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2018/03/24

繭を紡ぐセグロシャチホコ♂(蛾)終齢幼虫



2017年9月上旬・午前7:24〜7:50
▼前回の記事
柳の葉を蚕食するセグロシャチホコ♂(蛾)終齢幼虫

飼育を始めた翌日、セグロシャチホコ♂(Clostera anastomosis orientalis)終齢幼虫が餌の柳(カワヤナギまたはオノエヤナギ)を食べ尽くしそうなので、早朝から食樹植物を採集しに行きました。
近所に柳(種名不詳)の灌木があったので助かりました。

新鮮な葉の付いた柳の枝に移してやると、セグロシャチホコ幼虫は徘徊・探索を始めました。

ところが、なかなか葉に食いついてくれません。
元居た柳の葉よりもかなり若くて柔らかそうなのにどうしてだろう?(同じヤナギ科でも樹種を変えたからか?)と心配しつつ見守ります。

やがて口元から白い絹糸を吐いて柳の葉を綴り合わせ始めました。
どうやら繭作り(営繭えいけん)が始まったようです。
周りから糸で葉を何枚か引き寄せて自分の体をどんどん隠していきます。
隣り合う柳の葉の縁に何度も糸を付着させて互いに少しずつ引き寄せています。(葉の隙間を無くしている)
営繭を微速度撮影で記録しようか迷ったのですが、幼虫が柳の葉に身を隠した後はあまり面白い映像にならないだろうと思った私はそのまま出かけてしまいました。

途中で柳の葉を剥いでやれば営繭を観察できたかもしれません。(剥がすタイミングが難しそう)

半日後、夜に帰宅すると、もう白い繭が完成していました。(午後20:15)
白い繭の中で幼虫の動きはもう見えません。

この個体は体長25mmと終齢幼虫(資料では35mm)にしては未だ小さかったので、まさか営繭を始めるとは思わず私も油断していました。

前日まで食欲旺盛でみんの期間が(ほとんど)無かったことも私の判断を誤らせました。
昼間の隠れ家(巣)を作っているのか、あるいは脱皮用の足場や隠れ家なのか? などと暢気に考えていたのです。
充分に育ってないのに営繭して大丈夫なのかな?
無事に変態して成虫になれるのか、ちょっと心配です。
しかし後日、小型のセグロシャチホコ♂成虫が羽化してきました。
♂(の一部)は体を大きくするよりも生育スピードを優先するのかも知れません。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→飛べ!セグロシャチホコ♂(蛾)【ハイスピード動画】



2018/02/20

羽化に失敗したクロマダラエダシャク ?(蛾)



2016年5月中旬・午後17:56

里山の山腹の草地を歩いていたら、カナムグラの茂みの中でシャクガ科エダシャク亜科Abraxasの蛾を見つけました。
前翅前縁中央にある灰色の斑紋の中に黒い輪っか状の紋があるので、ユウマダラエダシャクは除外できます。
採集した標本の交尾器を調べないとこれ以上は絞り込めないそうです。が、例えばクロマダラエダシャク(Abraxas fulvobasalis)かもしれません。

よく見ると、左の翅がクシャクシャになっている個体でした。
焦げ茶色の蛹から左翅が上手く抜け出れず、引っかかったまま羽化後の翅伸展が正常に進まなかったようです。
薄暗いので、後半はハンディカムの補助照明を点灯してみました。
指で蛾に触れてみて、この状態で少しでも飛べるかどうか確かめてみればよかったですね。
左翅に挟まっている羽化殻を採集するつもりだったのに、直後に他の被写体に気を取られてしまった私はすっかり忘れてしまいました…。

カナムグラはキタテハの食草として有名ですけど、Abraxas属の蛾の幼虫の食草ではありません(少なくとも公式の記録では記載なし)。
終齢幼虫になると食餌植物を離れて草むらに隠れ粗い繭を紡ぐのかな?
あるいは成虫が羽化殻から抜け出ようと暴れながら、蛹を引きずってここまで辿り着いたのかもしれません。


