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2015/01/27

ビンズイ(野鳥)の鳴く声♪を声紋解析してみる



2014年10月上旬

山間部の道端でビンズイAnthus hodgsoni)が木の横枝に止まって辺りをキョロキョロしていました。
いかにもセキレイ科らしく、尾羽を上下に振っています。
急にすぐ横の蔓を啄み、おそらく何か虫を捕食しました。(@1:25)
つづいて羽繕いを開始。
嘴で胸元の羽根を念入りに整えています。
脚の爪で肩や頭の辺りを掻きました。

長撮りの最中にカメラのトラブルが発生。
強制再起動で撮影再開するまで手間取ったものの、奇跡的にビンズイは逃げずに居てくれました。
それまでずっと黙っていたのに、やがて警戒を解いてくれたのか甲高い声で鳴き始めました。(@5:53〜)
嘴の動きと鳴き声が同期した(リップシンクロ)ので、この個体の鳴き声に間違いありません。
横枝を歩いて移動すると、飛び立ちました。
少し上の枝に止まり直すと、鳴きながら枝から枝へ飛んで移動。
最後は森の方へ飛び去りました。



ビンズイが止まっていた木の葉を写真に記録しておきます。
虫喰い穴だらけで分かりにくいのですが、この樹種はマンサクですかね?(全く自信なし)



▼関連記事(丁度2年前にも同様のシーンを撮っています。)
樹上で虫を捕るビンズイ(野鳥)



木の横枝を平均台のようにのこのこ歩くなんて、そういえば、ほかの鳥ではあまり見かけないこと。(『森の野鳥観察図鑑:鳥のおもしろ私生活』p151より)
という記述が本にあるのですが、独特とされる歩き方がいまいちイメージできません。
横歩きしたシーン(@6:04-6:10)も撮れましたが、そんなにユニークかな?

ビンズイの鳴き声を声紋解析してみる

いつものようにオリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてから鳴いている部分を3箇所切り出し、スペクトログラムを描いてみました。




2015/01/26

ヒマワリの種子を口移しで給餌♪するカワラヒワ(野鳥)の親子?



2014年10月上旬


▼前回の記事
ヒマワリの花から種子を啄むカワラヒワ(野鳥)

民家の庭で枯れたヒマワリの花から種子を採食するカワラヒワCarduelis sinica minor)の群れを撮っていると、気になる行動が見られました。
花の上で餌をねだる個体はなぜ自力で採食しないのでしょう?
翼を羽ばたかせながらヒヨヒヨヒヨ♪と甘えるような鳴き声を発しています。(通常の鳴き方とは異なります。)
もはや繁殖期ではないので、つがいの♂から♀への求愛給餌ではないと思います。
おそらく巣立ち雛が親鳥に餌をねだっているのでしょう。
幼鳥なのか成鳥♀なのか私には外見で見分けられません。
『森の野鳥観察図鑑:鳥のおもしろ私生活』p78によると、

(カワラヒワは)♂の方が緑色味・黄色味が強い。



ヒマワリの花や葉はすっかり枯れており、大量の種子がぎっしり詰まった重みで大きな花は下を向いています。
採食中のカワラヒワは花の縁から逆さまにぶら下がるアクロバティックな体勢で種子を啄んでいます。
花の外側から種子を採食していくので、もはや花の中央部しか種子は残っていません。
したがって次第に採食が難しくなり、経験が必要だったり若鳥は小さくて嘴が届かないのかもしれません。
(最終段階ではホバリングしながら採食するのかな?)
しかし2羽の体長は同じぐらいに見えます。
もし仮に若鳥?が自力で採食可能なように、ヒマワリの花を切り落とし上向きにひっくり返して置いたとしても、同様の給餌行動は見られるのでしょうか?

実際に口移しで給餌を受けているのかどうか非常に気になるのですが、後ろ姿のためなかなか見せてくれません。
「頼む!こっちを向いてくれ〜!」と念じて待つと、願いが通じたのか、なんとか決定的瞬間が撮れました。
やったね!

※ YouTubeの動画編集時に自動色調補正を施してあります。

▼関連記事
カワラヒワ(野鳥)の求愛給餌?/巣立ち雛への給餌?

