ラベル 擬態 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 擬態 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2015/10/27

捕獲してもコアシナガバチ♂は刺さない



2015年8月中旬

コアシナガバチ♂(Polistes snelleni)がクズの葉に乗って身繕いしています。
顔が白く触角の先がカールしているので雄蜂で間違いありません。
飛び立った先で捕獲しました。

雄蜂は毒針を持たないため、素手で翅を摘んで持っても刺されません。
腹部の動きは♀が毒針で刺す動きと同じで、これは♀に擬態したブラフと表現できるかもしれません。
華奢な大顎で噛まれても痛くありません。
全くの無害で無闇に恐れる必要はないことがお分かりいただけるでしょう。
(もちろん、相手が♀だったら私もこんな無茶はしません。)

以下は標本写真。


腹端には毒針の代わりに毛が生えていました。

2015/03/23

眼状紋を見せつけ威嚇するクスサン♂♀(蛾)【暗視動画】



2014年10月上旬・深夜4時頃

キャンプ場のトイレの外壁(外灯付近)に多数のクスサンSaturnia japonica japonica)♂が止まっていました。
触角が羽毛状なので、♂と判ります。
2番目に登場する個体はログハウスの丸太の隙間に頭を突っ込んでいるため、触角がよく見えません。
腹部が膨満していて、いかにも卵が詰まっていそうなので♀なのかな?
他に確認できたのは全て♂でした。

翅を指先で軽く叩くと翅をゆっくりと広げ、隠れていた後翅の眼状紋を誇示します。
計4頭の個体(♂3♀1)で繰り返し、赤外線の暗視カメラで撮影してみました。
しかし、暗い夜に視覚に頼る威嚇は身を守る作戦として意味が無いのではないか?という気もしてきました。
途中で白色LEDの照明に切り替えて、翅色の個体差を記録します。

最後の♂個体は交差点で街灯の下の白線に乗っていました。
翅に触れて刺激すると暴れるも、体温が低くて飛び立てません。


2015/03/12

電線で鳴き真似♪を練習するモズ♂(野鳥)



2014年5月中旬・朝(午前06:53)

モズ♂(Lanius bucephalus)が住宅街の電線に止まって鳴いていました。
小声でチュルチュル〜♪となにやら鳴き真似しているのですけど、遠くてよく聞き取れません。
(ヘッドフォンを着用し最大ボリュームでお聞き下さい。)

何という種類の鳥の鳴き声を真似しているのか、聞き分けられる方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。
後半から始めた(@0:23〜)キョッキョッキョッ♪と鳴く縄張り宣言(?)は静かな住宅街によく響き渡ります。

最後も小声でキリリリリ…♪とカワラヒワ?の鳴き真似をしながら飛び去りました。
この個体は未だ鳴き真似に自信がなくて練習しているのでしょうか?

▼関連記事
モズ♂(野鳥)の鳴き真似♪を声紋解析してみる


2015/01/26

クスサン(蛾)は離陸前に準備運動が必要【暗視動画】



2014年10月上旬

山麓のキャンプ場で深夜未明に(4:01 am)クスサン♂(Saturnia japonica japonica)がログハウスの外壁に止まっていました。
後翅の眼状紋で威嚇する行動を赤外線の暗視動画に撮ろうとして指で触れたら、翅を広げた瞬間に落下しました。
しつこく刺激すると羽ばたいて暴れるも飛び立つ力がありません。
胸部の飛翔筋を激しく震わせて体温を上げてからでないと、体重の重いクスサンは飛び立てないのです。(準備運動が必要。)
捕食者に襲われてもすぐに飛んで逃げることが生理的に不可能なため、眼状紋による威嚇で自衛してなんとか時間を稼ぐしかないのでしょう。
すぐには飛べないため眼状紋による威嚇を発達させたのか、それとも逆に、眼状紋による自衛が有効であったために大型化が進んだのか、どちらですかね?

