2015/11/14

ノコギリクワガタ♀のおしっこ噴射【ハイスピード動画】



2015年9月上旬・室温28.4℃→25.8℃

10日前に灯火下で採集したノコギリクワガタ♀(Prosopocoilus inclinatus)を飼育しています。
市販の昆虫ゼリーを与えると、夢中で舐めながらときどき液状の糞(おしっこ)を勢い良く排泄(噴射)しています。
初めは通常のHD動画に撮ってから、次は240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。(@0:17〜)
カップを固定する専用ホルダーを紛失したので、台に寝かせた昆虫ゼリーのカップが転がらないように、ビニールテープで固定しました。(見た目が悪いですね…。)
透明なおしっこが見易いように、背景に黒い下敷きを置きました。
プラスチック製なので濡れても平気です。
途中から採寸代わりに一円玉を並べて置きました。

排泄の前兆が分からないので、愚直に長撮りを繰り返すしかありません。
腹端を少し持ち上げてピューッと排泄します。
カブトムシとは異なり、排便の瞬間に片足を上げないのが興味深く思いました。
(足場が平らだから? ♀だから?)
関連記事(6年後の撮影)▶ 柳の樹液を吸いながら片足を上げて排尿するカブトムシ♀【HD動画&ハイスピード動画】


背後にトイレットペーパーを垂らしておき、おしっこが飛んだら分かるようにしておきました。
斜め上に向かってかなり遠くまで勢い良く飛ぶことが分かりました。
近くの床は意外に汚れません。

排泄時間を記録していると間隔が規則的になってきたおかげで少し予測可能になりました。
しかし夜になると室温がやや下がったせいか、やがて排泄しなくなりました。

確か夜行性のはずなのに、昼間よりも活動性が下がるのは解せません。
満腹になったのかな?

照明の角度によっては小便が見えにくいこともあるのですが、空打ちなのに排泄口を伸縮させることが何度もありました。
ハイスピード動画撮影の際はもっと強力な照明が欲しいところです。



恥ずかしながらクワガタムシを見分けるのが苦手な私は、今回もノコギリクワガタ♀(Prosopocoilus inclinatus)とコクワガタ♀(Dorcus rectus)とで迷っています。


『検索入門クワガタムシ』という図鑑で検索表を真面目に辿ってみました。
前胸腹板突起が竜骨状に高まる点が決め手となり、ノコギリクワガタ♀と同定できるようです。
ノコギリクワガタ♀は背面が強く盛り上がるのが特徴らしい。




左触角
複眼の縁取り
複眼の縁取り
小楯板
前胸腹板突起が竜骨状に高まる
前胸腹板突起が竜骨状に高まる
左前脚脛節
左中脚脛節棘
右後脚脛節棘
頭部
頭楯
前胸背板側縁
背面
鞘翅(上翅)
腹面
体長の採寸を後回しにしていたら、飼育容器からいつの間にか脱走してしまいました。

キアシナガバチの引っ越し巣



2015年7月中旬

キアシナガバチ巣の定点観察@トウカエデ枝#1


キアシナガバチPolistes rothneyi)のワーカー♀が庭に立てかけたベニア板から巣材集めをしていました。(映像なし)
飛んだ先を追うと、すぐ近くのトウカエデの枝の下に営巣していました。
営巣地は横枝の幹に近い部分で、地上からの高さは約200cmでした。
全体的に育房が浅く繭キャップも無いこじんまりした巣なので、最近どこかで初期巣を駆除された後に再建した引っ越し巣(移動巣、第二次巣)と思われます。
白い卵が産み付けられていますが、おそらく未だ幼虫は孵化していません。

撮り始めは3匹の蜂が在巣でした。
1匹が育房を点検しています。

次は撮影アングルを変えて、二股になった幹の隙間から狙います。
新たに帰巣した個体を加え、計5匹の蜂が巣に居ました。
巣盤中央上部の育房に巣材を付け足して壁を伸ばしています。

これは先ほど巣材集めを目撃した個体ですね。
トウカエデの樹皮は裂けて剥がれ落ちていく性質があるのですが、キアシナガバチは身近な巣材を使わずにベニア板を選択したのは興味深く思いました。
その一方で右下では成虫♀同士がかなり長時間の口づけを交わして栄養交換しています。

この巣も定点観察に通うことにしました。

つづく→#2:キアシナガバチ巣:夜の蜂球と寝起きドッキリ【暗視映像】



2015/11/13

夜明け前に網を取り壊し不要な獲物を捨てるトリノフンダマシ♀【蜘蛛:暗視映像】



2015年8月下旬・深夜4:21〜4:28・気温17.5℃(@4:33)

トリノフンダマシ♀の定点観察#10


夜明けが近づき、ようやくトリノフンダマシ♀(Cyrtarachne bufo)が網の取り壊し作業を始めました。
隠れ家には食べ残しの蛾eを残したままです。
水平の枠糸(放射糸?)を引き込みつつ糸や付着物(小さな昆虫?)を食べています。
(もしかすると弛んだ枠糸を修復してピンと張り直したのかもしれません。)

