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2018/09/13

キアゲハの蛹化【10倍速映像】



▼前回の記事
蛹化前に蠕動するキアゲハ前蛹【10倍速映像】


キアゲハの飼育記録(2018年)#4

2018年7月上旬・午後12:45〜13:02・室温30.7℃、湿度52%

蠕動していたキアゲハPapilio machaon hippocrates)前蛹の胸背が割れ、いよいよ脱皮が始まりました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

蛹の後部に送った脱皮殻を落とすために、腹端が一瞬だけ壁面から外れました!
すぐに腹端で足場糸を探り当て、プラスチック容器の壁面に固定し直すのが興味深く思いました。
この芸当は全ての昆虫ができるとは限りません。

例えば、最近飼育したナミテントウでは帯糸を使わず腹端だけで固定しているために、前蛹の抜け殻が蛹の腹端にいつまでも(成虫が羽化した後も)残ったままになっていました。
▼関連記事
ナミテントウの蛹化【60倍速映像】

その後で抜け殻を振り落としました。
薄黄緑色の帯蛹はしばらく伸縮動を続けています。

改めて記事を書くつもりですが、今回キアゲハ幼虫を3頭飼育して、蛹の色が三者三様になりました。
この個体cの蛹化を撮影する前に、背景をすっきりさせるために黒い布を置きました。
蛹の色の変異を考える際に、これがポイントになります。


つづく→#5:羽化直前のキアゲハ帯蛹b【40倍速映像】


2018/09/10

蛹化前に蠕動するキアゲハ前蛹【10倍速映像】




▼前回の記事
糞で汚れた部位を除けて食草を食べるキアゲハ終齢幼虫【10倍速映像】


キアゲハの飼育記録(2018年)#3


2018年7月上旬・午後12:05〜12:45

飼育していた3頭のキアゲハPapilio machaon hippocrates)の終齢幼虫のうちの1頭(個体c)がいつの間にか飼育容器内で前蛹になっていました。
プラスチック容器の壁面を少し登ったところで、体の前後を絹糸の輪(帯糸)と腹端でしっかり固定しています。
容器内に止まり木として割箸を何本か入れておいたのですけど、お気に召さなかったようです。

前蛹cが蛹化しそうなので、その過程を微速度撮影で記録することにしました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
体が固定されているものの、ときどき体節を伸縮し、蠕動運動が次第に激しくなってきました。
やがて前蛹の表面クチクラの緑色が褪せて白くなってきました。
これは新旧クチクラ層の隙間に空気の層が出来てくるからです。(気泡が入って白くなる)

つづく→#4:キアゲハの蛹化【10倍速映像】


キアゲハ前蛹c

2018/09/06

糞で汚れた部位を除けて食草を食べるキアゲハ終齢幼虫【10倍速映像】



▼前回の記事
フェンネルの葉を食べるキアゲハの終齢幼虫


キアゲハの飼育記録(2018年)#2


2018年7月上旬・午前00:24〜00:42(室温27.6℃、湿度63%)

フェンネル(=ウイキョウ)の群落から採集してきたキアゲハPapilio machaon hippocrates)終齢幼虫3頭の飼育を始めました。
食草は同じセリ科でも葉が巨大で近所から大量に調達できる雑草のオオハナウドに切り替えました。
急な食草転換もキアゲハ幼虫は素直に受け入れてくれました。

3頭の成長段階は微妙に異なり、最も育った終齢幼虫aが蛹化準備のために食欲を失い、下痢便を大量に排泄しました。
その下痢便で下の葉が汚れました。
そこで食事をしていた別個体bは一体どうするでしょうか?
食草の汚染箇所をハサミでトリミングしてやろうか迷いましたが、面白そうなので過保護なことはせずに成り行きを見守ることにしました。

このような事態は自然界でもたまにありそうです。
微速度撮影で記録したので、10倍速の早回し映像をご覧下さい。

終齢幼虫bはオオハナウドの葉にベットリと付着した黒い糞を少しかじったものの、すぐに味覚で不味いと気づいたようです。
周囲のきれいな部分をギリギリまで食べて不潔な部分を残し、葉片を切り離して下に捨てました。
実に見事な対応能力です。
レストランのクレーム客とは大違いで、大人の対応ですね。
育ち盛り食べ盛りの終齢幼虫bはオオハナウドの葉を蚕食しながら自らも脱糞しました。(@0:17)
その後は、食べかけた葉を完食する前になぜか茎を登り上の葉に移動してしまいました。


つづく→#3:蛹化前に蠕動するキアゲハ前蛹【10倍速映像】


切り落とされたキアゲハ終齢幼虫の糞付きオオハナウド葉片:表@方眼紙
切り落とされたキアゲハ終齢幼虫の糞付きオオハナウド葉片:裏@方眼紙

2018/08/18

ナミテントウの羽化後半:後翅伸展と黒色型二紋型の斑紋形成【100倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#14