給餌をねだる鳴き声を声紋解析してみる

秋風でザワザワなびく草の音がある上に、すぐ横が交通量の多い車道なので、ノイズ(騒音)が酷いです。
それでもなんとかノイズの少ない部分を3箇所切り出してスペクトログラムを描いてみました。
ちなみに外付けマイクを忘れたので、カメラ内蔵のマイクで録音したものです。




2015/01/14

涼しい夜も巣口で扇風行動するモンスズメバチ♀【暗視映像】



2014年9月中旬
▼前回の記事
モンスズメバチ♀の夜間飛行【暗視映像】

モンスズメバチの巣の定点観察12

モンスズメバチVespa crabro flavofasciata)の門衛はこの日の夜も巣口で扇風行動を続けていました。
赤外線の暗視ビデオカメラを手に持ち巣にそっと近づいて撮った時刻は18:22および18:42 pm。

巣口の左右で2匹の門衛が同時に扇風しています。
以前見かけた直列二連の扇風行動とは違い、今回は並列ですね。

少し時間をあけてから(20分後に)再び撮影しても、同時に2〜3匹の扇風役が巣口で踏ん張り懸命に羽ばたいていました。
寝苦しい熱帯夜ではなく、むしろ少し肌寒いぐらいでした。

外気温を測ると16℃。
同じ日の昼間に観察したときよりも涼しい夜の方が扇風役が多いのは不思議でなりません。
果たして本当に巣を冷やすための行動なのか、ますます疑念が強まりました。

蜂の観察をアシナガバチから始めた私の目にはとても奇異に映ります。
同じスズメバチ科でもアシナガバチ類の巣盤は外被がなく開放型なので、外気温が下がると扇風行動は不要になります。
やや肌寒いぐらいの気温16℃で扇風行動するなんて、アシナガバチではとても考えられません。
保温のために巣盤を外被で覆うスズメバチ属で同様の扇風行動を観察したのは、このモンスズメバチ以外では未だ一度しかありません。
昔にコガタスズメバチの巣で扇風行動を観察したときは、気温29℃の暑さでした。

したがって今回も普通に考えたら、樹洞内が夜でも30℃近くないといけません。(測ってみなければ分かりませんが、そんなことあり得ますかね?)
むしろ樹洞内が酸欠になりがち(二酸化炭素濃度が高い)なので換気が必要だ、という解釈の方が未だ自然な気がします。

赤外線投光機を近くから照射したせいでモンスズメバチが暑さを感じて扇風行動を始めたのでしょうか?
観察行為自体が対象生物の行動を変えてしまった可能性(観測問題)は否定できると思います。
その理由は、


  1. 赤外線を照射しても巣口にいる門衛のごく少数しか扇風していない。
  2. 少し時間をあけてから(20分後に)再び撮影しても変わらず扇風行動を続けていた。

樹洞内がそんなに暑いのか、温度や二酸化炭素濃度を測ってみたいのですけど、高価な防護服を持っていないのでさすがに危険なことはできません。(測定器も値が張りますし。) 
もしミニ扇風機を持参して樹洞に送風したら、加勢された扇風役の蜂はどんな反応をするでしょうね? 
ヘアドライヤーの熱風を送り込んだら? 
冷たいドライアイス(固体CO2)を樹洞に放り込んだら? 
防護服が無いと出来ることは限られてしまうのですが、実験のアイデアだけなら幾つも思いつきます。

【追記】
蜂の防護服は高価ですが、レンタルしてくれる会社を幾つかインターネット上で見つけました。¥9,800/日


扇風行動の羽音を声紋解析してみる 

扇風行動が始まるとブブブブ♪という重低音が長時間響くのですぐ分かります。 
樹洞内で反響しているのでしょう。 
本種はスズメバチ属では珍しい夜行性です。(正確には両行性) 
暗い森を飛んで帰巣する外役ワーカーに対して灯台のように巣の位置を知らせるために門衛が羽音を立てているのではないか?という大胆な仮説を思いつきました。 
コロニー毎に微妙に異なる周波数を発していたりして…。 
録音した扇風行動の羽音を別の木からスピーカーで流し(プレイバック実験)、外役ワーカーの帰巣能力を撹乱できるか調べたら面白そうです。
先走った法螺話はさておき、とりあえず扇風行動の羽音を声紋解析してみることにしました。
扇風行動と飛翔時の羽音とを区別しないといけません。
飛んで出入りする蜂が途絶えた映像後半部のオリジナルMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてからスペクトログラムを描いてみました。