途中からビデオカメラを赤外線LEDから白色LEDの照明による通常撮影モードに切り替えました。(蛾の翅の色が分かるようになります)
ようやく離陸すると、蛍光灯に向かってまっしぐらに飛んで行きました。(走光性
バサバサと羽音を立てて灯火の周りを飛び回ります。
温度計を忘れたので、気温は不明です。


2015/01/02

クスサン♂(蛾)眼状紋による威嚇【暗視映像】



2014年9月中旬

郊外の大通りで夜(20:54 pm)、クスサン♂(Saturnia japonica japonica)が街灯下の歩道に止まっていました。
触角が羽毛状なので性別は♂です。
赤外線の暗視ビデオカメラで撮りながら翅に触れると、後翅を広げて眼状紋を見せ威嚇します。
しつこく触って刺激を続けると羽ばたいて暴れるも、大型の蛾は気温が低いとすぐには飛び立てません。
準備運動で体温を充分に上げてからでないと飛び上がれないのです。

すぐには逃げられないため眼状紋による威嚇を発達させたのではないかな?
それとも逆に、眼状紋による自衛が有効であったために大型化が進んだのかな?



2014/12/24

クロヒカゲの眼状紋はオオスズメバチ♀に通用するか?【ハイスピード動画】



2014年9月上旬

里山の雑木林で1匹のオオスズメバチVespa mandarinia japonica)のワーカー♀がコナラの樹液を吸っていました。
蜂が飛び立つ瞬間を引きの絵で記録するつもりで240-fpsのハイスピード動画に撮り始めたら、ちょっとしたドラマが始まりました。

幹の下から一頭のクロヒカゲLethe diana)が登って来ました。
少しずつ樹液スポットに近づいて来ます。
正面から対峙し睨み合い。
クロヒカゲは翅裏の眼状紋を見せつけ威嚇しているつもりなのでしょうか?
意外にオオスズメバチも多少たじろいでいる印象を受けました(警戒姿勢)。
日本のスズメバチは天敵であるヒト(日本人)の黒髪や黒い目玉を目掛けて襲い掛かってくることが知られています。

クロヒカゲも万一襲われた時に眼状紋へ攻撃の矛先を逸らして致命傷を避けようとする戦略なのかもしれません。
やがて警戒を解くとオオスズメバチは吸汁を再開。
神経戦に痺れを切らしたオオスズメバチが歩いてクロヒカゲに詰め寄りました。(占有行動)
その迫力に負けたクロヒカゲは飛んで逃げ、幹の背後に回り込みました。
目障りなお邪魔虫を追い払ったオオスズメバチは満足気に身繕いすると、木を登り下りしています。
負けたとは言え、最強のスズメバチに立ち向かっていく強気の蝶がいることに驚きました。

クロヒカゲにしてみれば、ライバルを追い払えなくても口吻を伸ばして樹液に届く距離までなんとか近づければ良い訳です。
眼状紋の有無に関わらず、蝶や蛾の成虫をスズメバチ類が狩って獲物にする例を見聞きしたことはありません。
翅がかさばる割に肉団子になる部分(胸部に詰まった飛翔筋)の割合が少ないので、わざわざ狩る気にならないのでしょう。
したがって、眼状紋の擬態が対スズメバチの自衛戦術として効果があるのかどうか、不明です。

この続きをスローモーションでお見せしても映像的にあまり面白くないので割愛しましたが、実はつづきの未公開映像があります。
クロヒカゲが未練がましくまた飛来して幹の下方に止まりました。
オオスズメバチが油断なく見下ろしている間にクロヒカゲは歩いて幹を登り、別の樹液スポットを見つけて平和に吸汁を始めましたとさ。
めでたしめでたし。


2014/12/03

汗を舐めるシロスジナガハナアブ♀


2014年8月下旬


▼前回の記事
シロスジナガハナアブ♀の探索飛翔

私が山道で休んでいると、シロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が飛来しました。
やがて私のザックに降り立ち、汗の滲み込んだベルト部分を舐め始めました。
汗に含まれるミネラルを摂取(塩分補給)しているのでしょう。
左右の複眼が離れているので、性別は♀ですね。
それまで探索飛翔していたのは、汗の匂いに誘引されたようです。
近寄ってきたクロアリを嫌って飛び立ち、ホバリング(停空飛翔)を披露してくれました。
飛び回ると意外に重低音の羽音が鳴り響きます。
ザックのいつもほぼ同じ場所に着地します。
不思議なことに私の体や服には寄って来ず、汗ばんだ腕を差し出してもその手に乗りませんでした。
警戒しているのか、それとも新鮮な汗は惹き寄せる匂いが足りないのかな?(濃縮・熟成が必要?)【※追記を参照のこと】

