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2018/05/16

ユリズイセンの花で盗蜜するクロヤマアリ♀の群れ



2017年8月中旬

家庭菜園の片隅の花壇に咲いたユリズイセン(アルストロメリア)クロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀が訪花していました。
花弁がオーソドックスなピンク色の品種です。



クロヤマアリ♀は花筒の根元付近に群がっていました。
ユリズイセンの隣り合う花弁と花弁の間に隙間があるため、体の小さなアリは自由に出入りして、結果的に盗蜜になっています。
植物側にとってみれば、アリは花蜜をただで盗むだけで受粉に関与していません。
アリの体はとても小さいので、たとえラッパ状に開いた花の入り口から侵入(正当訪花)したとしても、雄しべの葯や雌しべに触れることなく奥の蜜腺に到達できます。
しかもアリは地面から茎を登って来るので、正当訪花するためにはわざわざ花弁上をかなり遠回りする必要があります。
私は昆虫の盗蜜行動に興味があるので、今回も注目して撮ってみました。
しかし、細長い口吻を持つチョウによる盗蜜行動が珍しくないように、アリによる盗蜜行動も、仕組みこそ違えど実は特に珍しいことではありません。
やはり一番面白いのはハチ類による穿孔盗蜜ですね。


田中肇『花と昆虫、不思議なだましあい発見記』によると、

普通の花の場合、羽をもたない働きアリたちは草や木をよじ登って花にいき、蜜を腹一杯吸うと、もときた道をおりていく、そして地におりると、まっしぐらに巣に帰ってしまう。
アリは体が小さいので雄しべや雌しべの先に触れないし、たとえ花粉がついても真っすぐ巣に帰ってしまっては、ほかの株にまでは運ばれない。そのため、植物の立場からは、蜜の吸われ損になり、多くの花にとってアリはきてほしくない昆虫となっている。 (p95より引用)

クロヤマアリ♀群れ@ユリズイセン訪花+盗蜜
クロヤマアリ♀群れ@ユリズイセン訪花+盗蜜

2018/02/15

ユリズイセンの花で盗蜜するキンケハラナガツチバチ♂



2017年8月下旬

平地の花壇に咲いたユリズイセン(アルストロメリア)の群落でキンケハラナガツチバチ♂(Megacampsomeris prismatica)が訪花していました。
吸蜜シーンをよく見ると、開いた花の入り口から素直に潜り込む(正当訪花)だけでなく、花筒を形成する花弁の隙間をかき分けて(穿孔して?)根元の蜜腺を直接舐めることもありました。

これは「花弁(花びら)や蕚(がく・花被片)の間から蜜を吸い取る。」タイプの盗蜜行動です。
同一個体が正当訪花と盗蜜行動を臨機応変に?切り替えた証拠映像が撮れました。
どちらが楽に吸蜜できるか、試行錯誤で学習するのですかね?
ただし正当訪花よりも盗蜜する方が多くて雄しべに触れる機会が少ないため、ユリズイセンの受粉にはあまり関与していないようです。

ユリズイセンの花から盗蜜する狩蜂を新たに見つけることができて、非常に興奮しました!
(これまでのリストは、フタモンアシナガバチ♀エントツドロバチ♀オオフタオビドロバチ。)
こうして見ると、どうやら盗蜜はハチ類にかなり普遍的な行動のようです。

この花壇でユリズイセンの送粉者としては、トラマルハナバチ♀がせっせと正当訪花で採餌していました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

キンケハラナガツチバチ♂@ユリズイセン訪花盗蜜
キンケハラナガツチバチ♂@ユリズイセン訪花盗蜜
キンケハラナガツチバチ♂@ユリズイセン正当訪花+吸蜜

ちなみに、隣に咲いた花でクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀も同様に盗蜜していました。(@2:35〜2:50)
アリは「花よりも相対的に小さな体であるため、葯や柱頭に触れないで花の奥にもぐりこみ、蜜を取る」タイプの盗蜜者でもあります。