20kHz以上の高音域に見られる断続的で思わせぶりな声紋は、背景で鳴いている直翅目(コオロギ?)の声かもしれません。
16kHz付近に持続する強い波形があり、その半分の8kHzでは逆にすっぽりと波形が抜けている現象が不思議ですね。 
これら低音域の波形が扇風行動によるものだと思うのですが、音響学の専門家に解説してもらいたいものです。 
樹洞に反響しているとか扇風役2匹の羽音が一部打ち消し合っているとか、複雑な現象なのでしょうか?
【追記】翌年、全く別の被写体を撮っても8, 16 kHzの持続する信号のパターンが再現されました。これはビデオカメラ特有のノイズかもしれません。

一方、巣に出入りする蜂が何度か飛び回る映像前半部の音声からも同様にスペクトログラムを描いてみましょう。 
二つのグラフを見比べると、飛翔時の羽ばたき成分がどれか分かってきました。(低音域の波形でムラのある部分)

扇風行動の羽音のような低音は、障害物を越えて遠くまで届くものの指向性が弱いという性質があります。
巣の位置や方角を正確に知らせたいのであれば、直翅類♂の鳴き声のように指向性の強い高音を使うべきなので、仮説としては弱いかもしれません。



つづく→シリーズ#13



【追記2】
スズメバチではありませんが、同じく真社会性昆虫であるマルハナバチに関する本を読んでいたら、似たような習性が書いてあって興味深く思いました。
『マルハナバチの謎〈上巻〉 (ハリフマンの昆虫ウオッチング・社会性昆虫記)』で第5章「マルハナバチにラッパ手がいるのか」(p121-135)まるまる割いてこの不思議な行動について論じています。
この問題は、300年以上前にオランダの学者ヨハン・ゲダルトが、にわかには信じ難い奇妙な観察記録を残したことから始まりました。
マルハナバチの巣で毎朝起床を知らせる「鼓手」のハチがいるというのです。
その後、何人もの昆虫学者が研究を進め、そのようなハチは「ラッパ手」と呼ばれるようになりました。
ラッパ手マルハナバチの仕事について三つの意見がでたことになります。第一は起床ラッパだという意見。ラッパの音自体には何の目的もなく、若いハチがはねをトレーニングしているためにおきる羽音なのだという第二の意見、そして、第三は、はねをふるわせて巣の中の換気をしているのだという意見です。(p127より引用)

  • ラッパ手が巣から出てくるのは夜中とか夜明けが多い。(p126)
  • ラッパ手は見張り番だったのです。(中略)ラッパ手は餌の採集には出ません。(p130)
  • 六月末から夏の終わりまで毎朝同じマルハナバチがラッパを吹きました。(p130)
  • ラッパ手を取り除くと、それに代わって必ず別のラッパ手がでてくる。(p135)

2015/01/03

屋根に片足立ちで佇むアオサギ(野鳥)



2014年9月下旬

街中を流れる川沿いに建つ民家の屋根に大きなアオサギArdea cinerea jouyi)の成鳥が一羽佇んでいました。
屋根に止まる姿は初見です。
冠羽が無いのは非繁殖期だから?
川をじっと見下ろしているので、てっきり魚影を探しているのかと思いしばらく粘って観察してみました。
おそらくただの休息らしいと分かってきました。
西日を浴びて黄昏れています。
のんびりと羽繕いを始めました。(@0:28〜)
嘴で首の根元を掻くように撫で付けています。
次に翼の付け根を嘴で羽繕いしています。
左足の爪で首を掻いています。(@2:09)

屋根の縁まで歩いて移動しました。
川面を見下ろすも、予想に反して飛んでくれません。
なんとも哀愁のある立ち姿です。
空を飛んでいるトンボには見向きもくれません。
やがてリラックスすると片足を上げた姿勢になりました。(@3:38)
フラミンゴの一本足を連想しましたが、疲れた筋肉を片足ずつ休ませているのでしょうか。
トタン屋根が西日で熱いのであれば、もっと頻繁に足を踏み変えるはずです。