このハナアブは見た目がアシナガバチやスズメバチにそっくり(ベイツ型擬態)なだけでなく、捕獲すると蜂のように刺す真似をする(行動擬態)そうです。
捕虫網が無いと採集できず今回も確かめられませんでした。
実は近くをキイロスズメバチが盛んに行き来しています。
擬態のモデルかもしれないキイロスズメバチとシロスジナガハナアブ♀は互いに没交渉でした。(追記2を参照)


【追記】
私は山中でも虫除けスプレーや制汗剤、香水などを使う習慣がありません。
ひとつ心当たりがあるのは、私が夏に使っている冷涼系ボディソープにメントール(ハッカ油の成分)が含まれていることです。
虫除け効果が知られているため、ハナアブも私の汗を直接摂取しに来るのは忌避したのかもしれません。


【追記2】
上田恵介・有田豊『黄色と黒はハチ模様:ハチに擬態する昆虫類』 (『擬態:だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態』p62-71に収録) によると、
”虻蜂取らず”はアブの戦略 
針を持たないのにハチの姿をまねている昆虫というと、まず双翅目のアブ類が挙げられる。(p62より引用) 
 ところで、モデル種であるハチ類は、自分とよく似たアブ類をどう見ているのであろう。自分と同じハチの仲間と見ているのか、それともいくら模様が似ていても、ハエと同じただの双翅目と認識しているのであろうか。これについて、コガタスズメバチVespa analisがスズキナガハナアブSpilomyia suzukiiを捕らえた報告がある。(p63より)


2014/12/02

シロスジナガハナアブ♀の探索飛翔



2014年8月下旬

山道の休憩所にシロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が飛来しました。
見る度にアシナガバチにそっくりだと思います。
ベーツ型擬態の代表格ですね。
初めは地面で身繕いしていたのですが、休憩所の床やベンチなどを小刻みに飛び回り何かを探索しているようです。
この虻の行き先を追うと…。

▼つづく
汗を舐めるシロスジナガハナアブ♀


2014/11/09

ミズナラ樹液酒場で身繕いするアカウシアブ♀



2014年8月中旬

里山の雑木林で樹液が滲むミズナラの幹で見つけたアカウシアブ♀(Tabanus chrysurus)。
撮り始めたら警戒してすぐに飛び立ってしまいました。
幹の陰に回りこむと、前脚の先を擦り合わせてお化粧。(口吻も拭っているようです。)
一瞬キイロスズメバチやモンスズメバチ等と見間違うほど見事なベイツ型擬態でした。



2014/09/02

カシワマイマイ(蛾)幼虫の木登り



2014年6月下旬

里山の雑木林で伐採した枝を積んである土場をカシワマイマイLymantria mathura aurora)の幼虫が徘徊していました。
動かなければ完璧な保護色で見つけられなかったことでしょう。
やがてスギの木を登り始めました。
スギは本種の食餌植物ではないので、終齢幼虫が蛹化する場所を探し歩いているのでしょうか。
未採寸、未採集。


【追記】 安田守『イモムシの教科書』によると、
(カシワマイマイの幼虫は)長い毛束がいくつも飛び出す特徴的な姿をしているが、枝や幹に静止していると意外なほど目立たない。褐色の体色に加えて、刺毛や毛束の存在が体の輪郭をぼかしているからだ。 (p128より引用)
ヒトが着用する本格的な迷彩服のギリースーツでも、体の輪郭を分かりにくくするために大量の毛束を身にまとうことがあります。
これも隠蔽的擬態の応用です。


2014/07/14

ヒレハリソウの花蜜を吸うベッコウハナアブ



2014年6月上旬

山麓に咲いたヒレハリソウ(=コンフリー)の群落でベッコウハナアブ♀(Volucella jeddona)が訪花していました。

ベッコウハナアブ(標本写真はこちら@ハナアブ写真集サイト)はおそらくトラマルハナバチにベーツ擬態しているのでしょう。
しかし、このとき一緒に訪花していたのはクロマルハナバチとコマルハナバチで(映像公開予定)、トラマルハナバチは来ていませんでした。



