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2018/08/03

泡巣を作るシロオビアワフキ幼虫【60倍速映像】



2018年5月中旬・午後19:07〜22:37・室温22.9℃→21.4℃

庭の片隅に小さな赤い花を咲かせるバラの灌木があります。(品種名は知りません。)
トゲだらけの若い枝に白くて大きな泡が付着していました。
これはアワフキムシの仲間の幼虫が作った泡状の巣に違いありません。

夕方に枝ごと採取し、花瓶に水差しにしました。
白い泡巣の水分をティッシュペーパーでそっと拭き取ると、予想通りシロオビアワフキAphrophora intermedia)の幼虫が数匹潜んでいました。
露出した幼虫の体に触れると嫌がって逃げ出します。

泡巣の再形成を微速度撮影してみました。
これは私が前々からやってみたかったテーマです。
60倍速の早回し映像をご覧下さい。
泡巣を別々の場所で作り始めた2匹を同時に撮影してみることにしました。
意外にも、みるみるうちに泡巣が大きくなりました。
口吻を茎に突き刺して吸汁しながら腹端を上下に動かし、排泄した尿を泡立てます。
途中から2つの泡巣が合体してしまいました。
白い泡巣で自分の体が隠れると、中の幼虫は落ち着きました。

次回は、植物の茎を色付き水に挿してカラフルな泡巣を作らせてみるという定番の実験も試してみたいです。

【おまけの映像】
早回し速度を落としたバージョンをブログ限定で公開しておきます。


↑30倍速映像。



↑10倍速映像。



シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:露出
シロオビアワフキ幼虫@バラ茎:泡巣再形成後

【追記】
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑: 一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』を読むと、「幼虫がすむ泡の巣 シロオビアワフキ」と題して数々の見事な生態写真が見開きで掲載されていました。
これほどの防衛対策をしても、天敵のヤニサシガメが泡の中へ口を差し込み、食べられてしまうこともある。(p162より引用)
実際の捕食シーンの証拠写真が無かったので、疑り深い私は自分で探してみたくなりました。
飼育下で実験できるかもしれません。
泡巣を突破できる捕食者にとって泡自体が目印になってしまうと、シロオビアワフキ幼虫は全滅してしまうのではないでしょうか?
 

2018/07/31

ナミテントウの蛹化【60倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#9



▼前回の記事
脱皮前の眠で微動だにするナミテントウ前蛹【100倍速映像】

2018年5月下旬・午前10:40〜午後15:40・室温〜25℃

いよいよナミテントウHarmonia axyridis)前蛹bの蛹化が始まります。
60倍速の早回し映像をご覧下さい。
(初めにカメラの画角を決めるときは、蛹化の際に立ち上がることも考慮して、特に縦の画角からはみ出ないように注意が必要です。)

冒頭で、腹背後部の左側面から黄色の液体が一滴滲み出しているのが興味深く思いました。※
天敵に対する忌避物質を含むと思われるこの液体は、すぐ自然に体内に引っ込みました。
前蛹の時期にも分泌するとは知りませんでしたが、無防備な状態なので納得です。

佐藤有恒『科学のアルバム:テントウムシ』によると、

つまんだとき、指には黄色いしるがのこります。そのしるはとてもくさく、強いにがみがあります。
きけんをかんじると、足の関節から黄色いしるをだします。 (p34より引用)


七尾純『カラー自然シリーズ:テントウムシ』によれば、

小鳥にくわえられると、テントウムシは、あしのつけねの関節から、黄色い、にがい液を出します。にがい味を知った小鳥は、二度と食べようとはしないでしょう。



終齢幼虫が前蛹になるときに、ヨモギの葉表に腹端でしっかり固定しています。
ヨモギの葉に伏せていた前蛹はやがて、固定した腹端を支点に背筋運動で何度も繰り返し起き上がるようになりました。
全身の蠕動運動も始まり、胸背の表皮が割れ始めました。
脱皮しながら起立姿勢になります。
完全に脱げた黒い抜け殻は腹端に丸めてあります。
脱皮直後の蛹は鮮やかな黄色でした。
その後も蛹は背筋運動を繰り返します。
蛹のクチクラが硬化するにつれて、赤くなった背面に特徴的な黒紋が浮かび上がってきました。
早回し映像なので、背脈管が激しく拍動しています。(昆虫の心臓は背側の正中線にあります)
終齢幼虫→前蛹→蛹とステージが進むにつれて、体長が縮んでテントウムシらしい丸みを帯びた体型になりました。