首をすくめていたアオサギが片足立ちのまま急に首を伸ばして遠くを眺めました。
何事もなかったようで再び首をすくめた姿勢に戻ります。
長撮りに疲れた私が川の対岸を歩いて少しずつ近づくと、警戒したアオサギは屋根を歩いて死角に隠れてしまいました。
更にしつこく対岸を歩いて回り込み、撮影続行。
夕陽を浴びたアオサギの横顔が美しいですね。
急に身を屈めると飛び立ち、下流方向へ飛び去りました。
飛びながら腹立たし気にグワーッ♪と一声鳴きました。
近くの鎮守の森のスギの梢に着陸しました。
枝葉に隠れて姿は見えませんが、ここを夜の塒とするのでしょうか。



アオサギの鳴き声を声紋解析してみる
いつものようにオリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてから鳴いている部分を切り出し、スペクトログラムを描いてみました。
やや遠いせいか、低周波成分の多い不鮮明な声紋ですね。



2014/12/30

ミネラル摂取中に飛翔筋をアイドリング♪するヒラタアブの一種♀



2014年9月中旬

山道の休憩所に飛来したヒラタアブの一種♀が、カメラのストラップやザックに止まり口吻を伸ばして舐め始めました。
雨水や私の汗が染み込んでいる所からミネラル摂取(塩分補給)しているのでしょう。
左右の複眼が離れているため♀のようです。

翅を休めて静止している間も甲高い音を発し続けていることに気づきました。
ハナアブはホバリング(停空飛翔)の名手ですけど、飛行中の羽音よりも高い音でした。
胸部の飛翔筋を高速で伸縮させて、いつでも飛び立てるようアイドリングしているのでしょうか?
この行動の正式名称は?
この日は周囲にうるさい蝉しぐれが無く静まり返っていたおかげで気づけた現象(行動)です。

ヒラタアブ飛翔筋のアイドリングを声紋解析してみる

いつものようにオリジナルのMOV動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードし、適当に切り出してからスペクトログラムを描いてみました。
すると何やら思わせぶりな声紋が得られました。
飛び立つ前後でスペクトログラムに劇的な変化が現れるかと期待したのですが、低周波成分が少し増えるだけで、素人には違いがよく分かりませんでした。 

※ 16kHz付近に持続する強いシグナルがあり、その半音の8kHzが逆にすっぽり抜けている、という謎の現象はこのビデオカメラに特有のノイズのようです。(何を撮っても毎回出現する波形)

カメラのストラップを舐めている時のアイドリング声紋
ザックを舐めている時のアイドリング声紋
飛び立つ前後の声紋を切り出してみる(3秒〜離陸)

撮影後に逃げられてしまいましたが、戻って来たハナアブを2匹採集しました。
(映像に登場した個体と同一である保証はなく、別種の可能性すらあるかも。)
以下は標本写真。
まずは一匹目の個体♀a。



続いては二匹目の個体♀b。



2014/11/29

暗闇で鳴く♪ハヤシノウマオイ♂【暗視動画】



2014年8月中旬

買ってきたビデオカメラの暗視機能をテストするために、深夜(23:24 pm)の庭に出てみました。


どこか近くでハヤシノウマオイ♂(Hexacentrus hareyamai)がスイーッチョン♪と繰り返し鳴いています。
ビデオカメラを暗視モードにして液晶画面を見ながら、強い鳴き声を頼りに探すと声の主はすぐに見つかりました。
庭に放置された手押し一輪車の鉄パイプ部分に乗っています。
虫の目は赤外線を感知できないので、間近から接写しても逃げません。
明るい昼間ならすぐ逃げられてしまうでしょう。
逆に近過ぎて、録音した鳴き声が割れてしまうぐらいです。

最後は突然逆に向き直ってから飛んで逃げました。
長い触角にカメラが触れてしまったのでしょうか。
あるいは、鳴き終わりの自発的な徘徊(場所移動)なのかもしれません。
3年前に飼育した時もそのような行動が見られたのを思い出しました。

