外給餌するハシボソガラス(野鳥)
木炭を採食するカワラヒワ(野鳥)

すると警戒したスズメは、焼け爛れたトタン屋根に飛び乗って避難。(映像はここから)
慌てたせいでスズメは嘴に咥えていた羽毛を落としてしまいました。
すぐに取り戻そうとしたものの失敗。
1枚の羽毛だけ上手いこと舞い戻ってきたのを拾い直しました。
産座用の巣材として運ぶ途中なのでしょう。
最後は羽毛を咥えて飛び去りましたが、巣の位置は突き止められませんでした。

もしかすると火事現場跡に野鳥の焼死体(焼き鳥)が転がっていて、そこから羽毛を毟り取っていたのでしょうか?
とても気になりますけど、焼け跡に勝手に踏み込んだりすると火事場泥棒と誤解されますから、私も立ち去りました。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2018/06/20

タラノキの葉裏で初期巣を増築するキボシアシナガバチ創設女王



2016年6月上旬


▼前回の記事
初期巣にアリ避けを塗布するキボシアシナガバチ創設女王

同じ日に撮った続きです。
巣材を持ち帰ったキボシアシナガバチPolistes nipponensis)の創設女王が帰巣したシーンは撮り損ねてしまいました。
育房の壁に新しい巣材を付け足して薄く伸ばしています。
巣盤が真っ白に見えるので、何を巣材にしているのか気になります。

初期巣の拡張を終えた女王蜂は身繕い。
次は育房全体を点検しながら巣盤の下面に腹部腹面を擦り付けてアリ避け物質を念入りに塗り付けました。
巣盤の上面に登ると、一休み。



2018/06/12

初期巣にアリ避けを塗布するキボシアシナガバチ創設女王



2016年6月上旬

山間部の峠道の横に生えたタラノキ灌木の葉裏にキボシアシナガバチPolistes nipponensis)の初期巣を見つけました。
葉裏の主脈に巣柄を固定し、巣盤を吊り下げています。
育房内には白い卵が既に産み付けられていました。
巣を真下から見上げるアングルを現場で確保できなかったために、育房数や卵数をカウントできませんでした。
創設女王が育房を忙しなく点検して回ります。
そのついでに女王蜂は、巣盤の上部や巣柄、育房壁に腹部下面を擦り付けていました。

この行動は天敵であるアリが巣に侵入しないように、アリが忌避する物質を巣に塗布しているのでしょう。
アシナガバチ♀は腹部末端節の腹板基部に開口したヴァン・デル・ヴェフト腺からアリ避け物質を分泌するのだそうです。
単独営巣期は特に、女王が外役に出かけると巣は完全に留守(無防備)になりますから、真剣なアリ対策が必要になるのです。
外出の前にこの行動をよく行います。

つづく→タラノキの葉裏で初期巣を増築するキボシアシナガバチ創設女王



2018/05/31

糸を引いて懸垂下降するも水面を忌避するアカオニグモ♀(蜘蛛)【3倍速映像】

2016年10月上旬〜下旬

私のフィールドは、アカオニグモAraneus pinguis)の生息数が多い北国です。
造網行動の一部始終を観察したいのですが、未だ幾つか見逃している過程が宿題として残されています。
造網は通常、夜間に行われるため、フィールドに通って観察するのは大変です。
そこで室内飼育で造網を再現できないか、あれこれ試行錯誤しています。
飼うだけなら比較的簡単なのですが、撮影しやすい条件との両立がなかなか難しいのです。

フィールドで生け捕りにしてきたアカオニグモ♀を部屋に放し飼いにしてみると、天井隅に小さ目の垂直円網を張ってくれました。
チョウやトンボなどの生き餌を網に給餌して、一時期アカオニグモを室内で飼っていました。
しかし壁や天井が白いため、肝心のクモが張る糸や網が見えにくく、撮影には不向きです。(部屋全体を黒く塗り直す訳にもいきません…)


アカオニグモ♀(蜘蛛)@室内天井隅+食べ残しモンシロチョウ
アカオニグモ♀(蜘蛛)@室内天井隅+食べ残しアキアカネ
飼育下で成熟し、腹背が赤く色づいた。

蚊帳や網室の中にクモを放し飼いにする方法も考えましたが、未だ試していません。

動画に撮ったときに背景がゴチャゴチャしているのはなるべく避けたいのです。


クモ関連の本などでよく紹介される方法は、四角い木枠を2枚のガラス板で挟んだ箱を自作し、ガラス板の隙間に造網性クモを入れて飼うという方法です。
私は工作が得意ではありませんし、お金もかかりそうなので、腰が重いです。