2017/12/05

イラガ(蛾)終齢幼虫bが作り直した繭の色斑は不鮮明型に【100倍速映像】



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-15


2016年10月上旬・午後13:49〜午前00:12

▼前回の記事
プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】

プラスチック容器の壁面で作りかけた繭が破れてしまったイラガMonema flavescens)の終齢幼虫bをメタセコイアの小枝に移してやりました。
営繭に適した場所を探してゆっくりワンダリング(徘徊)する幼虫をよく見ると、腹面が黄緑からオレンジ色に変色していました。
やはり、この変色は営繭の前兆と考えても良さそうです。
『イモムシハンドブック』や『繭ハンドブック』に掲載されたイラガ終齢幼虫の体長は24〜25mmですが、この個体は体長が著しく萎縮しているのが気がかりです。(と言いつつも、微速度撮影を優先して体長を実測するチャンスを逃してしまいました…。)
営繭に一度失敗したので、絹糸腺が枯渇してしまったのではないかと心配です。
食餌を再開して栄養をつけてから営繭し直すのかと思いきや、繭作りのプログラムが一旦始動してしまうと生理的に後戻りは出来ないようです。

斜めに立てた小枝(メタセコイア)の上面で足場糸を紡ぎ始めました。
イラガの繭がよく作られる小枝の二又部分をわざわざ選んで与えてやったのに、イラガ幼虫は私の親心を知らず、またもやY字状になった部分を営繭場所に選ばなかったのが不思議でなりません。

白い絹糸を吐いて小型な繭を順調に紡いでいます。
粗い網状の繭を作り終えると、次は繭内で回転しながらマルピーギ管に蓄えられていたシュウ酸カルシウムを含んだ白い液体を排泄しました。(@2:41)

次は褐色の液体(硬化剤タンパク質)を口から分泌するも、なぜかイラガ繭に特有の縞模様が形成されません。
コーヒー豆と似た状態のままで、繭の硬化・黒化が進みます。
繭が小さ過ぎて、幼虫が繭内で自在に動き回れなかったのでしょうか?
あるいは、シュウ酸カルシウムまたは硬化剤タンパク質の分泌量が少なかったのかもしれません。
営繭に一度失敗した直後なので、素材の消耗が激しかったのでしょう。

作り直したせいか、完成した繭はとても小さな物でした。
表面の縞模様も全体的に不明瞭です。
密閉容器に移した繭を外気に晒して越冬させました(冬の低温をしっかり経験)。

おそろしく矮小化した成虫が羽化するかと期待していたのですけど、翌年になっても残念ながら成虫は羽化してきませんでした。
原因は不明です。

私が晩秋に野外からイラガ幼虫を何匹も採集してきても、飼育下ではなかなか繭を正常に作ってくれない、ということがここ何年も続いています。
営繭する前に萎んだように死んでしまう幼虫が多いのです。
その原因として、素人は素人なりに仮説を考えてみました。
秋も深まると食樹植物の葉に含まれる毒物(シュウ酸など)の量が増えて栄養価が下がるのではないでしょうか?
つまりイラガ幼虫は、食べても食べても栄養失調の状態なのかもしれません。
イラガ幼虫は体内のマルピーギ管に溜め込んだシュウ酸カルシウム(毒物)の量が限界(臨界点)に達すると自家中毒になり、栄養状態や絹糸腺の発達があまり良くなくても営繭のスイッチが入り毒物を排泄するのではないでしょうか?
この仮説が正しければ、もっと季節の早い夏に第一化の幼虫を飼育すれば、繭の歩留まりが向上するでしょう。
(夏のフィールドではイラガ幼虫の個体数が少ないようで、私にはなかなか見つけられないのです。)
イラガの繭作りや縞模様のパターン形成のタイムラプス映像はダイナミックで美しく、見ていて飽きません。
いつかまた再挑戦するつもりです。