▼関連記事
身繕いしながら鳴くハヤシノウマオイ♂(動画と声紋解析)

気温を測り忘れました。
同定用の写真も撮れていないのですけど、鳴き声の特徴からハヤシノウマオイとしてしまいます。

▼関連記事
ハヤシノウマオイ♂の鳴き声♪(HD動画)


ハヤシノウマオイ♂の鳴き声を声紋解析してみる

コオロギなど他の昆虫の鳴き声も混入していますが、オリジナルのMOV動画ファイルから音声部をWAVファイルにデコードし、適当に切り出してからスペクトログラムを描いてみました。
これまでの私の使っていたカメラとは違って高音域が不自然にカットされていないのは朗報です。
このビデオカメラは声紋解析に向いていますね。
図鑑『バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑』のCD音源とあまり遜色ないかもしれません。



ビデオカメラをちょっと使ってみた感想
2万円を切る値段だけあって、HD映像の画質は正直言うと少し落ちます。
それでも赤外線LED内蔵で暗視可能であること、高音部の音声周波数をカットしていないこと、の特長二点は非常に満足しています。
(音声コーデックはDVI ADPCM, Stereo, 48000 Hz。)
決定的瞬間を逃さないために、録画開始ボタンを押す10秒前から記録される(プレ録画)点も気に入りました。
欲を言えば、外付けマイクを接続できるようにして欲しかったです。(入力端子が無い)
ズーム倍率や手ブレ補正機能も弱いので、用途を割り切って使い分けるつもりです。


2014/09/11

モズ♂(野鳥)同士の縄張り争い♪?



2014年7月上旬

郊外の住宅地で民家の屋根のTVアンテナおよび庭木(針葉樹)の梢に2羽のモズLanius bucephalus)が止まって鳴き交わしていました。
映像で嘴の動きと鳴き声が一致しているので(リップシンクロ)、この個体の鳴き声に間違いありません。
テリトリーを接する♂同士が縄張り争いをしているのでしょうか?
番(つがい)のペアなのかな?
曇り空を背景に逆光なので百舌鳥のシルエットしか分からず、少しでも改善するために自動色調補正を施してあります。
特に、右の木のてっぺんにいる個体の性別が分かりにくく、もどかしいです。
(こちらもたぶん♂だと思います。)
実はこの直前、同じ町内の電線に止まっていたモズ♂の姿を見ています。

▼関連記事 
電線から飛ぶモズ♂(野鳥)
個体識別できていませんが、片方はそれと同一個体かもしれません。

長い尾羽を上下しながらキチキチキチ♪と鋭い鳴き声を応酬するだけで、直接的な闘争行動には至りません。
知らず知らず巣に近づいてしまった私に対する警戒声なのかな?
(住宅地で通行人に対していちいち警戒していたら大変そうです。)
巣立ったばかりの幼鳥が縄張りに残っている可能性は?
モズの高鳴き」と表現される行動が秋にあるそうなのですが、季節が違いますかね?
言い換えれば、今回観察した映像に「モズの高鳴き」とタイトルを付けるのは季節外れでしょうか?
秋から冬にかけてモズの行動を自分の目で観察できていないので、未だ色々と勉強不足です。

最後はTVアンテナに止まっていた個体が左の方に飛び去りました。
逃げたということは、他人の縄張りに来た侵入者だったのかもしれません。

主に鳴いていたのは左の個体@アンテナだったので、意外でした。
梢に残った個体は勝ち誇ったようにしばらく鳴き続けています。

『雪国動物記:第12章:モズのテリトリー』p134-135によると、

モズのテリトリーの境界には必ず緩衝地帯がある。お互いにその緩衝地帯をおかすことがほとんどない。ひとたびテリトリーが確立すれば、その後はほとんど境界あらそいをおこさず、お互いに自分の領地に安んじてせいかつできるのはそういう緩衝地帯のおかげであろう。




縄張り争いするモズ♂の競り鳴きを声紋解析してみる
やや遠いかもしれませんが、いつものようにオリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードし、適当に一部を切り取ってからスペクトログラムを描いてみました。