今森光彦『クモ (やあ! 出会えたね 4)』という本(写真集)を読んでいたら、コガネグモの造網観察法として面白いアイデアが書いてありました。

いくら根気よく見ていても、網づくりをつづけてくれません。
考えたすえ、家にクモをつれてきて、網をはってもらうことにしました。
しかし、部屋のなかにはなすと、クモはすぐに上へかけのぼり、天井のすみに、でたらめな糸をはりめぐらすだけです。(中略)
そこで、竹を組み合わせて枠をつくり、クモがにげないように、下に水をはって立てました。
竹枠に、クモをそっとはなしてまちます。


昆虫写真家の筆者はこの方法でコガネグモの造網過程の一部始終を見事な連続写真で記録しています。
私もこの作戦を真似してみることにしました。

タオル等を干すための小型の物干しスタンドを網作りの土台(立体的な枠)として使ってくれることを期待して、ここにアカオニグモ♀成体を乗せてみます。
大きな水槽の代わりに衣装ケースのプラスチック製引き出しを再利用し、この大きな箱の中に物干しスタンド(縦42cm×横32cm×高さ50cm)を立てました。
そしてクモ脱走防止のため、容器の底に水を張りました。
さあ、こんな人工的な環境で果たしてアカオニグモ♀は造網してくれるでしょうか?






柳の灌木を利用して造網し昼間は柳の葉を糸で綴った隠れ家に潜んでいたアカオニグモ♀成体を水辺の堤防付近で採集してきました。(2017年10月下旬)

地上から隠れ家までの高さを測ると、約165cm。


アカオニグモ♀(蜘蛛)@隠れ家:柳葉
アカオニグモ♀(蜘蛛)@隠れ家:柳葉+垂直円網





2017年11月上旬

前置きがすっかり長くなりました。
いよいよ本題です。
あまりにもクモの動きが緩慢なので、3倍速に加工した早回し映像をご覧下さい。
動きがゆっくりでもオリジナルの動画を見たい人は、下に掲載した動画をご覧下さい。

スタンドの上(高さ50cm)から糸を引きながら懸垂下降していたアカオニグモ♀の背中が水面に触れると、慌てて引き糸を登り返しました。
たるんだ引き糸が室内の微風でたなびいています。
このような上下動を繰り返しているところを見ると、やはりクモは水面を忌避しているようです。

物干しスタンドのワイヤー(長さ42cm)に沿って綱渡りのように往復移動しながら糸を何重にも張り始めました。
造網を開始してくれたと思い込んでいた私は、これがいずれ枠糸または橋糸になるのだろうと考えていました。


次に、枠糸の中間地点から糸を引きながら懸垂下降しました。
これはまさに、網を張り始める際のY字型の縦糸の作り方とそっくりです。
引き糸の下端をクモは地面のどこかに固定したいはずですが、水面に触れたクモは慌てて引き糸を登り返しました。
物干しスタンドに戻ると、水平に張られた橋糸を右往左往して補強しています。

途中から私は、水を張った容器の底に陸地として木製の台(キッチンペーパーホルダー)を入れてやりました。
懸垂下降してきたクモが木の棒の天辺に着地すると、下まで伝い降りました。
すぐにまた引き糸を登り返しました。
1箇所でも容器の下部で糸を固定できたら、造網のための枠糸を張る手がかりが得られただろうと私は楽観的に思いました。
ところがクモは私の思い通りには動いてくれず、先程と同じように橋糸の補強と懸垂下降、水面忌避という動作を繰り返しています。

見ていてもどかしくなります。
おそらくクモも途方に暮れていたことでしょう。(ストレスに感じていた?)
私は物干しスタンドの全体像を俯瞰で見渡せるので、クモも造網の土台として使ってくれるはずだと期待したのです。
ところが造網性クモは体が小さい上に視覚が悪いために、歩き回って探索しないと周囲の環境を把握できないのでしょう。

今思えば、クモが橋糸の真ん中から下にY字型の縦糸を張ろうとしていた地点の直下にも陸地(島)を作ってやるべきでしたね。
実は真夜中に思いつきで始めたテキトウな飼育実験なので、私も眠くて頭が働きませんでした。

物干しスタンドの縦のメイン支柱をようやく見つけたクモは、これを伝って降り始めました。
下に置いた木台(キッチンペーパーホルダー)に辿り着いたクモは、ウロウロと徘徊。
容器の底からプラスチックの壁面を登ろうとしても、足の爪が滑って登れません。
はずみで水面に落ちてしまいました。
溺れそうになっても自力で引き糸を登り返して難を逃れました。

(映像はここまで。)

室内の照明があると造網を始めてくれないのかと思った私は、消灯してクモを放置しました。
ところが翌朝見ると、水槽にアカオニグモ♀が浮かんでいました。(溺死?)