2018年5月下旬・午前1:34〜5:38・室温25℃→24℃

▼前回の記事
ナミテントウ黒色型二紋型:羽化直後の徘徊と身繕い

蛹から抜け出ただけではナミテントウHarmonia axyridis)の羽化は終了ではありません。
羽化後半のプロセスを100倍速の早回し映像をご覧下さい。

まず黄色い後翅が伸びます。
後翅が完全に伸び切って乾くと、鞘翅(前翅)の下に畳み込まれます。
次は鞘翅(前翅)が少しずつ色付き始めます。
ナミテントウの成虫は同じ親から生まれても背中の模様にバリエーションがあり、メンデルの法則に従うことが知られています。
この個体は黒色型二紋型になりました。
このパターンは当地では最も高頻度に見られるものです。
これで完全変態が無事に完了し、飛べるようになりました。
ナミテントウ新成虫はその間、棒の側面でほぼ静止していますが、ときどき身繕いしたり、小移動したりしています。



↑【おまけの動画】
同じ素材で早回し速度を60倍速に落とした映像をブログ限定で公開します。


つづく→#15


ナミテントウ黒色型二紋型R羽化直後1(黄色シワシワ)@棒
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化直後1(黄色)@棒
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化直後1(黒化開始)@棒
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化直後1(黒化済)@棒

2018/08/14

ナミテントウ黒色型二紋型の羽化【10倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#12



▼前回の記事
羽化前の眠でも微動だにするナミテントウの蛹RL【50倍速映像】

2018年5月下旬・深夜・室温24.9℃、湿度47%

右側のナミテントウHarmonia axyridis)蛹Rから遂に成虫の羽化が始まりました。

蛹Rは断続的に繰り返していた背筋運動を止め、伏せた状態で激しい蠕動をしています。
左側の蛹Lと比べて表面が白っぽく見えるのは、蛹のクチクラの直下に薄い空気の層が出来たからでしょう。
やがて胸背が割れ、羽化が始まりました。
美しい黄色の成虫が抜け出てきました。(頭部、胸部は黒色)
台紙(ボール紙)に足を付いて前進するものの、未だ腹端が脱げません。
足元が滑って脱げないのではなく、脚がしっかり固まって踏ん張れるようになるまでしばらく待っているのでしょう。
体から伸びている細くて白い糸のような物は、気管の抜け殻です。
成虫が羽化殻から完全に抜けだした後はピントが合わなくなり、撮影終了。

つづく→ナミテントウ黒色型二紋型:羽化直後の徘徊と身繕い

ヨモギの葉に残された羽化殻は地色が焦げ茶色で、黒い斑紋がありました。
ヨモギの葉に固定された腹端には前蛹の脱皮殻もクシャクシャに丸まった状態で一緒に残っています。


ナミテントウ黒色型二紋型R羽化殻:背面+scale
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化殻:背面+scale
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化殻:前面
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化殻:側面
ナミテントウ黒色型二紋型R羽化殻:腹端+前蛹脱皮殻

並べて観察していた蛹Lからも遅れて成虫が羽化してきました。(動画には撮れず写真のみ)


2018/08/12

羽化前の眠でも微動だにするナミテントウの蛹RL【50倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#11


▼前回の記事
蛹化したばかりのナミテントウが背筋運動でアブラムシを撃退

2018年5月下旬・午後18:55〜午前1:27・室温25℃前後

飼育しているナミテントウHarmonia axyridis)の羽化があちこちで始まったようです。
羽化を見逃した成虫を計4匹、採集しました。

卵塊から孵化してから20日目、蛹化してから5日目のことです。
私は甲虫の飼育経験があまり無いのですが、今まで飼育してきた鱗翅目の蛹期が10日前後だったのに比べると、ナミテントウの蛹期が短い(たった5日!)ことに驚きました。
室温が高かったためでしょうか?
昆虫の中でも原始的なグループである甲虫類は、一般に蛹期が短いのですかね?

これから羽化しそうな蛹の付いたヨモギの葉をハサミで切り取り、2匹の蛹を並べて置いて、成虫が羽化するまで一緒に監視することにしました。
微速度撮影で蛹の前面からと側面から同時に記録します。
ヨモギの葉片は萎れると丸まってくるので、予め糊で台紙に貼り固定しました。
羽化する新成虫が這い出すことを予想して、少し隙間を開けて蛹を並べました。

ナミテントウの成熟した蛹は赤と黒の派手な斑紋になり、ヨモギの葉の緑に対して非常によく目立ちます。
毒々しい警告色になっているようです。
蛹にピンセットで触れてみても、暴れたり動いたりしませんでした。(映像なし)
触覚刺激に対して無反応なので、体内寄生されたのかと心配になりました。
羽化前のみん状態なのでしょう。

50倍速の早回し映像で蛹の動きをご覧下さい。
映像の冒頭で微細な白いダニ?が左の個体(蛹L)の上を這い回りました。
逃げられない蛹Lは初めこそピクッと反応したものの、あとは特に気にしない様子でした。

