2014/01/04

ニホンザル死骸の生物分解【10倍速映像】



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#01

害獣駆除のため山裾に仕掛けられた檻の中で野生ニホンザルMacaca fuscata)が2頭捕らえられたまま死んでいました。
餌に釣られて罠に閉じ込められたのは好奇心旺盛な子猿のようです。

山でニホンザルの行動を観察してきた者としては、殺された猿の姿を見ることはショックで色々と思うところはあります。
その一方で、農作物を荒らされ猿害の現実に苦しむ人々にも言い分があることを知っています。



野生動物の死体が生物分解される過程を観察できるチャンスは滅多に無いので、定点観察に通って一部始終を見届けることにしました。
木陰に設置された金網製の檻のサイズは98×98×185cm。
檻を破って逃げられないよう全面が(底も)丈夫な金網で覆われています。
金網は5×5cmの鉄格子。
これなら放置された死骸を誰かに悪戯されたり野犬やカラスに持ち去られる心配は無さそうです。
忌み嫌われる死を仏画の九相図のようにしっかり記録することが私に出来るせめてもの供養です。



先ずは横向きに倒れて死んだ個体Lに注目して、全身像を10倍速で微速度撮影してみました。
(手っ取り早くジオラマモードで撮った動画のため、画面の周縁部はティルトシフト処理でピンぼけになっています。)
死後数日が経過しているようで、死骸には夥しい数のハエの幼虫(蛆虫)が沸き、川の流れのように毛皮の上を蠢いています。
子供の頃に読んだ漫画『はだしのゲン』に登場するような地獄絵図です。
風下にはきつい腐臭が漂っています。
この日は気温を測るのを忘れました。

様々な昆虫が次々と死体に飛来し、掃除屋として各々の役割を果たしています。(これから順に紹介します)
自然界のリサイクル(輪廻転生)をテーマとして、しばらく長期連載します。

つづく→#2(ウジ虫の活動をリアルタイムの寄りの絵で撮りました)



キバナコスモスの花蜜を吸うモンキチョウ♂



2013年9月下旬

農道脇に咲いたキバナコスモスの群落でモンキチョウ♂Colias erate poliographus)が飛び回り訪花していました。
翅を閉じて吸蜜しています。



地中の巣に離着陸するヒメスズメバチ♀【ハイスピード動画】



2013年9月上旬

地中に営巣するヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)を定点観察するため、6日ぶりに里山を登りました。
苔むした林道の真ん中に開いた巣口を写真に撮って前回と比べてみても変化なく、入り口の拡張工事は行われていないようです。
外被や巣盤の本体は巣坑の奥深くにあるようで、外からは見えません。
また、巣口を守る門衛という役割の蜂は居ないようです。

今回は巣穴の真横にカメラを置いて、出入りする蜂の飛翔シーンを側面からハイスピード動画(240-fps)に撮ってみました。
前回、上から見下ろすように撮ったときは当然ヒメスズメバチの背側しか見えず、帰巣する蜂の口元に巣材や獲物の肉団子が確認できませんでした。
その反省から今回は側面から狙うことにしたのです。
結果は残念ながら帰巣する蜂はいつも空荷でした。
巣を拡張する時期は過ぎていると考えれば、巣材を搬入しないことは理解できます。
肉団子を搬入しない点はどうでしょう?
この時期は餌が不足するため、狩りに出かけても不調に終わり手ぶらで帰って来るのでしょうか。
本種はアシナガバチの幼虫や蛹の体液を吸って帰るらしい※ので、他のスズメバチ類とは異なり肉団子の形で幼虫に給餌しないようです。

※ 関連記事→「ヒメスズメバチvsキアシナガバチ

長時間観察していると、本コロニーのワーカー♀は少なくとも6匹居ることが分かりました。
続けざまに帰巣する、あるいは続けざまに出巣する蜂を数えることで判明。
本などで得た知識では巣口は一つの筈ですけど、もし私の気づかない離れた場所に別の出入り口があったら、この推定はご破算になります。
正確に数えるために蜂を片端から捕獲して個体標識しようか迷ったのですが、なるべく介入しないことに決めました。
このときは後日、コロニーが解散したら地中の巣を発掘するつもりでした。
蜂を麻酔するための花火をこの巣口に突っ込んでみれば、もし秘密の出入り口があるとすればそこからも煙が立ち昇る筈です。
これも思っただけで、計画倒れに終わりました。

姉妹のワーカー♀が大体いつも連続して帰巣することも不思議です。
外役では仲間と行動を共にしているのでしょうか?
しかし私の知る限り、ヒメスズメバチはたとえ豊富な狩場(アシナガバチの巣)を見つけても仲間を呼び寄せたりしない筈です。

関連記事:「キアシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチの個体標識
巣内の幼虫から栄養交換で得たエネルギーが切れて空腹になったら帰巣すると考えれば、外で飛び回る外役の時間はカラータイマーのように決まっているのかもしれません。
それで結果的に帰巣のタイミングも揃ってしまうのでしょうか。

飛翔シーンをスローモーションで見ると、アシナガバチとは異なり脚を体に引き寄せて飛んでいます。
なるべく体型を流線形にして空気抵抗を減らしているようです。

余談ですが、地面を徘徊するアリが決して巣坑に侵入しない点が興味深く思いました。
ヒメスズメバチの匂いを怖がって忌避しているのでしょうか?

雨が降っても巣坑は浸水しないのかな?
排水の工夫が施されているのかどうか、興味があります。
もしかすると、大雨が降り始めたら巣口を中から塞ぐのだろうか。

蜂を撮影しながら、こうした多くの疑問が気になりずっと考えていました。
つづく



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