2016/01/09

垂直円網の甑から隠れ家へ逃げるアカオニグモ♀b(蜘蛛)



2015年9月下旬・午前10:08

アカオニグモ♀の定点観察#18


これまで定点観察してきたアカオニグモ♀a(Araneus pinguis)の営巣地から約20m離れた位置に、別個体の♀bが店開きしているのを見つけました。
同じく用水路沿いの草むらに垂直円網を張っています。
枠糸の左端はクルミ幼木の葉先に固定し、逆の右端はアメリカセンダングサの葉先(花や茎かも?)に固定しています。
クルミの葉裏は隠れ家になっています。

この朝は円網の甑で下向きに占座していました。
これまで見てきたアカオニグモ♀aは常に隠れ家に潜んでいたので、甑に居るのは珍しい!と思いました。
ところが動画に撮り始めたらなぜか隠れ家へ逃げこんでしまいました。
見られている気配を感じて警戒したのかな?
写真を撮っていると、飛来したトンボが網にかかりそうになったものの暴れて脱出しました。(動画に撮れず残念無念…。)


このアカオニグモ♀2匹を一緒に定点観察することにしました。
色々な行動の個体差が調べられそうです。
目視で体長を比べると♀a>♀b。
栄養状態を反映しているのでしょうけど、これは成体と亜成体の違いなのかな?
外雌器の状態を接写したり体長を採寸したいのはやまやまですが、腹面を向けてくれません。
ならば一時捕獲すれば良いのですけど、私の目的は野外でクモの自然な行動を動画に記録することが最優先なので、網に戻してもストレスで逃去したりすることが怖くて踏み切れません。
動画撮影と自由研究の両立は難しく、いつも葛藤があります。(どちらも中途半端になりがち…。)

同じ日の夜に再訪すると…


つづく→#19:夜に垂直円網の下部を取り壊すアカオニグモ♀b【蜘蛛:暗視映像】


隠れ家@クルミ葉裏
全景
垂直円網(ピンぼけ失敗)

ミズキに付くアブラムシに随伴するクロクサアリ



2015年9月下旬

用水路沿いに生えたミズキの木の葉裏や葉柄、実などに黒いアリが集結していました。
おそらくクロクサアリLasius fuji)だと思います。
個々のアリをよく見ると満腹らしく腹部の節間膜が広がっています。

ミズキに花外蜜腺があるのか?と不思議に思ってネット検索しても情報が出てこないので無さそうです。
黒っぽく熟したミズキの実は甘いのか(糖分を含んでいるのか?)味見してみればよかったですね。
『野鳥と木の実ハンドブック』p50で調べてみると、「口に入れてみてもこれといった味はしない」そうです。


ミズキの葉裏の特に葉柄に蟻が群がっています。
点在するアブラムシのコロニーが排泄した甘露を舐めているようです。
共生関係(蜜月関係)にありそうですけど、アブラムシの数が少ないのでこれだけ多数のアリを養えるとはちょっと驚きです。
今回風が吹いていたのでマクロレンズで接写していません。
アブラムシの種類を真面目に検討した訳ではありませんが、ミズキをホストとするアブラムシを検索すると例えばオカボキバラアブラムシ(別名オカボノキイロアブラムシ;Anoecia fulviabdominalis)がヒットしました。



2016/01/08

巣材集めの合間に吸水するヒメクモバチ♀



2015年9月下旬・午後13:56〜14:11

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#4


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の採土場が分かったところで、次は水飲み場を突き止めようと思いました。

母蜂は2〜3回連続して境界標の根本から採土すると、必ずどこかに水を飲みに遠出することが分かりました。
泥巣から飛んで行く蜂を追いかけると、参道を約10m下った地点の草むらに着陸しました。
ここは里山から沢の水を排水する暗渠が参道を横切って埋設されています。
排水溝は枯れていて水は流れていないものの、苔などが生えていて湿っています。
蜂はドクダミの葉に付いた朝露を舐めていました。

飲水後に帰巣する蜂を追いかけても、いつも見失ってしまいます。
蜂よりも私の方が先に営巣地に着いてしまうのです。
水場から帰巣した蜂は必ず泥玉を咥えていることから、別の採土場に寄り道してきているに違いありません。
2回続けてほぼ同じ場所から吸水するシーンを観察できました。
水場の近くの参道沿いに境界標が2本並んでいて、それぞれに別のヒメクモバチ♀a,bが営巣しています。

ほぼ休みなく泥巣の閉鎖を続けてきた♀bが、やがて作業を止めてしまいました。
外出しても空荷で帰巣し、泥巣上で点検や身繕いを繰り返すだけになりました。
疲れて休んでいるのでしょうか?
働く時間帯が決まっているのかもしれません。
巣材の土は無尽蔵にありますけど、晴れて気温が上がると水場の朝露が蒸発してしまい、巣作りが出来無くなるのかもしれません。
(少し飛んでいけば川も流れていますし、水なら他の場所へ探しに行けば良さそうなものですが…。)
もし私が営巣地の近くに水場を作ってやったら蜂は利用してくれるでしょうか?
水を入れた皿を置いたり、近くの木の葉に霧吹きしたりしても、一度身についたルーチンワークの行動パターンは変わりそうもない気がします。
それでも、ヒメクモバチ♀の行動にどれぐらい融通性があるのか実験してみなければ分かりません。

育房の閉鎖が完了したのであれば、続けて隣に新しい育房を増設するはずです。
しかし蜂に動きが無いため、諦めてこの日の観察を打ち切りました。

つづく→#5:境界標の泥巣上で身繕いするヒメクモバチ♀a




【追記】
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』第13章 清水晃「クモを狩るハチたち」を読んで驚いたのですが、中米コスタリカ産のヒメクモバチ属の一種Auplopus semialatusは原始的社会性の暮らしを送っているそうです。
そのような社会性の進化を考える上で、
巣づくりに先立って水を吸い、それを素のうに入れて巣場所まで運ぶ行動がきわめて重要になる。この行動こそが、自分が羽化した泥壺状の巣(母巣)の再利用を可能にすることは疑いの余地がない。つまり、母巣は水を用いてリフォームすることのできる親世代の貴重な遺産となるのである。羽化した♀たちは、この遺産を引き継ごうとして、羽化後も母巣にとどまろうとするだろう。〈散らばらなかった社会〉の出現である。クモバチ科では、水を利用した泥球づくりはヒメクモバチ属およびその近縁の属(ヒメクモバチ亜族)にのみ見られる。 (p286〜287より引用)

私も日本産のヒメクモバチで巣材の再利用を観察したことがあります。
当時は巣材を盗む労働寄生なのかと思っていました。

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