蛹はピクピクと蠕動運動するだけでなく、ときどき自発的に背筋を使ってグイッと起立運動するようになりました。
ヨモギの葉に固定した腹端を支えにして背筋で立ち上がる運動を断続的に繰り返しています。
しばらくするとパタンと倒れてヨモギの葉に伏せます。

佐藤有恒『科学のアルバム:テントウムシ』という本によると、蛹が自発的にやるこの背筋運動は直射日光を浴びて体温調節のために行うとの記述がありました。

 とつぜん、さなぎがピクッとおきあがりました。ちょうど太陽が木のかげからのぼり、さなぎに光があたったときです。
 きっと、またからだの中の温度計がはたらき、からだの角度をかえて、からだにうける日光の量を調節しているのでしょう。
 ぐうぜん、アリがさなぎにちかづきました。アリがさなぎにふれたとたん、またピクッとからだをおこしました。
 さなぎはにげることができません。だから、敵のけはいをかんじたさなぎは、とつぜんからだをおこして、あいてをおどろかそうとしたのでしょう。 (p22より引用)
野外観察を元にしたユニークな仮説ですが、これは少し疑わしいのではないかと私は思います。
今回の撮影で補助照明として白色LEDのリングライトを一定の方向から照射し続け、並べておいた蛹2匹の行動が違ったからです。
ただし、蛹2匹の発生段階が微妙に異なる上に、光源に対して同じ向きに並べなかったので、反証としては弱いです。
蛹の体温(体表温)を連続測定しながら動きを動画で記録すれば、決着が付くでしょう。
サーモグラフィカメラで蛹を微速度撮影すれば一石二鳥で面白そうです。

右の個体Rに注目すると、背筋運動の際に完全に直立するのではなく斜めになっていました。
固定された腹端に前蛹の抜け殻が挟まって残っていますから、蛹の可動域が制限されているのかもしれない、と想像しました。

いよいよこれから右側の蛹Rから成虫が羽化して来ます。

つづく→#12:ナミテントウ黒色型二紋型の羽化【10倍速映像】


ナミテントウ蛹2: R,L@ヨモギ葉片
ナミテントウ蛹2: R,L@ヨモギ葉片

2018/08/08

寄主オビカレハ(蛾)幼虫の巣に居座り産卵を狙うヤドリバエ♀【6倍速映像】



2018年5月中旬・午後17:07〜17:55(日没時刻は午後18:39)

▼前回の記事
オビカレハ(蛾)若齢幼虫に産卵する寄生ハエ♀

ヤドリバエ(寄生ハエ)の一種♀がオビカレハMalacosoma neustrium testaceum)若齢幼虫の巣に居座り、虎視眈々と産卵のチャンスを狙っている様子を6倍速の早回し映像でご覧下さい。
ヤドリバエ♀が巣の表側(逆光)に来たり裏側に行ったりする度に、私も山道で三脚を移動しました。

恐るべき天敵がオビカレハ幼虫の群れに紛れ込んでもあまり排斥されないのは、何か秘密があるのでしょうか?
ゆっくり歩き回るのが秘訣なのかな?
ヤドリバエ♀の体表を寄主に化学擬態しているとしたら面白いのですが、寄主特異性が低いのであれば考えにくいでしょう。
近くに居るオビカレハ幼虫が頭を左右に振って威嚇してもギリギリ届かない距離を保ち平然と身繕いする様は憎たらしいですね。

かなり粘って長撮りしても、ヤドリバエ♀が産卵に成功したのは初めの2回だけでした。
それ以降はひたすら寄主となる幼虫を付け回したり、幼虫に気づかれて反撃されて(頭振り行動)一時退避したり、を繰り返していました。
幼虫に追い払われたヤドリバエ♀は巣の周囲でミズナラの小枝に止まり、のんびり前脚を擦り合わせたり顔を拭ったりと化粧して時間を潰しています。
オビカレハ幼虫の巣は寄生バエにとって、選り取り見取りのパラダイスのはずですよね。

寄主の巣内で次々に産卵するのかと期待していた私は、とても意外に思いました。
ヤドリバエ♀は翅があるのにどうして素早く飛んで寄主に襲いかかり電光石火で産卵しないのか、不思議でなりません。
この個体は左翅の先がやや破損していますけど、飛ぶのに支障は無いはずです。(未確認)

途中でシギゾウムシの一種が同じミズナラの灌木に登って来ると、邪魔されたハエは巣の上部に避難しました。
のこのこと巣に闖入したコナラシギゾウムシ?は、オビカレハの幼虫に至近距離で威嚇されて擬死落下。

ヤドリバエ♀は腹端を前方に屈曲した産卵姿勢のまま巣上で呆然としていることもありました。
なぜ幼虫を積極的に追いかけないのでしょうか?
幼虫が近づいてくるとハエはすぐに退避します。(意気地なし!)