明かりを消すと、水面が分からなくなってしまうのかな?
ぐったりしたクモを慌てて救出して、物干しスタンドの止まり木に戻してやりました。
歩脚に軽く触れると反応したので、死んではいないと分かり一安心。
やがて元気を取り戻して活動を再開してくれました。

その後もクモは探索行動を続け、私が目を離すと水難事故が繰り返されました。
まさか飼育環境に絶望したクモが入水自殺したのだとしたら、申し訳ないです。


造網性クモは網を使ってしか獲物を捕食できません。
したがって、この個体を野外で採集してきて飼育を始めて以来ずっと(数日間)餌を食べられず、私もやきもきしていました。
牛乳などを強制給餌すべきか迷いましたが、一般にクモは飢餓耐性が強いので大丈夫だろうと判断しました。


アカオニグモ♀(蜘蛛)@水没:容器内
アカオニグモ♀(蜘蛛)@水没後救出

止まり木に戻すと、元気復活。

いかにも素人臭い(お遊びのような)実験の失敗談で、お恥ずかしい限りです。
このブログは個人的なフィールド撮影日記(飼育日記)なので、なるべく失敗したことも記録することにしています。
書き残しておかないと失敗したこともすぐに忘れてしまい、同じ過ちを繰り返してしまうのです。
水を嫌うアカオニグモ♀の行動が面白かったというのも、記事にした理由の一つです。

もし私がクモをわざと水に何度も直接落として溺れさせたりしたら動物虐待だと非難されることでしょう。(炎上案件)
しかし今回アカオニグモ♀が落水して溺れそうになったのは全く予想外でした。
そもそも、本の記述(撮影ノウハウ)を参考にして(多少アレンジして)始めたことです。

しかし生き物は、なかなか本に書いてある通りには振る舞ってくれません。
最近の動物園では猛獣を檻に閉じ込めずに、水堀などを効果的に配置した開放的な展示が主流になっています。(無柵放養式展示
これはネコ科の猛獣が水に濡れることを極端に嫌う性質を利用した展示法です。
今回の実験も同様に、クモが水面を忌避する性質を利用して網の張り方を飼育下でヒトがコントロールできるだろうという期待がありました。

消灯後に何が起きたのか分かりませんが、もしかすると、偶発的な水難事故とは限らないかもしれません。
クモが自発的に入水した可能性はあるのか、少し考えてみました。
造網に適した環境ではないとクモが判断すれば、餌を捕るために他所へ移動するはずです。
風が吹けば糸を吹き流しバルーニングで空を飛び移動するでしょう。(体重の重い♀成体が飛ぶのは無理かも?)

吹き流した糸が遠くの何かに付着すれば、糸を伝って移動することが可能です。
しかし無風の室内では、糸を吹き流すことができません。
野外でも台風や大雨で生息地が増水したり地面が水浸しになることもありそうです。
そのような緊急事態(水害)になるとアカオニグモは、水中で泳げないにしてもあえて水の流れに身を任せて新天地へ移動するのかもしれない…と妄想してみました。

なんとか飼育下でこちらの望むように造網させようと悪戦苦闘してきましたが、ひょっとすると、この♀個体は網を張りたいのではなくて、卵嚢を作る場所を必死で探索しているのではないか?という気がしてきました。
そこで次は、容器の底の水を抜いてやりました。
造網性クモはプラスチック容器の垂直壁面をよじ登れないので、水が無くても簡単には脱走されないでしょう。
すると予想が当たり、このアカオニグモ♀は産卵を始めてくれました。

つづく→卵嚢作りを開始



アカオニグモ♀(蜘蛛):腹面@垂体+外雌器
アカオニグモ♀(蜘蛛):腹面@垂体+外雌器
アカオニグモ♀(蜘蛛):腹面@垂体+外雌器


【おまけの映像】
早回し速度を色々と変えてみた動画をブログ限定で公開します。



↑オリジナル映像(1倍速)