【追記】
『マルハナバチの謎〈下巻〉 (ハリフマンの昆虫ウオッチング・社会性昆虫記)』p37によると、
ベッコウハナアブの一種で、マルハナバチに形や色など外見が似ているだけではなく、飛びかたも、羽音も、体にちょっと触れれば仰向けになってあしを上にあげるところまで似ています。(中略)体の形や色はもちろんのこと、住む地域の変化による色の変化さえ、このベッコウハナアブの成虫はマルハナバチに似ている。
特に下線部の行動擬態に興味が湧いたので、日本産ベッコウハナアブ類でも見られるかどうか、いつか生け捕りにして試してみたいものです。



【追記2】
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑: 一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』の擬態を扱った章にベッコウハナアブも登場します。
生態写真そのものはとても素晴らしく、私ごときが文句のつけようがありません。
しかし、擬態のモデルがコマルハナバチと書いてあるのは問題です。
ベッコウハナアブは全身にコマルハナバチのような毛が生えている。花の蜜を吸う姿はほとんど見分けがつかない。(p106より引用)
ベッコウハナアブと並べて掲載された「コマルハナバチ」の写真はトラマルハナバチの誤同定だと思います。
コマルハナバチ♀の胸部は黒いのでベッコウハナアブの配色とは全く似ていません。
筆者の単純な勘違いでしょう。
私は個人的にベッコウハナアブの擬態のモデルは(あえて言うなら)トラマルハナバチではないかと思います。
この本はあちこちに勇み足や誤同定が散見されるものの、筆者が長年撮りためた生態写真の価値は下がりません(素晴らしい労作です)。
私の拙動画ブログも誤同定が多いはずなので、他人のことをとやかく偉そうに言えません。
皆がお互いに間違いを指摘し合って粛々と全体の質を高めていく(訂正する)しかありません。

2014/06/01

モズ♂(野鳥)の鳴き真似♪を声紋解析してみる



2014年5月中旬・曇り

郊外の住宅地でモズ♂(Lanius bucephalus)が電線に止まって鳴き続けています。
よく聴いてみると、キョッキョッキョッ♪という縄張り宣言(高鳴き?)の合間に他の野鳥の鳴き真似をしています。
リップシンクロを確認できたので(嘴の動きと鳴き声が一致)、確かにこの個体が鳴いている声です。
ギョギョシ、ギョギョシ♪というオオヨシキリの鳴き真似が余りにもそっくりなので驚きました。
近くに水田があり、本物のオオヨシキリも生息しています。
他にもヒヨドリ(この時期によく耳にする掠れ声混じりのさえずり?)やスズメ(チュンチュン♪)、ヒバリ(ピチピーチ…♪)などの鳴き真似も混じっているでしょうか?
鳴き真似のレパートリーが多い、なかなか芸達者な♂です。
百舌鳥が鳴き真似している証拠映像を撮れたのは前年に引き続きこれが2回目。

▼関連記事▼
モズ♂の鳴き真似♪と虫捕食、ペリット嘔吐【野鳥】



モズ♂の鳴き真似を声紋解析してみる

鳴き真似と言っても空耳かもしれませんから、声紋解析で客観的に比較してみたくなります。
私が声紋解析の真似事を始めた動機がまさにこれです。
音痴な私は絶対音感もなければ鳴き声の「聞きなし」も苦手なので、声紋解析で視覚的に調べるしかありません。
オリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてから鳴いている部分を適当に切り出し、スペクトログラムを描いてみました。


モズ♂のさえずり♪パート
オオヨシキリの鳴き真似♪#1
オオヨシキリの鳴き真似♪#2
ヒヨドリの鳴き真似♪

▼関連記事▼
・オオヨシキリ♂の鳴き声♪を声紋解析してみる【野鳥】
・ヒヨドリ(野鳥)春のさえずり?♪を声紋解析してみる




モズはなぜ他の鳥の鳴き真似をするのか?