【おまけの動画】
同じ素材で早回し速度を落としたバージョンをブログ限定で公開しておきます。



↑30倍速映像



↑10倍速映像

つづく→#10:蛹化したばかりのナミテントウが背筋運動でアブラムシを撃退


ナミテントウ蛹b:側面起立@ヨモギ葉+脱皮(蛹化)直後
ナミテントウ蛹b:側面@ヨモギ葉+脱皮(蛹化)直後
ナミテントウ蛹b:背面@ヨモギ葉+脱皮(蛹化)直後+scale

2018/07/29

脱皮前の眠で微動だにするナミテントウ前蛹【100倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#8


▼前回の記事
ナミテントウ終齢幼虫の徘徊


2018年5月下旬・午前5:20〜10:35

ナミテントウHarmonia axyridis)終齢幼虫と思われる個体の中に、ヨモギの葉で静止したまま長時間動かない個体がいます。
この前蛹bに注目して、蛹化するまで微速度撮影してみました。
100倍速の早回し映像をご覧下さい。

腹端を葉に固定したまま、基本的には伏せた姿勢で静止しています。
ときどき断続的に蠕動していることが分かりました。
歩脚も一緒にピクピク動いています。
この時点では、これから本当に蛹化するのか半信半疑でした。

前蛹が付いているヨモギの葉を葉柄から切り落とし、長撮り中に葉が萎れて変形しないように、葉先と根本に文鎮を載せて固定しました。



↑【おまけの動画】
早回し速度を少し落とした60倍速映像をブログ限定で公開しておきます。

つづく→#9:ナミテントウの蛹化【60倍速映像】


2018/07/25

脱皮中のナミテントウ若齢幼虫【10倍速映像】



ナミテントウの飼育記録#6

▼前回の記事
アブラムシを捕食中のナミテントウ幼虫を襲うアリ

2018年5月中旬・午後14:31〜15:06・室温26℃

30匹ものナミテントウHarmonia axyridis)の若齢幼虫を同時に多頭飼育していると、生き餌の調達など日々の世話に追われて、どうしても観察が散漫になってしまいます。(目移りしてしまう)
ヨモギの葉に静止していた個体がいつの間にか脱皮していました。
脱皮直前のみん状態の幼虫は、必ずしも葉裏に隠れるとは限らず、目立つ葉表でじっとしている個体もいました。
脱皮する直前の前兆がよく分かりません。

じっとしている幼虫を撮り始めても途中で動き始めてしまったりするのです。(脱皮前の眠ではなかった。)

葉裏に下向きに静止してまさに脱皮中の別個体に狙いを定め、マクロレンズで微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

上半身だけ既に抜け出ており、歩脚が固まるのを待っている状態でした。
重力を利用しているのか、頭を下に向けた姿勢で脱皮しました。
近くを別個体のナミテントウ幼虫が徘徊しても逃げません。(逃げられません)
餌のアブラムシが少ない状態だと、無防備な脱皮中によく共食いされるそうなので、注意が必要です。

やがて下半身も完全に抜け出ると、抜け殻の横に並んで下向きに静止しました。
背面両側に赤い縦線状の斑紋が現れました。(二齢幼虫かな?と思うものの、定かではありません。)
脱皮殻を食べることはなく、その場に残して幼虫は立ち去ります。

三脚にカメラを固定しているのに、長撮りの途中で被写界深度が浅いマクロレンズの焦点が合わなくなってしまいました。
何度も微調整する羽目になり、悩まされました。
どうやら水差しにしたヨモギの葉が少しずつ萎れているせいで、葉柄の角度が刻々とわずかに変わってしまうようです。
葉先をクリップなどで予め固定しておくべきでしたね。

つづく→#7:ナミテントウ終齢幼虫の徘徊


ナミテントウ若齢幼虫@ヨモギ葉裏+脱皮中
ナミテントウ若齢幼虫:脱皮殻@ヨモギ葉裏

2018/07/22

ハシボソガラス親鳥♀♂が雛に給餌しに通うニセアカシア樹上の巣【10倍速映像】(野鳥)



2018年5月上旬・午後16:47〜18:10 (日の入り時刻は午後18:34)
▼前回の記事
ハシボソガラスの育雛放棄?(野鳥)【10倍速映像】

4日ぶりの定点観察。
前回の反省を踏まえて、営巣地からかなり離れた地点に三脚を立ててハシボソガラスCorvus corone)の巣を望遠レンズで狙うことにしました。
これなら親鳥も安心して巣に出入りして雛にせっせと給餌してくれます。

下手に隠れるよりも私の姿が親鳥から丸見えの方がむしろ安心してくれるような印象を受けました。
それでも初めは私の近くまで親鳥が偵察に来ました。
隣の縄張りからも別のカラスが様子を見に来ました。(繁殖しない若鳥かも?)


