2015/12/12

垂直円網に縦糸を張るアカオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



2015年9月下旬

アカオニグモ♀の定点観察#3


深夜3:00に現場に着くと、晴れた星空が広がり月は沈んだ後でした(月齢8.8)。
午前3:03に赤外線の暗視カメラで撮影を始めたときには、タニウツギの葉裏に作られた巣(隠れ家)にアカオニグモ亜成体♀(Araneus pinguis)は潜んでいました。
日中に獲物を捕らえた円網は既に取り壊されていて、枠糸と最小限の縦糸のみが残されていました。
殆ど何もないスカスカの網にピントを合わせて撮るのはとても難しい…。

午前3:26、遂にクモが隠れ家を出て造網を始めました。
今か今かと待ち構えた私が隠れ家のクモに白色LEDライトを何度も照射したので、夜明けが近いとクモが勘違いした可能性があるかもしれません。
(虫の目に見えにくい赤色ライトを使うべきなのですが、最近フィールドで紛失してしまいました。)
非粘着性の縦糸を一本張り終える度にクモは必ずこしきで網の縦糸を歩脚で引き締め、全体の張力のバランスを測ってから次にどの方向に縦糸を張るか決めているように見えます。

縦糸を360°全方向に張るわけだが、順番に張っていってはこしきにかかる負荷が偏ってしまうので、こしき上で回転しながらすでに張られた様々な方向の縦糸を前脚で引っ張って、最も張力の低い方向に向かって縦糸を張る。(『クモを利用する策士、クモヒメバチ: 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い 』p80より)



このまま一気呵成に造網するのかと思いきや、縦糸を張り終えたクモは隠れ家に戻ってしまいました。
(クモを驚かすようなことは何もしていません。)
このときクモは、甑から隠れ家まで信号糸を張っています。
天敵が少ないはずの夜間も一休みする際には甑に占座するのではなく隠れ家に戻るとは用心深いですね。
夜はコウモリの捕食圧があるのでしょうか?(※追記参照)

気象条件:
横の地面で測った気温は午前3:15で14.1℃、湿度68%。
午前3:37には11.2℃、83%でした。

つづく→#4:夜中に垂直円網の足場糸と横糸を張るアカオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



【追記】
『クモの科学最前線』p64-65によると、
・コウモリ類がクモの天敵としてトップダウン効果を与えていることが示唆されている。 
・クモを専門に食べるコウモリもわずかに報告されている。(しぐま註:海外の研究) 
・クモ類に特殊化したコウモリはいるものの、コウモリ類にとっってクモ類が普遍的な餌資源とまではいえない。 
・コウモリの飛翔する昆虫を捕食する習性は、同じく飛翔昆虫を専食する円網性クモ類にとって強力な資源競争相手になっている可能性は高い。



ブルーサルビア?の花で盗蜜するクマバチ♀



2015年9月下旬

青いサルビアの花が咲き乱れた秋の花壇でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。
少なくとも2匹が採餌に来ています。
花の手前で見事なホバリング(低空飛翔)を披露してくれました。
採餌シーンをよく見ると正当訪花ではなく、毎回常に花筒の外側から根本を噛んで穿孔盗蜜していました。
当然、後脚の花粉籠は空荷です。
一般的な(昔ながらの)赤いサルビア・スプレンデンスなら私も幼少時に花筒を引っこ抜いて根本の蜜腺から盗蜜していたことを懐かしく思い出します。




さて、この花はサルビアの一種だと思うのですが、園芸種にまるで疎い私は名前を知りませんでした。
調べてみると、濃い青色の花はサルビア・ガラニチカでしょうか?
映像でクマバチが来ていた水色の花はブルーサルビアかな?(=サルビア・ファリナセア=ラベンダーセージ;Salvia indigo spires)
自信がないので、もし間違えていたらご指摘願います。


サルビア・ガラニチカ?
サルビア・ガラニチカ?
ブルーサルビア?
ブルーサルビア?



2015/12/11

明け方に垂直円網を張るアカオニグモ♀(蜘蛛)【15倍速・暗視映像】



2015年9月下旬

アカオニグモ♀の定点観察#2


農道と用水路の間に挟まれた草むらでアカオニグモ亜成体♀(Araneus pinguis)の垂直円網を見つけました。
アカオニグモは網を毎日張り替えるようですが、造網は夜明け前に行われるそうです。
4年前の早朝にアカオニグモの造網を後半だけ撮影しています。

▼関連記事
垂直円網に横糸を張るアカオニグモ♀(蜘蛛)
なんとか造網の一部始終を動画に記録したくて、徹夜の撮影準備や防寒具を整えてから、草木も眠る丑三つ時に出撃しました。
前回と同じ隠れ家(タニウツギの葉裏)にクモを発見して一安心。
円網は既に取り壊されています。
写真は失敗しましたが、枠糸と最小限の縦糸のみが残されていました。

赤外線の暗視カメラで撮った素材を15倍速に加工した早回し映像をご覧ください。
撮影時刻は午前3:04〜6:08。
ちなみにこの日の日の出時刻は5:25、月齢8.8。

本格的に微速度撮影するにはビデオカメラを三脚に固定しなければなりません。
また、AF頼みのカメラでは背景の茂みのせいで肝心の網にピントが合わず奥ピンになってしまうため、仰角で暗い空を背景にする必要があります。
ところが手持ちの三脚は高さが大き過ぎて使えないことが現場で判明。
地面すれすれにカメラを固定できる自由雲台付きのコンパクトなローアングル三脚が欲しいところです。


仕方がないので、網の前で座ったままビデオカメラを手で持って動画撮影することにしました。
通常のカメラで撮れる明るさになってからは三脚を使いました。

夜が明けて早朝に完成した垂直円網の大きさを測ると、直径約30cm。
網上端の水平(よりやや斜め)に張られた枠糸の長さは83cm。
その枠糸の左端はタニウツギの葉裏(隠れ家)に固定されており、その高さは地上85cm。
逆に右端はヨモギの花穂に固定されており、その高さは地上60cm。

ところで、本種はなぜ夜明け前に徹夜で造網するのでしょうか?
野鳥やクモバチなどの天敵が寝ている時間帯を狙って作業をすると言われています。
しかしせっかく網に張った横糸に夜露が付いて粘着力が落ちてしまう心配はないのかな?

今回はまず造網作業の全貌をざっとご覧頂きました。
次回からは各過程を詳しく振り返ります。

つづく→#3:垂直円網に縦糸を張るアカオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】


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