つづく→#16



【追記】
CiNiiで文献検索してみると興味深い論文を見つけました。
野外におけるイラガ繭の色斑二型の出現要因. 古川 真莉子 , 中西 康介 , 西田 隆義.  環動昆 27(4), 133-139, 2016.   Jpn. J. Environ. Entomol. Zool. 27(4):133-139(2017)
日本語要旨を引用すると、
イラガは固い繭を樹木の幹や枝に形成する.この繭の色斑には大きな変異があり,縞模様型(全面が鮮明な白黒模様)と不鮮明型(不鮮明な縞模様,または全体的に不鮮明な茶褐色)に大別される.しかし,繭の色班型の違いに関わる環境条件について知見は乏しかった.そこで本研究では,イラガ繭の色班型の出現頻度と環境条件との関係を,野外調査により明らかにすることを目的とした.調査対象とした 47 種の樹種のうち,17 種でイラガの繭が見つかり,94 個の繭を採集した.縞模様型の繭は,そのうち 9 種の樹種から 33 個採集した.縞模様の有無に対する,繭形成樹種,繭を形成した場所の地面からの高さおよび枝・幹の太さとの関係を解析したところ,繭が形成された部分の枝の太さと負の関係があり,細い枝ほど縞模様型の割合が高いことがわかった.また,同じ樹種で行なわれた先行研究の結果と比較すると,縞模様型の割合は地域によって異なることが示された.

この研究によれば、私が今回飼育した繭が全体的に不鮮明型の色班になったのは、与えた小枝が太かったからということになります。
しかし繭を新たに作り直した影響の有無は検討の余地があると思います。
私としては今のところ自分で観察した例数が少な過ぎて、未だ何とも言えません。


13:49 pm
17:02 pm
20:33 pm
翌日 00:12 am

【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速映像とオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
じっくり見たい方はこちらをご覧ください。








2017/12/04

プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-14


2016年10月上旬・午前5:33〜9:49

朝に様子を見ると、イラガMonema flavescens)の終齢幼虫bが夜の間に食樹植物から自発的に離れて飼育容器のプラスチック壁面に静止していました。
てっきり脱皮前の眠かと思い、微速度撮影で監視を始めました。
100倍速の早回し映像をご覧ください。

壁に静止していても背脈管(昆虫の心臓)の激しい拍動が見られます。
脱皮前の眠かと思い込んでいたら、しばらくすると、その場で足場糸を張り巡らせて営繭開始。

イラガ幼虫はプラスチック容器の中でも表面がザラザラに加工してある部分を営繭場所に選びました。
背景が白いと、白い絹糸が見え難いですね。

この個体は営繭前に体色変化も見られませんでした。
採集時には一番小さな個体だったのに、飼育下では食欲旺盛で仲間をごぼう抜きして営繭を始めたのです。


イラガの終齢幼虫bは白い絹糸で自分の体の周りに粗い網目状の繭を順調に紡いでいたのに、途中でなぜか薄い繭が破けてしまいました。
幼虫の肉角が作りかけの繭を突き破ってしまったのかな?
絹糸と接着するプラスチック素材の相性が悪かったのかもしれません。(営繭場所の選択ミス)
もはや繭は修復不能らしく、体が外に出てしまった幼虫は困っているようです。
これ以上放置すると大量の絹糸を無駄に使うだけなので、小枝に移すことを決意しました。
今思うと、失敗作の繭を食べて絹糸のタンパク質を再利用していたのかもしれませんが、確認していません。


本を読むと、イラガは平面にも繭を作ることが出来るらしいのですが、失敗の原因は不明です。
(細い枝に作る時と比べて平面上の繭は縞模様が変わるらしい。)
もしプラスチック容器を横に寝かせて水平にしておけば、失敗事故は避けられたでしょうか?

この間、ときどき記録した室温は以下の通り。
午前6:26 室温22.3℃、湿度62%
午前7:22 室温21.0℃、湿度72%
午前8:54 室温21.5℃、湿度72%


つづく→#15:小枝に繭を作り直したイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】


【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速映像とオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
じっくり見たい方はこちらをご覧ください。









2017/11/30

完成したイラガ(蛾)繭のお披露目



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-13



▼前回の記事
営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫


2016年9月中旬

営繭開始から2日後のイラガMonema flavescens)の繭です。
完成した回転楕円体の繭cをゆっくり回して全体をお見せします。
繭の両端もお見せします。
繭を爪で弾くと、カチカチ♪といういかにも硬そうな音が鳴ります。