後半になると産卵失敗や回避行動が増え、無気力というか真剣味が失せたように見えます。
とてもまどろっこしく、見ていて非常にもどかしい持久戦・神経戦が続きます。(寄主との攻防にもなっていないような…)
撮りながら仮説を幾つか立ててみました。

  • 卵巣内の卵を産み尽くしてしまった?
  • ヤドリバエ♀は寿命が近い、老いた個体なのか?
  • 夕方で薄暗くなり気温が下がると産卵行動が難しくなる? 産卵衝動が低下する? 現場は里山の東斜面なので、日の入り時刻よりも早く太陽が山陰に沈んで暗くなります。
  • 周囲のオビカレハ幼虫が完全に静止(フリーズ)すると、ヤドリバエ♀は視覚で寄主の存在を認識できなくなってしまうのかも?
  • 既に産卵済みの幼虫個体を何らかの方法で見分けて、重複産卵(多寄生)を回避している?
  • オビカレハ幼虫の防衛行動が結果的に上手く行っている?(私には分からないのですが)

苦労して寄主の体表に直接産卵しなくても、巣に大量に産卵しておいて、孵化したハエの幼虫(蛆虫)が自力で寄主に辿り着く寄生戦略でも良さそうな気がします。
ただし、蛆虫が多寄生の共倒れとなるリスクもありますね。


オビカレハ幼虫側の防御法としては、巣にクモのような粘着性の糸を張り巡らせてハエをトラップしてしまうようにこれから進化したら面白いですね。
それでもヤドリバエは飛来するでしょうから、結局オビカレハ幼虫は三次元に作られた天幕の中で暮らすしかなさそうです。

プロの研究者ならきっと、
ヤドリバエ♀を採集して卵巣の状態を調べるとか、巣ごと採集してオビカレハ幼虫を全て育て上げ、ヤドリバエが羽化してくる数を数えて被寄生率を調べたりするのでしょうね。
私にそこまでやる根性はありませんでした。

※ 風が吹いて枝揺れに悩まされたのですが、動画編集時に手ブレ補正処理したら、その影響をなんとか抑えられました。

【おまけの動画】


同じ素材で10倍速にした早回し映像をブログ限定で公開しておきます。


つづく→寄主オビカレハ(蛾)若齢幼虫に産卵失敗を繰り返すヤドリバエ♀の謎


ヤドリバエsp♀vsオビカレハ(蛾)若齢幼虫群れ@巣:ミズナラ灌木
ヤドリバエsp♀vsオビカレハ(蛾)若齢幼虫群れ@巣:ミズナラ灌木
ヤドリバエsp♀vsオビカレハ(蛾)若齢幼虫群れ@巣:ミズナラ灌木
ヤドリバエsp♀vsオビカレハ(蛾)若齢幼虫群れ@巣:ミズナラ灌木
ヤドリバエsp♀@オビカレハ(蛾)幼虫巣外+身繕い
ヤドリバエsp♀@オビカレハ(蛾)幼虫巣外+身繕い

2018/08/03

泡巣を作るシロオビアワフキ幼虫【60倍速映像】



2018年5月中旬・午後19:07〜22:37・室温22.9℃→21.4℃

庭の片隅に小さな赤い花を咲かせるバラの灌木があります。(品種名は知りません。)
トゲだらけの若い枝に白くて大きな泡が付着していました。
これはアワフキムシの仲間の幼虫が作った泡状の巣に違いありません。

夕方に枝ごと採取し、花瓶に水差しにしました。
白い泡巣の水分をティッシュペーパーでそっと拭き取ると、予想通りシロオビアワフキAphrophora intermedia)の幼虫が数匹潜んでいました。
露出した幼虫の体に触れると嫌がって逃げ出します。

泡巣の再形成を微速度撮影してみました。
これは私が前々からやってみたかったテーマです。
60倍速の早回し映像をご覧下さい。
泡巣を別々の場所で作り始めた2匹を同時に撮影してみることにしました。
意外にも、みるみるうちに泡巣が大きくなりました。
口吻を茎に突き刺して吸汁しながら腹端を上下に動かし、排泄した尿を泡立てます。
途中から2つの泡巣が合体してしまいました。
白い泡巣で自分の体が隠れると、中の幼虫は落ち着きました。

次回は、植物の茎を色付き水に挿してカラフルな泡巣を作らせてみるという定番の実験も試してみたいです。

【おまけの映像】
早回し速度を落としたバージョンをブログ限定で公開しておきます。


↑30倍速映像。



↑10倍速映像。



シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:泡巣再形成後

【追記】
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑: 一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』を読むと、「幼虫がすむ泡の巣 シロオビアワフキ」と題して数々の見事な生態写真が見開きで掲載されていました。
これほどの防衛対策をしても、天敵のヤニサシガメが泡の中へ口を差し込み、食べられてしまうこともある。(p162より引用)
実際の捕食シーンの証拠写真が無かったので、疑り深い私は自分で探してみたくなりました。
飼育下で実験できるかもしれません。
泡巣を突破できる捕食者にとって泡自体が目印になってしまうと、シロオビアワフキ幼虫は全滅してしまうのではないでしょうか?
 