キンケハラナガツチバチ♂+クロヤマアリ♀@ユリズイセン訪花盗蜜

2018/02/09

ユリズイセンの花で盗蜜するオオフタオビドロバチ



2017年8月下旬

平地の花壇に咲いたユリズイセン(アルストロメリア)の群落でオオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)が訪花していました。
吸蜜シーンをよく観察すると、正当訪花せずに花筒の根元の隙間から頭を突っ込んで蜜腺を直接舐めています。
雄しべに体が全く触れませんから、ユリズイセンの受粉を媒介しません。
これは盗蜜行動の一種ですね。
「花弁(花びら)や蕚(がく・花被片)の間から蜜を吸い取る。」タイプの盗蜜です。


茎を登り降りしているのは、獲物のイモムシを探索しているのかな?
(オオフタオビドロバチの性別の見分け方を知りません。)
後半は、葉に止まって身繕いを始めました。
実は、正当訪花っぽいシーンも稀にあったのですが、撮り損ねてしまいました。


ユリズイセンを園芸植物としてヒトが品種改良する間に、花筒が隙間だらけになってしまった、言わばセキュリティがユルユル、ガバガバになってしまったのではないかと思います。
ユリズイセンの原種にはこんな隙間は無かったのではないかと私は予想しています。
しかし、もしユリズイセンが主に球根で増えるのだとしたら、盗蜜されても大した損失は無くて、隙間の無い花筒を進化させて送粉者を限定する(花と虫の共進化)必要があまりないのかもしれません。

あるいは、ユリズイセンの花の形状と長い雄しべ、雌しべから考えると、想定している送粉者はハナバチではなく、大型のアゲハチョウの仲間なのかもしれません。
▼関連記事 
ユリズイセンの花蜜を吸うキアゲハ



※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


ユリズイセンの花から盗蜜する狩蜂を新たに見つけることができて、とても興奮しました!
(今までのリストは、フタモンアシナガバチ♀エントツドロバチ♀。)
この日は更にもう一種類の狩蜂が盗蜜していました。(映像公開予定


【追記】
花が赤い品種のユリズイセンに正当訪花して吸蜜する個体を観察しました。



2018/01/21

ツリフネソウの花で盗蜜するクマバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】



2017年8月下旬

山麓の休耕田(湿地帯)の端に咲いたツリフネソウの群落でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が忙しなく飛び回っていました。
訪花シーンをよく見ると、花の開口部からは一度も正当訪花せず、ひたすら穿孔盗蜜していました。
花蜜が溜まっている筒状の距の先端に口吻を突き刺して盗蜜しています。
雄しべに全く触れないので、当然ながら体は花粉で汚れていませんし、後脚の花粉籠も空荷です。
後半は、花から花へ飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。(@2:32〜)

この群落をよく見ると、散った花の一部が既に結実しています。
受粉しているとすると、ツリフネソウの送粉者は何者なのでしょう?
映像を見直すと、後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けたセイヨウミツバチ♀がクマバチの隣で正当訪花している姿が写っていますね。
体が小さいミツバチは花の入り口から楽々と潜り込めるので、盗蜜する必要がありませんし、花粉も集めることができます。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/10/24

アベリアの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀



2017年7月下旬

アベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)の生垣でクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀も訪花していました。
クロマルハナバチと言えば舌が短く盗蜜の常習犯として悪名高いマルハナバチです。

あまりにも忙しなく花から花へ飛び回るので分かりにくいのですが、スロー再生すると確かに盗蜜していました。
釣鐘型の花筒の入り口から潜り込んで正当訪花するのではなく、花筒の根本に外側から穿孔し吸蜜しているのです。

それにしても、クロマルハナバチ♀が花筒に着地したときに盗蜜する気満々だったのに、なぜ「この花には蜜がもう無い」とすぐに分かるのか、不思議でなりません。
最近に訪花した他のハチの残り香があるのか、それとも盗蜜痕(穿孔)の有無を調べているのですかね?

複数個体を撮影。
映像をよく見ると、後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けている個体が中には居ます。
これは一体何の花粉なのでしょうか?
盗蜜だけしているのなら雄しべに触れることはありませんから、体も花粉で汚れず花粉籠は空荷のはずです。(実際にそのような個体もいます)
同一個体が正当訪花と盗蜜を臨機応変に切り替えながらアベリアの花で採餌(吸蜜、集粉)しているのでしょうか?