微速度撮影で親鳥の給餌活動を長時間監視してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
親鳥が留守中も腹を空かせた雛がときどき巣内で首を長く伸ばし餌乞いしていました。
1時間23分間の撮影で親鳥の給餌行動が計11回録画されていました。
平均すると7.5分に1回、給餌していました。

親鳥の性別判定や個体識別ができないのですが、ときどき2羽の親鳥が相次いで帰巣、給餌していたので、共働きしていることが分かりました。
給餌の合間に親鳥は、営巣地の手前を横切る電線や近くに立つ別のニセアカシアの樹上に止まったりして、ときどき休む(辺りを見張る)姿も捉えられていました。
親鳥♀♂のどちらがサボり気味なのか、育雛(給餌)の貢献度合いをきちんと調べるには、親鳥に足環を付けて個体標識して性別を見分ける必要があります。

遠くの山には未だ残雪が見えます。
ニセアカシアの枝には急速に葉が茂りつつあります。



巣に目一杯ズームインするよりも、やや引きの絵で撮った方が、親鳥がどのように(どこを経由して)入巣したか分かりやすく面白い映像になりますね。

夕方で薄暗くなると、引きの絵の方が少しでも明るく撮れるという利点もあります。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→給餌後に雛の糞をニセアカシア樹上の巣から外に捨てに行くハシボソガラス(野鳥)


ハシボソガラス(野鳥)@巣:ニセアカシア樹上・遠景
ハシボソガラス親鳥(野鳥)@帰巣:ニセアカシア樹上+雛給餌

2018/07/20

ハシボソガラスの育雛放棄?(野鳥)【10倍速映像】



2018年5月上旬・午後15:28〜16:51
▼前回の記事
川沿いの荒れ地で雛の餌を探すハシボソガラスの親鳥(野鳥)



5日ぶりの定点観察にやって来ました。
カメラの三脚を立てて親鳥が雛に給餌する行動をじっくり長時間撮影しようとすると、前回の撮影ポイントは通行人の邪魔になってしまいます。
そこで今回は対岸に渡り、河畔林の茂みの陰に三脚を設置しました。
前回もここから撮影しようとしたら親鳥に警戒されてしまったので、今回は三脚とカメラ全体に迷彩ブラインドを被せました。
これで巣から私の姿は目立たなくなるはずです。



私は横の茂みの陰に隠れて座ったのですが、横や背後からは丸見えです。
時間が経つと親鳥が近くまで様子を見に来て、私の存在があっさりばれてしまったようです。
知能が高く警戒心の強いカラスの子育てをフィールドで観察するには、テント型の迷彩ブラインドの中に隠れるか、本格的なギリースーツを着用する必要がありそうです。

いずれも私は持っていないので、別の工夫を考えます。(※追記参照)



ハシボソガラスCorvus corone)が営巣したニセアカシア(別名ハリエンジュ)の枝には冬芽から若葉が芽吹き始めました。

雛鳥は未だ小さいので、巣を見上げるアングルでは雛が背伸びをしてくれないと姿が全く見えません。
カラスの巣に狙いを定めて微速度撮影で長時間監視してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
この日は親鳥もなかなか帰ってこないので、ここ数日の間に雛が死んでしまったのではないか、親鳥が巣を見捨ててしまったのではないか、と心配になりました。

しかし早回し映像を見直すと、留守番している雛鳥が巣内でときどき動いている姿が写っていました。

雛の無事を確認できて一安心。
次に気になるのは、なぜ親鳥が給餌しに帰巣しないのか?という問題です。
雛が幼いうちは給餌頻度が低くても大丈夫なのかな?
飢えた雛が共食いを始めるのではないかと気が気ではありません。
これまでの私の経験では、親鳥の餌探しが不調でもときどき帰巣して雛の様子を見に来るはずです。
やはり、巣の近くで居座る怪しい私の存在が気に入らず神経質になっているのかもしれません。

親鳥が帰巣しないのに雛が餌乞いする姿が映像に写っていました。
大きく開いた嘴の中が真っ赤なのが幼鳥の特徴です。
もしかすると近くの電線や木の枝に親鳥が来たのかもしれませんが、巣にズームしている映像には写っていません。

