2014/06/28

交尾しながら揺籃を作るイタヤハマキチョッキリ



2014年5月下旬

細い山道の脇に生えたカエデ(イロハモミジ?)の灌木でイタヤハマキチョッキリByctiscus (Byctiscus) venustus)の揺籃作りを観察しました。
昨年の経験が活きました。

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モミジの葉で揺籃を作るイタヤハマキチョッキリ♀

初めは木の周囲を飛び回る個体に注目し、カエデの葉に着陸したところで撮り始めました。
前胸下部に鋭い棘状の突起があるので♂と判ります。
交尾相手の♀を探しているのでしょう。
ここで、作りかけの揺籃が近くにあることに私も気づきました。

揺籃の隣にある葉の葉柄が、噛み傷のところで折れました。(@1:13)
その勢いで枝を歩いていた♂が転落。

♀による揺籃作りはもう後半のようで、モミジの青葉を巻きつけています。

♂が辺りを飛び回り、揺籃上で♀を見つけると交尾を始めました。
接写すると体長は♂>♀であることが珍しく思いました。

イタヤハマキチョッキリの♂は前胸下部に鋭い棘状の突起があり、口吻は♀よりも長くて湾曲している。(『オトシブミハンドブック』p50より)
小さな甲虫ですけど、金属光沢の構造色が美しいですね。
昨年は風が吹く日で接写に難儀しましたが、今回はほぼ無風で助かりました。
♂がマウントして交尾器を結合している間も♀は黙々と葉を巻く作業を続けます。
♀が揺籃の上から葉を噛んで糊付けしているようです。(@2:50-3:05)
♀は葉柄に移動すると、噛んで傷を付けています。

手前のタニウツギの枝が撮影の邪魔だったのでナイフで切り落としたら、その衝撃に驚いてペアが擬死状態になりました。(@4:52〜)
♂は♀の背にしがみ付いていた脚が外れかけており、なんとか交尾器だけで連結しています。
やがて目覚めた♂が♀にしがみつくと、♀も活動を再開。
♂を背負ったまま♀は葉柄を登り下りしています。

やがて交尾器の結合が外れました。(@5:50〜)
それでもしばらくは♂はマウントしたままで、ライバル♂に♀を奪われないように配偶者ガードを続けます(交尾後ガード)。

いつの間にか交尾を終えて♀♂ペアが別れていました。(@7:59)
マウント解除した♂は、近くでのんびり身繕い(脚を擦り合わせている)。
♀はひたすらに揺籃にモミジの葉を巻き付ける作業を続けています。
♂がしつこい交尾後ガードを行わず、意外と淡白であっさりと別れたことに少し驚きました。
このとき既に揺籃作りの後半で、♀が産卵を終えているからでしょうか?
素人考えでは、もし産卵前ならもっと激しく(長時間)♀をガードするのではないかと推測しました。

次は引きの絵で全体像を撮りながら微速度撮影で揺籃作りを記録してみます。(つづく



ハグロケバエ?♂の群飛【HD動画&ハイスピード動画】



2014年5月下旬

青々と葉が茂ったカエデの木の周りを多数の黒いケバエが飛び回っていました。
周囲の環境は山に近い水田の農道です。
群飛と言っても、蚊柱に比べるとまとまりのない集団でした。

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蚊柱のハイスピード動画
後半は240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました。
アシナガバチのように長い後脚をだらんと下げて飛んでいます。

樹の下の資材置き場に着陸しても、すぐに飛び立ってしまいます(映像なし)。
交尾しているペアは見当たりませんでした。

この日は他所でもあちこちで同様の光景を見かけています(タニウツギの灌木の周囲など)。
ケバエの群飛日和だったのでしょうか。

オスが群飛する様子も観察されることがあり、土壌中から羽化するメスを待ち受ける行動と考えられている。(wikipediaより)

飛行速度はさほど速くなく、飛んでいる1匹を手掴みで捕獲することが出来ました!
サンプル数が足りないですけど、標本写真を載せてみます。
なんとなく、ハグロケバエ♂Bibio tenebrosus)ですかね?



2014/06/27

ヤマトゴキブリ♂同士で蹴り合う牽制行動



2014年5月下旬

最近捕獲した2匹目の♂も同じ容器で飼い始めました(♂2♀1の計3匹)。
以前、♀♂間の闘争行動(小競り合い)を観察しました。

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足蹴りで喧嘩するヤマトゴキブリ♂♀
ヤマトゴキブリPeriplaneta japonica)長翅の成虫♂同士の喧嘩も脚で蹴り合うことが分かりました。
ゴキブリは集合フェロモンで群れる性質があるのに、「これ以上近づくな!」という牽制行動をするようです。
闘争の際に激しい噛み付き行動などは見ていません。(参考:『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p90)
その間、短翅の♀は枯れ葉の下に隠れています。
引き続き観察しても求愛・交尾行動は見られなかったので、♀を巡って♂同士が争っていたのではないと思います。
個体間で序列を付けている可能性はありますが、その解明には個体識別のマーキングが必要です。

油性ペンで標識すると、インクの匂いがゴキブリの求愛交尾行動に支障を来す恐れがある気がして止めました。

『エソロジカル・エッセイ:無名のものたちの世界III』という古本にヤマトゴキブリの近縁種であるクロゴキブリPeriplaneta fuliginosa)の「間おき集合(spaced-out gregariousness)」について記した章がありました。

p136-137をかいつまんで引用すると、
集合性昆虫といわれながら、行動を一つ一つリストアップしていくと、攻撃行動、防衛行動、牽制行動ばかりが目立ってくる。

・ある場所を占めた個体は、雌雄を問わず、明らかに占有場所の防衛を行う。・順位制があるようでもあり、ないようでもある。

・主な能動的行動は、触角を他個体のいる方向に伸長し、ドラミングに似たような探りを入れる行動(さぐり)と、より積極的に、方向転換し、相手に対面し、後脚を浮かし、前のめりのようなかっこうで探りを入れる行動(のぞき)である。これらに対し、受動側が無反応という場合は少なく、多くの場合、
(1)能動行為者をいなすような感じで、向きをかえる(回転)か、刺激の少ない方向へ少し移動する(よけ)行動、
(2)体を高く持ち上げ、体を左右にゆすったり(ゆすり)、主に後脚を用いて能動行為者をける(けり)という牽制行動
(3)はじかれたようにとびのく(とびのき)、または一目散に逃走する行動(逃走)のいずれかが観察された。
そしてたいてはこれで終りで、再び静かな「間おき集合」が回復するのである。



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