2017/01/09

脚が退化したウスムラサキイラガ(蛾)幼虫の歩行の秘密




▼前回の記事
ウスムラサキイラガ(蛾)終齢幼虫が営繭前に下痢便を排泄


ウスムラサキイラガ(蛾)の飼育記録#11


2016年9月中旬

いよいよウスムラサキイラガAustrapoda hepatica)の終齢幼虫が営繭場所を探索するワンダリング(徘徊)を始めました。
一緒に飼っているイラガ幼虫のワンダリングに比べると移動速度が遅い印象です。
ミズナラ(食樹植物)の枝を差していたペットボトルの口まで降りて来てウロウロした挙句、自発的に落ちました。

繭作りを観察しやすいように、蚕の繭棚を模したミニシャーレに幼虫を閉じ込めてみました。
糸を紡ぐ足場として細長い紙を丸めて中に終齢幼虫を入れます。
これはヒメクモバチの飼育で上手くいった方法です。

透明なプラスチック容器の蓋越しに、徘徊中の幼虫の腹面の蠕動運動を接写することができました。
本で読んだ通り、確かに腹脚は完全に退化しています。
腹面全体を波打たせるように蠕動して、ナメクジのように前進します。
名著『わたしの研究:イラガのマユのなぞ』p57によると、

イラガの幼虫には、あるくための足がありません(とくに、腹の足は、ほとんどみえません。胸の足は、すこしあとがのこっています)。どうしてあるくかというと、ちょうどナメクジがはうように、からだをうしろからまえへ、波のようにうごかしてすすみます。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

どうやらウスムラサキイラガ終齢幼虫はこの場所が気に入らなかったようです。
繭を作り始めるどころか、紙を丸めた足場用の小部屋を引きずって歩き回り、隙間からの脱出を試みています。
営繭前に消耗しそうで心配になり、この方法は中止しました。


つづく→#12:繭作りのため地中に潜るウスムラサキイラガ(蛾)終齢幼虫【60倍速映像】



2017/01/08

ナガボノシロワレモコウの花蜜を吸うキイロスズメバチ♀



2016年9月下旬

用水路沿いに咲いたナガボノシロワレモコウの群落でキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀が訪花していました。
花穂をぐるぐる回りながら吸蜜しています。

先客のハナグモ♂Ebrechtella tricuspidata)?とニアミスしても、体格差があり過ぎて(蜂>蜘蛛)勝負になりません。
2匹居たクモのうち1匹が花から慌てて落ちて逃げました。
もしかするとハナグモは縄張り争い中または求愛行動中だったのかも?と思ったものの、スズメバチが邪魔したせいで分からず仕舞いです。



風媒花とされているヘラオオバコも実は蜜腺をもつ虫媒花ではないか?という疑惑がこれでますます強まりました。
詳しくはこちらのまとめ記事(リンク集)をご覧下さい。
今季だけでもスズメバチ科のPolistesおよびVespaの各種が訪花していました。
カリバチは花粉目当てに訪花することはありません。


徘徊性クモが待ち伏せしている時点で、ナガボノシロワレモコウに訪花する昆虫が多いことを示唆しています。



【追記】

私は初めこの花をヘラオオバコかと思い込んでいたのですが、訂正しておきます。


ウスムラサキイラガ(蛾)終齢幼虫が営繭前に下痢便を排泄



▼前回の記事
ウスムラサキイラガ(蛾)終齢幼虫とイラガ幼虫の小競り合い・威嚇


ウスムラサキイラガ(蛾)の飼育記録#10


2016年9月中旬

最後の脱皮から6日後、食べて育ったウスムラサキイラガAustrapoda hepatica)の終齢幼虫ミズナラの葉裏で主脈に沿って乗り、静止しています。
従来のような黒い固形の糞ではなく白っぽい液状の下痢便を排泄していました。
いよいよ繭を作り始める準備(前兆)でしょう。
泥水のような糞の雫にズームインしてみます。
ついでに、体表の黒い体毛が根元だけ太いことが分かります。
これはウスムラサキイラガ幼虫の特徴で、同属近縁種ムラサキイラガ(Austrapoda dentata)との識別点らしい。

そのまま動かない幼虫(営繭前の眠)を微速度撮影してみました。(@0:37〜)
10倍速の早回し映像で見ると、蠕動していることがよく分かります。
腹端の肛門がヒクヒクしています。
昆虫の心臓である背脈管が背中の中央に沿った表皮の下で激しく拍動しています。

透明な液体を大量に繰り返し排泄しました。
飼育中に私は食樹の葉に霧吹きしていなかったのに、幼虫がこれほど多量の水分を摂取していたことに驚かされます。
初めに見た泥状の糞(軟便)は、もしかするといつもの固形の糞を排便した後に透明の液体で濡れて溶けたのかもしれません。
幼虫が乗っている葉が斜めになっている(水平ではない)ために、下痢便が流れ落ちました。

最後に幼虫は徘徊を始め、隣の葉に移ると営繭場所を探索する長い旅に出かけました。
もう食欲はありません。

つづく→#11


この写真は自動色調補正済み。体表の剛毛は根元だけ太い。



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