漢字で百舌と書くモズの鳴き真似を調べることで、モズがどんな場所に住み、また、そのまわりにどんな鳥がすんでいるか知ることができます。
モズがなぜほかの鳥の鳴き声をまねるのか、そのわけは、いまのところよく分かっていません。
『科学のアルバム:モズのくらし』p41より
素人ながら幾つか仮説を立ててみました。
  1. モズは狩りをする肉食の鳥です。獲物となる小動物を油断させる一種の攻撃的擬態なのでしょうか? 録音したモズの鳴き声をフィールドで流すと逃げたり隠れたりする小動物がいるかな?(プレイバック実験)※追記3参照
  2. 鳴いて縄張り宣言したり求愛したい欲求と矛盾しますが、捕食者や天敵から隠れたいのでしょうか? 特に種間托卵するカッコウに対して警戒が必要です。モズは鳴き声で自分の営巣地や縄張りを知られたくないのかもしれません。ただし鳴き真似でどれだけカッコウを騙し撹乱できるかどうかは疑問です。カッコウはオオヨシキリにも托卵するので、今回のようにモズ♂がオオヨシキリの鳴き真似をしてしまうと結局はカッコウを縄張りに誘引してしまう結果になりそうです(藪蛇)。
  3. 配偶者選択による性淘汰なのでしょうか? ♂がさえずる歌のレパートリーの豊富さが♀による選り好みの対象となった結果、鳴き真似できる♂が繁殖に有利となり誇示するようになったのかもしれません。ヒトに例えるなら、合コンでカラオケが上手だったり物真似の上手い芸達者がもてる状況と似ているでしょうか。
  4. モズの鳴き方は完全に生得的なものではなく雛の時期の学習の成果なのでしょうか? 親の鳴き声を聴いて覚える臨界期にたまたま巣の近くで鳴いている他の鳥の鳴き声も刷り込まれてしまうのかもしれません。モズはなんと猫や犬の鳴き声、鳥の羽音、ヒトの赤ちゃんの鳴き声まで真似ることがあるそうです。もしモズを雛から飼育してオウムや九官鳥のようにトレーニングすれば、臨界期に聞かせたヒトのお喋りを真似るようになるのか、非常に興味があります。(現代では野鳥の飼育は法律で禁じられています。)


【追記】
岩波新書『小鳥はなぜ歌うのか』を紐解いてみると、p104-105
・野性の状態で他の種類の鳥の声を真似る鳥は、たくさんいる。カラス、カケス、ムクドリ、モズなどはよく知られている。

・なぜこれらの鳥が自然状態でも物真似をするのだろうか。これにはいろいろな説がある。たとえば、(1)真似た音を個体識別に使うという説がある。(2)自分の縄張りを自種だけではなく、他の種の鳥からも守るために他種の歌を真似るという解釈がある。(3)美男子論があてはまるかもしれない。物真似をして自分の歌をより変化に富んだものにすれば、より多くの♀が誘われて来るのかもしれない。


【追記2】
『擬態―だましあいの進化論〈2〉脊椎動物の擬態・化学擬態』という本の終章で「鳴き真似の世界:鳥類の音響擬態」と題した渾身の総説が読んでみてとても勉強になりました。
・漢字では「百舌」とも書かれるこの鳥は、100種にはいかないが、本州では10〜20種前後の鳥の鳴き真似をする。鳴き真似はたいしたものであるが、聞こえてくる先が、ウグイスが鳴くにはちょっと開けすぎた草原の中の低木だったり、ヒバリの好みそうもない狭い(谷津)谷戸だったり、また時期がオオヨシキリが渡ってくる前だったりする。また、メロディの途中でつい「ギチッ」などと訛ってしまうのである。(p96より)
・日本ではモデルの鳥がモズの鳴き真似に誘い出される様子は観察されていない。(中略)モズの鳴き真似は、モチーフ資源型に属するものではないかと疑われる。(p109より)

・モズの鳴き真似の中に、モズの繁殖地には通常生息していない種類の音声がまじっていることがある。(p110より) 


【追記3】
『モズの話:よみもの動物記』p126によると、
・樹上で鳴くモズの声に反応して水中にもぐるアカガエルを観察している。・飼っていたカヤネズミの近くでモズが鳴くと、ネズミは右往左往して狂躁状態を呈した。

2014/03/26

ガードレールを歩くアリグモ♀(蜘蛛)



2013年5月上旬

山間部のガードレール側面をアリグモ♀(Myrmarachne japonica)が徘徊していました。
気温が低いせいか、いまいち活動性に乏しいです。
ちょうど真下の地面にクロアリの巣がありましたが、互いに没交渉で擬態のモデルとのニアミス・シーンは撮れず。



2014/03/18

路上を徘徊するアケビコノハ幼虫(蛾)



2013年11月中旬

農村部の舗装された歩道でアケビコノハEudocima tyrannus)の幼虫が徘徊していました。
トレードマークの眼状紋が目立ちます。
腹部第3節にあるはずの2個目の眼状紋が目立たないのは個体変異なのでしょうか?