【追記】
山岸哲 編『鳥類生態学入門―観察と研究のしかた』によると、
モズの争い行動は、定住独身♂や放浪独身♂といった独身♂とつがい♂との間に最も多く、両隣つがいとの争いはごくまれにしか起こらない。(中略)モズのつがい♂は、ある空間を防衛するというより、独身♂から産卵前の♀を防衛しており、これを配偶者防衛行動と呼ぶ。 (p54-55より引用)


2014/08/02

ニホンカモシカの威嚇鼻息♪を声紋解析してみる



2014年6月中旬

ほぼ廃道状態の山道を静かに登っていると突然、前方からニホンカモシカCapricornis crispus)の鋭い鼻息が聞こえてきました。
知らぬ間に野生カモシカの縄張りに踏み込んでしまったようで、ニアミスに驚いたカモシカがフシュ♪フシュ♪と繰り返し威嚇してきます。
どこに隠れているのか姿は見えませんが、カモシカからはこちらが見えているのでしょう。
私も鼻息を真似て威嚇合戦をしようか迷いました。

▼関連記事
野生ニホンカモシカと鼻息で鳴き交わしてみる

姿を現してくれることを期待して立ち止まり沈黙を守っていたのに、結局カモシカは茂みの奥に走って逃げられました。
バキバキと枝を折りながら逃げた時にようやく一瞬だけ姿が見えました。
草木の生い茂った夏山でカモシカを見つけるのは至難の業です。

獣の体温を可視化するサーモグラフィーのような軍用の高級機材があれば、きっと楽しいのになー。

ニホンカモシカの威嚇鼻息を声紋解析してみる

オリジナルのMTS動画ファイルからいつものように音声をWAVファイルにデコードし、録音された鼻息を3声ずつ切り出してからスペクトログラムを描いてみました。
後半は残念ながら、上空を飛んで来たヘリコプターのプロペラの騒音でせっかくの出会いが台無しになりました。

カモシカ同士が出会った時の鼻息威嚇合戦もいつか聞いてみたいものです。


2014/06/01

モズ♂(野鳥)の鳴き真似♪を声紋解析してみる



2014年5月中旬・曇り

郊外の住宅地でモズ♂(Lanius bucephalus)が電線に止まって鳴き続けています。
よく聴いてみると、キョッキョッキョッ♪という縄張り宣言(高鳴き?)の合間に他の野鳥の鳴き真似をしています。
リップシンクロを確認できたので(嘴の動きと鳴き声が一致)、確かにこの個体が鳴いている声です。
ギョギョシ、ギョギョシ♪というオオヨシキリの鳴き真似が余りにもそっくりなので驚きました。
近くに水田があり、本物のオオヨシキリも生息しています。
他にもヒヨドリ(この時期によく耳にする掠れ声混じりのさえずり?)やスズメ(チュンチュン♪)、ヒバリ(ピチピーチ…♪)などの鳴き真似も混じっているでしょうか?
鳴き真似のレパートリーが多い、なかなか芸達者な♂です。
百舌鳥が鳴き真似している証拠映像を撮れたのは前年に引き続きこれが2回目。

▼関連記事▼
モズ♂の鳴き真似♪と虫捕食、ペリット嘔吐【野鳥】



モズ♂の鳴き真似を声紋解析してみる

鳴き真似と言っても空耳かもしれませんから、声紋解析で客観的に比較してみたくなります。
私が声紋解析の真似事を始めた動機がまさにこれです。
音痴な私は絶対音感もなければ鳴き声の「聞きなし」も苦手なので、声紋解析で視覚的に調べるしかありません。
オリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてから鳴いている部分を適当に切り出し、スペクトログラムを描いてみました。


モズ♂のさえずり♪パート
オオヨシキリの鳴き真似♪#1
オオヨシキリの鳴き真似♪#2
ヒヨドリの鳴き真似♪

▼関連記事▼
・オオヨシキリ♂の鳴き声♪を声紋解析してみる【野鳥】
・ヒヨドリ(野鳥)春のさえずり?♪を声紋解析してみる




モズはなぜ他の鳥の鳴き真似をするのか?