撮影中に営巣地の周辺では次のような興味深い行動が色々と見れたのですが、カメラが一台しか無いので証拠映像を撮れず残念無念。
しばらくすると親鳥らしきカラスが近くの電線に止まって辺りを監視していました。
カワウが縄張りに飛来すると親鳥2羽が下流へ追い払いました。
親鳥?が整地された河川敷の水際で川の水を何度も飲み、その後は河川敷で採食していました。
カラス同士で縄張り争いの空中戦も目撃しました。
個体識別できていないのですけど、どうやら近くに若鳥の群れが居るようです。
ときどき鳴き騒いだり、遊びのような模擬空中戦を繰り広げたりしています。

そのうちバッテリー切れとなりました。
やむなくカメラを三脚から撤収し始めた途端に、私の様子をどこかで見張っていた親鳥が巣に戻り雛に給餌しました。
その際に雛鳥が餌をねだる賑やかな鳴き声が聞こえました。
やはりハシボソガラスの親鳥が巣に近づかなくなったのは、あからさまに怪しい私の存在とカメラを警戒したせいだと分かりました。
これがもしハシブトガラスなら、凄い剣幕で怒り狂って私を威嚇してくるはずです。
ただ耐え忍んでいるだけのハシボソガラスは健気ですね。
育児(育雛)放棄されては困るので、次回からは親鳥の邪魔をしないように撮影ポイントを巣から遠く離れた地点に変えることにします。
ニセアカシアの葉が茂ると巣が隠されてしまいそうなので、いつまで観察できるか、時間との勝負です。

※ 風が吹いてほぼ絶え間なく木が揺れるため、三脚を使っていても酔いそうな映像になりました。
それでも動画編集時に手ブレ補正のデジタル処理すると、だいぶ改善されました。

つづく→ハシボソガラス親鳥♀♂が雛に給餌しに通うニセアカシア樹上の巣【10倍速映像】(野鳥)




※【追記】
私は未だカモフラージュネットを上手く使いこなせていないのですが、プロの鳥類学者(カラスの研究者)はこういうとき、カモフラージュネットを頭から被ってしまうのだそうです。(参考:松原始『カラス先生のはじめてのいきもの観察』p31)


ハシボソガラス(野鳥)巣@ニセアカシア樹上
ハシボソガラス(野鳥)巣@ニセアカシア樹上

2018/07/16

卵塊から孵化するナミテントウ一齢幼虫【60倍速映像】


2018年5月上旬

ナミテントウの飼育記録#1


タニウツギの開花運動を微速度撮影するつもりで、膨らんだ蕾の付いた小枝を夜に採取してきました。
家に持ち帰って花瓶(ペットボトル)に生けるとき、一枚の葉の裏面に黄色い卵塊があることに気づきました。
数えると31個の黄色い卵が産み付けてありました。
これはテントウムシの卵だろうと予想しました。
そこで予定を変更して、テントウムシを飼育観察してみることにしました。





卵塊を側面から接写してみると↑、孵化しない未受精卵が1個写っていました。(最前列の右から3個目)
表面の橙色が不均一で、見るからに異常な卵でした。



翌日、卵塊が黒っぽく変色していました。
卵殻を通して中の黒い幼虫が透けて見えるようになったのです。
この時点でも、卵塊に未受精卵が1個混じっているのが分かります。
卵の色の変化が孵化の前兆らしいので、微速度撮影で記録することに。



60倍速の早回し映像をご覧下さい。(午後17:06〜23:34)
孵化寸前には白い卵殻を通して幼虫の黒い体節が縞模様のように透けて見えるようになります。
卵から出てきた一齢幼虫の頭部と胸部は初め黄色(橙色)でした。
上半身が外に出ると、黄色の長い脚が固まる(黒化する)までしばらく休息します。

黒っぽい幼虫が続々と孵化してきました。
映像では幼虫の集団が少しずつ下方へ移動しているように見えますが、実はタニウツギの葉が少しずつ萎れて垂れ下がっているせいです。
定規を写し込んで卵塊や幼虫を採寸するのを忘れてしまいました。

全身が黒化すると幼虫は卵殻から完全に抜け出て徘徊を開始。
しかし互いに離れようとしないで群れを形成しています。
卵嚢から出てきたばかりのクモ幼体が団居まどいを形成する様を連想しました。
テントウムシ一齢幼虫の体表にあるトゲトゲは共食いされないための武装なのかな?と妄想してみました。
腹端に吸盤のようなものが見えます。
体を基質に固定するための粘液(糞?)を腹端から分泌しているようです。



