2017/11/04

ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂にブドウの果実を与えてみた



2016年10月上旬

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ネジレバネに寄生され飛べないキイロスズメバチ♂

スズメバチネジレバネXenos moutoni)に寄生されたキイロスズメバチ♂(Vespa simillima xanthoptera)♂を山中で採集してきて、しばらく飼ってみることにしました。

苺パックを被せた中で、まずは蜂蜜を一滴与えてみたのですが、雄蜂は逃げ出そうとするのに必死で蜂蜜に気づきません。
蜂を採集した翌日、次は甘いブドウを与えてみました。(映像はここから)
食用シャインマスカットの実の皮を剥いてやり、ペットボトルの蓋を皿代わりに給餌してやりました。
すると今度は、喜んで甘い汁を舐め始めました。
果汁で汚れた体をときどき身繕いしています。



小野正人『スズメバチの科学』によると、
(スズメバチネジレバネの)最大の特徴として、成虫において雄と雌の形態がまったく異なる点があげられる。(中略)♀の体の大部分はスズメバチの膨腹部内に隠れ、体節の間より生殖器が顔をのぞかせている姿は不気味である。♀は♂を誘引する性フェロモンを分泌しているとされ、羽化後わずかしか生きられない♂が効率よく配偶者にたどり着けるシステムが進化している。ネジレバネの寄生を受けた個体は、働き蜂であれば労働をまったくしなくなってしまい、新女王蜂と雄蜂では生殖能力が失われるとされている。ただし、寄生を受けた新女王蜂に対して未寄生の雄蜂が交尾行動を起こすので、性フェロモンの生成はなされているとみなされる。(p136-137より引用)




※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


つづく→ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂は飛べなくなる?



ハスに訪花して採餌するクロマルハナバチ♀



2017年7月下旬・午前5:59〜6:57

蓮池で早朝に咲いたばかりのハス(蓮)の花にクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が何匹も来ていました。
セイヨウミツバチ♀に混じって花から花へ忙しなく飛び回っています。

胸背が花粉で真っ黄色に汚れている個体がいます。
後脚の花粉籠が初めは空荷でも、やがて橙色の花粉団子をつけて運ぶようになります。
吸蜜の合間に花弁にしがみついて身繕いし、体毛に付着した花粉を落として花粉籠にまとめています。



2017/11/03

ネジレバネに寄生され飛べないキイロスズメバチ♂



2016年9月下旬

里山の中腹の草むらでキイロスズメバチ♂(Vespa simillima xanthoptera)を見つけました。
触角が長いので雄蜂です。
野菊の花に登ったものの吸蜜せずに、隣接するチカラシバ?の葉を登り始めました。
そのままチカラシバの葉にしがみついて静止。
腹部をヒクヒク動かして呼吸しています。
なぜか飛べないようで、長靴の先で茂みを蹴っても飛び立ちません。
ここで腹部の異常に気づきました。
隣り合う腹節の間に不自然な隙間があり、そこからスズメバチネジレバネXenos moutoni)の頭が覗いています。

寄生されたキイロスズメバチの雄蜂はこのまま弱って息絶えるのでしょうか?
飛べなくなったのは、ひょっとしてネジレバネが寄主を行動操作しているのかな?


小松貴『虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)』によると、

♂はともかく、♀のネジレバネは寄主体内で死ぬまで過ごすため、途中で寄主を殺してしまうようなことはありません。それどころか、♀のネジレバネに寄生された昆虫は、しばしば通常よりも著しく長生きすることが知られています。ネジレバネにとって寄主の死は自身の死と同義であるため、何らかの方法で寄主の寿命を操作していると考えられています。 (p290-291より引用)


撮影後に生け捕りにして持ち帰りました。
雄蜂は毒針を持たないので、刺される心配はまったくありません。

つづく→ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂にブドウの果実を与えてみた





【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』によると、
2013年にスズメバチネジレバネは2種に分けられました。新種のXenos oxyodontesは主にコガタスズメバチだけに、従来のX. moutoniはそれ以外のスズメバチ属に広く寄生します。
だからと言って、今回のスズメバチネジレバネがX. moutoniとは決めつけられないようです。
X.moutoniがオオスズメバチを中心にVespa属の複数種のスズメバチを宿主として利用していたのに対し、X.oxyodontesはコガタスズメバチとキイロスズメバチへの特殊化が見られた。コガタスズメバチからはX.oxyodontesの寄生しか確認されなかった。(中瀬悠太2012年研究実績報告書より引用)


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