ツルンとした繭が小枝に付着している部分を固定する絹糸の網目をこれまで意識したことがなくて、ちょっと興味深く思いました。

作り方を考えれば当たり前なんですけど。
野外で見つけるイラガの繭は、この糸が(風化して?)無くなっていることが多い気がします。

繭の縞模様のパターン形成過程が面白いのに、微速度撮影で記録した面とは逆側の方が繭の縞模様がきれいに出来ていたのは残念でした。
2匹目の営繭に期待しましょう。

イラガ繭の模様についてインターネット検索で調べ物をしていたら、興味深い研究結果を知りました。


古川真莉子ら 「イラガ科2種の繭生態」
日本生態学会第60回全国大会・一般講演:ポスター発表 (2013年3月) 講演要旨より引用

イラガの斑紋と死亡要因との関係を調べたところ,斑紋が明瞭な繭は鳥類による捕食が少なく寄生蜂による捕食が多かった.これらのことから,ヒロヘリアオイラガは隠蔽度が高いにも関わらず,鳥類に選択的に捕食され,同所的に生息するイラガの捕食率が低下していたと示唆された.また,イラガの繭の明瞭な斑紋は鳥類に対して捕食者回避に正の効果があることが示唆された.
イラガの硬い繭を壊して、中で越冬している前蛹を捕食する野鳥を、私も何例か観察しています。

▼関連記事
アカゲラ♀がイラガ(蛾)の繭を砕いて採食【冬の野鳥】
イラガの繭を割って食べるアカゲラ【冬の野鳥】
シジュウカラ♂の採食行動(イラガの繭は割れず)【冬の野鳥】
イラガの繭を突付くシジュウカラ♂【冬の野鳥】

この繭を紡いだ終齢幼虫cの左側面後部にヤドリバエの卵殻らしき白い異物が付着しているのが気になっていました。
体内寄生されている可能性を疑い、繭を密閉容器に隔離して飼育を続けました。
繭を外気に晒して越冬させた(冬の低温をしっかり経験させた)ものの、翌年になってもなぜかイラガ成虫やヤドリバエは羽化してこなくて残念でした。


▼関連記事
イラガに寄生するヤドリバエ(イラムシヤドリバエ?)

つづく→#14:プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】


2017/11/29

営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-12

▼前回の記事
イラガ(蛾)終齢幼虫の繭作り【100倍速映像】

2016年9月中旬

イラガMonema flavescens)終齢幼虫cが繭を紡ぎ始めて間もない頃の10倍速映像を見直していたら、脱糞していました。
スローモーションに加工して、リアルタイム映像に戻しました。(オリジナルが微速度撮影なので、動きがややカクカクしているのは仕方がありません)

絹糸を紡ぎながら、白っぽい液便を噴射しました。
イモムシが繭を作る直前によく下痢便を排泄しますが、白いのはシュウ酸カルシウムが含まれているからでしょうか?
こんな排泄シーンは見たことがありません。

つづく→#13:完成したイラガ(蛾)繭のお披露目


2017/11/28

イラガ(蛾)終齢幼虫の繭作り【100倍速映像】




イラガ(蛾)の飼育記録#2016-11


2016年9月中旬・午前8:04〜午後22:14

▼前回の記事
繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫

イラガMonema flavescens)終齢幼虫cが小枝(メタセコイア)に営繭する一部始終を微速度撮影してみました。
100倍速の早回し映像をお楽しみ下さい。
これは長年自分で撮ってみたかったテーマなので、ようやくものにできて感無量です。
何度も飼育に失敗していたのです。(原因不明)

▼関連記事(2012年) 
イラガ(蛾)幼虫の営繭異常【早回し映像】


斜めに立てた小枝の下面に足場糸を敷き詰めてから、自分の体の周囲に絹糸を張り巡らし始めました。
白い糸を紡ぎながら繭内でグルグルと激しく動き回る幼虫の腹面が赤っぽいことから、なぜか木星の大赤斑を連想しました。
こんなに繭内で擦られても、ヤドリバエの卵の殻らしき白い異物が幼虫の体表(左側面後部)から剥がれ落ちないことが意外でした。

網目の粗い繭の表面に突然、白い縞模様が左端から見え始めました。(@3:50)
イラガ幼虫のマルピーギ管で大量に作られた白いシュウ酸カルシウムは肛門から脱糞したのか口から吐き出したのか、気になるところですが早回し映像ではよく分かりませんでした。
繭内部の繊維全体に白い液体を染み込ませています。
次に硬化剤のタンパク質を含む褐色の液体を分泌しました。(これもどこから出たのか映像では不明。)
自らの全身を完全密閉して封じ込めてしまう繭の中でイラガ幼虫がどうして窒息しないで激しく動き回れるのか、不思議でなりません。
閉所恐怖症のヒトには想像するだけで悪夢でしょう。
もう一つの疑問は、成虫の羽脱に備えて硬い繭の内部に予め丸く切れ込みを作るのですが、その方法が映像では全く分かりませんでした。(※追記参照)