卵塊から無事に孵化した一齢幼虫は30匹でした。
計31個の卵塊だったので、96.8%(30/31)という高い孵化率でした。
1個の未受精卵は幼虫によって共食いされたようです。(食卵)
初めての食事として白い卵殻も少しは食べるのかもしれませんが、私は確認していません。
一齢幼虫が群れを解消して分散した後も卵殻は完食されず残っていました。


中公新書:鈴木紀之『すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く 』を読むと、テントウムシ幼虫の食卵行動について私の知らなかったことが書いてありました。

アブラムシを食べる肉食性のテントウムシの仲間は、黄色の卵を数十個まとめて卵塊として産みつけます。しばらくすると一斉に幼虫が孵化しますが、一部の卵は孵化が遅れるか、あるいは孵化すらしません。すると先に孵化した幼虫は、こうしたなかなか孵化しない卵を生涯最初のエサとして食べ始めます。同種の卵、しかも同じ母親から生まれた兄弟姉妹を食べているわけですから、この行動は「共食い」と呼ばれています。 (p48-49より引用)

孵化して間もない幼虫はまだ運動能力が低いために、アブラムシをうまくハンティングできません。特に、体も大きくすばやく歩き回る種類のアブラムシは、テントウムシの幼虫にとっては手強いエサです。そこで、孵化した直後に共食いをすることで、幼虫は苦労することなく成長し、アブラムシを効率よく捕まえられるようにしているのです。 (p49より引用)

多くの昆虫と同様に、テントウムシの母親は産卵後に子(卵)の元を離れ、その後もいっさい面倒を見ません。しかし、母親は不測の事態に備えてわが子に「お弁当」を持たせてあげていると見なせるでしょう。テントウムシの孵化しない卵は、母親からの幼虫に対する追加的な投資なのです。  先に孵化した幼虫の栄養となるような、子の生存に役立つ卵は「栄養卵」と呼ばれています。 (p50より引用)
栄養卵はテントウムシの他に、カメムシやアリなどの昆虫、カエルやサンショウウオといった一部の脊椎動物にもみられます。それほど多くの種で採用されているわけではありませんが、広い分類群にまたがっているという意味で普遍的な戦略です。 (p50より引用)


詳しいメカニズムは分かっていませんが、ナミテントウはアブラムシの量に応じて栄養卵の供給を調整しているようです。だからこそ、孵化しない卵が単なる発生上のバグではなく、「母親の積極的な戦略」として捉えることができるのです。 (p58より引用)




この本の記述通りならば、今回の孵化率が高かったので、卵塊の周囲の餌環境が良好だと母親♀が産卵前に評価したことになります。
しかし、タニウツギの枝葉にテントウムシの餌となるアブラムシのコロニーは見当たりませんでした。(私の探し方が不十分だった?)
日当たりの悪い場所にあった株で、生育が悪い灌木でした。

タニウツギは落葉樹ですから、越冬したナミテントウの母親♀が春になって開いた葉裏に産卵したのです。

テントウムシの卵塊が孵化のタイミングを揃える秘密は何でしょう?
互いに密かに「今から孵化するぞ」とコミュニケーションしているのかな?

卵塊としてまとめて産めば気温など周囲の微気象も同じになるので、孵化までにかかる時間もほぼ同じになる、ということで単純に説明できるのかもしれません。
出遅れると共食いされてしまうので、卵塊が同期して孵化するように進化したのでしょう。


以下は、撮影中の気温を記録したデータです。
午後17:02 室温21.9℃、湿度43%
午後17:40 室温21.5℃、湿度43%
午後18:55 室温21.1℃、湿度43%
午後19:52 室温21.0℃、湿度43%
午後21:27 室温20.9℃、湿度44%
午後23:14 室温20.6℃、湿度43%

飼育を続けると、これはナナホシテントウではなくナミテントウHarmonia axyridis)の一齢幼虫と後に判明します。







↑【おまけの動画】

早回し速度を少し落とした40倍速映像をブログ限定で公開します。


つづく→#2:ナミテントウ一齢幼虫の孵化


2018/07/04

住居網を張るネコハエトリ♀成体【蜘蛛:30倍速映像】



2015年8月上旬・室温31℃、湿度56%


ネコハエトリ♀(Carrhotus xanthogramma)を飼育中です。
歩脚を欠損した個体です。

単調な飼育環境でなるべく退屈しないようにトイレットペーパーの芯を入れておくと、キャットタワーのように登り降りしたり隠れ家にもなります。
糸や食べかすで汚れたら使い捨てします。

