2018/02/17

ツクネグモ(蜘蛛)の卵嚢



2016年6月上旬

峠道の道端に繁茂する雑草の葉先に奇妙な物体を見つけました。
虫の卵や繭だと思うのですが、今まで見たことがありません。
褐色で球に近い紡錘形の構造体が一つ、葉先から長い糸のような柄で吊るされています。

この細くて長い柄は、アリなどに捕食されないようにするための工夫なのでしょう。

(1)ウドンゲの花?
私がまず思いついたのは、「優曇華の花」と呼ばれるクサカゲロウの仲間の卵です。
孵化した幼虫が捕食するアブラムシの近くに卵を生むはずです。
確かにこの植物の茎には、黒いアブラムシ(種名不詳)のコロニーが形成されていました。
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀が随伴しています。
しかし、もしウドンゲの花ならば、もっと白っぽくて複数の卵が産み付けられるのでは?
クサカゲロウの仲間は幼虫からしか飼育したことがなくて、卵の実物は未見です。



(2)昆虫の繭?
『繭ハンドブック』を一通り眺めても、これと似た繭は載っていませんでした。



 (3)ヤマトカナエグモChorizopes nipponicus)の卵嚢
後日、新海栄一、緒方 清人『クモ (田んぼの生きものたち)』という本をたまたま読んでいたら、「メスグモが守らないクモの卵のう」の一例としてp39に掲載された写真がこれと似ているような気がしました。

針葉樹の葉の先に吊られたヤマトカナエグモの卵のう


私の知らないクモなので、いつもお世話になっている『クモ生理生態事典 2016』を参照すると、卵嚢に関して次のように記されていました。

・10cmほどの糸でスギの枝からつりさげられた茶褐色の卵のうがよく目につく
・ 7月に卵のうを作る〔山川・熊田73〕. 8月頃,山地の樹枝に10cm位の糸で吊り下げられた褐色の卵のう(長径5mm,短径3mm)を見掛ける〔中平AT23/24〕.
・ 三重県上野市にて1962年9月16日に採取した卵のうからヒメバチ科の一種 Phobetes sp. が2個体羽化, 他にタマゴバチの一種20個体羽化




YouTubeでは、nekonomesouさんが「ヤマトカナエグモの卵のう」と題した動画を公開なさっていました。
常緑広葉樹の葉先から2個の卵嚢が揺れていました。

インターネット検索すると、かぜくささんのホームページ「私の回り道」内で「ヤマトカナエグモの卵嚢」の生態写真が多数掲載されていました。
クモの卵嚢写真の見事なコレクションですね。

ここまで予習した上で、私のケースを検討してみましょう。

問題となるのは、6月上旬の北国(東北地方)でクモの新しい卵嚢が見られるはずがないのでは?という疑問です。
常緑樹の葉先なら前年の古い卵嚢が残っている可能性もありますが、この道端の雑草は雪が溶け春になってから生えてきたものです。
現場は山地の林縁です。
ヤマトカナエグモ♀が樹木ではなく下草の葉先に卵嚢を作ることもあるのかな?


この謎の物体を採集・飼育して正体を明らかにするべきだったと強く後悔しています。
少なくとも、しっかり採寸すべきでしたね。
定点観察するつもりで後日に現場を再訪すると、道端の雑草が根元からきれいさっぱり草刈りされていて大ショック!(唖然、無念)
謎の卵?も一緒に失われてしまいました。
気になる雑草の名前も、花が咲く前だったので、分からずじまいでした。(イネ科ではない)

何かご存知の方はぜひ教えてください。



【追記】
YouTubeのコメント欄にて、海外の方より「Theridiosoma sp.の卵嚢である可能性は?」との示唆を頂きました。
カラカラグモ類を今まで見たことがなく知識もない私は、何と返答したら良いものやら困ってしまいました。
そこで、いつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」にて問い合わせたところ、きどばんさんより以下の回答を頂きました。
> ヤマトカナエグモの卵嚢?> 6月上旬の北国(東北地方)でクモの新しい卵嚢が見られるはずがないのでは?
「柄」が長いのでそのように思われている方もおられるかもしれませんが形状が異なります。私の添付画像とサイズ的に相違がなければツクネグモPhoroncidia pilula)の卵のうでしょう。東京で5~6月に普通に見られるので山形県6月上旬というのは何の問題もないと思います。昨年クモ屋の集まりで何気なく紹介したところ、何十年もクモの研究をしている先生方に「知らなかった」と言われびっくりしました。調べてみると確かにツクネグモの卵のうについて書かれた文献は見当たらず、ネット上に画像も見つかりませんでした。知っているのはごく一部のクモ屋さんだけかもしれません。
> 海外の方より「Theridiosoma sp.の卵嚢ではないか?」との示唆を頂いた
海外ではどうなのか知りませんが、日本で見られるTheridiosoma sp.の卵嚢はすべて特徴的な形状で、その「柄」は投稿画像のように長くはありません。
「ヤマトカナエグモ 卵のう」で検索したら画像がありました(笑)
ここの ↓ 下から2番目とか、vittataさんのブログにも・・・

鳴き止んだ♪アブラゼミ♂が電柱から飛び立つ【HD動画&ハイスピード動画】



2017年8月下旬

市街地の歩道を歩いていたら近くの電柱からアブラゼミ♂(Graptopsaltria nigrofuscata)が飛んで逃げ、交差点を渡って反対側の電柱に止まり直しました。
(映像はここから)

その場でジー♪と鳴き始めたので、♂と判明。
ところがジリジリジリ…♪と尻すぼみに鳴き止んでしまいました。

今にも飛び立ちそうだと思ったので、240-fpsのハイスピード動画に切り替えてみました。(@0:30〜)
最後は更に1/4倍速のスローモーションでリプレイ。
案の定、しばらくすると斜め上方に飛び立ちました。
前後の羽根(前翅と後翅)をフックで一体化させて羽ばたいていることが分かります。
ハイスピード動画の仕様により音声は録音されていませんが、鳴き止んでいたアブラゼミ♂は最後に一声ジッ♪と発して飛び去りました。
セミのおしっこをハイスピード動画で撮るのが長年の課題なのですけど、今回も飛び立つ瞬間に排尿していませんでした。
電柱からは樹液を吸汁できませんから当然ですね。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2018/02/16

飛べ!ブチヒゲカメムシ【HD動画&ハイスピード動画】



2017年8月下旬

用水路沿いに咲いたナガボノシロワレモコウの群落でブチヒゲカメムシDolycoris baccarum)が訪花していました
風で揺れる花穂の天辺で、吸汁するでもなくモジモジしている個体が気になりました。
今にも飛び立ちそうなので私も粘り、後半は240-fpsのハイスピード動画に切り替えてみました。(@3:30〜)
半翅目の羽ばたきも格好いいですね。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



ランダムに記事を読む