2018/07/31

ナミテントウの蛹化【60倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#9



▼前回の記事
脱皮前の眠で微動だにするナミテントウ前蛹【100倍速映像】

2018年5月下旬・午前10:40〜午後15:40・室温〜25℃

いよいよナミテントウHarmonia axyridis)前蛹bの蛹化が始まります。
60倍速の早回し映像をご覧下さい。
(初めにカメラの画角を決めるときは、蛹化の際に立ち上がることも考慮して、特に縦の画角からはみ出ないように注意が必要です。)

冒頭で、腹背後部の左側面から黄色の液体が一滴滲み出しているのが興味深く思いました。※
天敵に対する忌避物質を含むと思われるこの液体は、すぐ自然に体内に引っ込みました。
前蛹の時期にも分泌するとは知りませんでしたが、無防備な状態なので納得です。

佐藤有恒『科学のアルバム:テントウムシ』によると、

つまんだとき、指には黄色いしるがのこります。そのしるはとてもくさく、強いにがみがあります。
きけんをかんじると、足の関節から黄色いしるをだします。 (p34より引用)


七尾純『カラー自然シリーズ:テントウムシ』によれば、

小鳥にくわえられると、テントウムシは、あしのつけねの関節から、黄色い、にがい液を出します。にがい味を知った小鳥は、二度と食べようとはしないでしょう。



終齢幼虫が前蛹になるときに、ヨモギの葉表に腹端でしっかり固定しています。
ヨモギの葉に伏せていた前蛹はやがて、固定した腹端を支点に背筋運動で何度も繰り返し起き上がるようになりました。
全身の蠕動運動も始まり、胸背の表皮が割れ始めました。
脱皮しながら起立姿勢になります。
完全に脱げた黒い抜け殻は腹端に丸めてあります。
脱皮直後の蛹は鮮やかな黄色でした。
その後も蛹は背筋運動を繰り返します。
蛹のクチクラが硬化するにつれて、赤くなった背面に特徴的な黒紋が浮かび上がってきました。
早回し映像なので、背脈管が激しく拍動しています。(昆虫の心臓は背側の正中線にあります)
終齢幼虫→前蛹→蛹とステージが進むにつれて、体長が縮んでテントウムシらしい丸みを帯びた体型になりました。


【おまけの動画】
同じ素材で早回し速度を落としたバージョンをブログ限定で公開しておきます。



↑30倍速映像



↑10倍速映像

つづく→#10:蛹化したばかりのナミテントウが背筋運動でアブラムシを撃退


ナミテントウ蛹b:側面起立@ヨモギ葉+脱皮(蛹化)直後
ナミテントウ蛹b:側面@ヨモギ葉+脱皮(蛹化)直後
ナミテントウ蛹b:背面@ヨモギ葉+脱皮(蛹化)直後+scale

2018/07/29

脱皮前の眠で微動だにするナミテントウ前蛹【100倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#8


▼前回の記事
ナミテントウ終齢幼虫の徘徊


2018年5月下旬・午前5:20〜10:35

ナミテントウHarmonia axyridis)終齢幼虫と思われる個体の中に、ヨモギの葉で静止したまま長時間動かない個体がいます。
この前蛹bに注目して、蛹化するまで微速度撮影してみました。
100倍速の早回し映像をご覧下さい。

腹端を葉に固定したまま、基本的には伏せた姿勢で静止しています。
ときどき断続的に蠕動していることが分かりました。
歩脚も一緒にピクピク動いています。
この時点では、これから本当に蛹化するのか半信半疑でした。

前蛹が付いているヨモギの葉を葉柄から切り落とし、長撮り中に葉が萎れて変形しないように、葉先と根本に文鎮を載せて固定しました。



↑【おまけの動画】
早回し速度を少し落とした60倍速映像をブログ限定で公開しておきます。

つづく→#9:ナミテントウの蛹化【60倍速映像】


2018/07/25

脱皮中のナミテントウ若齢幼虫【10倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#6

▼前回の記事
アブラムシを捕食中のナミテントウ幼虫を襲うアリ

2018年5月中旬・午後14:31〜15:06・室温26℃

30匹ものナミテントウHarmonia axyridis)の若齢幼虫を同時に多頭飼育していると、生き餌の調達など日々の世話に追われて、どうしても観察が散漫になってしまいます。(目移りしてしまう)
ヨモギの葉に静止していた個体がいつの間にか脱皮していました。
脱皮直前のみん状態の幼虫は、必ずしも葉裏に隠れるとは限らず、目立つ葉表でじっとしている個体もいました。
脱皮する直前の前兆がよく分かりません。

じっとしている幼虫を撮り始めても途中で動き始めてしまったりするのです。(脱皮前の眠ではなかった。)

葉裏に下向きに静止してまさに脱皮中の別個体に狙いを定め、マクロレンズで微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