↑2倍速映像



↑4倍速映像



2018/05/21

キボシアシナガバチ創設女王が柳の枝に初期巣を作り始めた



2016年5月中旬

湿地帯に生えた柳を見上げると、キボシアシナガバチPolistes nipponensis)の創設女王が枝先近くに初期巣を作っていました。

葉の茂った小枝から巣柄が下向きに取り付けてあります。
育房数は4室で、未産卵のようです。
女王蜂は、その育房をせっせと増設しています。

コアシナガバチとかなり迷ったのですが、キボシだと思い直しました。
コロニーが成長すれば、繭の色で種類が確定します。


写真はいまいちピンぼけ…。

2018/05/17

コガタスズメバチ♀が巣の内壁を削る音♪



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#14



前回の記事→#13

2016年8月中旬・午後12:37

8日ぶりの昼下がりに巣の様子を見に行くと、コガタスズメバチVespa analis insularis)の外役ワーカー♀が巣口で渋滞していました。
中の門衛と口づけを交わしています。(栄養交換)

依然として外皮の増築作業が盛んに続いています。
この日に特筆すべきは、耳を澄ますとどこからか外皮をガリガリ、ゴシゴシ♪と齧る音が響いていました。
とてもかすかな音なので、音量を最大にして聞いて下さい。(ヘッドフォン推奨)
マイクを巣の外被に密着させるように取り付ければ、もっと明瞭に録音できるはずです。
おそらく内役ワーカー♀が巣の内部から外被を大顎で齧っているのでしょう。
スズメバチ関連の本で読んだ知識ですが、外被を外側から何層にも付け足していくと同時に、内部からも削って巣盤を拡張するスペースを確保するのです。
内部から齧り取った巣材は唾液と混ぜ合わせ、巣盤を作るためのパルプとして再利用されるのだそうです。
素晴らしく合理的な建築法ですね。
スズメバチの巣にファイバースコープを挿し込んだりして、内役の様子をいつか観察・撮影してみたいものです。

つづく→#15



【追記】
巣内の様子を直接観察した訳ではないので、この物音は成虫ではなく幼虫が発した可能性も考えられます。
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
スズメバチの巣を、生けどりにしたり飼育していると、カリカリカリ…という、かなり大きな連続音が、一定の間隔をおいて聞こえてくる。これは、終齢幼虫が育房の壁をいっせいに大腮でかむことによって生じる音で、巣の中に運びこまれるえさが少なくなったときや、また、空腹の幼虫によっても、ひんぱんに発せられる。働きバチは、この音を発する幼虫にひきつけられ、肉団子を口もとへ給餌するので、つまりは、幼虫が空腹を知らせる合図となっている。 
 (中略)壁こすりによるえさねだりの行動は、スズメバチ亜科に属する4属のすべてで知られている。とくに、大型種のスズメバチ属の各種で顕著にみられる、成虫と幼虫間のコミュニケーションである。(p222-223より引用)


2018/04/30

拡張を続けるコガタスズメバチの巣



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#12



前回の記事→#11

2016年8月上旬・午後17:43

軒下の板壁に営巣したコガタスズメバチVespa analis insularis)のコロニーの様子を2日ぶりに見に来ました。
見えている範囲だけでも5匹のワーカー♀が3箇所に別れてせっせと外皮を増築していました。
抱えている巣材をどこに付け足すかという判断は各ワーカーに任されていて、使い切る前に途中で場所を変えることもよくあります。
まだまだ巣は大きく成長しそうです。

その間、巣口で門衛2匹が外を見張っています。
新たに1匹のワーカー♀が外役から帰巣しました。


つづく→#13



2018/04/26

ガードレールの枯れ蔓に初期巣を作るフタモンアシナガバチ創設女王



2016年5月上旬・午前9:08〜9:24

平地の池に近いガードレールを前の年に覆い尽くしたクズの蔓が枯れたまま残っていました。
そこにフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)の創設女王も営巣していました。

帰巣した女王蜂が口元に咥えた巣材(パルプ)の団子を更に噛みほぐし薄く引き伸ばして育房を増設します。
育房壁を伸長する造巣作業が一段落すると、巣盤の天井部で小休止。
作ったばかりの育房は唾液で濡れて黒っぽく見えます。
やがて出巣して次の巣材を集めに行きました。

ガードレールの南東面に営巣していたのは、やはり日当たり良好な物件を作っているのでしょう。
育房内に産卵済みだと思われますが、ガードレールに絡み合ったクズの蔓が邪魔で撮影アングルが確保できず、写真に撮れませんでした。


フタモンアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓
フタモンアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
フタモンアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
フタモンアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓・全景

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