つづく→アベリアに正当訪花して吸蜜するクロマルハナバチ♀

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/10/22

アベリアの花で盗蜜するクマバチ♀



2017年7月下旬・午前8:08〜8:15

アベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)の生垣でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。
クマバチといえば盗蜜行動の常習犯として有名です。
採餌シーンをよく見ると案の定、正当訪花せず常に釣鐘型の花筒の根本に穿孔して花蜜を吸っていました。
雄しべに触れることがありませんからクマバチの体も花粉で汚れず、後脚の花粉籠が空荷なのは当然です。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/10/20

アベリアの花で盗蜜するキンケハラナガツチバチ♀



2017年7月下旬・午前7:55〜7:59

駐車場の隅に生垣として植栽されたアベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)でキンケハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris prismatica)が訪花していました。

釣鐘型の花に潜り込んで正当訪花で吸蜜するのは無理らしく、花筒の根本に外側から穿孔して盗蜜していました。
これなら体型が太く舌が短い蜂でも花蜜を舐めることが出来ます。
ツチバチの仲間も盗蜜するとは知らず、初めて観察した私はとても興奮しました。
ただし、一次盗蜜者によって開けられた穿孔をちゃっかり利用しているだけかもしれません。(二次盗蜜者)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/10/19

ヘクソカズラの花で盗蜜するクマバチ♀



2017年7月下旬・午前8:37〜8:40

市街地の民家の板塀を覆い尽くすように繁茂したヘクソカズラキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。

大型のクマバチは釣鐘型の花筒の入り口からは潜り込めず、舌も短いので正当訪花では蜜腺に届きません。(@1:15)
ヘクソカズラはミツバチなど共生関係を結んだ特定の送粉者しか受け入れないように花の形態を進化させてきたのです。

▼関連記事
ヘクソカズラに訪花吸蜜するセイヨウミツバチ♀
そんな植物の企みにも関わらず、クマバチの方が一枚上手です。
釣鐘型の花筒の根本を外側から穿孔して、盗蜜していました。
この群落ではほとんど全ての花筒の根本に既に穴が開いているので、今回の映像では二次盗蜜ですね。
雄しべに全く触れませんから、当然ながらクマバチ♀の後脚の花粉籠は空荷です。

複数個体(少なくとも2匹)を撮影。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


4年前にはクマバチがヘクソカズラの花からすぐに飛び去ってしまい、盗蜜したかどうかしっかり確認できませんでした。
ずっと気になっていたので、今回ようやく決定的な証拠映像が撮れて感無量です♪

▼関連記事
ヘクソカズラを訪花するクマバチ♀


実は同じ群落で、クロマルハナバチのワーカー♀もクマバチと一緒になって盗蜜に励んでいました。(映像公開予定
この組み合わせは4年前に既に記事にしています。

▼関連記事
ヘクソカズラの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀
この二種のハナバチは盗蜜の常習犯として有名です。
ヘクソカズラには独特の悪臭があってもハナバチは全く気にしないようです。
この日は梅雨の晴れ間で久しぶりに晴れたので、ハナバチも晴天を待ちわびていて朝から採餌活動が特に多かったのかもしれません。



ヘクソカズラ:多くの花に盗蜜痕が残る。

2017/10/18

アベリアの花で盗蜜するクズハキリバチ♂



2017年7月下旬・午前7:45〜8:00

某施設の駐車場の隅に生垣として植栽されたアベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)でクズハキリバチ♂(Megachile pseudomonticola)が訪花していました。



腹部第2背板後縁に顕著な明色の毛帯があります。
頭楯が白いのは雄蜂の特徴です。
雄蜂は花粉を採餌しませんから、当然ながら腹面にスコパ(集粉毛、花粉刷毛)はありません。
長時間観察していても同種の♀を見かけなかったのは、♂が先に羽化する雄性先熟だからですかね?