飼育容器内を掃除したついでにトイレットペーパーの芯を交換すると、容器側面の隙間で新たに造網を始めました。
徘徊性クモに属するハエトリグモが春網は、獲物を取るための粘着性の罠ではなく、自分が隠れるための住居網です。
トイレットペーパーの芯を円筒容器の中央からわざと少しずらして壁面に近づけて置けば、狙った場所に造網させることができます。
容器壁面、底面およびトイレットペーパー芯に囲まれた隙間に造網しています。


円筒型飼育容器に入れたトイレットペーパーの芯を上から見る。

夜中にネコハエトリ♀成体が住居網を紡いだ様子を透明プラスチック容器越しに微速度撮影してみました。
30倍速の早回し映像をご覧下さい。

前回の撮影では肝心の住居網や糸がよく見えませんでした。

▼関連記事
住居網を紡ぐネコハエトリ【蜘蛛:微速度撮影】
今回は新たな工夫(改善)として、黄土色だったトイレットペーパーの芯に黒紙を貼っておきました。
背景を黒くしたことで、プラスチックの容器越しの撮影でもネコハエトリ♀の糸や網が鮮明に可視化されました。
糸をプラスチック壁面に固定した付着点もはっきり見えす。

ネコハエトリ♀が動きを止めてしまっても、素人目には住居網は未完成に見えます。
栄養不足で糸が不足しているのでしょうか?
毎日少しずつ糸を付け足して住居網を作り上げるつもりなのかな?
生き餌としてハエを1匹投入してみても、ネコハエトリは住居網に篭ったまま出て来ません。(映像なし)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


【おまけの映像】
早回し速度を色々と変えた動画をブログ限定で公開しておきます。



↑40倍速映像



↑20倍速映像



↑10倍速映像(オリジナル素材)


2018/07/01

自然乾燥で開くヒマラヤスギ球果の果鱗【9000倍速映像】



2017年11月中旬〜下旬

歩道にヒマラヤスギの大きな球果がゴロンと転がっていました。
見上げると校庭の端に常緑針葉樹のヒマラヤスギの大木が並んでいます。
ヒマラヤスギの球果は大きくて立派なのに枝先で上向きに実っているのが特徴です。
そのうちの一つが風で路上に落ちたのでしょう。
写真を撮ってから拾い上げると、ずっしりと重い松笠でした。(枝葉も含めた重量は102.5gもありました。)
表面に白っぽい松脂が滲んでいて、匂いも松脂臭いです。

採集したヒマラヤスギ球果+scale
ヒマラヤスギの球果は上向きに付く。
ヒマラヤスギ球果@枝葉・全景
ヒマラヤスギ樹冠
ヒマラヤスギ球果の表面に白い松脂が滲む

片桐啓子、平野隆久『拾って探そう:落ち葉とドングリ 松ぼっくり』を紐解いてみると、動画ブログのネタのヒントが幾つか得られました。

・(ヒマラヤスギの)松ぼっくりは2年型。翌年の晩秋に緑褐色に熟すと、果鱗をばらばらと落とす。種鱗+苞鱗=果鱗
・12月の若い松ぼっくり。雌しべが果鱗になり、生長しはじめている。苞鱗は発達しない。
・翌年の初夏。大きくなっているが、まだ緑色。
・秋には緑褐色になる。熟すにつれて果鱗が開いていく。
・松ぼっくりは長さ6〜13cm。完全に熟すと果鱗がタネごと果軸から落ちてしまうので、松ぼっくりは拾えない。
・果鱗がはがれ落ちるとき、お腹に、2個ずつ抱いていたタネがくるくる回りながら風で運ばれていく。
・てっぺんの果鱗はまとまって落下する。(以上、p142-143より引用)


拾ったヒマラヤスギ球果を室内で陰干しにして(放置)、果鱗が徐々に開いていく様子を微速度撮影してみることにしました。
タイムラプス専用カメラBrinno TLC200を用いて1分間隔のインターバル撮影を行いました。
得られた連続写真を素材とした9000倍速の早回し映像をご覧ください。


自然乾燥が進むと、枝に付いた根元側から上へと順に松毬が開いていきます。
ときどき果鱗が開く際にピシッ♪と鋭い音がするのですが、残念ながら微速度撮影では録音されません。
果鱗が開いていくと球果全体の重心のバランスが崩れたようで、いつの間にか台紙の上で松毬が転がっていました。
そこで、これ以上転がらないように、球果の枝を台紙にビニールテープで貼り付けて固定しました。
(不細工なビニールテープを隠そうとしたのですが、あまり上手く行きませんでした。)
18日間で変化がなくなったので、インターバル撮影を打ち切りました。