漢字で百舌と書くモズの鳴き真似を調べることで、モズがどんな場所に住み、また、そのまわりにどんな鳥がすんでいるか知ることができます。
モズがなぜほかの鳥の鳴き声をまねるのか、そのわけは、いまのところよく分かっていません。
『科学のアルバム:モズのくらし』p41より
素人ながら幾つか仮説を立ててみました。
  1. モズは狩りをする肉食の鳥です。獲物となる小動物を油断させる一種の攻撃的擬態なのでしょうか? 録音したモズの鳴き声をフィールドで流すと逃げたり隠れたりする小動物がいるかな?(プレイバック実験)※追記3参照
  2. 鳴いて縄張り宣言したり求愛したい欲求と矛盾しますが、捕食者や天敵から隠れたいのでしょうか? 特に種間托卵するカッコウに対して警戒が必要です。モズは鳴き声で自分の営巣地や縄張りを知られたくないのかもしれません。ただし鳴き真似でどれだけカッコウを騙し撹乱できるかどうかは疑問です。カッコウはオオヨシキリにも托卵するので、今回のようにモズ♂がオオヨシキリの鳴き真似をしてしまうと結局はカッコウを縄張りに誘引してしまう結果になりそうです(藪蛇)。
  3. 配偶者選択による性淘汰なのでしょうか? ♂がさえずる歌のレパートリーの豊富さが♀による選り好みの対象となった結果、鳴き真似できる♂が繁殖に有利となり誇示するようになったのかもしれません。ヒトに例えるなら、合コンでカラオケが上手だったり物真似の上手い芸達者がもてる状況と似ているでしょうか。
  4. モズの鳴き方は完全に生得的なものではなく雛の時期の学習の成果なのでしょうか? 親の鳴き声を聴いて覚える臨界期にたまたま巣の近くで鳴いている他の鳥の鳴き声も刷り込まれてしまうのかもしれません。モズはなんと猫や犬の鳴き声、鳥の羽音、ヒトの赤ちゃんの鳴き声まで真似ることがあるそうです。もしモズを雛から飼育してオウムや九官鳥のようにトレーニングすれば、臨界期に聞かせたヒトのお喋りを真似るようになるのか、非常に興味があります。(現代では野鳥の飼育は法律で禁じられています。)


【追記】
岩波新書『小鳥はなぜ歌うのか』を紐解いてみると、p104-105
・野性の状態で他の種類の鳥の声を真似る鳥は、たくさんいる。カラス、カケス、ムクドリ、モズなどはよく知られている。

・なぜこれらの鳥が自然状態でも物真似をするのだろうか。これにはいろいろな説がある。たとえば、(1)真似た音を個体識別に使うという説がある。(2)自分の縄張りを自種だけではなく、他の種の鳥からも守るために他種の歌を真似るという解釈がある。(3)美男子論があてはまるかもしれない。物真似をして自分の歌をより変化に富んだものにすれば、より多くの♀が誘われて来るのかもしれない。


【追記2】
『擬態―だましあいの進化論〈2〉脊椎動物の擬態・化学擬態』という本の終章で「鳴き真似の世界:鳥類の音響擬態」と題した渾身の総説が読んでみてとても勉強になりました。
・漢字では「百舌」とも書かれるこの鳥は、100種にはいかないが、本州では10〜20種前後の鳥の鳴き真似をする。鳴き真似はたいしたものであるが、聞こえてくる先が、ウグイスが鳴くにはちょっと開けすぎた草原の中の低木だったり、ヒバリの好みそうもない狭い(谷津)谷戸だったり、また時期がオオヨシキリが渡ってくる前だったりする。また、メロディの途中でつい「ギチッ」などと訛ってしまうのである。(p96より)
・日本ではモデルの鳥がモズの鳴き真似に誘い出される様子は観察されていない。(中略)モズの鳴き真似は、モチーフ資源型に属するものではないかと疑われる。(p109より)

・モズの鳴き真似の中に、モズの繁殖地には通常生息していない種類の音声がまじっていることがある。(p110より) 


【追記3】
『モズの話:よみもの動物記』p126によると、
・樹上で鳴くモズの声に反応して水中にもぐるアカガエルを観察している。・飼っていたカヤネズミの近くでモズが鳴くと、ネズミは右往左往して狂躁状態を呈した。

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