上半身だけ既に抜け出ており、歩脚が固まるのを待っている状態でした。
重力を利用しているのか、頭を下に向けた姿勢で脱皮しました。
近くを別個体のナミテントウ幼虫が徘徊しても逃げません。(逃げられません)
餌のアブラムシが少ない状態だと、無防備な脱皮中によく共食いされるそうなので、注意が必要です。

やがて下半身も完全に抜け出ると、抜け殻の横に並んで下向きに静止しました。
背面両側に赤い縦線状の斑紋が現れました。(二齢幼虫かな?と思うものの、定かではありません。)
脱皮殻を食べることはなく、その場に残して幼虫は立ち去ります。

三脚にカメラを固定しているのに、長撮りの途中で被写界深度が浅いマクロレンズの焦点が合わなくなってしまいました。
何度も微調整する羽目になり、悩まされました。
どうやら水差しにしたヨモギの葉が少しずつ萎れているせいで、葉柄の角度が刻々とわずかに変わってしまうようです。
葉先をクリップなどで予め固定しておくべきでしたね。

つづく→#7:ナミテントウ終齢幼虫の徘徊


ナミテントウ若齢幼虫@ヨモギ葉裏+脱皮中
ナミテントウ若齢幼虫:脱皮殻@ヨモギ葉裏

2018/07/22

ハシボソガラス親鳥♀♂が雛に給餌しに通うニセアカシア樹上の巣【10倍速映像】(野鳥)



2018年5月上旬・午後16:47〜18:10 (日の入り時刻は午後18:34)
▼前回の記事
ハシボソガラスの育雛放棄?(野鳥)【10倍速映像】

4日ぶりの定点観察。
前回の反省を踏まえて、営巣地からかなり離れた地点に三脚を立ててハシボソガラスCorvus corone)の巣を望遠レンズで狙うことにしました。
これなら親鳥も安心して巣に出入りして雛にせっせと給餌してくれます。

下手に隠れるよりも私の姿が親鳥から丸見えの方がむしろ安心してくれるような印象を受けました。
それでも初めは私の近くまで親鳥が偵察に来ました。
隣の縄張りからも別のカラスが様子を見に来ました。(繁殖しない若鳥かも?)


微速度撮影で親鳥の給餌活動を長時間監視してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
親鳥が留守中も腹を空かせた雛がときどき巣内で首を長く伸ばし餌乞いしていました。
1時間23分間の撮影で親鳥の給餌行動が計11回録画されていました。
平均すると7.5分に1回、給餌していました。

親鳥の性別判定や個体識別ができないのですが、ときどき2羽の親鳥が相次いで帰巣、給餌していたので、共働きしていることが分かりました。
給餌の合間に親鳥は、営巣地の手前を横切る電線や近くに立つ別のニセアカシアの樹上に止まったりして、ときどき休む(辺りを見張る)姿も捉えられていました。
親鳥♀♂のどちらがサボり気味なのか、育雛(給餌)の貢献度合いをきちんと調べるには、親鳥に足環を付けて個体標識して性別を見分ける必要があります。

遠くの山には未だ残雪が見えます。
ニセアカシアの枝には急速に葉が茂りつつあります。



巣に目一杯ズームインするよりも、やや引きの絵で撮った方が、親鳥がどのように(どこを経由して)入巣したか分かりやすく面白い映像になりますね。

夕方で薄暗くなると、引きの絵の方が少しでも明るく撮れるという利点もあります。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→給餌後に雛の糞をニセアカシア樹上の巣から外に捨てに行くハシボソガラス(野鳥)


ハシボソガラス(野鳥)@巣:ニセアカシア樹上・遠景
ハシボソガラス親鳥(野鳥)@帰巣:ニセアカシア樹上+雛給餌

2018/07/20

ハシボソガラスの育雛放棄?(野鳥)【10倍速映像】



2018年5月上旬・午後15:28〜16:51
▼前回の記事
川沿いの荒れ地で雛の餌を探すハシボソガラスの親鳥(野鳥)



5日ぶりの定点観察にやって来ました。
カメラの三脚を立てて親鳥が雛に給餌する行動をじっくり長時間撮影しようとすると、前回の撮影ポイントは通行人の邪魔になってしまいます。
そこで今回は対岸に渡り、河畔林の茂みの陰に三脚を設置しました。
前回もここから撮影しようとしたら親鳥に警戒されてしまったので、今回は三脚とカメラ全体に迷彩ブラインドを被せました。
これで巣から私の姿は目立たなくなるはずです。



私は横の茂みの陰に隠れて座ったのですが、横や背後からは丸見えです。
時間が経つと親鳥が近くまで様子を見に来て、私の存在があっさりばれてしまったようです。
知能が高く警戒心の強いカラスの子育てをフィールドで観察するには、テント型の迷彩ブラインドの中に隠れるか、本格的なギリースーツを着用する必要がありそうです。

いずれも私は持っていないので、別の工夫を考えます。(※追記参照)