訪花シーンをよく観察すると、鐘形の花筒に潜り込んで正当訪花するのではなく、常に花筒の根本に外側から穿坑して盗蜜していました。
撮影アングルが良ければ、短い舌の出し入れが見えました。
雄しべに全く触れませんから、体が花粉で汚れることはありません。
ただし、もしかすると一番初めに穿孔した一次盗蜜者は別の種類の蜂で、クズハキリバチは二次盗蜜者なのかもしれません。
多くの花筒に盗蜜痕が残っています。
実は様々な種類の蜂がこのアベリアの花で同様に盗蜜していました。(映像公開予定)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


ハキリバチの盗蜜行動は以前に一度だけ観察したことがあります。

▼関連記事
タニウツギの花で盗蜜するハキリバチの一種
今回は雄蜂も器用に盗蜜することが意外でした。






右端の花筒に盗蜜痕
アベリアの花
葉は対生
生垣の全景

2017/09/13

ジギタリスに正当訪花して採餌するクロマルハナバチ♀



2017年6月中旬
▼前回の記事
ジギタリスの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀

道端の畑の隅に咲いたジギタリス(=キツネノテブクロ)の群落で、セイヨウミツバチの他には、クロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀も訪花していました。

マルハナバチの仲間では舌の短いクロマルハナバチは、穿孔盗蜜の常習犯として有名です。
ところが今回は、ジギタリスの花でいつも律儀に正当訪花していて意外でした。
花筒に潜り込めないほど大型の♀(創設女王またはワーカー)なら穿孔盗蜜したはずです。

複数個体を撮影してみると、後脚の花粉籠に橙色の花粉団子をつけた個体がいました。
胸背が白い花粉で汚れている個体は、花筒に潜り込むときに雄しべの葯に触れて花粉が付着したのでしょう。
(ジギタリスの花粉は白なのか橙色なのか? ネットで画像検索すると白〜橙色のようです。)

私がこれまで本で学んできた知識からすると、「同じ蜜源植物に対してミツバチが盗蜜して、体がより大きなクロマルハナバチが正当訪花する」という現象は理解に苦しみます。(あべこべの世界!)
盗蜜していたセイヨウミツバチは自分で花筒の根本を噛んで穿孔したのでしょうか?
苦し紛れのシナリオですが、大型のクロマルハナバチ創設女王が穿孔し、後になってその穴をミツバチが二次盗蜜者として利用していただけかもしれません。
最近羽化したクロマルハナバチのワーカー♀は創設女王よりも小型なので、花筒に潜り込んで正当訪花できている、と考えれば一応は説明がつきます。
クロマルハナバチも花筒の穿孔の存在に気づけば、学習して盗蜜するようになるかもしれません。
穿孔盗蜜の常習犯であるクマバチの姿を今回は1匹も見ていませんが、二次盗蜜者として他にも大型のクマバチ♀が怪しいですね。
別の可能性として、クロマルハナバチのワーカーはコロニーの食糧事情から今はたまたま花粉を必要としていて、(盗蜜しようと思えばできるけれども)今回は正当訪花で花粉集めに専念しているのかもしれません。
マルハナバチは巣の育房を作るのにも花粉が必要なのです。
しかし、この日は午後に2時間40分の間隔を開けて2回観察しても、2種の採餌行動はそれぞれ変わりませんでした。
これらの仮説をどうやったら実証できるか?、となると私には良いアイデアが浮かびません。
とりあえずジギタリスが開花したばかりの頃にしっかり観察して、一次盗蜜者の正体を突き止めるのが肝心でしょう。

自然観察は一筋縄ではいかないのが面白いですね。
本に書いてある単純な知識では説明できない(例外的な?)現象に遭遇して、あれこれと思索を巡らせるのが、フィールドに出かける醍醐味です。

▼関連記事(4年前の撮影)
ジギタリスに訪花するトラマルハナバチ♀
このときは正当訪花していました。
舌の長いトラマルハナバチなら当然です。

余談ですが、これまでゴマノハグサ科とされてきたジギタリスが新しい植物分類体系ではオオバコ科に移動されていたことに驚きました。
植物ではゲノム解析や分子系統学の結果があまりにも我々の形態分類学的な直感に反することが多くて、戸惑ってしまいます。
それだけ植物の形態は収斂進化が多くて、マクロな形質は分類の当てにならないのかもしれません。
素人考えですけど、例えば分子時計の進み方が植物では一定ではない、とか何か重大な落とし穴を見落としているのではないでしょうか?
葉緑体のゲノムの一部がウイルスによって種を超えて水平感染してしまうとか?
(勉強不足なので、迂闊なことは言えません。)


正当訪花するクロマルハナバチ♀と穿孔盗蜜するセイヨウミツバチ♀

2017/09/12

ジギタリスの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀



2017年6月中旬

道端の畑の隅に咲いたジギタリス(=キツネノテブクロ)の群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
この春はなぜか昆虫の活動が激減していて心配しましたが、ようやくミツバチの個体数がフィールドで増えてきた(回復してきた)印象です。