名著『イラガのマユのなぞ』でも未解決の難問です。
蛹化する前に幼虫が繭の内側に口器で齧りながら回転して丸い切れ込みを入れるのか、それとも微量の酸などを分泌して化学的に溶かすのでしょうか?
硬い繭をX線(レントゲン)で透視しながら微速度撮影すれば何か分かるかもしれません。


15:08 pm
18:38 pm

最後は幼虫の動きが止まりました。
回転楕円体の小さな繭が完成し、硬化・黒化が進行します。

名著『イラガのマユのなぞ』で探求されているように、イラガの繭に現れる白い縞模様のパターン形成はとても興味深いテーマです。
この個体では残念ながらカメラに向いた面にはあまり白い縞模様が形成されませんでした。
おそらく偶然だと思いますが、撮影用の眩しい明かりを照射し続けた影響があったのかもしれません。
飼育中のもう一匹の幼虫が新たに営繭しそうなので、次に期待しましょう。


『繭ハンドブック』によると、イラガの繭は

白地に濃褐色の不規則な縞模様がある楕円形、硬い。繭は糸で作られるが、幼虫はお尻からシュウ酸カルシウムの白い液を、口からはタンパク質を含む褐色の液を出し繭層に塗りつけ、これが繭の模様となる。
表面の模様は様々で個体差が大きい。(p82より引用)



つづく→#12:営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫




※【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』によると、
イラガ科の繭は、蛹の頭部側の内壁だけが薄く、ここが羽化に際して出口となります。羽化が近づくと、蛹は破繭器はけんきを使って脱出孔を開け、半身を繭外にせり出して羽化します。破繭器は、繭内で体を回転させて缶切りのように使ったり、てこのように押し上げて使うようです。  (p77より引用)



22:28 pm(裏側にはきれいな縞模様)
22:28 pm
22:29 pm
22:30 pm

【おまけの映像】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速およびオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
営繭の過程をもう少しじっくり観察したい方は、こちらをご覧ください。








2017/11/27

繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫

イラガ(蛾)の飼育記録#2016-10


2016年9月中旬

▼前回の記事
小枝をかじり脱糞するイラガ(蛾)幼虫

今季はどうしてもイラガMonema flavescens)の繭作り(営繭えいけん)を観察したいので、変化を見逃さないように卓上でイラガ幼虫を複数飼育しています。
水を入れたペットボトルにカキノキやミズナラなどの枝葉を挿して、そこで幼虫を放し飼いしています。
私が外出するときや就寝時には、脱走防止のために全体に大きなビニール袋を被せて覆っています。(脱走防止の袋掛け)
ただ飼うだけなら適当な(市販の)飼育ケースに幼虫を放り込んでおけば勝手に繭を紡いでくれるはずです。
しかし私の場合はあくまでも動画撮影が目的なので、なるべく撮影しやすい状態で繭を作って欲しくて、あれやこれやと手を出したり気を揉んだりしている訳です。

実は前夜に、その袋に登ってきた一匹の幼虫を何気なく指で弾き落としてしまいました。
(普段はそんな手荒なことはしないで、ピンセットでつまんで食樹植物に戻してやります。)
翌朝に見ると、幼虫の腹面が赤っぽく変色していて驚きました。
まるで内出血したように痛々しい色合いです。
てっきり、私が指で弾いた後遺症だと思い込んでしまいました。
しかし昆虫はそんなにヤワではなく、営繭の準備が出来たことによる自然な変色だと後に分かりました。
繭の原料の色素が透けて見えているのかもしれません。
インターネット検索すると、先人の飼育例でも同様の記述があって一安心。

【参考サイト】晶子のお庭は虫づくし:イラガの観察日記6

繭作りが始まりました。茶色かった部分が紫色に変わってきています。(引用)