次に、クモは水平円網にかかり切れた粘着糸にぶら下がっていた一頭の蛾f(ユウマダラエダシャク?Abraxas sp.)を吊り上げました。(@2:33)
暴れていた蛾は噛まれるとおとなしくなりました。
驚いたことに、獲物を梱包ラッピングせずに網から惜しげもなく捨てました。
もう満腹らしい。
大事なシーンなのにカメラのバッテリーが消耗していて赤外線が弱く、ピンぼけになりがちでもどかしい…。

クモは放射糸を伝って土手の下の方の茂みに移動し、見えなくなりました。
風で網は激しく揺れています。
戻って来たクモは、網にかかっていたもう一頭の蛾g(ユウマダラエダシャク?Abraxas sp.)を引き上げました。(@5:25)
擬死していた蛾は身の危険を感じたようで、激しく暴れ出しました。
胸部の辺りを噛み付かれると、クモの毒液で蛾はグッタリおとなしくなりました。
軽く梱包ラッピングした獲物(蛾g)をその場(放射糸)に残して網を右に進みます。(@6:45)
網にかかっていたもう一頭の蛾h(ユウマダラエダシャク?Abraxas sp.)を釣り上げました。(@7:15)
この蛾は既に死んでいるのか、それとも完璧な擬死状態で観念しているのか、全く暴れません。
クモは周囲の糸を切って不要な獲物を捨てました。
何度か失敗するも根気強くやり直し、ようやく投棄に成功しました!(@8:40)
クモは更に右に進み、網にかかっていたもう一頭の蛾i(ユウマダラエダシャク?Abraxas sp.)を引き上げました。
残念ながら、ここでビデオカメラのバッテリーが完全に尽きてしまいました。

この後も観察を続けると、トリノフンダマシ♀は蛾iも投棄しました。
先程ラッピングした獲物(蛾g)だけをお土産に隠れ家へテイクアウトしました。
持ち帰る獲物はどのような基準で取捨選択したのでしょう?(鮮度? 大きさ?)
食べ残しの蛾eと合わせて計2頭の蛾を昼間に隠れ家でゆっくり捕食するようです。
狩蜂は獲物を麻酔することで植物状態で活かしたまま常温で大量に貯食することができます。
それに対してクモは暑い夏に余剰な獲物を腐らせずに貯食する術を知らないのです。
したがって、食べ切れない量の獲物が網にかかっても、糸を噛み切って捨ててしまいます。

隠れ家の高さは地上130cmでした。
(用水路に向かって急斜面になっている土手は雑草が生い茂りどこが地面か測りにくく、大雑把な計測です。)

予習した通り、トリノフンダマシは日の出前に水平円網を跡形なくすっかり取り壊しました。
桑の幼木の間に水平に張り渡した細い枠糸のみ残されているものの、肉眼では非常に見えにくいです。
ちなみに、この日の日の出時刻は5:04でした。
暗視映像では未だ暗い印象ですけど、肉眼では日の出30分前はもう充分明るいです。
4:36には近くを飛んで塒に帰るコウモリを1頭目撃しています。
デジタル照度計で取り壊し時刻の照度を測ればよかったですね。
クモが周囲の明るさを目で見て破網時刻を決めているとしたら、照明の影響で取り壊し時刻が早まった可能性もあり得ます。
監視中はいつ網の取り壊しを始めるかとやきもきしつつマグライト(懐中電灯)で隠れ家のクモを頻繁に照らしたからです。
それとも周囲の明るさは関係なくて、体内時計で決まっているのでしょうか?

徹夜の観察は疲労困憊しましたけど、充実した撮影ができて満足です。
暗視映像に拘ってかなり根を詰めて撮ったので思い入れのある動画シリーズですけど、冷静になって見直すといまいち説得力のある生態動画が撮れたとは言い難く(ラッピングのシーンなど)、奥が深いですね。
夜行性クモの生態は図鑑や本に短くまとめられていますけど、それを一つ一つ記述するために夜通し観察した先人たちの苦労が忍ばれます。
トリノフンダマシの網にかかった蛾の種類と性別をきっちり同定するのも今後の課題です。(蛾以外の昆虫も捕食しているのか?)

今思うと、クモがラッピングせずに捨てた蛾を採集すればよかったですね。

つづく→#11:トリノフンダマシ(蜘蛛)3個目の卵嚢



【追記】
『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』p93によると、(第12章:トリノフンダマシの夜)
 このクモは網を夜明け前に必ずたたむのですが、このときに横糸にかかったガ以外の小さな昆虫類も居網といっしょに団子状に固め、このクモが昼の間休む葉の裏側の隠れ家付近に持ち帰って食べてしまいます。


観察終了時@4:46

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