ジギタリスの筒状の花の入り口は太いのでミツバチは容易に潜り込めるはずなのに、花筒の根元を外から食い破って(?)蜜腺を舐めていました。
このような採餌行動は盗蜜と呼ばれ、花の授粉に関与しません。
ミツバチの体に雄しべの花粉が全く触れないので、後脚の花粉籠が空荷なのは当然です。

盗蜜行動は学習を要するのだとすれば、外役に出たばかりの若い未熟なワーカーは正当訪花する気がします。
ところが私が見る限り、どの個体も決して正当訪花せずに盗蜜ばかりしています。(複数個体を撮影。)
萎れかけの花に対しても盗蜜していました。

ミツバチの盗蜜行動は以前も観察していたので、それほど珍しくはありません。

▼関連記事
ヒレハリソウの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀
サルビア・ガラニチカの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀
ブルーサルビア?の花で盗蜜するニホンミツバチ♀

花筒が狭くて入りにくい花なら盗蜜しても仕方ないのですけど、今回は花筒が太いジギタリスでわざわざ盗蜜していたので意外に思ったのです。

ジギタリスの花壇で初めに穿孔したのはおそらく盗蜜の常習犯として悪名高いクロマルハナバチで、ミツバチはその穴を利用する二次盗蜜者だろうと予想しました。
ところが、この花壇でしばらく観察していると、とても意外な展開になりました。

つづく→あべこべの世界(ジギタリスに正当訪花して採餌するクロマルハナバチ♀




【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
ミツバチは、マルハナバチのどの種よりも短舌であるが、自分の舌の長さに応じて訪花植物を選定するので、盗蜜はほとんどみられない。 (p150より引用)



【追記2】
岩田久二雄『自然観察者の手記3』で「盗蜜」と題した章を読んでみると、1948年に庭のジギタリスを訪花する蜂について記録を残しています。
クマバチ以外の10種の蜂は、正常な様式で筒状花の中に頭からもぐりこんで吸蜜するのであったが、花筒の基部上面にクマバチのあけた小孔のある花にくると、ミツバチとクロマルハナバチと、コハナバチの一種だけは、花筒の中に入らずにその背面にまたがって、クマバチの舌の傷跡から舌をさしこんで、盗蜜をするのであった。クマバチの頻訪で傷跡のある花筒が多くなるにつれて、これら3種の盗蜜度も次第に大きくなった。それはどうやら傷口からの花蜜の匂いが、花の筒口からの匂いよりも、手早く彼らを惹きつけるように見えた。(p158より引用)
それに対して、「(ハキリバチやヒゲナガハナバチ類など)単独性の花蜂は盗蜜は行わないのではなかろうか」という仮説を立てています。
筆者は狩蜂の専門家なのですが、そのためか「花蜂の盗蜜行動には資料が少ない」とぼやいているのが印象的でした。(p157より)



2017/09/08

ムラサキツメクサの花で盗蜜するクマバチ♀



2016年10月上旬

農道(堤防)沿いの草地に咲いたムラサキツメクサ(=アカツメクサ)の群落でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。

クマバチ♀の後脚を見ると、花粉籠は空荷でした。
ムラサキツメクサの花は鞠状の集合花序です。
筒状の小花の一つ一つに丁寧に舌を差し込む(正当訪花)のではなく、クマバチは小花を掻き分けるとその根本を噛んで穿孔盗蜜していました。(※追記参照)
この吸蜜法では雄しべの花粉に触れませんから、クマバチの後脚の花粉籠が空荷なのは当然です。
クマバチはハナバチ類の中でも舌が短いため、盗蜜の常習犯なのです。
(もしかすると、クマバチの舌はムラサキツメクサの小花に差し込むには太過ぎるのかもしれません。)
同一個体をひたすら追跡して撮影しました。

3年前にはほんの一瞬しか撮影できず悔しい思いをしたのですが、今回ようやくじっくり観察することができて感無量です。

▼関連記事
ムラサキツメクサを訪花するクマバチ♀

藤丸篤夫『花の虫さがし』という私の大好きな本によると、

(ムラサキツメクサの花で)蜜を吸いに来るハチの種類が、シロツメクサより少ないわけは、花の長さがシロツメクサより長いために、舌の短いハチでは、蜜が吸えないからです。(p29より引用)