イラガMonema flavescens)終齢幼虫cの食欲が完全に無くなり、営繭場所を探し求めてワンダリング(徘徊)を始めました。
適当な小枝(メタセコイア)を差し出してやると、素直に乗り移ってくれました。
一度は小枝から滑落したものの、再び乗せてやると、今度は小枝の下面に落ち着きました。
繭を作りやすいようにとせっかく二又部分の小枝を選んで採取してきたのに、そこには興味を示しませんでした。
イモムシが繭を紡ぎ始める直前にはよく下痢便を排泄するのですが、今回は見ていません。


左側面後部に目立つ白点はヤドリバエの卵が孵化した跡なのだろうか?(左右非対称)



斜めに立てた小枝の下面に、営繭のための足場糸を敷き詰め始めました。
後退運動や方向転換を見ることができます。
体の下面や頭部のフードなどが赤紫色(褐色)に変色しています。

つづく→#11:営繭の微速度撮影



2017/10/31

ホソバセダカモクメ(蛾)の幼虫はアキノノゲシの綿毛を食べる?



2016年9月下旬

田んぼの畦道の横に生えたアキノノゲシの群落でホソバセダカモクメCucullia fraterna)という蛾の幼虫を見つけました。
保護色にはなっておらず、白い綿毛に居るとむしろ目立ちます。
黄色と黒の模様は、毒があることを捕食者に知らせる警告色なのかな?

見つけたときこの幼虫はじっとしていたのですが、花が終わった後の綿毛や種を食べていたのですかね?
このときは先を急ぐ用事があって、摂食シーンをじっくり観察できませんでした。
飼育する余力も無くて、採集もしていません。

▼関連記事
オニノゲシの葉を食べるホソバセダカモクメ(蛾)幼虫


【追記】
ホソバセダカモクメ幼虫の種子食は2年後に確認することができました。

  ▼関連記事

ホソバセダカモクメ(蛾)の幼虫がアキノノゲシの種子を食べる際のトレンチ行動



2017/08/28

イチモンジチョウの羽化【10倍速映像】



2017年5月下旬

イチモンジチョウの飼育記録#12


微速度撮影しながら外出していたら、午後にイチモンジチョウLimenitis camilla)成虫が羽化していました。
10倍速の早回し映像を御覧ください。
垂蛹が割れてスルリと抜け出た成虫が抜け殻にしがみつくと、みるみるうちに翅が伸展します。
ところが肝心の翅が、画角から下にはみ出していて映っておらず、残念でした。
私の予測が甘かったですね。
途中で気づいて引きの絵にしても時既に遅し。
前翅翅裏の縁の白紋が明瞭なので、アサマイチモンジではなくイチモンジチョウで確定しました。
(参考:ヤマケイポケットガイド9『チョウ・ガ』p143)

イチモンジチョウ垂蛹の背面中央にある竜骨突起(しぐま造語)が何のためにあるのか、ずっと気になっていました。
羽化した成虫はこの竜骨突起に前脚をかけてぶら下がっています。
この奇妙な突起は、羽化した成虫がつかまって翅を伸ばすために作られた専用の場所なのですかね?
それとも終齢幼虫から蛹化する際に抜け殻をうまく割るための構造なのかな?
成虫の背中にコブのような物はありません。
背側なら竜骨と呼ぶのは本来おかしいのですけど(鳥類の竜骨突起は腹側にある)、正式名称をご存知の方は教えてください。

初めは左右に分かれていた2本の口吻がゼンマイのようにクルクルと伸ばしたり曲げたりしているうちに根元からジッパーのように1本に融合して、食事用の管(ストロー)になります。

やがて翅を軽く開閉するようになりました。
翅を乾かしているのでしょう。



翅を伸ばし終えた後に蛹便(羽化液)を排泄する瞬間は撮れていませんでした。
真下に敷いていた白紙に黄土色の羽化液が一滴垂れていました。
量も少なかったです。

蛹便

蛹化してから8日目に羽化しました。
蛹内での変態のスピードが予想よりも速かったです。
幼虫の時期には体内寄生を疑っていたのですが、無事に成虫が羽化して良かったです。