ハシボソガラスCorvus corone)が営巣したニセアカシア(別名ハリエンジュ)の枝には冬芽から若葉が芽吹き始めました。

雛鳥は未だ小さいので、巣を見上げるアングルでは雛が背伸びをしてくれないと姿が全く見えません。
カラスの巣に狙いを定めて微速度撮影で長時間監視してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
この日は親鳥もなかなか帰ってこないので、ここ数日の間に雛が死んでしまったのではないか、親鳥が巣を見捨ててしまったのではないか、と心配になりました。

しかし早回し映像を見直すと、留守番している雛鳥が巣内でときどき動いている姿が写っていました。

雛の無事を確認できて一安心。
次に気になるのは、なぜ親鳥が給餌しに帰巣しないのか?という問題です。
雛が幼いうちは給餌頻度が低くても大丈夫なのかな?
飢えた雛が共食いを始めるのではないかと気が気ではありません。
これまでの私の経験では、親鳥の餌探しが不調でもときどき帰巣して雛の様子を見に来るはずです。
やはり、巣の近くで居座る怪しい私の存在が気に入らず神経質になっているのかもしれません。

親鳥が帰巣しないのに雛が餌乞いする姿が映像に写っていました。
大きく開いた嘴の中が真っ赤なのが幼鳥の特徴です。
もしかすると近くの電線や木の枝に親鳥が来たのかもしれませんが、巣にズームしている映像には写っていません。

撮影中に営巣地の周辺では次のような興味深い行動が色々と見れたのですが、カメラが一台しか無いので証拠映像を撮れず残念無念。
しばらくすると親鳥らしきカラスが近くの電線に止まって辺りを監視していました。
カワウが縄張りに飛来すると親鳥2羽が下流へ追い払いました。
親鳥?が整地された河川敷の水際で川の水を何度も飲み、その後は河川敷で採食していました。
カラス同士で縄張り争いの空中戦も目撃しました。
個体識別できていないのですけど、どうやら近くに若鳥の群れが居るようです。
ときどき鳴き騒いだり、遊びのような模擬空中戦を繰り広げたりしています。

そのうちバッテリー切れとなりました。
やむなくカメラを三脚から撤収し始めた途端に、私の様子をどこかで見張っていた親鳥が巣に戻り雛に給餌しました。
その際に雛鳥が餌をねだる賑やかな鳴き声が聞こえました。
やはりハシボソガラスの親鳥が巣に近づかなくなったのは、あからさまに怪しい私の存在とカメラを警戒したせいだと分かりました。
これがもしハシブトガラスなら、凄い剣幕で怒り狂って私を威嚇してくるはずです。
ただ耐え忍んでいるだけのハシボソガラスは健気ですね。
育児(育雛)放棄されては困るので、次回からは親鳥の邪魔をしないように撮影ポイントを巣から遠く離れた地点に変えることにします。
ニセアカシアの葉が茂ると巣が隠されてしまいそうなので、いつまで観察できるか、時間との勝負です。

※ 風が吹いてほぼ絶え間なく木が揺れるため、三脚を使っていても酔いそうな映像になりました。
それでも動画編集時に手ブレ補正のデジタル処理すると、だいぶ改善されました。

つづく→ハシボソガラス親鳥♀♂が雛に給餌しに通うニセアカシア樹上の巣【10倍速映像】(野鳥)




※【追記】
私は未だカモフラージュネットを上手く使いこなせていないのですが、プロの鳥類学者(カラスの研究者)はこういうとき、カモフラージュネットを頭から被ってしまうのだそうです。(参考:松原始『カラス先生のはじめてのいきもの観察』p31)


ハシボソガラス(野鳥)巣@ニセアカシア樹上
ハシボソガラス(野鳥)巣@ニセアカシア樹上

2018/07/16

卵塊から孵化するナミテントウ一齢幼虫【60倍速映像】


2018年5月上旬

ナミテントウの飼育記録#1


タニウツギの開花運動を微速度撮影するつもりで、膨らんだ蕾の付いた小枝を夜に採取してきました。
家に持ち帰って花瓶(ペットボトル)に生けるとき、一枚の葉の裏面に黄色い卵塊があることに気づきました。
数えると31個の黄色い卵が産み付けてありました。
これはテントウムシの卵だろうと予想しました。
そこで予定を変更して、テントウムシを飼育観察してみることにしました。





卵塊を側面から接写してみると↑、孵化しない未受精卵が1個写っていました。(最前列の右から3個目)
表面の橙色が不均一で、見るからに異常な卵でした。



翌日、卵塊が黒っぽく変色していました。
卵殻を通して中の黒い幼虫が透けて見えるようになったのです。
この時点でも、卵塊に未受精卵が1個混じっているのが分かります。
卵の色の変化が孵化の前兆らしいので、微速度撮影で記録することに。



60倍速の早回し映像をご覧下さい。(午後17:06〜23:34)
孵化寸前には白い卵殻を通して幼虫の黒い体節が縞模様のように透けて見えるようになります。
卵から出てきた一齢幼虫の頭部と胸部は初め黄色(橙色)でした。
上半身が外に出ると、黄色の長い脚が固まる(黒化する)までしばらく休息します。