日向なのに動きが弱々しく、蠕動運動で前進します。
採寸した(体長60mm弱)後に定規で転がし腹面を向けると、身を攀じってゆっくり起き上がりました。
頭部を守りつつ眼状紋を見せつけて威嚇する独特の姿勢は取りませんでした。

▼関連記事▼
アケビコノハ幼虫の眼状紋と威嚇姿勢

終齢幼虫が蛹化する場所を探索しているのかな?
なんと、本種は成虫で越冬するらしい!(『イモムシハンドブック』p90より)
初雪が降った後なので、この個体はもう間に合わない気がします。

体内寄生されているのかもしれません。
持ち帰って飼育する余力がなかったので、撮影後は車に轢かれないよう草むらに放って帰りました。



2013/09/20

マルハナバチに擬態したフタガタハラブトハナアブ♀がリョウブを訪花



2013年7月下旬

里山に咲いたリョウブフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota dimorpha)が訪花していました。
吸蜜しながら身繕いしています。
マルハナバチにベーツ擬態しているらしいのですが、この日の山行でリョウブの花で見たマルハナバチはトラマルハナバチだけでした。
擬態のモデルになったと思われるレモン色のコマルハナバチ♂などは見ていません。

ここで疑問が生じます。

  1. 同時期に同じ地域で擬態者とモデルが共存していないのなら、鳥などの捕食者が「痛い目に会う」学習機会が無いのでは?
  2. 毒針を持たず刺さないコマルハナバチ♂に擬態したところで捕食者に忌避効果を生じないのでは?



2013/08/11

モズ♂の鳴き真似♪と虫捕食、ペリット嘔吐【野鳥】



2013年6月下旬

平地の住宅地でモズ♂(Lanius bucephalus)が電線に止まって頻りに鳴いていました。
かなり複雑な囀り(さえずり)で、何か他の種類の鳥の鳴き真似をしているようです。
モデルとなった鳴き声は何の鳥ですかね?
「百舌鳥」の名前の由来となった得意の鳴き真似を実際に聞いたのはこれが初で、感動しました。

やがて脱糞。(@0:50)
急に飛び上がって横の電線に移ったと思いきや、飛んでいる虫を空中で捕食したようです。(@1:15)
遠くて獲物の正体は不明ですけど、なんとなくトンボかな?(※追記2参照)

給餌のため帰巣しないということは、雛が巣立った後なのか、あるいは繁殖出来なかった(つがいになれなかった)♂個体なのでしょうか?
虫を咥えたモズ♂は鳴き止んだようです。
尾羽根を上下しながら電線に止まっているだけです。

獲物を左脚に持ち直すと、ペリットを吐き出しました。(@2:20)

モズは猛禽類と同じように、食物を丸呑みにして消化されない骨片などをペリットとして吐き出す。(『日本動物大百科4鳥類Ⅱ』p85より)
すっきりしたモズ♂は再び獲物を咥え、今度は自ら食べました。
有名な「はやにえ」にすることもありませんでした。
食後は嘴を電線に擦り付けます。

短時間でかなり濃密な観察ができて大満足♪

後で思うと、路上に落ちたペリットを探してみればよかったですね。

鳴き真似を声紋解析してみたいのですが、あいにく風切り音がやや耳障りです。
背景でスズメが鳴いています。

いつもお世話になっている野鳥の掲示板にて問い合わせたところ、とびしまんちゅさんより次の回答を頂きました。

難しいですね。動画開始30秒のところでは、ツバメの警戒音のようですが、それ以前はセグロセキレイっぽいのがありますね。その後、「ケッ」と一声アオゲラ的に…。
【追記】
『アユの話』p48によると、