以下は羽化殻(垂蛹の抜け殻)の写真です。

側面
側面
腹面
背面

つづく→#13:イチモンジチョウ:羽化直後の飛翔

2017/08/27

イチモンジチョウ垂蛹:羽化前の自発的な蠕動【60倍速映像】



2017年5月下旬

イチモンジチョウの飼育記録#11


イチモンジチョウLimenitis camilla)が蛹化してから8日後。
翅の黒色が透けて黒くなった垂蛹が、朝になると背面の銀白紋が消失していました。
いよいよ羽化しそうです。

羽化の前兆が分からないので、微速度撮影で監視を始めました。
60倍速の早回し映像を御覧ください。
自発的な蠕動運動の頻度が上がってきました。
室内の風で揺れているのではありません。



↑【おまけの映像】
早回し速度を少し落とした40倍速の動画をブログ限定で公開します。


つづく→#12:イチモンジチョウの羽化【10倍速映像】



2017/08/13

イチモンジチョウ垂蛹の黒化



2017年5月下旬

イチモンジチョウの飼育記録#9


蛹化から1日経つと、イチモンジチョウLimenitis camilla)の垂蛹は全体がメタリックな黄金色に変わりました。
腹部腹面と複眼の部分に銀色の窓があります。
台を回しながら垂蛹を360°お見せします。

朝、蛹が自発的に体を左に捩ったのを見たのですが、その姿勢のまま固まっています。
たまに自発的に蠕動運動していたのに、ピンセットで蛹に触れても無反応でした。(映像なし)

更に6日が経過すると(蛹化からちょうど1週間後)、全体に黒化が進んでいます。
これは成虫の翅の黒色が透けて見えているのでしょう。

つづく→#10:触られて暴れるイチモンジチョウ垂蛹


側面(ストロボを焚くと色の印象がまた変わります)
側面
背面
腹面

2017/08/12

イチモンジチョウの蛹化【40倍速映像】



2017年5月下旬

イチモンジチョウの飼育記録#8


突発的な蠕動運動を繰り返していたイチモンジチョウLimenitis camilla)の前蛹は、朝になると最終脱皮(蛹化)して垂蛹になりました。
断続的だった蠕動運動が激しく続くようになると、いよいよ脱皮が始まります。
途中で一旦、上半身も真っ直ぐに伸びました。
当時の私はこの個体がてっきり体内寄生されていると思い込んでいたので、ここまで正常に発生したのは意外でした。

ところで、このゴツゴツした垂蛹に見られる背面の竜骨突起(正式名は?)と頭部の耳状突起が気になりました。
一体どんな役目があるのですかね?
耳状突起の中で触角が作られる訳でもありませんし、竜骨突起に対応してイチモンジチョウの成虫の背中に大きな瘤(コブ)があるとは思えません。


側面
側面
腹面
背面

下の落ちた蛹化殻を採集して、私の個人的な抜け殻コレクションに加えました。


背面
側面
腹面


【おまけの動画】
早回し速度を落とした20倍速映像と10倍速映像(オリジナルの素材)をブログ限定で公開します。







つづく→#9:イチモンジチョウ垂蛹の黒化


2017/08/11

イチモンジチョウ前蛹:蛹化前の蠕動【20倍速映像】



2017年5月下旬

イチモンジチョウの飼育記録#7


眠から覚めたイチモンジチョウLimenitis camilla)の終齢幼虫が前蛹になるまでの様子は撮り損ねてしまいました。
タニウツギ小枝の下面に腹端を固定するための足場を絹糸で綴ってから脚を枝から離して腹端でぶら下がり、前蛹になりました。
当時の私は、この個体が絶対に体内寄生されているに違いないと思い込んでいて、あまり観察に身が入らなかったのです。
むしろ私の関心は、ヤドリバエや寄生蜂の幼虫がいつ寄主を食い破って出てくるか?という方にありました。

日付が変わってから、イチモンジチョウの前蛹が脱皮して蛹になる過程を微速度撮影で愚直に記録し始めました。
20倍速の早回し映像をご覧ください。
前蛹は自発的な蠕動運動を繰り返し、ときどき身を捩らせています。
蛹化の前兆が分からなかったのですが、次第にクチクラの裏に泡のような空気が入り、色が白っぽくなってきました。
新旧クチクラ層の間に隙間が作られつつあるのです。

つづく→#8:イチモンジチョウの蛹化【40倍速映像】



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