黒っぽい幼虫が続々と孵化してきました。
映像では幼虫の集団が少しずつ下方へ移動しているように見えますが、実はタニウツギの葉が少しずつ萎れて垂れ下がっているせいです。
定規を写し込んで卵塊や幼虫を採寸するのを忘れてしまいました。

全身が黒化すると幼虫は卵殻から完全に抜け出て徘徊を開始。
しかし互いに離れようとしないで群れを形成しています。
卵嚢から出てきたばかりのクモ幼体が団居まどいを形成する様を連想しました。
テントウムシ一齢幼虫の体表にあるトゲトゲは共食いされないための武装なのかな?と妄想してみました。
腹端に吸盤のようなものが見えます。
体を基質に固定するための粘液(糞?)を腹端から分泌しているようです。



卵塊から無事に孵化した一齢幼虫は30匹でした。
計31個の卵塊だったので、96.8%(30/31)という高い孵化率でした。
1個の未受精卵は幼虫によって共食いされたようです。(食卵)
初めての食事として白い卵殻も少しは食べるのかもしれませんが、私は確認していません。
一齢幼虫が群れを解消して分散した後も卵殻は完食されず残っていました。


中公新書:鈴木紀之『すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く 』を読むと、テントウムシ幼虫の食卵行動について私の知らなかったことが書いてありました。

アブラムシを食べる肉食性のテントウムシの仲間は、黄色の卵を数十個まとめて卵塊として産みつけます。しばらくすると一斉に幼虫が孵化しますが、一部の卵は孵化が遅れるか、あるいは孵化すらしません。すると先に孵化した幼虫は、こうしたなかなか孵化しない卵を生涯最初のエサとして食べ始めます。同種の卵、しかも同じ母親から生まれた兄弟姉妹を食べているわけですから、この行動は「共食い」と呼ばれています。 (p48-49より引用)

孵化して間もない幼虫はまだ運動能力が低いために、アブラムシをうまくハンティングできません。特に、体も大きくすばやく歩き回る種類のアブラムシは、テントウムシの幼虫にとっては手強いエサです。そこで、孵化した直後に共食いをすることで、幼虫は苦労することなく成長し、アブラムシを効率よく捕まえられるようにしているのです。 (p49より引用)

多くの昆虫と同様に、テントウムシの母親は産卵後に子(卵)の元を離れ、その後もいっさい面倒を見ません。しかし、母親は不測の事態に備えてわが子に「お弁当」を持たせてあげていると見なせるでしょう。テントウムシの孵化しない卵は、母親からの幼虫に対する追加的な投資なのです。  先に孵化した幼虫の栄養となるような、子の生存に役立つ卵は「栄養卵」と呼ばれています。 (p50より引用)
栄養卵はテントウムシの他に、カメムシやアリなどの昆虫、カエルやサンショウウオといった一部の脊椎動物にもみられます。それほど多くの種で採用されているわけではありませんが、広い分類群にまたがっているという意味で普遍的な戦略です。 (p50より引用)


詳しいメカニズムは分かっていませんが、ナミテントウはアブラムシの量に応じて栄養卵の供給を調整しているようです。だからこそ、孵化しない卵が単なる発生上のバグではなく、「母親の積極的な戦略」として捉えることができるのです。 (p58より引用)




この本の記述通りならば、今回の孵化率が高かったので、卵塊の周囲の餌環境が良好だと母親♀が産卵前に評価したことになります。
しかし、タニウツギの枝葉にテントウムシの餌となるアブラムシのコロニーは見当たりませんでした。(私の探し方が不十分だった?)
日当たりの悪い場所にあった株で、生育が悪い灌木でした。

タニウツギは落葉樹ですから、越冬したナミテントウの母親♀が春になって開いた葉裏に産卵したのです。

テントウムシの卵塊が孵化のタイミングを揃える秘密は何でしょう?
互いに密かに「今から孵化するぞ」とコミュニケーションしているのかな?

卵塊としてまとめて産めば気温など周囲の微気象も同じになるので、孵化までにかかる時間もほぼ同じになる、ということで単純に説明できるのかもしれません。
出遅れると共食いされてしまうので、卵塊が同期して孵化するように進化したのでしょう。


以下は、撮影中の気温を記録したデータです。
午後17:02 室温21.9℃、湿度43%
午後17:40 室温21.5℃、湿度43%
午後18:55 室温21.1℃、湿度43%
午後19:52 室温21.0℃、湿度43%
午後21:27 室温20.9℃、湿度44%
午後23:14 室温20.6℃、湿度43%

飼育を続けると、これはナナホシテントウではなくナミテントウHarmonia axyridis)の一齢幼虫と後に判明します。







↑【おまけの動画】

早回し速度を少し落とした40倍速映像をブログ限定で公開します。


つづく→#2:ナミテントウ一齢幼虫の孵化


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