2014/02/01

ドングリから脱出したコナラシギゾムシ?終齢幼虫の歩き方



2013年10月上旬

シギゾウムシの生活史を謎解きした本『わたしの研究11:どんぐりの穴のひみつ』を読んでとても感動しました。


早速、私も真似して里山でドングリを拾い集めてきました。
ガラス瓶に入れて保管。

やがて、ドングリの中で実を食べて育ったシギゾウムシの一種、おそらくコナラシギゾムシCurculio dentipes)、の終齢幼虫が蛹化するためにドングリの硬い殻に穴を開けて脱出しました。
容器内を徘徊する幼虫をガラス瓶越しに接写してみました。
歩脚は完全に退化しているのに、体全体を蠕動させて活発に前進します。
驚いたことに、ガラスの壁面を少しだけなら登れるようです。
滑落しても七転び八起きで繰り返しガラスの壁を登ろうとします。
(ここまでの映像はYouTubeの動画編集時に自動色調補正処理を施してあります。)

深いガラス瓶を自力で登って脱出できる力はさすがに無さそうです。
幼虫を瓶から取り出して、方眼紙上に乗せてみました。
体が伸び切ったときの体長は〜8.5mm。
1対の鋭い大顎を歩行面に打ち込み、そのグリップで力強く前進していることが分かりました。
まるでアイスハーケンやピッケルのようです。

(セイウチも手足が退化したら2本の長い牙だけで浜辺を徘徊するようになるかもしれないなー、と妄想してみました。)
転んで仰向けになっても、自力で起き上がれます。


幼虫がドングリの中から穿坑して脱出する過程を動画に記録したかったのですけど、忙しくて片手間に見ているだけでは撮り損ねてしまいました。
来年こそはじっくり腰を据えて(覚悟を決めて)取り組むつもりです。
まるで未知の世界なので、今年は飼育経験を積むための練習です。
ドングリの勉強もしなくちゃなー。
今回拾い集めたドングリの樹種はコナラかミズナラかな?

つづく→「コナラシギゾウムシ?終齢幼虫の徘徊運動【微速度撮影】


【追記】
新開孝『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』という痒いところに手が届く素晴らしい図鑑に「ハイイロチョッキリとコナラシギゾウムシの幼虫の区別点」というマニアックな比較写真が掲載されていました。
ハイイロチョッキリの頭部は大半が白色で、胴部にめり込んでいるが、コナラシギゾウムシでは、赤茶色で大きい。(p129より引用)
したがって、今回私が観察した幼虫はコナラシギゾウムシで良さそうです。
幼虫の形態以外にも、ドングリ内に残された糞の形状に違いがあるのだそうです。



芝生で虫を捕食するハクセキレイのつがい【野鳥】



2013年10月中旬

川の裏手にある公園でハクセキレイMotacilla alba lugens)のつがいと思われる2羽が芝生を嘴でつついて回り、虫を捕食していました。
ときどき身震いして羽根に付いた水滴を落としています。
激しいにわか雨が降り出したので、樹の下で雨宿りしながら望遠で撮影しました。

黒斑が濃い方が♂、全体に薄い方が♀(または若鳥?)


フタモンアシナガバチ♂の群飛と誤認交尾【HD動画&ハイスピード動画】



2013年10月上旬

道端の石垣でフタモンアシナガバチ♂(Polistes chinensis antennalis)が群飛していました。
♂は顔(頭楯)が薄黄色で触角の先がカールしているので簡単に見分けられます。

石垣で日光浴(休息)しながら交尾相手の新女王♀が飛来するのを待ち伏せしているようです。
ところが集まるのは♂ばかりで、♀との交尾に成功した♂は一匹も見当たりません。(深刻な嫁不足)
そそっかしい♂は周囲の♂を♀と誤認してお互い手当り次第に飛びついて交尾を試みています。

巣がどこにあるのか不明です。



このようにあまりにも忙しない行動を記録するにはハイスピード動画(240-fps)の出番です。
気づいた点をメモ。

  • 石の上で身繕いしている♂に別の♂が飛び付いて来ます。
  • 空中戦のように飛んで追いかけっこしている♂達もいます。
  • 石の上で休む♂は、別個体♂がマウントしようと迫ると腹部を高く持ち上げることがあります。これが交尾拒否の姿勢なのでしょうか。
  • 襲われても腹端や翅を持ち上げたりせず従順にじっとしている♂もいます。もちろん同性愛的な行動ではないでしょう。相手がすぐに誤認に気づき、勝手に飛び去ってくれました。
  • 飛びつかれる前に自分から飛び去って身をかわす♂もいます。
  • ♂が♂にマウントしているところに更に3、4匹目の♂が飛来・参戦して組んず解れつの大騒ぎになるケースがありました。
  • 襲いかかる方は誤認しようがとにかく似た相手を確保するスピードを優先するようで、体の前後の向きが逆にマウントすることも多々あります。
  • ♂には毒針がないので、襲われても噛み付くぐらいしか反撃の手段がありません。しかし喧嘩や闘争にはなりません。♀と交尾する前に♂同士が戦って順位を決めているのだとしたら非常に面白いですけど…。ニホンザルのように儀式的なマウント合戦を繰り返して社会的な順位を決めている…とか妄想してみました。
もしも実験で♀の死骸や標本を野外に置いたならば、雄蜂♂は飛びついて来るでしょうか?




松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』p74-75によれば、
日本産のアシナガバチ類の交尾は、9〜10月の晴天の日の日中、午前10時から午後1時ごろまでのあいだ、となっている。
種類によって、交尾のおこなわれる場所とその方法が異なり、つぎのような行動型に区別される。(1)巣口待ち伏せ型、(2)一定コース飛びまわり型、(3)縄張り型、(4)空中交尾型
そしてフタモンアシナガバチは「♂は、樹冠の頂部、林縁、山道にそって一定のコースを飛びまわり、そこを通過する新女王をとらえて交尾する」タイプ(2)だと記してありました。
しかし個人的には、タイプ(3)(4)のケースもあり得るのではないかと疑っています。
肝心の交尾行動を未だ実際に観察できていないので、心に秘めているだけですけど。
今回の映像に記録された雄蜂の行動はまさに、「花、岩、樹上などの一定の場所で縄張りをつくり、そこで新女王を待つ」というタイプ(3)縄張り型ではないでしょうか。
ちなみに、セグロアシナガバチの交尾はタイプ(3)らしい。



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