石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学』を読むと、アカツメクサは長花筒花、シロツメクサは短花筒花という用語で呼ばれていました。(kindle版 p141より)



【追記】
鈴木和雄『蜜を盗むハチ:マルハナバチの盗蜜行動』によると、
 盗蜜には二つのやり方があります。一つは蜜を吸うために花の一部に穴をあけたりする破壊行為を伴う場合で、「略奪」(Nectar robbing)、もう一つは破壊が起こらない場合で、「窃盗」(Nectar theft)といいます。略奪は短く丈夫な口吻をもったオオマルハナバチ、クマバチなどが行う場合が多く、窃盗は細長い口吻をもったガやハチドリなどにみられます。(ポピュラーサイエンス『動物たちの気になる行動(1)食う・住む・生きる篇』p66-67より引用)

これらのハチは口吻が短い代わりに丈夫にできていて、穴をあけやすくなっています。穴は顎で噛んであける場合もありますが、多くは口吻を突き刺してあけているようです。(同書p69より)


実は今回の映像でも、クマバチはムラサキツメクサの花の基部を大顎で噛み切ったのではなくて口吻を突き刺して穿孔したような気がしました。
そのように記述してある専門家の総説にようやく巡り会えたので、引用しておきます。


最後のスナップショットでは珍しく正当訪花している?

比較のために、舌の長い他のハナバチの吸蜜シーンをご覧ください。

アカツメクサに訪花するトラマルハナバチ♀

アカツメクサを訪花するシロスジヒゲナガハナバチ♀の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】

田中肇『昆虫の集まる花ハンドブック』でアカツメクサの項を参照すると、

シロツメクサよりは花の筒状の部分が長いため、ミツバチより大きいハナバチだけが蜜と花粉の両方を利用することができる。(p39より引用)

確かに言われてみれば、ムラサキツメクサの花で採餌するミツバチを一度も見たことがありません。



▼関連記事(4年後の撮影:シロツメクサには正当訪花)
シロツメクサの花で吸蜜するクマバチ♂の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】



2017/08/30

タツタナデシコの花蜜を吸うフタモンアシナガバチ♀(盗蜜?)



2017年6月上旬・午後17:57~18:04

夕暮れの住宅地で、道端の花壇に咲いたタツタナデシコフタモンアシナガバチ♀(Polistes chinensis antennalis)が訪花していました。




初めは正当訪花で吸蜜していたのに、咲いた花の根本(緑色の萼?)にしがみついて口を付けている行動が気になりました。

もちろん巣材集めではありません。
花は大きく開いているのに、わざわざ穿孔盗蜜するでしょうか?
ナデシコに花外蜜腺があるという話は聞いたことがありません。
甘露を出すアブラムシが群がっている様子もありません。

アシナガバチを夢中にさせる媚薬のような化学物質(フェロモン様物質)を分泌しているのでしょうか?
だとしたら蜂がもっと殺到している気がします。
フタモンアシナガバチが花弁の表面を舐め回しているようにも見えるときもありました。

フィールドノートを見返してもこの日に雨が降った記憶が無いので、花に水滴が付いていたのではないと思います。

アシナガバチが盗蜜する例は既に観察しているので、そのこと自体はさほど珍しいとは思いませんでした。
フタモンアシナガバチ♀がユリズイセンの花で盗蜜!? 
ユリズイセンに訪花するフタモンアシナガバチ♀2つの採餌戦略(正当訪花/盗蜜)



※ あまりにも薄暗い映像に対して、動画編集時に自動色調補正を施しています。



2016/06/23

タニウツギの花で盗蜜するクマバチ♂



2016年5月中旬

未だ満開ではないのですが、ようやく里山に咲き始めたタニウツギの灌木でキムネクマバチ♂(Xylocopa appendiculata circumvolans)がせっせと訪花していました。
一瞬見えた顔が白く複眼が大きく発達していることから、雄蜂ですね。
採餌行動をよく見ると、体が大きいため狭い花筒の中に潜り込んで正当訪花するのではなく、花筒の根元を外から噛んで穿孔盗蜜しています。
植物の立場からしてみると、盗蜜する蜂は受粉を助けてくれないので花蜜を盗まれ損です。
クマバチ♀の盗蜜は珍しくありませんが、雄蜂と見分けた上で盗蜜を撮影できたのは初めてです♪