乾燥重量を量るべきでしたが、忘れてしまいました。
花が咲くように上部まで果鱗が開いたものの、シダーローズと呼ばれるてっぺんの果鱗は未だ脱落しません。
乾燥した室内とは異なり自然界では冬も雨や雪が降ったり晴れたりしますから、ヒマラヤスギ球果の果鱗は枝上で開閉を繰り返しながら熟していくのでしょう。

つづく→ヒマラヤスギの完熟した球果から剥落する果鱗




【追記】
清水清『科学のアルバム:植物は動いている』によると、
 ひらいたマツカサ(果実)を水につけると、マツカサはとじてしまいます。反対に火であぶってかわかすと、またひらきます。これは、マツカサをつくっているりん片の内側と外側で、かわいたときのちぢみ方、湿ったときのふくらみ方に差があるためです。かわいたときは内側よりも外側が多くちぢむため、外側にそり返ります。湿ったときは内側よりも外側が多くふくらむため、もとにもどるのです。 (p48より引用)


開いたマツカサを水に漬けてみる実験は、私もいつか試してみるつもりです。

2018/06/08

アカオニグモ♀の卵嚢作りと産卵:その6 まとめ【100倍速映像】(蜘蛛)



2017年11月上旬


▼前回の記事
アカオニグモ♀の卵嚢作りと産卵:その5【俯瞰400倍速映像】(蜘蛛)

アカオニグモ♀成体(Araneus pinguis)が飼育容器の底で卵嚢を作る一部始終を横から微速度撮影で記録しました。
10倍速映像を3部作に分けて(シリーズその1〜3)各ステップを紹介してきましたが、更に早回し速度を上げた100倍速映像で一気にお見せします。
作り初めのアカオニグモ♀は円形の天幕を休み休み張っていました。
前に紹介した動画その1では退屈な休憩シーンを編集でカットしましたが、今回はノーカットなので、休憩の取り方も分かります。

深夜になると急に作業のペースが上がり(@8:56〜)、天幕シートを一気呵成に作り上げました。
続いて、天幕の下面に産卵を開始。(@9:52)
オレンジ色の丸い卵塊の下半分を糸で包み始めます。(@10:02)
遂に卵嚢が完成しました。(@11:46)
これ以降♀クモは静止し、卵嚢をガードします。

卵塊を保護する卵嚢を作る際は、網を作る糸とは全く異なる専用の糸(非粘着性)が紡ぎ出されるそうです。

管状腺(cylindriform gland)は、中疣と後疣に開口する比較的大きな糸腺です。管状腺の糸は、卵嚢の内側で卵塊を包む柔らかい糸として用いられます。産卵のときだけに必要になるので、♀にしかありません。 (『糸の博物誌:ムシたちが糸で織りなす多様な世界』p12より引用)



ネット検索で調べたら面白い情報を見つけました。
卵を保護するための「卵のう」の表面は、規則的に編まれた織布とは違って、太い糸と細い糸からなる繊維が不織布状になっている。 (大崎茂芳. "クモの糸の秘密." 繊維学会誌 62.2 (2006): P_42-P_47.PDFより引用)




卵嚢が完成した後にアカオニグモ♀が卵嚢ガード(休息)するシーンの大半は編集でカットしました。


私は解剖学的な知識が曖昧だったのですけど、最近読んだ本、中田兼介『まちぶせるクモ:網上の10秒間の攻防』によれば、 ♀クモの交接孔と産卵孔は別々なのだそうです。

♀の外雌器は書肺の後ろにあり、別々の受精嚢につながる2つの交接孔と、その間に産卵のための孔が一つ開いている。 (p4より引用)


クモの種類によって違うのかな…?と疑問に思って、専門書『クモの生物学』第10章を紐解いて復習しました。
コガネグモ上科のクモ類は完性域類に属し、♀の受精嚢は交接口と受精口の2方向に開口している両開口型で、交尾口と産卵口が別々らしい。


シリーズ完。


2018/06/07

アカオニグモ♀の卵嚢作りと産卵:その5【俯瞰400倍速映像】(蜘蛛)



2017年11月上旬・(午後18:32〜翌日の午後16:11)


▼前回の記事
アカオニグモ♀の卵嚢作り:その4:卵嚢ガード【60倍速映像】(蜘蛛)