モズのなわばりの直径は電柱の間隔に近いといわれている。




【追記2】
『モズの話:よみもの動物記』p114によると、
止り木から空中に飛び立ってえものを捕える、ヒタキ類でよくみられるフライキャッチをモズもよく用いる。主に蛾やトンボ類、ガガンボ類を多くおそうが、ヒタキ類と異なり、捕えた後必ずしも同じ枝に戻ってくるとは限らない。(中略)敏速な飛翔で小昆虫を捕えて生活しているトンボ類でさえ、モズの襲撃をかわすことができない。(中略)空中での柔軟なモズの飛翔法の秘密は、おそらく長い尾にあるにちがいない。一般に、鳥の翼は速度に、尾は方向転換に関係しているといわれている。





2013/08/07

蜂に似たオオコシボソハナアブ♂の飛び立ち【ハイスピード動画】



2013年6月上旬

雑木林の薄暗い林床で蜂にそっくりの虻が葉に止まっていました。
調べてみると、ニトベナガハナアブ♂(Temnostoma nitobei)のようです。
ススバネナガハナアブ♂(Temnostoma fumosum)の可能性は?

ドロバチへのベーツ擬態が実に見事です。

いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂」掲示板にて問い合わせたところ、茨城@市毛さんより「Doros profuges オオコシボソハナアブの♂です」とご教示頂きました。
本州で♂は特に珍品なのだそうです。

物を投げつけて飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
更に1/5倍速のスローモーションでリプレイしても高速羽ばたきは捉えられてませんね。
撮れたのは1回だけで(虻蜂撮らず)、姿を見失いました。



2013/08/01

蜂に似たキベリヘリカメムシの飛翔【HD動画&ハイスピード動画】



2013年6月中旬

里山の草むらでキベリヘリカメムシMegalotomus costalis)成虫と初めて出会いました。
図鑑『札幌の昆虫』p78によると、「本種の成虫は飛ぶとハチに、(無翅の)幼虫は形や行動がアリに似ている。」
かねてからその飛翔シーンを見てみたいと思っていたので、夕暮れが迫る草地でしつこく追い回して飛んでくれるのを待ちます。

アカツメグサの花に乗った際に口吻を伸ばしかけましたが、突き刺してはいない(吸蜜・吸汁には至らず)と思います。
ホストはマメ科植物らしい。



飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画でもなんとか撮ってみました。
後半は更に1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
体も細長いし、飛ぶ姿は確かに蜂っぽいかも。
蜂の威を借る亀?




2013/03/20

セスジスカシバ♀(蛾)の産卵行動



2012年9月中旬

林道の草むらでセスジスカシバPennisetia fixseni fixseni )がゆっくり飛び回っていました。
キイロスズメバチが獲物を求めて探索飛行する姿にそっくりです(ベーツ擬態)。
キイチゴらしき葉を選んで着陸したことから、♀の産卵行動ではないかと思います。
本種の幼虫の食草はバラ科のキイチゴなどです。
葉表の縁に止まると腹端を曲げて葉裏に卵を産み付けているようです。
(今回は卵を確認せず)
すぐにまた飛び立ちます。



2012/12/29

キイチゴの葉裏に産卵するセスジスカシバ♀(蛾)



2012年9月下旬

キイロスズメバチにそっくりのセスジスカシバ♀(Pennisetia fixseni fixseni)が道端に生い茂ったキイチゴの群落で飛び回っています。

本種の幼虫の食草は「バラ科:クマイチゴ、モミジイチゴ、ウラジロイチゴ」とされています。
ホバリング飛行で見定めた食草に着陸すると、♀は必ず葉の縁にお尻を向けて止まり葉裏に産卵します。
同一個体を追いかけて撮りました。









同じ日に撮った別個体の♀です。
キイチゴの葉表に止まって羽ばたきながら腹端を葉裏に擦りつけていました。
(実際の産卵シーンは撮れてないかもしれません。)
蛾が飛び去った後で、葉や茎に生えた鋭い棘の痛みを我慢しながら蛾が止まっていた葉っぱをめくってみました。
案の定、葉裏の縁に茶色(赤紫色?)の卵が1粒見つかりました。
その場で採寸してみると、楕円形をした卵の長径1.5mmは短径1mm。


この2頭の観察結果をつなぎ合わせると、食草の葉裏に卵を一個ずつ産み付けて回るようです。
次に機会があれば幼虫を飼育してみようと思います。



葉裏の上の方の縁に卵が1粒



ランダムに記事を読む