▼関連記事
クマバチ♀の盗蜜行動@タニウツギ


2016/01/04

ブルーサルビア?の花で盗蜜するニホンミツバチ♀



2015年9月下旬

民家の花壇にニホンミツバチApis cerana japonica)のワーカー♀が訪花していました。
採餌シーンをよく見ると正当訪花ではなく、毎回常に花筒の外側から根本を噛んで穿孔盗蜜していました。
雄しべに触れないため当然ながら、後脚の花粉籠は空荷です。
複数個体を撮影。

空色の花はブルーサルビアですかね?(=サルビア・ファリナセア=ラベンダーセージ;Salvia indigo spires)
花が散りかけで、園芸図鑑と見比べてもよく分かりませんでした。
間近で花や葉を調べたくても他人の庭に勝手に踏み込む訳にいかず、横の公道から望遠で撮るだけなのはもどかしい。
園芸植物は苦手で全く自信がないので、もし間違っていたら教えてください。
濃青い花のサルビア・ガラニチカと並んで花壇に咲いていました。

▼関連記事
サルビア・ガラニチカの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀

この花壇を定点観察していて、舌が短く盗蜜行動の常習犯であるクマバチクロマルハナバチの犯行現場を目撃しています。
もしミツバチの行動が二次盗蜜(一次盗蜜者があけた穴を利用する盗蜜)ならば、一次盗蜜者はおそらくこのクマバチまたはクロマルハナバチでしょう。



2015/12/28

サルビア・ガラニチカの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀



2015年9月下旬

道端の花壇に咲いたサルビア・ガラニチカクロマルハナバチ♀(Bombus ignitus)が訪花していました。
本種は舌が短く盗蜜の常習犯として有名ですから採餌シーンをよく見ると案の定、毎回常に花筒の外側から根本を噛んで穿孔盗蜜していました。
雄しべに触れないので、当然ながら後脚の花粉籠は空荷です。
しがみついた花筒が抜けてしまい、一緒に落下する微笑ましいシーンも撮れました。

後半は、飛来したクマバチ♀とニアミスする度にクロマルハナバチは遠慮して逃げました(クマバチに追い払われた)。
クマバチの方がクロマルハナバチよりも個体数がやや多いというだけでなく、餌場での力関係もクマバチ>クロマルハナバチのようです。

▼関連記事
ブルーサルビア?の花で盗蜜するクマバチ♀

私も幼少期に赤いサルビアの花を片っ端から抜き取って根本を吸蜜(盗蜜行動!)して遊んものですけど、青い品種でも可能かどうか、興味があります(味見してみたい!)。
さすがに成人すると人様の花壇を勝手に荒らす行為はできませんから、自分で庭に栽培するところから始めないといけません。
青い花は蜂が好んで来るようですから、ビオトープの蜜源植物として良さそうです。



2015/12/24

サルビア・ガラニチカの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀



2015年9月下旬

道端の花壇に咲いたサルビア・ガラニチカ(=ガラニティカセージ)をセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
複数個体を撮影。
採餌シーンをよく見ると正当訪花ではなく、毎回常に花筒の外側から根本を噛んで穿孔盗蜜していました。
当然ながら、後脚の花粉籠は空荷です。
同じ花で2匹が鉢合わせのニアミス(蜂合わせ)することがありました。

映像後半(@1:00〜)に登場する空色の花はブルーサルビアですかね?(=サルビア・ファリナセア=ラベンダーセージ;Salvia indigo spires)
花が散りかけで、図鑑を見比べてもよく分かりませんでした。
園芸植物の名前は全く自信がないので、もし間違っていたら教えてください。
濃淡2種類の青いサルビアが花壇に並んで咲いていました。


舌が短く盗蜜行動の常習犯であるクマバチクロマルハナバチも同じ群落で盗蜜する様子を観察しています。
もしミツバチの行動が二次盗蜜(一次盗蜜者があけた穴を利用する盗蜜)ならば、一次盗蜜者はおそらくこのクマバチまたはクロマルハナバチでしょう。



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