飼育下でアカオニグモ♀(Araneus pinguis)が卵嚢を作る様子を別アングルからも微速度撮影していました。
インターバル撮影の専用カメラ(Brinno TLC200)を上から見下ろす俯瞰のアングルで設置し、20秒間隔の連続写真を撮りました。
その素材を元に20fpsの動画に加工しました。
400倍速の早回し映像をご覧下さい。
残念ながらこのカメラは焦点距離が30cm以上なので、思い切った寄りの接写ができません。
入門機種なので、オプションのマクロレンズも用意されていないのです。
やや遠くから(引きの絵で)撮った映像になりますが、仕方がありません。


初めのうちアカオニグモ♀は円形の天幕を休み休み張っているのがよく分かります。
深夜になると作業のピッチが上がり、早朝の午前6:19に卵塊を産み始めました。
卵嚢を中心にしてクモ自身が回転しながら糸を紡ぎ、卵塊を少しずつ覆います。
このとき♀クモの回転運動は右回り、左回り(時計回り、反時計回り)と交互に(ランダムに)行われていることが、俯瞰だとよく分かります。
午前9:28にクモは完成した卵嚢にぶら下がったまま静止しました。
これ以降はほとんど動きが無くなり、卵嚢ガードを続けています。
後半になると、大きさの比較として一円玉(直径20mm)を並べて置いてみました。


つづく→その6:100倍速まとめ映像


2018/06/06

アカオニグモ♀の卵嚢作り:その4:卵嚢ガード【60倍速映像】(蜘蛛)



2017年11月上旬・午前10:42〜午後14:12
▼前回の記事
アカオニグモ♀の卵嚢作り:その3(蜘蛛)【10倍速映像】

一晩かけて卵嚢を作り上げたアカオニグモ♀(Araneus pinguis)の様子を60倍速の早回し映像でご覧下さい。
たまに身動きしたり向きを変えたりするだけで、卵嚢にしがみついた姿勢のまま静止しています。

こうした休息状態は「卵嚢ガード」と呼ばれるのですが、もし卵の天敵が現れたら本当に母クモは撃退するのでしょうか?
実験してみたいのですけど、この時期になると野外で活動する虫の数が激減していて、適当な相手を見つけてこれませんでした。
例えばアリとかカメムシでも良いから卵嚢の上に乗せて歩かせてみて、母クモの反応を見たいものです。


つづく→卵嚢作りを別アングル(俯瞰)でインターバル撮影


アカオニグモ♀(蜘蛛)俯角@卵嚢ガード+scale
アカオニグモ♀(蜘蛛)俯角@卵嚢ガード+scale
アカオニグモ♀(蜘蛛)俯角@卵嚢ガード+scale


アカオニグモ卵嚢@方眼紙(ススキの種子が付着)
卵粒をコーティングしていた粘液が白く固まった?


【後日談】
この♀はもう新しい円網を張って餌を捕る元気は無く、5日後に死亡しました。
4日目までは生きていて、卵嚢ガードを続けました。
寿命を迎えたアカオニグモ♀の外雌器を接写すると、垂体が残っていました。
これは未交接の処女♀という意味なのですかね?

だとすれば、せっかく苦労して作った卵嚢も無精卵ということになります。
(クモの種類によっては、♂が交接の際に♀の垂体を破壊して他の♂と交接させなくするらしいのですが、アカオニグモもそうなのか私は知りません。)


以下の写真は死後3日後に接写したもので、少し干からびた状態です。

アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:背面@方眼紙
アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:腹背@方眼紙
アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:頭胸部@方眼紙
アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:顔@方眼紙
アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:腹面@方眼紙
アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:外雌器+垂体
アカオニグモ♀(蜘蛛)標本:外雌器+垂体


得られた卵嚢を大事に保管して越冬させたのに、記事を書いている6月上旬になっても未だに幼体が孵化(出嚢)しません。
冬季は冷暗所(室温の低い地下室)に保管していたのですが、暖冬だったために冷気に充分晒されず、休眠越冬に失敗したのでしょうか?
それとも無精卵だったのかもしれません。
もう少し待って駄目なら、卵嚢を割って中を調べてみます。



【追記】
7月上旬、遂に痺れを切らして卵嚢をハサミで切り開いてみました。
すると中から乾燥した卵の粒が零れ落ちました。
幼体が孵化した形跡は無く、やはり無精卵だったことが分かりました。

アカオニグモ(蜘蛛)未受精卵@卵嚢切開@方眼紙
アカオニグモ(蜘蛛)未受精卵@卵嚢切開@方眼紙
アカオニグモ(蜘蛛)未受精卵@卵嚢切開@方眼紙



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